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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B23K |
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管理番号 | 1149835 |
異議申立番号 | 異議2003-73551 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2002-01-15 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-26 |
確定日 | 2005-08-13 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3463281号「多軸レーザ加工装置及びレーザ加工方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3463281号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3463281号の請求項1ないし3に係る発明は、平成12年6月28日に特許出願され、平成15年8月22日にその特許権の設定登録がなされ、その後、西郷純一(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年6月2日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 2.1 訂正の内容 a.設定登録時の請求項1の記載を、 「パルスレーザビームを出射するレーザ光源と、 前記レーザ光源から出射されたパルスレーザビームの、時間軸上に配列した複数のパルスを、外部から与えられる制御信号に基づいて、各パルスが第1の光軸及び第2の光軸のいずれか一方の光軸に沿って伝搬するように振り分ける振り分け光学系と、 前記第1の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第1の走査光学系と、 前記第2の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第2の走査光学系と、 前記パルスレーザビームが、前記第1の走査光学系を通して加工対象物上に照射されている期間に、前記第2の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておき、前記パルスビームが、前記第2の走査光学系を通して加工対象物上に照射されている期間に、前記第1の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておく制御手段と を有する多軸レーザ加工装置。」から、 「パルスレーザビームを出射するレーザ光源と、 前記レーザ光源から出射されたパルスレーザビームの、時間軸上に配列した複数のパルスを、外部から与えられる制御信号に基づいて、各パルスが第1の光軸及び第2の光軸のいずれか一方の光軸に沿って伝搬するように振り分ける振り分け光学系と、 前記第1の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第1の走査光学系と、 前記第2の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第2の走査光学系と、 前記パルスレーザビームの複数のパルスが、前記第1の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に照射されている期間に、前記第2の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておき、前記パルスレーザビームの複数のパルスが、前記第2の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に照射されている期間に、前記第1の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておく制御手段と を有する多軸レーザ加工装置。」に訂正する。 b.設定登録時の請求項3の記載を、 「レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、第1の走査光学系に入射させ、該第1の走査光学系を通して加工対象物上に該パルスレーザビームを照射して加工する工程と、 前記第1の走査光学系を通してパルスレーザビームを加工対象物上に照射している期間に、第2の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射される加工対象物上の位置が移動するように該第2の走査光学系を制御する工程と、 前記レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、前記第2の走査光学系に入射させ、前記加工対象物上に該パルスレーザビームを照射して加工する工程と、 前記第2の走査光学系を通してパルスレーザビームを加工対象物上に照射している期間に、前記第1の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射する加工対象物上の位置が移動するように該第1の走査光学系を制御する工程と を含むレーザ加工方法。」から、 「レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、第1の走査光学系に入射させ、該第1の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に該パルスレーザビームの複数のパルスを照射して加工する工程と、 前記第1の走査光学系を通してパルスレーザビームの複数のパルスを加工対象物上の同一箇所に照射している期間に、第2の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射される加工対象物上の位置が移動するように該第2の走査光学系を制御する工程と、 前記レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、前記第2の走査光学系に入射させ、前記加工対象物上の同一箇所に該パルスレーザビームの複数のパルスを照射して加工する工程と、 前記第2の走査光学系を通してパルスレーザビームの複数のパルスを加工対象物上の同一箇所に照射している期間に、前記第1の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射する加工対象物上の位置が移動するように該第1の走査光学系を制御する工程と を含むレーザ加工方法。」に訂正する。 c.