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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1149841
異議申立番号 異議2003-72948  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-08-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-03 
確定日 2006-10-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第3413134号「食物繊維摂取用組成物」の請求項1ないし6に係る特許についてした平成18年2月27日付けの「特許第3413134号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。」という結論の特許異議の申立てについての決定(以下、「取消決定」という。)に対し、別途訂正審判(訂正2006-39108号)による訂正が確定した後、知的財産高等裁判所において、取消決定を取り消すとの判決(平成18年(行ケ)第10154号、平成18年9月12日判決言渡)があったので、更に審理の上、次のとおり決定する。 
結論 特許第3413134号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3413134号は、平成11年10月20日に特許出願され、平成15年3月28日にその特許権の設定登録がされ、その後異議申立人不二製油株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月27日に訂正請求(後日取下げ)がされた後、再度の取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年11月1日に訂正請求書が提出され、平成18年2月27日付けで、「特許第3413134号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。」との異議の決定がされた。
その後、平成18年4月7日付けで当該取消決定の取消を求める訴え(以下、「取消訴訟」という。)が、知的財産高等裁判所に提起され(平成18年(行ケ)第10154号)、該取消訴訟が提起された日から起算して90日以内である平成18年6月22日付け審判請求書により本件特許第3413134号に対する訂正審判(訂正審判2006-39108号)が請求され、その後、平成18年7月26日に「特許第3413134号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。」との審決がされ、それが確定し、平成18年9月12日に前記取消訴訟について、「特許庁が異議2003-72948号事件について平成18年2月27日にした決定を取り消す。」との判決がされたものである。

2.本件発明
訂正審判2006-39108号の審決が確定したので、本件特許第3413134号の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1ないし5」という。)は、訂正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】低分子化アルギン酸Na及びポリデキストロースから選ばれる5重量%水溶液の室温における粘度が20mPa・s以下である水溶性かつ腸内細菌に資化されない難発酵性食物繊維と低分子化ペクチン、低分子化グアーガム、アラビアガム及びプルランから選ばれる5重量%水溶液の室温における粘度が20mPa・s以下である水溶性かつ腸内細菌に資化される発酵性食物繊維からなる食物繊維を全体の1?50重量%含有し、該水溶性かつ腸内細菌に資化されない難発酵性食物繊維1重量部に対して水溶性かつ腸内細菌に資化される発酵性食物繊維を0.1?3重量部含む食物繊維摂取用組成物。
【請求項2】前記水溶性かつ腸内細菌に資化されない難発酵性食物繊維が低分子化アルギン酸Na であり、前記水溶性かつ腸内細菌に資化される発酵性食物繊維が低分子化グアーガムである請求項1記載の食物繊維摂取用組成物。
【請求項3】形態が食品である請求項1又は2のいずれか1項記載の食物繊維摂取用組成物。
【請求項4】形態が飲料である請求項1?3のいずれか1項記載の食物繊維摂取用組成物。
【請求項5】便通改善用食品である請求項1?4のいずれか1項記載の食物繊維摂取用組成物。」

3.特許異議申立ての理由の概要
