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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  H01L
管理番号 1150379
審判番号 無効2005-80314  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-06 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-10-31 
確定日 2006-12-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3554640号発明「半導体チップ装着用パッケージ、半導体装置およびその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3554640号の請求項6、7、8、10に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3554640号の請求項1ないし5、9、11、12に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その3分の2を請求人の負担とし、3分の1を被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
(1) 本件特許第3554640号(以下「本件特許」という。)に係る主な手続は、以下のとおりである。
平成8年10月9日 特許出願
平成16年5月14日 登録設定
平成17年10月31日 無効審判請求
平成18年1月23日 答弁書と訂正請求(1回目)提出
平成18年2月16日 無効理由通知
平成18年3月22日 訂正請求(2回目)、1回目の訂正請求の取 り下げ、意見書提出
平成18年5月2日 参加申請書提出
平成18年5月8日 弁駁書提出
平成18年5月25日 訂正拒絶理由通知
平成18年6月27日 意見書、補正書提出
平成18年7月7日 参加決定
平成18年8月16日 陳述要領書提出(請求人)
平成18年8月29日 陳述要領書提出(被請求人)
平成18年9月1日 請求人審判請求取下書提出
平成18年9月21日 口頭審理、参加人側より陳述要領書その2提 出

第2.訂正の適否
(1)本件は、平成18年1月23日付で訂正請求(1回目)がなされ、平成18年3月22日付で訂正請求(2回目)と平成18年1月23日付の訂正請求の取り下げがなされ、平成18年6月27日付で訂正拒絶理由に対する補正書が提出されたものであるが、
平成18年6月27日付補正は、訂正事項の削除を行うものであるから、この補正は認められる。よって、補正後の訂正について検討する。

(2)訂正の内容
訂正事項a.
特許請求の範囲の請求項1の記載において
「 前記リードは、導電性金属板を切断・屈曲して得られるとともに、その一端部が前記中空部に対して露出され、その途中部が前記樹脂本体中に埋設され、」を、
「 前記リードは、導電性金属板を切断・屈曲して得られるとともに、前記内底面と平行とされると共に前記樹脂本体に埋設された一端部が、その自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみを該中空部に対し露出させており、その途中部が前記一端部に対して該一端部と他端部とがオーバーラップしないように傾斜されると共に前記樹脂本体中に埋設され、」と訂正する。

訂正事項b.
特許請求の範囲の請求項12の記載において
「あらかじめ屈折加工したリードフレームを金型上に載置し、
該金型内に熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を注入し、前記樹脂内に形成された中空部の底側にあって固体撮像素子である半導体チップを装着するための内底面を前記樹脂内に形成し、かつ当該中空部内に前記リードフレームの一端部が露出し、」を、
「あらかじめ屈折加工されることで、一端部と他端部とがオーバーラップしないように該一端部に対し傾斜した途中部が形成されたリードフレームを金型上に載置し、
該金型内に熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を注入し、前記樹脂内に形成された中空部の底側にあって固体撮像素子である半導体チップを装着するための内底面を前記樹脂内に形成し、かつ当該中空部内に前記内底面と平行とされた前記リードフレームの一端部の自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみが露出し、」と訂正する。

訂正事項c.
明細書の第13段落の記載において
「【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記のような点を解消すべく以下のような手段を講じた。
すなわち第1に、半導体チップを装着するための内底面を有する中空部と、当該中空部に装着される半導体チップとパッケージ外部との電気的導通を実現するリードと、パッケージ本体を構成する樹脂本体とからなる半導体チップ装着用パッケージにおいて、前記リードを導電性金属板を切断・屈曲して得るとともに、その一端部を前記中空部に対して露出し、途中部を前記樹脂本体中に埋設し、他端部を前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に外部に露出させた構造とした。」を
「【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記のような点を解消すべく以下のような手段を講じた。
すなわち第1に、半導体チップを装着するための内底面を有する中空部と、当該中空部に装着される半導体チップとパッケージ外部との電気的導通を実現するリードと、パッケージ本体を構成する樹脂本体とからなる半導体チップ装着用パッケージにおいて、前記リードを導電性金属板を切断・屈曲して得るとともに、前記内底面と平行とされると共に前記樹脂本体に埋設された一端部の自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみを前記中空部に対し露出させ、途中部を前記一端部に対して該一端部と他端部とがオーバーラップしないように傾斜されると共に前記樹脂本体中に埋設し、他端部を前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に外部に露出させた構造とした。」と訂正する。