設定登録時の明細書の段落【0005】の記載を、 「【課題を解決するための手段】 本発明の一観点によると、パルスレーザビームを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたパルスレーザビームの、時間軸上に配列した複数のパルスを、外部から与えられる制御信号に基づいて、各パルスが第1の光軸及び第2の光軸のいずれか一方の光軸に沿って伝搬するように振り分ける振り分け光学系と、前記第1の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第1の走査光学系と、前記第2の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第2の走査光学系と、前記パルスレーザビームが、前記第1の走査光学系を通して加工対象物上に照射されている期間に、前記第2の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておき、前記パルスビームが、前記第2の走査光学系を通して加工対象物上に照射されている期間に、前記第1の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておく制御手段とを有する多軸レーザ加工装置が提供される。」から、 「【課題を解決するための手段】 本発明の一観点によると、パルスレーザビームを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたパルスレーザビームの、時間軸上に配列した複数のパルスを、外部から与えられる制御信号に基づいて、各パルスが第1の光軸及び第2の光軸のいずれか一方の光軸に沿って伝搬するように振り分ける振り分け光学系と、前記第1の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第1の走査光学系と、前記第2の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第2の走査光学系と、前記パルスレーザビームの複数のパルスが、前記第1の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に照射されている期間に、前記第2の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておき、前記パルスレーザビームの複数のパルスが、前記第2の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に照射されている期間に、前記第1の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておく制御手段とを有する多軸レーザ加工装置が提供される。」に訂正する。 d.設定登録時の明細書の段落【0006】の記載を、 「 本発明の他の観点によると、レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、第1の走査光学系に入射させ、該第1の走査光学系を通して加工対象物上に該パルスレーザビームを照射して加工する工程と、前記第1の走査光学系を通してパルスレーザビームを加工対象物上に照射している期間に、第2の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射される加工対象物上の位置が移動するように該第2の走査光学系を制御する工程と、前記レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、前記第2の走査光学系に入射させ、前記加工対象物上に該パルスレーザビームを照射して加工する工程と、前記第2の走査光学系を通してパルスレーザビームを加工対象物上に照射している期間に、前記第1の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射する加工対象物上の位置が移動するように該第1の走査光学系を制御する工程とを含むレーザ加工方法が提供される。」から、 「 本発明の他の観点によると、レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、第1の走査光学系に入射させ、該第1の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に該パルスレーザビームの複数のパルスを照射して加工する工程と、前記第1の走査光学系を通してパルスレーザビームの複数のパルスを加工対象物上の同一箇所に照射している期間に、第2の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射される加工対象物上の位置が移動するように該第2の走査光学系を制御する工程と、前記レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、前記第2の走査光学系に入射させ、前記加工対象物上の同一箇所に該パルスレーザビームの複数のパルスを照射して加工する工程と、前記第2の走査光学系を通してパルスレーザビームの複数のパルスを加工対象物上の同一箇所に照射している期間に、前記第1の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射する加工対象物上の位置が移動するように該第1の走査光学系を制御する工程とを含むレーザ加工方法が提供される。」に訂正する。 (なお、下線は訂正箇所を明らかにするために当審で付したものである。) 2.2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 2.2.1 訂正事項a,bにつき 上記訂正事項a及びbは、それぞれ設定登録時の請求項1及び3に、加工対象物上「の同一箇所」にパルスレーザビーム「の複数のパルス」を照射するという限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、出願当初の明細書の段落【0023】には、「樹脂基板上の一箇所に40パルスを照射することにより、深さ40μmの穴を開けることができる。」と記載されているため、新規事項の追加には該当せず、そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 2.2.2 訂正事項c,dにつき 上記訂正事項c及びdは、それぞれ訂正された特許請求の範囲の請求項1及び3との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、訂正事項a,bと同様、新規事項の追加には該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 2.3 むすび したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する同法第126条第2項、第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 3.1 本件発明 上記2.で示したように訂正が認められるから、本件の請求項1ないし3に係る発明は、次のとおりのものである。 