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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G10H |
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管理番号 | 1149832 |
審判番号 | 不服2005-6753 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2003-02-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-14 |
確定日 | 2007-01-23 |
事件の表示 | 特願2002-182799「効果装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月21日出願公開、特開2003- 50580、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.経緯 (1)手続き 本願は、平成6年10月27日にした出願(特願平6-264013号)の一部を新たな特許出願とした平成14年6月24日の出願である。 本件は、本願についてされた拒絶査定(平成17年3月10日付け)を不服とする平成17年4月14日の請求である。 (2)査定 原査定の理由は、概略、下記のとおりである。 記(査定の理由) 請求項1から請求項4までに係る発明は、下記刊行物に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開平6-259069号公報 刊行物2:実願平1-4768号(実開平2-98399号)のマイクロ フィルム 刊行物3:特開平5-165480号公報 刊行物4:特開平6-253001号公報 刊行物5:特開平6-216822号公報 刊行物6:特開平5-142278号公報 刊行物7:特開平5-344083号公報 刊行物8:特開平6-289898号公報 刊行物9:特開平6-245100号公報 刊行物10:宇都宮敏夫編「半導体回路マニュアル」第1版、オーム社、 1975年11月20日 2.本願発明 本願の請求項1から請求項4までに係る発明(本願各発明という)は、本願明細書(平成16年11月1日付け手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項4までに記載した事項により特定される次のとおりのものと認める。 記(特許請求の範囲) 【請求項1】 設定されたパラメータに基づいて楽音信号のレベルを圧縮して当該楽音信号の音色に変化を与える処理回路と、 該処理回路に入力される楽音信号のレベルである入力レベルをリアルタイムに検出する入力レベル検出手段と、 前記処理回路から出力される楽音信号のレベルである出力レベルをリアルタイムに検出する出力レベル検出手段と、 入力レベルおよび出力レベルを座標軸とする座標平面上に、前記入力レベル検出手段、出力レベル検出手段が検出した入力レベル、出力レベルを示す点をリアルタイムに表示する表示手段と、 を備えた効果装置。 【請求項2】 設定されたパラメータに基づいて楽音信号のレベルを圧縮して当該楽音信号の音色に変化を与える処理回路と、 該処理回路に入力される楽音信号のレベルである入力レベルをリアルタイムに検出する入力レベル検出手段と、 前記処理回路のゲインをリアルタイムに検出するゲイン検出手段と、 入力レベルおよびゲインを座標軸とする座標平面上に、前記入力レベル検出手段、ゲイン検出手段が検出した入力レベル、ゲインを示す点をリアルタイムに表示する表示手段と、 を備えた効果装置。 【請求項3】 前記処理回路は、アタックタイム、リリースタイムを含むパラメータに基づいて入力された楽音信号のダイナミクスを変化させる回路である請求項1または請求項2に記載の効果装置。 【請求項4】 前記表示手段は、前記処理回路に設定されたパラメータに応じたゲイン圧縮の関数を示す設定ゲインを表すゲイン曲線を、前記座標平面上に表示する請求項1、請求項2または請求項3に記載の効果装置。 3.当審の判断 (1)本願各発明について (a)主要構成 査定で引用された各刊行物のいずれにも、本願各発明が備える下記の主要構成は記載されていない。また、各刊行物を組み合わせても、同主要構成を導くことはできない。 記(本願各発明が備える主要構成) 楽音信号のレベルを圧縮して当該楽音信号の音色に変化を与える効果装置において、入力レベルおよび出力レベル(あるいはゲイン)を座標軸とする座標平面上に、リアルタイムに検出した入力レベル、出力レベル(あるいはゲイン)を示す点をリアルタイムに表示すること。 (b)効果等 そして、本願各発明は、上記主要構成を備えることにより、「入力信号と出力信号のリアルタイムレベルを座標値とする点をリアルタイムに表示し、これらの信号間のゲインを同一の座標上に図示するようにしたことにより、両信号のリアルタイム変化およびその相関が非常に分かりやすくなる利点がある。」(明細書段落0015)に加えて「両者の関係を1つの点で表示することができ、視覚的に非常に分かりやくなる。また、相関が図示されることにより、一方の信号のレベル変化が他方の信号のレベル変化にどのように影響を与えるかを直観的に把握することができる。したがって、コンプレッサやリミッタなどの効果装置のゲイン圧縮の関数やアタックタイムやリリースタイムによるゲインの遅れを視覚的に把握することができる。」(明細書段落0006)等の明細書に記載の顕著な作用効果を奏するものと認められる。 (c)まとめ 以上によれば、本願各発明は、いずれも、上記各刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (2)引用刊行物の記載 各刊行物の記載について見ておく。 (a)刊行物1 (a1)刊行物1(特開平6-259069号公報)には、「電子楽器」に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「ディスプレイ画面で楽音制御用パラメータ等の表示を行い、この表示により選択内容を確認したり、表示に従ってパラメータ選択操作を行う」(段落0004) 「図14は選択音色名「STRINGS 1」のときの上鍵盤ボイス調整画面の一例を示すものである。この調整画面では、該音色の内容を設定するタッチ、トーン、フィート、エフェクト、パン、ブリリアンス、ボリューム等の各種パラメータの表示がなされ、対応するファンクションスイッチF1?F16の操作により各パラメータの設定・調整を行なうことができる。」(段落0026) (a2)上記記載によれば、刊行物1には、ディスプレイ画面で楽音制御用パラメータ等の設定・調整を行なうことが記載されている。しかし、その画面に表示されるのは、タッチ、トーン、フィート、エフェクト、パン、ブリリアンス、ボリューム等のパラメータであり、しかも、表示は棒グラフによるものである。本願各発明のように、「座標平面上に、入力レベル、出力レベルを示す点をリアルタイムに表示する」ことについては記載がない。 (b)刊行物2 (b1)刊行物2(実願平1-4768号(実開平2-98399号)のマイクロフィルム)には、「電子楽器の制御装置」に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「第5図(a),(b)に、それぞれベロシティテーブルナンバーが「1」,「2」のベロシティテーブルの特性を示す。 尚、同図(a),(b)において、横軸が入力されるベロシティデータ、縦軸が上記入力されるベロシティデータに対応して出力されるベロシティデータとなっている。」(明細書17頁10行?16行) (b2)上記記載によれば、刊行物2の第5図は、「ベロシティテーブルの変換特性」(入力ベロシティデータ(横軸)と出力ベロシティデータ(縦軸)との関係)を示すを示すものであり、「表示」に係るものではない。 (c)刊行物3 (c1)刊行物3(特開平5-165480号公報)には、「波形発生装置」に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「EGステートEGSTが「0」となると、図9,10で説明したように、パラメータRATEとしてアタックレートARが、パラメータTARGETとして目標値となる定数max(最大値)が、EG405に入力することとなる。」(段落0132) 「EGステートEGSTが「3」となると、図9,10で説明したように、パラメータRATEとしてリリースレートRRが、パラメータTARGETとして目標値となる定数min(最小値)が、EG405に入力することとなる。」(段落0141) (c2)上記記載によれば、刊行物3には、アタックレートARやリリースレートRRをパラメータとして入力することが記載されているに止まる。 (d)刊行物4 (d1)刊行物4(特開平6-253001号公報)には、「音声制御回路」に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「エコーキャンセラと送話信号減衰手段とが設けられる送話経路と、 受話信号減衰手段が設けられる受話経路と、 上記エコーキャンセラの前段の送話信号の入力レベルを検出する送話入力レベル検出手段と、 受話信号の入力レベルを検出する受話入力レベル検出手段とからなり、 上記送話経路または上記受話経路から出力されるどちらか一方の信号に対して、上記送話入力レベル検出手段の検出出力及び上記受話入力レベル検出手段の検出出力に基づいて上記送話信号減衰手段または上記受話信号減衰手段のどちらか一方により減衰を与えるようにした音声制御回路。」(特許請求の範囲第1項) (d2)上記記載によれば、刊行物4には、送話入力レベル及び受話入力レベルを検出し、減衰手段を制御することが記載されている。しかし、検出した送話入力レベル及び受話入力レベルを表示することについては記載がない。しかも、テレビ会議システムにおける音声送受信機器を対象としたものであり、本願各発明のように「楽音信号のレベルを圧縮して当該楽音信号の音色に変化を与える効果装置」を対象とするものでもない。 (e)刊行物5 (e1)刊行物5(特開平6-216822号公報)には、「双方向中継増幅器」に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「上り方向および下り方向の増幅回路の信号の少なくとも出力レベルあるいは入力レベルあるいは途中段階のレベルを検出し、当該検出レベルを比較して増幅回路の利得を制御する」(段落0005) (e2)上記記載によれば、刊行物5には、出力レベルあるいは入力レベルを検出し増幅回路の利得を制御することが記載されている。しかし、検出した入力レベルおよび出力レベルを表示することについては記載がない。しかも、無線周波数帯域信号の中継増幅器を対象としたもので、本願各発明のように「楽音信号のレベルを圧縮して当該楽音信号の音色に変化を与える効果装置」を対象とするものでもない。 (f)刊行物6 (f1)刊行物6(特開平5-142278号公報)には、「S/N等の測定器」に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「図2は表示装置10に表示された表示画面を例示したものであり、12は表示された棒グラフ、13は被測定体11の減衰度、14はS/N、15はノイズレベルを表示している。