訂正事項d.
明細書の第23段落の記載において
「【0023】
これにより、多様な実装形態が実現できる。
第5に、半導体パッケージの製造において、あらかじめ屈折加工したリードフレームを金型上に載置し、該金型内に熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を注入して中空部を有し、かつ当該中空部内に前記リードフレームの一端部が露出し、その他端部が外部に露出する樹脂本体を形成し、前記樹脂本体の一面上においてその周縁から外方に突出されるリードフレームの他端部の先端を切断除去するようにした。」を
「【0023】
これにより、多様な実装形態が実現できる。
第5に、半導体パッケージの製造において、あらかじめ屈折加工されることで、一端部と他端部との間に該一端部と他端部とがオーバーラップしないように傾斜した途中部が形成されたリードフレームを金型上に載置し、該金型内に熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を注入し、前記樹脂内に形成された中空部の底側にあって固体撮像素子である半導体チップを装着するための内底面を前記樹脂内に形成し、かつ当該中空部内に前記内底面と平行とされた前記リードフレームの一端部の自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみが露出し、その他端部が外部に露出する樹脂本体を形成し、前記樹脂本体の一面上においてその周縁から外方に突出されるリードフレームの他端部の先端を切断除去するようにした。」と訂正する。

(3)訂正の適否に対する検討
訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1の減縮を目的として、リードの一端部及び途中部の構造を限定するものである。
次に、この限定が新規事項に該当しないかを検討する。
リードの一端部が、「前記内底面と平行とされ」る構成については、本件特許明細書、第28段落において「このとき外側のリードフレーム11の折曲に際しては、図6の右側に示したようにアウターリード13がインナーリード12と略平行となるように折曲する」と記載されており、次の図7において、左右のアウターリード間の底面がアウターリードと平行と認められる。図7においてパッケージの底面と開口部の内定面も平行となっており、パッケージの底面と開口部の内定面とに角度をつける積極的な理由もないので、リードの一端部は内底面と平行であると認められる。
また、リードの一端部が樹脂本体に埋設され、該リードの一端部が自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみを中空部に対して露出させる構成については図7に記載されている。
さらには、第27段落において、「リードフレーム11は、・・・インナーリード12の外方において同図の斜め下方向に一旦折曲され、さらにその外方で同図側外方に折曲された形状となっている。」と記載されており、図7には「リードの途中部が前記一端部に対して該一端部と他端部とがオーバーラップしないように傾斜されると共に前記樹脂本体中に埋設され」る構成が記載されている。
よって、当該訂正は特許請求の範囲の請求項1を減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項bは、各々特許請求の範囲の請求項12の減縮を目的として、半導体パッケージの製造方法に用いるリードの一端部及び途中部の構造を限定するものである。当該訂正は、訂正事項aにおいて検討したのと同様の理由により、新規事項を追加するものではない。したがって、当該訂正は、特許請求の範囲の請求項12の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項c、訂正事項d、は、訂正事項a、訂正事項bと各々整合を図る為の明細書の記載の訂正である。したがって、各訂正は、明りょうでない記載の釈明の訂正を目的とし、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)まとめ
以上の検討から、平成18年6月27日付補正により補正された、平成18年3月22日付の訂正は、特許法第134条の2第1項但し書の規定、及び同条第5項の規定により準用する特許法前第126条第3、4項の規定に適合する。
よって、本件訂正は適法と認められる。