【請求項1】 「パルスレーザビームを出射するレーザ光源と、 前記レーザ光源から出射されたパルスレーザビームの、時間軸上に配列した複数のパルスを、外部から与えられる制御信号に基づいて、各パルスが第1の光軸及び第2の光軸のいずれか一方の光軸に沿って伝搬するように振り分ける振り分け光学系と、 前記第1の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第1の走査光学系と、 前記第2の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第2の走査光学系と、 前記パルスレーザビームの複数のパルスが、前記第1の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に照射されている期間に、前記第2の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておき、前記パルスレーザビームの複数のパルスが、前記第2の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に照射されている期間に、前記第1の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておく制御手段と を有する多軸レーザ加工装置。」(以下、「本件発明1」という。) 【請求項2】 「前記第1の走査光学系が、前記第1の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを複数のビームに分割し、分割されたパルスレーザビームの各々の照射位置を移動させ、 前記第2の走査光学系が、前記第2の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを複数のビームに分割し、分割されたパルスレーザビームの各々の照射位置を移動させる請求項1に記載の多軸レーザ加工装置。」(以下、「本件発明2」という。) 【請求項3】 「レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、第1の走査光学系に入射させ、該第1の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に該パルスレーザビームの複数のパルスを照射して加工する工程と、 前記第1の走査光学系を通してパルスレーザビームの複数のパルスを加工対象物上の同一箇所に照射している期間に、第2の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射される加工対象物上の位置が移動するように該第2の走査光学系を制御する工程と、 前記レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、前記第2の走査光学系に入射させ、前記加工対象物上の同一箇所に該パルスレーザビームの複数のパルスを照射して加工する工程と、 前記第2の走査光学系を通してパルスレーザビームの複数のパルスを加工対象物上の同一箇所に照射している期間に、前記第1の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射する加工対象物上の位置が移動するように該第1の走査光学系を制御する工程と を含むレーザ加工方法。」(以下、「本件発明3」という。) 3.2 引用刊行物に記載された事項 当審で通知した取消しの理由で引用した、本件特許出願の日前の他の特許出願であって、本件特許出願の発明者と他の特許出願に記載された発明の発明者とが同一の者ではなく、また本件特許出願の時にその出願人と他の特許出願の出願人とが同一の者でもなく、本件特許出願後に出願公開された特願平2000-3698号(特開2000-263271号)の願書に添付した明細書及び図面(以下、「刊行物1」という。)、本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平10-142538号公報(以下、「刊行物2」という。)及び特開平11-192571号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。 3.2.1 刊行物1 a.(段落【0003】) 「図10は、従来のレーザ加工機の構成図である。レーザ発振器1は、パルス状のレーザビーム2を出力する。ハーフミラー3は、入射するレーザビーム2の約50%を透過させ、残りを反射する。以下、ハーフミラー3を透過したレーザビーム2を透過ビーム2a、反射したレーザビーム2を反射ビーム2bという。全反射コーナミラー4a?4cの反射面は固定されている。ガルバノミラー5a?5dは、図中矢印で示すように、回転軸の回りに回転自在であり、反射面を任意の角度に位置決めすることができる。集光レンズ(fθレンズ)6a、6bは、それぞれ第1の加工ヘッド7a、第2の加工ヘッド7bに保持されている。プリント基板8は、X-Yテーブル9に固定されている。ガルバノミラー5a、5bのスキャン領域10aおよびガルバノミラー5c、5dのスキャン領域10bは、50mm×50mm程度の大きさである。」 b.(段落【0006】) 「ところで、1個の穴を加工するために、パルス状のレーザビーム2(以下、1パルスのレーザビームをレーザパルスという。)を複数個照射することが多い。1個の穴に対して複数個のレーザパルスを連続して照射し、その穴の加工を終了させてから次の穴を加工する加工方法をバースト加工といい、複数個の穴を1組とし、各穴にレーザパルスを1個ずつ照射し、この動作を、それぞれの穴の加工が完了するまで繰り返す加工方法をサイクル加工という。」 c.(段落【0026】) 「図1は本発明に係るレーザ加工機の構成図であり、図8と同じものまたは同一機能のものは同一符号を付して説明を省略する。電源・コントローラ20は、レーザ発振器1の制御および電力供給を行う。ビーム分配整形装置21a、21bは、パルスビーム2の光路に対し、所定の角度を持たせて配置されている。電源・コントローラ22a、22bは、ビーム分配整形装置21a、21bの制御および電力供給を行う。NC装置23は、電源・コントローラ20、22a、22b、ガルバノミラー5a?5dおよびテーブル9の図示を省略した駆動装置等を制御する。ビーム分配整形装置21a、21bからはレーザビーム23?25がそれぞれ出力される。26は集熱装置である。」 d.(段落【0033】?【0042】) 「図3はサイクル加工を行う場合の各部のタイミングチャートである。図で、(a)はレーザ発振器の起動信号を、(b)はレーザビーム2のエネルギを、(c)はビーム分配整形装置21bの起動信号を、(d)はレーザビーム23のエネルギを、(e)はガルバノミラー5a、5bの位置決め信号を、(f)はビーム分配整形装置21aの起動信号を、(g)はレーザビーム24のエネルギを、(h)はガルバノミラー5c、5dの位置決め信号を、(j)はレーザビーム25のエネルギをそれぞれ示している。 NC装置7は、期間TP1(時刻t0から時刻t2までおよび時刻t6から時刻t8まで)および期間TP2(時刻t3から時刻t5までおよび時刻t9から時刻t11まで)にレーザ発振器1をオンする。レーザビーム2のエネルギは、期間TP1および期間TP2が開始されてから遅れ期間TDL経過後徐々に増加し、期間TRが経過するとピーク値WPになる。そして、期間TP1および期間TP2が終了してから徐々に減衰し、期間TD経過後0になる。 ビーム分配整形装置21aは、レーザビーム2のエネルギがほぼピーク値WPになる時刻t1および時刻t7からレーザ発振器1がオフされる時刻t2および時刻t8の間オンされる。レーザビーム23はビーム分配整形装置21aがオンされている間出力される。ガルバノミラー5a、5bはビーム分配整形装置21aがオンされている期間を除いて動作する。 ビーム分配整形装置21bはレーザビーム2のエネルギがほぼピーク値WPになる時刻t4および時刻t10からレーザ発振器1がオフされる時刻t5および時刻t11の間オンされる。