また、16は信号発生回路1の基準信号出力レベル、17は被測定体11による減衰度、18はレベル測定回路2に入力される入力レベル、19は被測定体11のS/N、20はノイズレベルの数値表示である。 本発明によれば以上のように、S/N測定において重要な被測定体11への入力レベル、測定体11からの出力レベル、減衰度、ノイズレベル、S/Nと、それらの間の関係が一覧し明瞭に知ることができる。」(段落0014,0015) (f2)上記記載によれば、刊行物6には、被測定体への入力レベル、測定体からの出力レベルを一覧表示することが記載されている。しかし、その表示態様は、ノイズレベル、入力レベルおよび出力レベルを1本の棒グラフで直列的に表示するものであり、本願各発明のように、「座標平面上に、リアルタイムに検出した入力レベル、出力レベルを示す点をリアルタイムに表示する」ことについては記載がない。しかも、測定体のS/N測定を対象としたものであり、本願各発明のように、「楽音信号のレベルを圧縮して当該楽音信号の音色に変化を与える効果装置」を対象とするものでもない。 (g)刊行物7 (g1)刊行物7(特開平5-344083号公報)には、「CATVシステム用ステータスモニター」に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「図2にステータスモニター2の外観図を示す。デジタル表示部27の横には、増幅器種別をはじめとして、下り幹線入力レベル等の各種監視項目40が記載され、各監視項目の先頭位置にステータス表示部28が配置されている。また、その下方には動作状態を示す項目41とコントロールを行う項目42が記載され、それぞれにステータス表示部28が配置されている。」(段落0015) 「デジタル表示部27は・・・増幅器の種別や測定レベルをデジタル表示するものであり・・・ステータス表示分28は監視項目や動作状態を示すための表示であり、LED等が使用されている。即ち、増幅器種別を確認するときには「増幅器種別」の項目の前にあるLEDが点灯し、また「下り幹線入力レベル」がチェックされているときはその前にあるLEDが点灯する。」(段落0013) (g2)上記記載によれば、刊行物7には、測定レベルを表示するデジタル表示部27を配置すること、下り幹線入力レベル、下り幹線出力レベル等の監視項目の頭にステータス表示部28を配置すること、が記載されている。 しかし、下り幹線入力レベルおよび下り幹線出力レベルについては、そのレベル値が7セグメント表示器(表示部26)に表示されるのであり、本願各発明のように、「座標平面上に、リアルタイムに検出した入力レベル、出力レベルを示す点をリアルタイムに表示する」ことについては記載がない。しかも、CATVシステムの通信線路に接続された双方向増幅器の状態の監視を対象としたものであり、本願発明のように、「楽音信号のレベルを圧縮して当該楽音信号の音色に変化を与える効果装置」を対象としたものでもない。 (h)刊行物8 (h1)刊行物8(特開平6-289898号公報)には、「音声信号処理装置」に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「ローパスフィルタ11が出力する音声信号を、振幅制御アンプ12に供給する。この振幅制御アンプ12は、供給される音声信号の振幅を制限するリミッタとして機能するアンプで、例えば図3に実線aで示すように入出力特性を制御する。即ち、或る入力レベルに達するまでは、入力レベルに対する出力レベルの調整を曲線aに従って行い、或る入力レベル以上では出力レベルを一定値Xに制限するピーククリッピングを行う。なお、入力レベルに対する出力レベルの曲線に従った調整として、図3に破線b,cで示すような他の制御(入出力レベルが一定の比率で調整される直線的な調整も考えられる)を行うようにしても良い。」(段落0017) (h2)上記記載によれば、刊行物8には、入力レベルに対する出力レベルを曲線aに従って調整することが記載されている。図3は、入出力特性を示すものである。 (i)刊行物9 (i1)刊行物9(特開平6-245100号公報)には、「映像信号処理装置」に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「 図9は従来例のガンマ補正を示す特性図である。Aは非線形増幅を行った特性曲線、Bは線形特性曲線を表している。横軸は入力レベル、縦軸は出力レベルを示す。」(段落0004) (i2)上記記載によれば、刊行物9には、横軸は入力レベル、縦軸は出力レベルを示すガンマ補正の特性図が記載されているに過ぎない。本願各発明のように、「座標平面上に、検出した入力レベル、出力レベルを示す点をリアルタイムに表示する」ことについては記載がない。 (j)刊行物10 刊行物10(半導体回路マニュアル)には、「表9.9減衰等化器の設計公式」中に一次減衰等化器の損失特性などが示されているに過ぎない。本願各発明と関連する記載は認められない。 4.むすび 以上、本願の請求項1から請求項4までに係る発明は上記各刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、という原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2007-01-10 |
出願番号 | 特願2002-182799(P2002-182799) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G10H)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 間宮 嘉誉 |
特許庁審判長 |
新宮 佳典 |
特許庁審判官 |
北岡 浩 益戸 宏 |
発明の名称 | 効果装置 |
代理人 | 小森 久夫 |
代理人 | 村上 辰一 |