第3.本件発明
平成18年6月27日付補正により補正された平成18年3月22日付の訂正が上記のとおりに認められるので、本件発明は、当該訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1ないし12に係る発明(以下「本件発明1?12」という。)は次のとおりのものである。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】固体撮像素子である半導体チップを装着する半導体チップ装着用パッケージにおいて、
パッケージ本体を構成する樹脂本体と、
前記樹脂本体内に形成された中空部の底側にあって前記半導体チップを装着するために形成された前記樹脂本体の内底面と、
前記内底面に装着される前記半導体チップと前記パッケージ本体の外部との電気的導通を実現するリードと、
からなる半導体チップ装着用パッケージであって、
前記リードは、導電性金属板を切断・屈曲して得られるとともに、前記内底面と平行とされると共に前記樹脂本体に埋設された一端部が、その自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみを該中空部に対し露出させており、その途中部が前記一端部に対して該一端部と他端部とがオーバーラップしないように傾斜されると共に前記樹脂本体中に埋設され、その他端部が前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に前記外部に露出されていることを特徴とする半導体チップ装着用パッケージ。
【請求項2】前記リードの他端部は、前記樹脂本体の一面上においてその周縁とほぼ等しいかまたは内方に位置していることを特徴とする請求項1記載の半導体チップ装着用パッケージ。
【請求項3】前記リードの他端部は、前記樹脂本体の一面に対して傾斜して外部に露出されていることを特徴とする請求項1または2記載の半導体チップ装着用パッケージ。
【請求項4】前記リードの他端部が外部に露出される樹脂本体の一面は、前記中空部の内底面側に位置する外底面であることを特徴とする請求項1記載の半導体チップ装着用パッケージ。
【請求項5】前記リードの他端部が外部に露出される樹脂本体の一面は、前記中空部の開口側に位置する開口面であることを特徴とする請求項1記載の半導体チップ装着用パッケージ。
【請求項6】半導体装置を構成する樹脂本体と、
固体撮像素子である半導体チップと、
前記樹脂本体内に形成された中空部の底側にあって前記半導体チップを装着するために形成された前記樹脂本体の内底面と、
前記半導体チップの表面に設けられた電極とその一端部が電気的に導通され、その途中部が前記樹脂本体中に埋設され、その他端部が前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に外部に露出された導電性金属板からなるリードと、
前記半導体チップの装着された中空部を封止するために前記樹脂本体に装着される蓋体とからなることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】前記蓋体は光透過特性を有する板材であることを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】 前記リードの他端部は、前記樹脂本体の一面上においてその周縁とほぼ等しいかまたは内方に位置していることを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項9】前記リードの他端部は、前記樹脂本体の一面に対して傾斜して外部に露出されていることを特徴とする請求項6,7または8記載の半導体装置。
【請求項10】前記リードの他端部が外部に露出される樹脂本体の一面は、前記中空部の内底面側に位置する外底面であることを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項11】前記リードの他端部が外部に露出される樹脂本体の一面は、前記中空部の開口側に位置する開口面であることを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項12】あらかじめ屈折加工されることで、一端部と他端部とがオーバーラップしないように該一端部に対し傾斜した途中部が形成されたリードフレームを金型上に載置し、
該金型内に熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を注入し、前記樹脂内に形成された中空部の底側にあって固体撮像素子である半導体チップを装着するための内底面を前記樹脂内に形成し、かつ当該中空部内に前記内底面と平行とされた前記リードフレームの一端部の自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみが露出し、その他端部が外部に露出する樹脂本体を形成し、
前記樹脂本体の一面上においてその周縁から外方に突出されるリードフレームの他端部の先端を切断除去する半導体パッケージの製造方法。」

第4.参加人の主張
参加人は、甲第1号証ないし甲第7号証を提出して、請求項1ないし12に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とされるべきものである旨主張している。

甲第1号証)特開平6-232292号公報
甲第2号証)特開平5-47954号公報
甲第3号証)特開平7-50380号公報
甲第4号証)特開平8-23085号公報
甲第5号証)特開昭64-11356号公報
甲第6号証)特開平5-21683号公報
甲第7号証)実願平4-66942号(実開平6-31155号公報のマイクロフイルム)

また、甲第1号証?甲第7号証の成立については争いがない。

第5.被請求人の主張
被請求人は、平成18年3月22日に訂正請求(2回目)と平成18年6月27日付補正書により訂正を求めると共に、同日付意見書により本件特許発明は無効理由に該当しない旨主張している。

なお、被請求人の提出した、乙1?5号証は、口頭審理の際、参考資料1?5となった。(第1回口頭審理調書参照。)

第6.当審の判断
(1)特許法第153条に基づく当審の特許無効理由通知(平成18年2月16日付)の要旨
平成18年1月23日付訂正請求により訂正された請求項に対して、平成18年2月16日付で特許無効理由が通知され、その要旨は以下のとおりである。
「本件特許の1、2、4?8、10?12の請求項に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1?5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

引用文献等一覧
1)特開平6-232292号公報(審判請求人の示した甲第1号証)
2)特開平5-47954号公報(審判請求人の示した甲第2号証)
3)特開平7-50380号公報(審判請求人の示した甲第3号証)
4)特開平8-23085号公報(審判請求人の示した甲第4号証)
5)特開平6-5726号公報 (新たな文献) 」