レーザビーム24はビーム分配整形装置21bがオンされている間出力される。ガルバノミラー5c、5dはビーム分配整形装置21bがオンされている期間を除いて動作する。 次に、図1および図1の部分平面図である図4により、レーザビーム2の経路を説明する。 (1)時刻t0から時刻t1まで: レーザビーム2はビーム分配整形装置21a、21bの両者を透過し、レーザビーム25が集熱装置26に入射して熱に換えられる。 (2)時刻t1から時刻t2までの(期間TW1): 図4(a)に示すように、レーザビーム2は、ビーム分配整形装置21bで光路が偏向し、レーザビーム23がガルバノミラー5aに入射し、ガルバノミラー5a、5bで定まる光路を通り、集光レンズ6aで集光され、スキャン領域10a内に穴を加工する。 (3)時刻t2から時刻t4まで: レーザビーム2はビーム分配整形装置21a、21bの両者を透過し、レーザビーム25として集熱装置26に入射し、他の個所に散乱することなく、熱に換えられて消費される。 (4)時刻t4から時刻t5まで(期間TW2): 図4(b)に示すように、レーザビーム2はビーム分配整形装置21aで光路が偏向し、レーザビーム24がガルバノミラー5cに入射し、ガルバノミラー5c、5dで定まる光路を通り、集光レンズ6bで集光され、スキャン領域10b内に穴を加工する。 上記したように、スキャン領域10a、10b内の加工においては、ガルバノミラー5a?5dの位置決めに要する時間(期間TG)が最も長いから、期間TW1と次の期間TW1との間隔および期間TW2と次の期間TW2との間隔を、それぞれ期間TGになるようにすると加工時間を短くできる。」 e.(段落【0047】) 「また、一方のヘッドで加工している間に他方のガルバノミラーの位置決めを行うことにより、1個のビームパルスを1個のヘッドに供給でき、従来ガルバノミラーを動作させることができなかった立上り期間TRおよび立ち下がり期間TDもガルバノミラーを動作させることができる。したがって、レーザ発振器の待ち時間を少なくでき、レーザ発振器の稼働率を向上させることができる。しかも、レーザ発振器の容量は、従来と同じでよい。」 f.(段落【0052】) 「次に、TW=0.01ms、n=3パルス/穴で、大きさが500mm×350mmのプリント基板に穴数Aを加工する場合の加工時間の計算例を説明する。なお、ガルバノスキャン領域は50mm×50mm(テーブルの移動回数は70回)、また、ガルバノミラー位置決め時間TGは2ms、テーブル位置決め時間TXYは200ms、レーザ発振器の最大パルス周波数は3KHz(最小パルス周期0.33ms)であるとする。 」 g.(段落【0055】) 「(b2)ヘッド数Mが2であり、それぞれの加工パルス周期を0.5msとする場合、図5(b)に示すように、一方のヘッドが加工している期間中に他方のヘッドを位置決めすることにより、加工パルス周期TP=0.5ms(周波数2KHz)で加工することができる。」 h.(図5(b)) 一方のヘッドで3パルス照射する間に、他方のヘッドを位置決めする様子が示されていると認められる。 上記摘記事項aないしhの記載を本件発明1に照らして整理すると、刊行物1には、 「パルス状のレーザビームを出射するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器から出射されたパルス状のレーザビームの、時間軸上に配列した複数のレーザパルスを、NC装置から与えられる制御信号に基づいて、各レーザパルスがレーザビーム23及びレーザビーム24のいずれか一方の光軸に沿って伝搬するように振り分けるビーム分配整形装置と、 前記レーザビーム23に沿って伝搬するパルス状のレーザビームを、プリント基板上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、プリント基板上のある領域内で、パルス状のレーザビームの照射位置を移動させるガルバノミラー5a,5b及びfθレンズ6aと、 前記レーザビーム24に沿って伝搬するパルス状のレーザビームを、プリント基板上に導くと共に、NC装置から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、プリント基板上のある領域内で、パルス状のレーザビームの照射位置を移動させるガルバノミラー5c,5d及びfθレンズ6bと、 前記パルス状のレーザビームの複数のパルスが、前記ガルバノミラー5a,5b及びfθレンズ6aを通してプリント基板上の同一箇所に照射されている期間に、前記ガルバノミラー5c,5d及びfθレンズ6bを駆動してビームの照射位置を移動させておき、前記パルス状のレーザビームの複数のレーザパルスが、前記ガルバノミラー5c,5d及びfθレンズ6bを通してプリント基板上の同一箇所に照射されている期間に、前記ガルバノミラー5a,5b及びfθレンズ6aを駆動してビームの照射位置を移動させておくNC装置と を有するレーザ加工機。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。) が記載されていると認められる。 3.2.2 刊行物2 a.(請求項1) 「被描画体に対してレーザビームを主走査方向に偏向させつつ該レーザビームを画像データに基づいて変調させて該被描画体に描画を行うレーザ描画装置であって、 単一のレーザビーム光源と、 前記レーザビーム光源からのレーザビームを2つの光路に振り分けるレーザビーム振分け手段と、 前記レーザビーム振分け手段によって2つの光路に振り分けられたレーザビームをそれぞれ前記被描画体に対して主走査方向に偏向させるための2つのポリゴンミラーとを具備して成るレーザ描画装置において、 前記各ポリゴンミラーのそれぞれの反射面にはレーザビームの主走査方向に沿う偏向を行って描画を行わせる描画有効反射面領域が設定され、一方のポリゴンミラーの描画有効反射面領域での描画作動終了からその描画有効反射面領域に隣接した描画有効反射面領域での描画作動開始に移行する間に他方のポリゴンミラーの描画有効反射面領域での描画作動が行われるように前記双方のポリゴンミラーの回転周期をずらしていることを特徴とするレーザ描画装置。」 b.(図6) 一方のポリゴンミラーによる描画中に、他方のポリゴンミラーが次の描画有効反射面領域に回転することが示されていると認められる。 上記摘記事項a,bの記載を本件発明1に照らして整理すると、刊行物2には、 「レーザビームを出射するレーザビーム光源と、 前記レーザビーム光源から出射されたレーザビームを、外部から与えられる制御信号に基づいて、レーザビームが第1の光路及び第2の光路のいずれか一方の光路に沿って伝搬するように振り分けるレーザビーム振り分け手段と、 前記第1の光路に沿って伝搬するレーザビームを、被描画体上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、被描画体上のある領域内で、レーザビームの照射位置を移動させる第1のポリゴンミラーと、 前記第2の光路に沿って伝搬するレーザビームを、被描画体上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、被描画体上のある領域内で、レーザビームの照射位置を移動させる第2のポリゴンミラーと、 前記レーザビームが、前記第1のポリゴンミラーを通して被描画体上に照射されている期間に、前記第2のポリゴンミラーを駆動してビームの照射位置を移動させておき、前記レーザビームが、前記第2のポリゴンミラーを通して被描画体上に照射されている期間に、前記第1のポリゴンミラーを駆動してビームの照射位置を移動させておく制御手段と を有するレーザ描画装置。」