異議申立人は、甲第1号証(国際公開WO88/08257号パンフレット)、甲第2号証(特開平3-272655号公報)及び甲第3号証(特許第2779616号公報)を提出して、概略すると下記の主張をするものである。
(1)特許査定時の請求項1ないし6に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当する。
(2)特許査定時の請求項1ないし6に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、同法第36条第4項に該当し、かつ特許請求の範囲に記載の発明の範囲が不明確であるため、同法第36条第6項第2号にも該当する。

4.各甲号証の記載事項
甲第1号証(国際公開WO88/08257号パンフレット)には、下記(a)ないし(e)の事項が記載されている。
(a)「食物繊維を全体の10?50重量%含有し、該食物繊維は難水溶性食物繊維と水溶性食物繊維とからなり、難水溶性食物繊維1重量に対して水溶性食物繊維2?30重量部であり、難水溶性食物繊維の10重量%以上はヘミセルロースであることを特徴とする便通改善食品。」(請求の範囲)
(b)「本発明は便通改善食品に関し、さらに詳しくは、難水溶性食物繊維と水溶性食物繊維を特定の割合で含有する便通改善食品に関する。」(1頁6行?8行)
(c)「近年、便通改善や成人病の予防に有効な食物繊維を配合した食品が各種市販されている。これらの食品中に配合された食物繊維は、難水溶性食物繊維を主体とするものである。難水溶性食物繊維は、その大部分が消化吸収をうけずに消化管を素通りするため糞便量を増加させて、その結果直腸を物理的に刺激して便意を強め、また便をソフト化して便通を改善化することができる。従って直腸性の便秘に対して有効である。しかし便秘は、上記の直腸性のものと結腸性のものとの複合型であることが多い。蠕動運動が低下する結腸性(弛緩性)の便秘にはむしろ水溶性食物繊維のほうが有効である。これは水溶性の食物繊維は、人間の消化酵素によっては分解されないが、消化管下部において腸内細菌によって加水分解され、分解産物である有機酸が消化管の蠕動運動を活発化し、その結果排便を促進することによるものである。従って便秘を有効に予防および治療するためには、難水溶性食物繊維と水溶性食物繊維を同時に摂取することが望ましい。」(1頁12行?2頁5行)
(d)「本発明において用いられる難水溶性食物繊維は、純粋なセルロースではなく、10重量%以上好ましくは20重量%以上がヘミセルロースであるものとする。例えばとうもろこし、キャベツ、にんじん等の食物繊維はヘミセルロースを20重量%以上含有するので特に好ましい。」(4頁18行?22行)
(e)「水溶性食物繊維は、・・・〔中略〕・・・その結果として排便を促進する。従って結腸性便秘に対して有効である。ポリデキストロース、プルラン、アラビアガム、タマリンドガム、ペクチン、グアガム、グルコマンナン等がこのタイプに属する。」(5頁1行?7行)

甲第2号証(特開平3-272655号公報)には、下記(f)ないし(g)の事項が記載されている。
(f)「包装米飯において、米飯がポリデキストロース、水溶性ヘミセルロース、および穀類ぬか薄片状摩砕物からなる群から選ばれた1種以上の食物繊維ならびにアラビアガムを含有することを特徴とする水溶性食物繊維強化包装米飯。」(請求項1)
(g)「そこで本発明の目的は、玄米と同程度に食物繊維含有量が強化されており、しかも食感、外観等においても普通の米飯と同等である包装米飯を提供し、確実かつ容易に適量の食物繊維を毎日摂取できるようにすることにある。」(1頁右下欄末行?2頁左上欄4行)

甲第3号証(特許第2779616号公報)には、下記(h)ないし(q)の事項が記載されている。
(h)「【請求項1】(1)平均分子量10万以下のアルギン酸、アルギン酸塩またはアルギン酸エステル、および、(2)ポリデキストロース、難消化性デキストリン、大豆繊維およびセルロースからなる群から選択される1以上の食物繊維を含有し、成分(1)と成分(2)の重量比が0.5?30:100であることを特徴とする食物繊維含有組成物。」(請求項1)
(i)「これらの従来技術の問題点を考慮して、本発明は、より優れた便通改善作用を発揮することができる食物繊維含有組成物を提供することを目的とした。また、本発明は、優れた便通改善効果を有するとともに、摂取後の腹持ちが非常に良い組成物を提供することをも目的とした。」(2頁右欄10行?15行)
(j)「上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、低分子のアルギン酸塩を他の食物繊維と一定の重量比で組み合わせることによって、便通改善作用と腹持ち作用が飛躍的に増強することを見出して本発明を完成した。」(2頁右欄17行?21行)