第7.刊行物記載事項
1)引用文献5:特開平6-5726号公報(以下「刊行物A」という。)
刊行物Aには、図7、図14と共に以下の事項が記載されている。
(A-1).「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、LSIや固体撮像素子等の半導体素子をボンディングワイヤーにて配線し気密封止して成る樹脂製中空パッケージを用いた半導体装置に関するものである。」
(A-2).「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような課題を解決するために成された中空パッケージを用いた半導体装置である。すなわち、この中空パッケージを用いた半導体装置は、樹脂製の基台上面に設けられた搭載部に半導体素子を接続し、半導体素子とボンディングワイヤーを介して接続されるリードを基台に取り付け、この基台上面に下部開口の凹部が形成された樹脂製の蓋を接続して、凹部で半導体素子とボンディングワイヤーとを包囲したもので、このリードのうち、ボンディングワイヤーと接続されるインナーリードの接続部以外を基台内に埋め込むとともに、インナーリードからアウターリードを延設したものである。」
(A-3).「【0015】
【実施例】以下に、本発明の中空パッケージを用いた半導体装置の実施例を図に基づいて説明する。図1は、本発明の中空パッケージを用いた半導体装置を説明する断面図である。すなわち、この半導体装置1は樹脂製の基台3と、この基台3の上面に取り付けられた蓋4の間に中空の空間5が形成された中空パッケージから成るものである。
【0016】基台3の略中央部には半導体素子2が搭載されており、基台3上の半導体素子2の周辺に複数のリード6が設けられている。この半導体素子2の周囲を包囲する状態に蓋4の下部に凹部40が形成されており、凹部40と基台3との間で所定の空間5が形成されることになる。凹部40内、すなわち空間5内の基台3上面には、インナーリード61の接続部61aが配置されており、半導体素子2とこの接続部61aとがボンディングワイヤー7にて接続されている。
【0017】また、インナーリード61の接続部61a以外の部分は、途中から下方に折り曲げられており、基台3内に埋め込まれている。さらに、下方に折り曲げられたインナーリード61は基台3内でさらに側方に折り曲げられており、基台3の側面から外側に向けてアウターリード62として延出している。・・・
【0018】・・・42アロイまたは銅材等のフレームに複数のリード6を形成し、プレス加工等によりインナーリード61部でクランク状に折り曲げたもので、インナーリード61およびアウターリード62の表面に予めスズやハンダ等の電気メッキ処理を施したものである。・・・」
(A-4).「【0023】最後に、アウターリード62をプレス加工等を用いて切断、折り曲げを行い、所定の形状に整形する。なお、この例では、最後にアウターリード62を切断して個々の半導体装置1に分割したが、半導体素子2を搭載する前にアウターリード62を切断して分割し、その後の工程を個別に行ってもよい。」
(A-5).「【0026】また、図7の断面図に示すような半導体装置1は、半導体素子2の搭載部8が基台3の上面よりもわずかに低い凹状となっている。この搭載部8に半導体素子2を配置すると、半導体素子2が搭載部8内に埋まる状態となる。この状態で半導体素子2を銀ペースト等により接着すると、半導体素子2の側面が銀ペースト等により覆われることになる。半導体素子2の側面は、略円形のウエハからチップ状の半導体素子2に切り出す際のゴミや破片等が付着している。この半導体素子2の側面が銀ペースト等により覆われることで、空間5内にゴミや破片等が飛散しなくなり半導体素子2の表面に付着するのを防止している。」
(A-6).「【0034】また、図14に示すような半導体装置1は、インナーリード61から延設されたアウターリード62が基台3の裏面側に被着した状態に設けられたものである。基台3を形成する際に、図3に示す上型31の内面にインナーリード61の接続部61aを当接し、下型32の内面にアウターリード62を当接してモールド用の樹脂をキャビティ30内に充填する。これにより、基台3の下面からアウターリード62が露出した基台3が形成される。」
(A-7)
図7の実施例において、インナーリードは、半導体素子搭載部と平行になって樹脂本体内に埋設されていると認められる。
(A-8)
図14の実施例において、半導体素子を基台に搭載している。また、リードの他端部は、前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に外部に露出され、その切断部は周縁とほぼ等しくなっていると認められる。

よって、刊行物Aには以下の発明が記載されている。
「固体撮像素子等の半導体素子をボンディングワイヤーにて配線し気密封止して成る樹脂製中空パッケージを用いた半導体装置において、42アロイまたは銅材等のフレームに複数のリード6を形成したインナーリード61から延設されたアウターリード62が基台3の裏面側に被着した状態に設けられ、アウターリード62を切断した半導体装置」(以下、「刊行物発明A1」という。)、
「基台3と、この基台3の上面に取り付けられた蓋4の間に中空の空間5が形成された中空パッケージに、固体撮像素子等の半導体素子をボンディングワイヤーにて配線し気密封止して成る樹脂製中空パッケージを用いた半導体装置において、半導体素子2の搭載部8を基台3の上面よりもわずかに低い凹状とし、この搭載部8に半導体素子2を配置し、半導体素子2を銀ペースト等により接着し、そのリード部が、銅材等をリードに形成、折り曲げを行い、ボンディングワイヤーと接続されるインナーリードの接続部以外を基台内に埋め込むとともに、インナーリードからアウターリードを延設した半導体装置」(以下、「刊行物発明A2」という。)