(以下、「刊行物2記載の発明」という。) が記載されていると認められる。 3.2.3 刊行物3 a.(段落【0019】) 「図2において、レーザー発振器1から出射されたレーザービーム2はビームスプリッタ(分岐手段)10により2本に分岐され、X-Y2軸のガルバノメータ4、5とfθレンズ6とを備えた2組のレーザー照射部A、Bに導かれる。前記ビームスプリッタ10で分岐した各レーザービーム2a、2bが各レーザー照射部A、Bそれぞれのfθレンズ6による集束点に到達する光路長は同一距離になるように設定されている。即ち、ビームスプリッタ10で分岐したレーザービーム2aが反射鏡3b、3cで反射してガルバノミラー4aに入射する光路長と、ビームスプリッタ10で分岐したレーザービーム2bが反射鏡3d、3e、3fで反射してガルバノミラー4aに入射する光路長とは同一長さである。このように光路長を一致させることによって各レーザー照射部A、Bにおけるレーザービーム2a、2bの集束状態が同一となり、2枚の基板17に対する同時加工を精度よく行うことができる。」 b.(図2) 走査光学系が、光軸に沿って伝搬するレーザビームを複数のビームに分割し、分割されたレーザビームの各々の照射位置を移動させるレーザ加工装置が示されていると認める。 3.3 対比・判断 3.3.1 本件発明1 本件発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「パルス状のレーザビーム」、「レーザ発振器」及び「レーザパルス」が、前者の「パルスレーザビーム」、「レーザ光源」及び「パルス」とそれぞれ同義語であることは明らかであり、後者の「レーザビーム23」と「レーザビーム24」は、パルスレーザビームが交互に振り分けられる経路である限りにおいて、前者の「第1の光軸」と「第2の光軸」に相当するから、後者の「ビーム分配整形装置」、「ガルバノミラー5a,5b及びfθレンズ6a」及び「ガルバノミラー5c,5d及びfθレンズ6b」は、それらの機能上、前者の「振り分け光学系」、「第1の走査光学系」及び「第2の走査光学系」にそれぞれ相当する。後者の「プリント基板」は、レーザビームにより加工される対象物であるから、前者の「加工対象物」に相当する。また、後者の「NC装置」は、振り分け光学系と第1及び第2の走査光学系に制御信号を与えて動作させるものである限りにおいて、前者の「外部」及び「制御手段」に相当し、後者の「レーザ加工機」は、2つの走査光学系を用いて2つの異なる箇所に並行して加工を行うものであるという限りにおいて、前者の「多軸レーザ加工装置」に相当する。 してみると、本件発明1と刊行物1記載の発明とは、 「パルスレーザビームを出射するレーザ光源と、 前記レーザ光源から出射されたパルスレーザビームの、時間軸上に配列した複数のパルスを、外部から与えられる制御信号に基づいて、各レーザパルスが第1の光軸及び第1の光軸のいずれか一方の光軸に沿って伝搬するように振り分ける振り分け光学系と、 前記第1の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第1の走査光学系と、 前記第2の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第2の走査光学系と、 前記パルスレーザビームの複数のパルスが、前記第1の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に照射されている期間に、前記第2の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておき、前記パルスレーザビームの複数のパルスが、前記第2走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に照射されている期間に、前記第1の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておく制御手段と を有する多軸レーザ加工装置。」 で一致し、両者の間に相違点は認められない。 よって、本件発明1は、刊行物1記載の発明と同一である。 本件発明1と刊行物2記載の発明とを対比すると、後者の「レーザビーム光源」、「第1の光路」、「第2の光路」及び「レーザビーム振り分け手段」は、前者の「レーザ光源」、「第1の光軸」、「第2の光軸」及び「振り分け光学系」とそれぞれ同義語であり、後者の「第1のポリゴンミラー」と「第2のポリゴンミラー」は、機能上、前者の「第1の走査光学系」と「第2の走査光学系」にそれぞれ相当する。後者の「被描画体」はレーザビームによって加工される対象物である限りにおいて前者の「加工対象物」に相当し、後者の「レーザ描画装置」は、2つの走査光学系を用いて2つの異なる箇所に並行して加工を行うものであるという限りにおいて、前者の「多軸レーザ加工装置」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致及び相違すると認められる。 <一致点> 「レーザビームを出射するレーザ光源と、 前記レーザ光源から出射されたレーザビームを、外部から与えられる制御信号に基づいて、レーザビームが第1の光軸及び第2の光軸のいずれか一方の光軸に沿って伝搬するように振り分ける振り分け光学系と、 前記第1の光軸に沿って伝搬するレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、レーザビームの照射位置を移動させる第1の走査光学系と、 前記第2の光軸に沿って伝搬するレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、レーザビームの照射位置を移動させる第2の走査光学系と、 前記レーザビームが、前記第1の走査光学系を通して加工対象物上に照射されている期間に、前記第2の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておき、前記レーザビームが、前記第2の走査光学系を通して加工対象物上に照射されている期間に、前記第1の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておく制御手段と を有する多軸レーザ加工装置。」 <相違点1> レーザビームは、前者では「パルスレーザビーム」であり、加工対象物状の同一箇所に複数のパルスを照射するものであるのに対し、後者ではこのような特定がない点。 上記<相違点1>について検討する。 刊行物2記載の発明では、走査光学系が回転するポリゴンミラーであるが、本件発明1の実施例と同様にガルバノスキャナ(ガルバノメータ)とfθレンズの組み合わせによる走査光学系は刊行物3に記載されている。刊行物3記載の事項は、刊行物2記載の発明と同じくレーザ加工装置に関するから、刊行物3記載の事項の走査光学系を刊行物2記載の発明に適用して用いることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。 