(k)「本発明で使用するアルギン酸類の平均分子量は10万以下である。・・・本発明で使用するアルギン酸類は、1%水溶液にした場合の粘度が1.5?30cp(20℃)の範囲内にあるものが好ましく、1.5?10cpの範囲内にあるものがより好ましい。」(3頁左欄3行?10行)
(l)「低分子アルギン酸塩は、このようにして調製した低分子アルギン酸に塩基を作用させることによって得ることができる。本発明で使用するアルギン酸塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩であるのが好ましいが、これら以外の塩であっても使用することができる。」(3頁左欄27行?31行)
(m)「大豆繊維には、水溶性大豆繊維と非水溶性大豆繊維があるが、いずれを使用してもよい。・・・商業的に入手しうる水溶性大豆繊維として、ソヤファイブ(不二製油製)を例示することができる。」(3頁右欄18行?24行)
(n)「ポリデキストロース、難消化性デキストリン、大豆繊維、セルロースは、いずれか1種のみを用いてもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。・・・・・これら4種以外の繊維は、アルギン酸類と組み合わせても、相乗的な便通改善効果を期待することはできない。」(3頁37行?46行)
(o)「本発明の組成物中における低分子アルギン酸類とポリデキストロースなどのその他の食物繊維の重量比は、0.5?30:100の範囲内に設定する。低分子アルギン酸類の含有量が0.5よりも少ないか、30よりも多い場合には、ポリデキストロースなどの他の食物繊維と組み合わせた場合の相乗的な便通改善効果が期待できない。」(3頁右欄下4行?4頁左上欄3行)
(p)「低分子アルギン酸類とポリデキストロースなどのその他の食物繊維をあわせた食物繊維の総含有量は、組成物を飲料として使用する場合には、2?40重量%の範囲内に設定するのが好ましく、3?30重量%の範囲内に設定するのがより好ましい。」(4頁左欄6行?10行)
(q)「(1)平均分子量10万以下のアルギン酸、アルギン酸塩またはアルギン酸エステルと、(2)ポリデキストロース、難消化性デキストリン、大豆繊維およびセルロースからなる群から選択される1以上の食物繊維を、成分(1)と成分(2)の重量比を0.5?30:100で組み合わせて摂取することによって、排便量を顕著に増加させ、腹持ちを良くすることができる。このため、本発明の組成物はダイエット飲料などの機能性食品、便通改善薬として極めて有用である。」(6頁左欄12行?右欄5行)

5.当審の判断
(1)29条1項3号について
(本件発明1について)
甲第1号証には、難水溶性食物繊維と水溶性食物繊維とからなる食物繊維を含有する便通改善組成物が記載され、さらに難水溶性食物繊維としてヘミセルロース、キャベツ、にんじん等の食物繊維を用いることができること、及び水溶性食物繊維としてポリデキストロース、プルラン、アラビアガム、タマリンドガム、ペクチン、グアガム、グルコマンナン等を用いることができることが記載されているが、本件発明1において特定する「低分子化アルギン酸Na及びポリデキストロースから選ばれる水溶性かつ腸内細菌に資化されない難発酵性食物繊維と低分子化ペクチン、低分子化グアーガム、アラビアガム及びプルランから選ばれる水溶性かつ腸内細菌に資化される発酵性食物繊維からなる食物繊維を含有する食物繊維摂取用組成物」については何も記載されていない。
また、甲第2号証には、ポリデキストロース、水溶性ヘミセルロース、および穀類ぬか薄片状摩砕物からなる群から選ばれた1種以上の食物繊維ならびにアラビアガムを含有する水溶性食物繊維強化包装米飯が記載され、食物繊維として、ポリデキストロースとアラビアガムを組み合わせて用いることも記載されているが、甲第2号証を精査すると、前記水溶性食物繊維は、あくまでも米飯の食感、外観等を普通の米飯と同等にするとの目的で使用されるものである。
すなわち、甲第2号証には「上記3種類の食物繊維のみが、かつそれらをアラビアガムと併用したときだけ、本発明の目的達成を可能にする好結果を与えることが確認された。」(2頁左上欄12?14行)と記載され、この記載によれば、甲第2号証に記載の発明は、「米飯」と「3種類の食物繊維とアラビアガム」とが密接不可分のものとして、「食物繊維強化包装米飯」に係る発明を成立させている。
ところで、「四訂食品成分表 1994」(科学技術庁資源調査会編、女子栄養大学出版部)には、米飯に含まれる食物繊維は、難水溶性であることが記載され(56頁?57頁の“めし”の欄参照。)、この記載に従えば、甲第2号証に記載の「食物繊維強化包装米飯」には、水溶性食物繊維と難水溶性食物繊維の両方が含まれていることになるが、これはまさに、本件明細書の段落0003に、難水溶性食物繊維と水溶性食物繊維を併用した場合の技術的課題を記載している従来技術と同じレベルのものである。