2)特開平6-232292号公報(審判請求人の示した甲第1号証、以下「刊行物B」という。)
刊行物Bには、図1と共に以下の事項が記載されている。
(B-1)「【0002】
【従来の技術】従来、半導体素子を収容するための半導体素子収納用パッケージ、特に廉価な半導体素子収納用パッケージは一般に、エポキシ樹脂から成り、上面に半導体素子を収容するための凹部を有する絶縁基体と、前記絶縁基体の凹部内側から外側にかけて導出する複数個の外部リード端子と、前記絶縁基体の上面に封止材を介して取着され、絶縁基体の凹部を塞ぐ蓋体とから構成されており、絶縁基体の凹部底面に半導体素子を樹脂製接着材を介して取着するとともに該半導体素子の各電極を外部リード端子の一端にボンディングワイヤを介して電気的に接続し、しかる後、前記絶縁基体の上面に蓋体を樹脂製封止材を介して接合させ、半導体素子を絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に気密に封止することによって最終製品としての半導体装置となる。」
(B-2)「【0008】また内部に収容する半導体素子が固体撮像素子で、蓋体がガラス等の透明部材から成る場合、蓋体に結露によるくもりが発生することはなく、固体撮像素子に正確な光電変換を起こさせることも可能となる。」
(B-3)「【0017】前記絶縁基体1はまたその凹部1a内側から外側にかけて複数個の外部リード端子5が取着されており、該外部リード端子5の凹部1a内側に露出する各々の部位には半導体素子3の各電極がボンディングワイヤ6を介して電気的に接続され、また外側に露出する部位には外部電気回路が接続される。
【0018】前記外部リード端子5はコバール金属(鉄ーニッケルーコバルト合金)や42アロイ(鉄ーニッケル合金)等の金属材料から成り、コバール金属等のインゴット(塊)を圧延加工法や打ち抜き加工法等、従来周知の金属加工法を採用することによって所定の板状に形成される。
【0019】尚、前記外部リード端子5はタブレット状に成形された粉末のエポキシ樹脂を所定型内にセットし注入することによって絶縁基体1を製作する際、所定型内の所定位置に予めセットしておくことによって絶縁基体1の凹部1a内側から外側にかけて一体的に取着される。」

よって刊行物Bには
「エポキシ樹脂から成り、上面に固体撮像素子を収容するための凹部を有する絶縁基体と、前記絶縁基体の凹部内側から外側にかけて導出する複数個の、コバール金属(鉄ーニッケルーコバルト合金)や42アロイ(鉄ーニッケル合金)等の金属材料から成り、打ち抜き加工法等、従来周知の金属加工法を採用することによって所定の板状に形成される外部リード端子と、前記絶縁基体の上面に封止材を介して取着され、絶縁基体の凹部を塞ぐ蓋体とから構成されており、絶縁基体の凹部底面に半導体素子を樹脂製接着材を介して取着するとともに該半導体素子の各電極を外部リード端子の一端にボンディングワイヤを介して電気的に接続し、しかる後、前記絶縁基体の上面に蓋体を樹脂製封止材を介して接合させ、半導体素子を絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に気密に封止する半導体装置」(以下、「刊行物発明B」という。)が記載されている。