また、加工対象物上の同一箇所に複数のレーザパルスを連続して照射して加工することは、レーザ加工において従来周知の技術である。 してみると、刊行物2記載の発明において走査光学系を刊行物3記載のものに置き換えた多軸レーザ加工装置において、加工対象物上の同一箇所に複数のレーザパルスを連続して照射することは、当業者にとっては設計事項に過ぎず、そのことによる作用効果も、刊行物2記載の発明、刊行物3記載の事項及び従来周知の技術から普通に予測される域を出ないから、本件発明1は、刊行物2記載の発明、刊行物3記載の事項及び従来周知の技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.3.2 本件発明2 本件発明と刊行物2記載の発明とを対比すると、両者は上記3.3.1の<一致点>で一致する一方、<相違点1>に加えて、次の点で相違すると認められる。 <相違点2> 第1及び第2の走査光学系が、前者ではレーザビームを複数のビームに分割し、分割されたビームの各々の照射位置を移動させるのに対し、後者ではこのようなものでない点。 <相違点1>については、上記3.3.1にて検討したとおりである。 以下、<相違点2>について検討する。 刊行物3には、レーザビームを複数のビームに分割し、分割されたビームの各々の照射位置を移動させることも記載されている。 刊行物3記載の事項を刊行物2記載に発明に適用することは、上記3.3.1にて述べたように、当業者が容易に想到し得るものであり、また、本件発明2の作用効果も、刊行物2記載の発明、刊行物3記載の事項及び従来周知の技術から普通に予測される域を出ないから、本件発明2は、刊行物2記載の発明、刊行物3記載の事項及び従来周知の技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.3.3 本件発明3 本件発明3は、本件発明1の「多軸レーザ加工装置」に対して「レーザ加工方法」に関するものであるが、発明のカテゴリが異なるだけで、実質的に同一である。 したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明3は、刊行物1記載の発明と同一であり、また、刊行物2記載の発明、刊行物3記載の事項及び従来周知の技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.5 むすび 以上のとおり、本件の請求項1及び3に係る発明は刊行物1記載の発明と同一であるから、本件の請求項1及び3に係る特許は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。 また、本件の請求項1,2及び3に係る発明は刊行物2記載の発明、刊行物3記載の事項及び従来周知の技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1,2及び3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 したがって、本件の請求項1,2及び3に係る特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 多軸レーザ加工装置及びレーザ加工方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 パルスレーザビームを出射するレーザ光源と、 前記レーザ光源から出射されたパルスレーザビームの、時間軸上に配列した複数のパルスを、外部から与えられる制御信号に基づいて、各パルスが第1の光軸及び第2の光軸のいずれか一方の光軸に沿って伝搬するように振り分ける振り分け光学系と、 前記第1の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第1の走査光学系と、 前記第2の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第2の走査光学系と、 前記パルスレーザビームの複数のパルスが、前記第1の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に照射されている期間に、前記第2の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておき、前記パルスレーザビームの複数のパルスが、前記第2の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に照射されている期間に、前記第1の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておく制御手段と を有する多軸レーザ加工装置。 【請求項2】 前記第1の走査光学系が、前記第1の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを複数のビームに分割し、分割されたパルスレーザビームの各々の照射位置を移動させ、 前記第2の走査光学系が、前記第2の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを複数のビームに分割し、分割されたパルスレーザビームの各々の照射位置を移動させる請求項1に記載の多軸レーザ加工装置。 【請求項3】 レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、第1の走査光学系に入射させ、該第1の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に該パルスレーザビームの複数のパルスを照射して加工する工程と、 前記第1の走査光学系を通してパルスレーザビームの複数のパルスを加工対象物上の同一箇所に照射している期間に、第2の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射される加工対象物上の位置が移動するように該第2の走査光学系を制御する工程と、 前記レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、前記第2の走査光学系に入射させ、前記加工対象物上の同一箇所に該パルスレーザビームの複数のパルスを照射して加工する工程と、 前記第2の走査光学系を通してパルスレーザビームの複数のパルスを加工対象物上の同一箇所に照射している期間に、前記第1の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射する加工対象物上の位置が移動するように該第1の走査光学系を制御する工程と を含むレーザ加工方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、多軸レーザ加工装置及びレーザ加工方法に関し、特に加工対象物上のある範囲内でレーザ照射位置を移動させて加工する多軸レーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 特開平10-58178号公報に、複数軸のレーザビームの各々の光軸をガルバノスキャナで振り、プリント配線基板の所望の位置に穴開けを行うレーザ加工装置が開示されている。特開平10-58178号公報に記載されたレーザ加工装置では、レーザ発振器から出射したパルスレーザビームが、相互に直交するように配置された2枚の反射鏡により2本のビームに分割される。