甲第2号証に記載の「食物繊維強化包装米飯」は、米飯に含まれる難水溶性食物繊維と食物繊維を強化する目的で添加する水溶性食物繊維とを含有する食物繊維摂取用組成物というべきものであり、本件発明1に係る上記2種の特定の水溶性食物繊維を組み合わせてなる食物繊維摂取用組成物が刊行物2に記載されているということはできない。
以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証或いは甲第2号証に記載された発明であるということはできない。

(本件発明2ないし5について)
本件発明2ないし5は、いずれも請求項1を引用し、それを限定する発明であるから、上記と同様の理由により、本件発明2ないし5は、甲第1号証或いは甲第2号証に記載された発明であるということはできない。

(2)29条2項について
(本件発明1について)
訂正された明細書の記載からみて、便通改善食品として、複数の食物繊維(例えば、難水溶性食物繊維と水溶性食物繊維)を配合したものは従来から知られていたが、難水溶性食物繊維では、同時に共存する発酵性の食物繊維の影響を受け易く、目的とする保水力を発現できず、また、十分な糞便嵩増し作用が得られず、その結果高い便通改善作用が得られないという技術的課題があったところ、本件発明1は、水溶性食物繊維を使用し、該水溶性食物繊維を便の水分保持(物理的刺激)と短鎖脂肪酸の生成(化学的刺激)という機能に分離して、前者に分類される低分子化アルギン酸Na及びポリデキストロースから選ばれる難発酵性食物繊維と、後者に分類される低分子化ペクチン、低分子化グアーガム、アラビアガム及びプルランから選ばれる発酵性食物繊維の2種を併用することにより上記技術的課題を解決したものである。
これに対して、甲第1号証には、難水溶性食物繊維と水溶性食物繊維とからなる食物繊維を含有する便通改善組成物が記載されているが、該便通改善組成物は訂正された明細書に記載の上記従来技術に相当するものである。
甲第1号証には、水溶性食物繊維の上記2つの機能に着目して水溶性食物繊維を組み合わせて用いるという技術的思想の開示はなく、低分子化アルギン酸Na及びポリデキストロースから選ばれる水溶性かつ腸内細菌に資化されない難発酵性食物繊維と、低分子化ペクチン、低分子化グアーガム、アラビアガム及びプルランから選ばれる水溶性かつ腸内細菌に資化される発酵性食物繊維の2種を併用すること、及びそれに基づく「便通回数だけでなく膨満感や残便感等を顕著に改善する」(訂正明細書段落0024)という効果を教える記載は何もない。
また、甲第2号証には、ポリデキストロース、水溶性ヘミセルロース、および穀類ぬか薄片状摩砕物からなる群から選ばれた1種以上の食物繊維ならびにアラビアガムを含有する食物繊維強化包装米飯が記載され、食物繊維として、ポリデキストロースとアラビアガムを組み合わせて使用することが記載されているが、先に述べたとおり、甲第2号証に記載の「食物繊維強化包装米飯」は、米飯に含まれる難水溶性食物繊維と食物繊維を強化する目的で添加する水溶性食物繊維とを含有する食物繊維摂取用組成物というべきものである。
甲第2号証には、水溶性食物繊維の上記2つの機能に着目して食物繊維を組み合わせて用いるという技術的思想の開示はなく、低分子化アルギン酸Na及びポリデキストロースから選ばれる水溶性かつ腸内細菌に資化されない難発酵性食物繊維と、低分子化ペクチン、低分子化グアーガム、アラビアガム及びプルランから選ばれる水溶性かつ腸内細菌に資化される発酵性食物繊維の2種を併用すること、及びそれに基づく「便通回数だけでなく膨満感や残便感等を顕著に改善する」(訂正明細書段落0024)という効果を教える記載は何もない。
さらに、甲第3号証には、低分子化アルギン酸塩とポリデキストロース、難消化性デキストリン、大豆繊維およびセルロースからなる群から選択される1以上の食物繊維を含有してなる食物繊維含有組成物が記載され、上記した2種の食物繊維を配合することにより、便通改善作用が向上することが記載されているが、水溶性食物繊維の上記2つの機能に着目して水溶性食物繊維を組み合わせるという技術的思想の開示はなく、低分子化アルギン酸Na及びポリデキストロースから選ばれる水溶性かつ腸内細菌に資化されない難発酵性食物繊維と、低分子化ペクチン、低分子化グアーガム、アラビアガム及びプルランから選ばれる水溶性かつ腸内細菌に資化される発酵性食物繊維の2種を併用すること、及びそれに基づく「便通回数だけでなく膨満感や残便感等を顕著に改善する」(訂正明細書段落0024)という効果を教える記載は何もない。