3)特開平5-47954号公報(審判請求人の示した甲第2号証、以下「刊行物C」という。)
刊行物Cには、図1、図2と共に以下の事項が記載されている。
(C-1)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】多ピン化に伴いパッケージサイズを大型化して、パッケージの一辺を長くすることでアウターリード幅、ピッチを確保しているが、最近では一層多ピン化が進み、アウターリードも必然的に微細化せざるを得なくなっている。このため、リード整形時、出荷包装時、また、実装時にアウターリードにねじれたり、アウターリード先端の高さが異なる等の歪みが生じる虞がある。一般に、樹脂封止型半導体装置のアウターリードを回路基板上の実装位置に全ピン一括接続し、実装を行うため、一部アウターリードの歪みや先端部の高さの違いは、回路基板上の端子への接続不良となる。
【0007】半導体素子の多ピン化に伴い、リード幅が微細化する問題の一つの解決法としてのPGA型パッケージでも、パッケージ裏面のピンはパッケージから突出して、不安定であり、ピンの変形を確実に防ぐ方法はない。更に、PGA型パッケージはコスト高である。そこで、アウターリード先端の変形を確実に防ぐ、コストの安い簡便な方法が強く望まれていた。」
(C-2)「【0012】図1、図2に示すように、まず、リードフレームに半導体チップ1をマウント、ボンディングを行う。即ち、リードフレーム中央のベッド4に半導体チップ1をエポキシペーストで接着し、半導体チップ1上の電極パッドとリード2のベッド4側先端とを金等のワイヤ5で接続して電気的な導通を取る。引き続き、リード2を半導体チップ1側または半導体チップ1反対側にリード2を折り曲げて、整形し、パッケージ下面予定面にリード2の外側先端を位置させるようにする。この後、リード2の先端部下部のみを露出させて、半導体チップ1及びリード2全体を樹脂3によって、厚さ1mm程度に封止する。
【0013】続いて、リード2の樹脂側方に出た部分を切断して、図1、図2に示すような樹脂封止型半導体装置を完成する。リード2の折り曲げた側のベッド4に半導体チップ1を接着した場合には、折り曲げたリード2の内側に半導体チップが位置するので、上部の樹脂を薄くすることができ、一層の薄型化が可能である。この樹脂封止型半導体装置を実装する時には、リード2の樹脂下面に露出した先端部を回路基板上の端子に半田付け等により導通を取る。」

よって刊行物Cには、「リードフレーム中央のベッド4に半導体チップ1を接着し、半導体チップ1上の電極パッドとリード2のベッド4側先端とを金等のワイヤ5で接続して電気的な導通を取る。引き続き、リード2を半導体チップ1側または半導体チップ1反対側にリード2を折り曲げて、整形し、パッケージ下面予定面にリード2の外側先端を位置させるようにする。この後、リード2の先端部下部のみを露出させて、半導体チップ1及びリード2全体を樹脂3によって封止する。続いて、リード2の樹脂側方に出た部分を切断する樹脂封止型半導体装置」(以下、「刊行物発明C」という。)が記載されている。

4)特開平7-50380号公報(審判請求人の示した甲第3号証、以下「刊行物D」という。)
刊行物Dには、図1ないし図8と共に以下の事項が記載されている。
(D-1)「【請求項1】 パッケージと、このパッケージから突出する複数のリードとを有する半導体装置であって、前記リードはパッケージ内の途中で曲がって表裏の一面の途中に突出するとともに突出箇所で曲がってパッケージの一面に張り付くように延在していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】 前記パッケージの表裏面はそれぞれ平行な面となっているとともに、下面に突出して曲がったリードは下面および外端のみがパッケージから露出していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】 前記リードの外端はパッケージの縁から長く突出することなく殆どパッケージと同じとなっていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体装置。」
(D-2)「【0009】
【作用】上記した手段によれば、本発明の半導体装置は、パッケージ内の裏面の途中からパッケージ外にリードが突出するとともに、突出箇所で曲がってパッケージの下面に埋め込むように張り付き、かつまたリード先端はパッケージの縁から長く突出することなくパッケージの縁まで延在していることから、リードが他のものに引っ掛かるおそれもなくリード曲がりが防止できる。また、パッケージの下面に突出したリードは、突出箇所で曲がってパッケージの下面に埋め込むように張り付き、かつ一面を露出させる構造となっていることから、外部端子としても測定端子としても使用できる。」
(D-3)「【0011】本発明の半導体装置1は、図1および図2に示すように、外観的にはエポキシレジンからなるパッケージ1の下面周縁にリード2の外端(外部端子3)が埋め込まれた形状となっている。前記外部端子3は、図2に示すように下面のみがパッケージ1から露出し、実装時の端子や特性検査用の端子(テストパッド)として使用される。パッケージ1は、矩形体、すなわち偏平体となり、パッケージ1の上面4と下面5は平行となっている。また、パッケージ1の側面は、前記パッケージ1がトランスファモールドで形成されるため、モールド型からパッケージ1が抜け易くするためにキャビティの側面を傾斜させた結果生じる斜面となっている。
【0012】前記パッケージ1内の中央にはタブ6が位置し、このタブ6上に半導体チップ7が固定されている。また、前記タブ6の周縁近傍には、リード2の内端が臨んでいる。そして、このリード2の内端と、前記半導体チップ7の図示しない電極は、導電性のワイヤ9によって電気的に接続されている。前記リード2は、タブ6(半導体チップ7)の周縁近傍からパッケージ1の周縁に向かって延在するが、パッケージ1内において途中でパッケージ1の下面5側に曲がってパッケージ1の下面5から突出する。また、パッケージ1から突出したリード2は突出箇所で曲がってパッケージの下面に張り付くように延在する構造となっている。下面5に突出して曲がったリード2は下面および外端がパッケージから露出し、側面部分はパッケージ内に埋設されている。この露出したリード外端部分は、実装用の外部端子3となるとともに、特性検査用の測定端子(テストパッド)ともなる。
【0013】つぎに、本発明の半導体装置の製造方法について、図3乃至図8を参照しながら説明する。本発明の半導体装置の製造においては、図3に示されるようなリードフレーム15が用意される。このリードフレーム15は、0.15mm?0.2mmの厚さのFe-Ni系合金あるいはCu合金等からなる金属板をエッチングまたは精密プレスによってパターニングすることによって形成される。リードフレーム15は、複数の単位リードパターンを一方向に直列に並べた形状となっている。単位リードパターンは、一対の平行に延在する外枠16と、この一対の外枠16を連結しかつ外枠16に直交する方向に延在する一対の内枠17とによって形成される枠19内に形成されている。この枠19の中央には、矩形状のタブ(支持体)6が配設されている。また、前記枠19の四隅からは細いタブ吊りリード20が延在し、その先端で前記タブ6の四隅をそれぞれ支持している。」