分割されたビームの各々の光軸がガルバノスキャナで振られ、fθレンズで加工対象物上に集光される。ガルバノスキャナとfθレンズで、ビームを所望の位置に集光させることにより、所望の位置に穴を開けることができる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 レーザ加工に用いるパルスレーザビームのパルスの繰り返し周波数が20kHz、出力が2.5Wである場合、約40パルスで、樹脂基板に深さ40μmの穴を開けることができる。このとき、1つの穴開けに要する時間は2msである。1つの穴を開けた後、ガルバノスキャナを動作させ、次の穴の位置までレーザビームの照射位置を移動させるのに必要とされる時間は、例えば約1msである。ガルバノスキャナが作動している時間中に放射されたレーザパルスは、穴開けに利用されない。 【0004】 本発明の目的は、レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを有効に利用することが可能なレーザ加工装置及び加工方法を提供することである。 【0005】 【課題を解決するための手段】 本発明の一観点によると、パルスレーザビームを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたパルスレーザビームの、時間軸上に配列した複数のパルスを、外部から与えられる制御信号に基づいて、各パルスが第1の光軸及び第2の光軸のいずれか一方の光軸に沿って伝搬するように振り分ける振り分け光学系と、前記第1の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第1の走査光学系と、前記第2の光軸に沿って伝搬するパルスレーザビームを、加工対象物上に導くと共に、外部から与えられる信号に基づいて駆動されることにより、加工対象物上のある領域内で、パルスレーザビームの照射位置を移動させる第2の走査光学系と、前記パルスレーザビームの複数のパルスが、前記第1の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に照射されている期間に、前記第2の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておき、前記パルスレーザビームの複数のパルスが、前記第2の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に照射されている期間に、前記第1の走査光学系を駆動してビームの照射位置を移動させておく制御手段とを有する多軸レーザ加工装置が提供される。 【0006】 本発明の他の観点によると、レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、第1の走査光学系に入射させ、該第1の走査光学系を通して加工対象物上の同一箇所に該パルスレーザビームの複数のパルスを照射して加工する工程と、前記第1の走査光学系を通してパルスレーザビームの複数のパルスを加工対象物上の同一箇所に照射している期間に、第2の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射される加工対象物上の位置が移動するように該第2の走査光学系を制御する工程と、前記レーザ光源から放射されたパルスレーザビームを、前記第2の走査光学系に入射させ、前記加工対象物上の同一箇所に該パルスレーザビームの複数のパルスを照射して加工する工程と、前記第2の走査光学系を通してパルスレーザビームの複数のパルスを加工対象物上の同一箇所に照射している期間に、前記第1の走査光学系を通るパルスレーザビームが照射する加工対象物上の位置が移動するように該第1の走査光学系を制御する工程とを含むレーザ加工方法が提供される。 【0007】 一方の走査光学系を制御している期間中に、他方の走査光学系を通してパルスレーザビームが加工対象物上に照射される。このため、レーザ光源から出射したパルスレーザビームを有効に利用することができる。 【0008】 【発明の実施の形態】 図1(A)に、本発明の実施例によるレーザ加工装置の概略図を示す。レーザ光源1が、パルスレーザビーム2を放射する。レーザ光源1は、例えばNd:YAGレーザ発振器と非線形光学素子とを含んで構成される。パルスレーザビーム2は、例えばNd:YAGレーザの第3高調波(波長355nm)である。 【0009】 パルスレーザビーム2が、振り分け光学系10に入射する。振り分け光学系10は、半波長板11、ポッケルス効果を示す電気光学素子12、偏光板13を含んで構成される。半波長板11は、レーザ光源1から放射されたパルスレーザビーム2を、偏光板13に対してP波となるような直線偏光にする。このP波が電気光学素子12に入射する。 【0010】 電気光学素子12は、制御装置40から送出される制御信号sig0に基づいて、パルスレーザビームの偏光軸を旋回させる。電気光学素子12が電圧無印加状態にされている時、入射したP波がそのまま出射される。電気光学素子12が電圧印加状態にされている時、電気光学素子12は、P波の偏光面を90度旋回させる。これにより、電気光学素子12から出射するパルスレーザビームは、偏光板13に対してS波となる。 【0011】 偏光板13は、P波をそのまま透過させ、S波を反射する。偏光板13を透過したP波は、光軸20に沿って伝搬するパルスレーザビームpl1となる。偏光板13で反射したS波は、他の光軸30に沿って伝搬するパルスレーザビームpl2となる。光軸20に沿って伝搬するパルスレーザビームpl1は、第1の走査光学系17に入射し、他の光軸30に沿って伝搬するパルスレーザビームpl2は、第2の走査光学系18に入射する。 【0012】 第1の走査光学系17に入射したパルスレーザビームpl1は、折り返しミラー21及び22で反射し、ハーフミラー23に入射する。ハーフミラー23は、入射したパルスレーザビームを、相互に等しいエネルギを有する2本のレーザビームに分割する。ハーフミラー23で反射したパルスレーザビームは、ガルバノスキャナ25に入射する。ハーフミラー23を透過したパルスレーザビームは、折り返しミラー24で反射し、他のガルバノスキャナ26に入射する。ガルバノスキャナ25及び26は、それぞれ制御装置40から送信される駆動信号sig11及びsig12により駆動される。 【0013】 ガルバノスキャナ25及び26を通過したレーザビームは、それぞれfθレンズ27及び28により樹脂基板51の表面上に集光される。樹脂基板51は、基板載霞台50の上に固定されている。樹脂基板51の、パルスレーザビームが集光された位置に穴が形成される。 【0014】 第2の走査光学系18に入射したパルスレーザビームpl2は、折り返しミラー31で反射し、ハーフミラー32に入射する。ハーフミラー32は、入射したパルスレーザビームを、相互に等しいエネルギを有する2本のレーザビームに分割する。ハーフミラー32で反射したパルスレーザビームは、ガルバノスキャナ34に入射する。ハーフミラー32を透過したパルスレーザビームは、折り返しミラー33で反射し、他のガルバノスキャナ35に入射する。ガルバノスキャナ36及び37は、それぞれ制御装置40から送信される駆動信号sig21及びsig22により駆動される。 【0015】 ガルバノスキャナ34及び35を通過したレーザビームは、それぞれfθレンズ36及び37により樹脂基板53の表面上に集光される。