そして、本件発明1は、訂正後の請求項1に記載の事項を発明特定事項とすることにより、「便通回数だけでなく膨満感や残便感等も顕著に改善し、便通改善用食品として有用である。」(訂正明細書段落0024)という効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(本件発明2ないし5について)
本件発明2ないし5は、いずれも訂正後の請求項1を引用する発明であるから、上記と同様の理由により、本件発明2ないし5は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(3)36条4項、6項について
異議申立人は、特許査定時の明細書に記載不備がある理由として、
(i) 請求項1ないし3に記載の「難発酵性」という用語が不明確である、
(ii)低分子化アルギン酸Naと低分子化グアーガム、低分子化アルギン酸Naとヘミセルロースの2つの組み合わせのみが記載されている実施例から請求項1?6に記載するような広い範囲を導き出すことは不当な拡張である、
(iii) 明細書の実施例2には「水溶性かつ発酵性食物繊維・・・ヘミセルロース(5重量%水溶液の粘度=約16mPa)」と記載されているが、実施しようとしてもかかる水溶性ヘミセルロースの具体的な製法も商品名も不明で、その分子量がどの程度であるのか、またこれが低分子化したものなのか、全く記載がなく、当業者が実施できるようには到底記載されていない、
旨主張しているので、以下検討する。
(i)については、上記訂正審判の請求により、請求項1ないし3に記載の
「難発酵性食物繊維」が「腸内細菌に資化されない難発酵性食物繊維」に訂正された結果、「難発酵性食物繊維」の意味するところは明確となり、もはや異議申立人が主張する記載不備は存在しない。
(ii)については、本件発明1ないし5の本質は、訂正された明細書に記載の如く、「水溶性かつ腸内細菌に資化されない難発酵性食物繊維」と「水溶性かつ腸内細菌に資化される発酵性食物繊維」を組み合わせて配合することにあり、その作用は、訂正された明細書の段落0004に記載の如く、「水溶性かつ腸内細菌に資化されない難発酵性食物繊維は、その保水性により効果的な糞便嵩増し作用を示し、腸管へ物理的刺激をまた、水溶性かつ発酵性食物繊維は腸内細菌に利用されることで短鎖脂肪酸を生成し、腸管へ化学的刺激を与えることで、両面から腸管の蠕動運動が促進され、高い便通改善作用が得られる」というものである。
そして、本件発明1に係る「ポリデキストロース」は、低分子化アルギン酸Naと同様に水溶性かつ腸内細菌に資化されない難発酵性食物繊維であり、上記した難発酵性食物繊維としての作用を示すことは当業者ならば容易に予想できることであり、同様に本件発明1に係る「低分子化ペクチン、アラビアガム及びプルラン」は、低分子化グアーガムと同様に水溶性かつ腸内細菌に資化される発酵性食物繊維であり、上記した発酵性食物繊維としての作用を示すことも当業者ならば容易に予想できることである。
そうだとすると、実施例に記載の低分子化アルギン酸Naと低分子化グアーガムの組み合わせ以外の食物繊維の組み合わせにおいても、実施例と同等の作用効果が奏されることは当業者ならば容易に予測できることであり、異議申立人が主張するような記載不備はない。
(iii)については、上記訂正審判の請求により、特許請求の範囲の記載から「ヘミセルロース」は削除されたので、もはや異議申立人が主張する記載不備は存在しない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2006-09-28 
出願番号 特願平11-298103
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 113- Y (A23L)
P 1 651・ 536- Y (A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田村 明照  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 鵜飼 健
長井 啓子
登録日 2003-03-28 
登録番号 特許第3413134号(P3413134)
権利者 花王株式会社
発明の名称 食物繊維摂取用組成物  
代理人 高野 登志雄  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 有賀 三幸  
代理人 村田 正樹  
代理人 的場 ひろみ  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 山本 博人  
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