5)特開平8-23085号公報(審判請求人の示した甲第4号証、以下「刊行物E」という。)
刊行物Eには、図1と共に以下の事項が記載されている。
(E-1)「【請求項1】 CCDイメージチップを収納した中空樹脂パッケージと、前記パッケージに接着封止した光透過性窓部と、前記光透過性窓部の内面に形成した透明でかつ吸湿性を有した樹脂皮膜とを備えた固体撮像装置。」
(E-2)「【0024】また窓部4は実施例の材料に限定されることなく、アクリル樹脂やポリカーボネート等の透明プラスチック材料や透明プラスチック材料の表面にガラスを複合した材料など広く適用できる。」

6)特開昭64-11356号公報(審判請求人の示した甲第5号証、以下「刊行物F」という。)
刊行物Fには、図1?図3と共に以下の事項が記載されている。
(F-1)「【特許請求の範囲】
半導体チップを置載したダイパッド部と、該チップから金属細線を接続した内部リードの先端部とが樹脂基板上面に露出し、内部リードは前記樹脂基板内を貫通し、樹脂基板底面部において露出し、外部リードとして延在する構造を特徴とする半導体装置用中空パッケージ。」
(F-2)「〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、前記問題点を解決するために、半導体チップ置載部とリード先端部を樹脂基板上面に露出し、内部リードは樹脂基板内を貫通し、外部リードは樹脂基板底面に露出し、延在′するような構造にすることによってリードインダクタンスの低減と耐湿性の向上をはかるものである。
〔作用〕
本発明によれば、外部リードを樹脂基板底面から取り出すことにより、リードの長さを短くすることが出来る。
かつ、内部リードは樹脂基板内を貫通しているため、リードと樹脂の界面に沿って外部から浸入する水分の浸入経路、すなわちり-クパスを長くすることが出来る。このことによってインダクタンスが小さく、かつ耐湿性の優れた高周波トランジスタ用中空パッケージを実現することが出来る。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
第1図は、本発明の第1の実施例のパッケージの断面図である。
まず、第1図に示す、リード先端部12aおよびダイバンド12eから外部導出部12bにいたるリードの形状を、樹脂基板11の上面から底面にいたる高さになるように成形する。次に、半導体チップ13をダイバンドの電極とリード先端部との間を金属細線14によってワイヤボンドする。
半導体チップが置載されたリードを、金型を用いて樹脂モールドする。このとき、半導体チップとワイヤボンド部が樹脂基板の上面に露出し、かつ、樹脂基板底面に外部リードが露出する寸法に設計されている。
さらに、樹脂基板の上面に露出している半導体チップおよび金属細線を保護するため、中空17を有するキャンプ16を接着剤15を用いて接着する。
このキャップシールは、耐湿性の向上と、接着強度を確保するために、接着剤溜18を形成しておくのが好ましい。
他の実施例として、第2図に示すように、樹脂基板に、第1の樹脂基板11aと、第2の樹脂基板11bを用いた二重モールド構造のパッケージを用いることによって、製造方法を容易にし、かつ確実にすることが出来る。
第2図において、まず、成形されたリードを、第1の樹脂でモールドする。次に、ダイボンド、ワイヤボンドを第1の実施例のように行う。第1の樹脂基板は、ダイボンド、ワイヤボンド時に下方からの加熱支持柱を挿入出来るように、ダイパッドおよびリード先端部の裏面近傍に空間を設ける。加熱支持柱によって、ダイボンドおよびワイヤボンド時の熱や圧力条件を自由に設定することが出来る。次に、第2の樹脂を用いて、第1の樹脂の外周を覆うようにモールドする 」