樹脂基板53は、基板載置台52の上に固定されている。パルスレーザビームが集光された位置に穴が形成される。 【0016】 次に、図2を参照して、振り分け光学系10及びガルバノスキャナ34、35、25、及び24の制御方法について説明する。 【0017】 図2は、制御信号sig0、駆動信号sig11、sig12、sig21、sig22、及びパルスレーザビームpl1、pl2のタイミングチャートを示す。制御信号sig0に基づき、電気光学素子12が電圧無印加状態になっている第1の期間T1は、図1(B)に示した電気光学素子12を通過したパルスレーザビームがP波であるため、光軸20に沿ったパルスレーザビームpl1が出力され、光軸30に沿ったパルスレーザビームpl2は出力されない。このため、第1の走査光学系17のガルバノスキャナ25及び26を通過したパルスレーザビームにより穴開けが行われる。 【0018】 第1の期間T1中に、制御装置40は、第2の走査光学系18のガルバノスキャナ34及び35に対して、それぞれ駆動信号sig21及びsig22を送信する。これにより、ガルバノスキャナ34及び35は、パルスレーザビームを樹脂基板51上の所望の位置に集光するように制御される。 【0019】 第1の期間T1の後の第2の期間T2では、制御信号sig0により、電気光学素子12が電圧印加状態になる。このため、第2の期間T2中は、パルスレーザビームpl1が出力されず、パルスレーザビームpl2が出力される。この前の第1の期間T1中に、ガルバノスキャナ34及び35が駆動され、パルスレーザビームを集光すべき点が調整されているため、第2の期間T2中に、所望の位置に穴開けを行うことができる。 【0020】 さらに、第2の期間T2中に、制御装置40は、第1の走査光学系17のガルバノスキャナ27及び28に対して、それぞれ駆動信号sig11及びsig12を送信する。これにより、ガルバノスキャナ27及び28は、パルスレーザビームを樹脂基板51上の所望の位置に集光するように制御される。 【0021】 第1の期間T1と第2の期間T2とを交互に繰り返すことにより、樹脂基板51の所望の複数の位置に穴開けを行うことができる。 【0022】 上記実施例では、第1の走査光学系17のガルバノスキャナ25及び26を駆動している第2の期間T2中に、第2の走査光学系18を通過したパルスレーザビームにより穴開けが行われる。また、第2の走査光学系18のガルバノスキャナ34及び35を駆動している第1の期間T1中に、第1の走査光学系17を通過したパルスレーザビームにより穴開けが行われる。このため、レーザ光源1から出射されたパルスレーザビームのすべてのパルスが、穴開け加工に有効に利用される。 【0023】 パルスの繰り返し周波数が20kHz、パワーが2.5Wのパルスレーザビームで、樹脂基板に深さ40μmの穴を開ける場合を考える。樹脂基板上の一箇所に40パルスを照射することにより、深さ40μmの穴を開けることができる。すなわち、1つの穴の加工時間は2msである。ガルバノスキャナを駆動して、パルスレーザビームの照射点を移動させるために、約1msが必要とされる。このため、一つの走査光学系のみを用いて複数の穴を開ける場合には、一つの穴を開けるために必要とされる時間が、ガルバノスキャナの駆動時間を含めて3msになる。 【0024】 上記実施例において、第1の期間T1及び第2の期間T2を2msに設定する。このとき、第1の期間T1に1個の穴を開け、第2の期間T2にも1個の穴を開けることができる。すなわち、4msで2個の穴を開けることができる。1個あたりに必要とされる加工時間は2msであり、ガルバノスキャナの駆動時間を無視できることがわかる。 【0025】 上記実施例では、振り分け光学系10が、時間軸上に配列した複数のパルスを2つの光軸に振り分ける。この振り分けによって、1パルス当たりのエネルギは変化しない。さらに、ハーフミラー23及び32が、1つのパルスを2つの光軸に分割する。この光軸分割によって、1パルス当たりのエネルギは約半分になる。 【0026】 樹脂基板は、1パルス当たりのエネルギは低くても穴開けを行うことができる。このため、ハーフミラーでパルスレーザビームを分割しても、穴開けに必要なエネルギを確保することができる。また、銅箔等に穴開けを行う場合には、1パルス当たりのエネルギを高くしなければならない。ハーフミラーでレーザビームを分割することによって穴開けに必要なエネルギが確保できなくなる場合には、ハーフミラーによるビームの分割を行わないようにすればよい。 【0027】 また、上記実施例では、レーザ光源としてNd:YAGレーザを用い、その第3高調波を加工に利用したが、加工対象物に穴開けできるその他のレーザ光源を用いてもよい。例えば、Nd:YAGレーザやNd:YLFレーザの基本波やその高調波を用いてもよいし、炭酸ガスレーザを用いてもよい。 【0028】 以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。 【0029】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明によると、少なくとも2つの走査光学系を用い、一方の走査光学系によるレーザ照射位置を移動させている期間に、他方の走査光学系を通過したパルスレーザビームで加工を行う。このため、一方の走査光学系によるレーザ照射位置を移動させている期間に放射されたパルスレーザビームも有効に利用することができる。1つの走査光学系を用いて加工する場合には利用されていなかったパルスレーザビームを利用することができるため、スループットの向上を図ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】実施例によるレーザ加工装置の概略図である。 【図2】実施例によるレーザ加工装置を用いてレーザ加工を行う際のパルスレーザビーム及び各種制御信号のタイミングチャートである。 【符号の説明】 1 レーザ光源 2 パルスレーザビーム 10 振り分け光学系 11 半波長板 12 電気光学素子 13 偏光板 17 第1の走査光学系 18 第2の走査光学系 20、30 光軸 21、22、24、31、33 折り返しミラー 23、32 ハーフミラー 25、26、34、35 ガルバノスキャナ 27、28、36、37 fθレンズ 40 制御装置 50、52 基板保持台 51、53 樹脂基板 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-06-27 |
出願番号 | 特願2000-193843(P2000-193843) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(B23K)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 加藤 昌人 |
特許庁審判長 |
前田 幸雄 |
特許庁審判官 |
豊原 邦雄 鈴木 孝幸 |
登録日 | 2003-08-22 |
登録番号 | 特許第3463281号(P3463281) |
権利者 | 住友重機械工業株式会社 |
発明の名称 | 多軸レーザ加工装置及びレーザ加工方法 |
代理人 | 来山 幹雄 |
代理人 | 高橋 敬四郎 |
代理人 | 高橋 敬四郎 |
代理人 | 来山 幹雄 |