7)特開平5-21683号公報(審判請求人の示した甲第6号証、以下「刊行物G」という。)
刊行物Gには、図1?図9と共に以下の事項が記載されている。
(G-1)「【請求項1】 表面実装用SOP、QFPのリード端子において、該リード端子先端と回路基板上のランドとが形成する角度が鋭角または直角であることを特徴とする半導体素子。」

8)実願平4-66942号(実開平6-31155号公報)のマイクロフイルム(審判請求人の示した甲第7号証、以下「刊行物H」という。)
刊行物Hには、図1?図9と共に以下の事項が記載されている。
(H-1)「【請求項1】合成樹脂製のモールド部にてパッケージされた半導体チップ等に対するリード端子を、前記モールド部からその下面に沿って外向きに突出して成る電子部品において、前記リード端子の先端部を、前記モールド部の下面から離れる方向に湾曲したことを特徴とする面実装型電子部品。」

第8.当審の判断について
(1)本件発明1について
本件発明の進歩性の判断については、(1-1)請求人主張の無効理由について、(1-2)特許無効理由通知について、の各々について検討する。

(1-1)請求人主張の無効理由について、
本件発明1と、刊行物発明Bとを対比すると、
刊行物発明Bの、「絶縁基体」、「絶縁基体の凹部」、「金属材料」、「外部リード端子」、「凹部底面」、「半導体素子」、「電気的に接続」が、本件発明1の「樹脂本体」、「中空部」、「導電性金属板」、「リード」、「内底面」、「半導体チップ」、「電気的導通」に相当する。
また、絶縁基体はエポキシ樹脂からなっており、外部リード端子の途中部は、絶縁基体に埋め込まれた構成が示されている。
よって、刊行物発明Bと、本件発明1とは、
「固体撮像素子である半導体チップを装着する半導体チップ装着用パッケージにおいて、
パッケージ本体を構成する樹脂本体と、
前記樹脂本体内に形成された中空部の底側にあって前記半導体チップを装着するために形成された前記樹脂本体の内底面と、
前記内底面に装着される前記半導体チップと前記パッケージ本体の外部との電気的導通を実現するリードと、
からなる半導体チップ装着用パッケージであって、
前記リードは、導電性金属板を切断・屈曲して得られるとともに、前記内底面と平行とされた一端部が、その自由端側の前記中空部の開口側を向く面を該中空部に対し露出させ、その途中部が前記樹脂本体中に埋設され、その他端部が外部に露出されている半導体チップ装着用パッケージ。」の点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1
本件発明1では、一端部が、樹脂本体に埋設され、その自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみを該中空部に対し露出させ、その途中部が前記一端部に対して該一端部と他端部とがオーバーラップしないように傾斜されると共に前記樹脂本体中に埋設されているのに対し、刊行物発明Bでは、この構成の記載がない点

相違点2
本件発明1では、他端部が前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に前記外部に露出されているのに対し、刊行物発明Bでは、この構成の記載がない点

以下、各相違点について検討する
相違点1について
一端部が、樹脂本体に埋設され、その自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみを該中空部に対し露出させ、その途中部が前記一端部に対して該一端部と他端部とがオーバーラップしないように傾斜されると共に前記樹脂本体中に埋設されている点は、刊行物AないしHに記載がない。また、刊行物B、Eに記載の発明は、リードの途中部が埋め込まれているが、一端部は樹脂本体に埋め込まれていない。さらに、一端部の一部が露出しているわけでもなく、一端部と他端部とがオーバーラップしないように傾斜しているわけでもない。
そして、本件発明1は、この相違点に基づいて、「あらかじめ屈折加工したリードフレームを金型上に載置し、該金型内に熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を注入して中空部を有し、かつ当該中空部内に前記リードフレームの一端部が露出」(第23段落)するパッケージを、寸法精度よく製造しうるという格別な効果が認められる。
なお、刊行物発明Cは、「リードフレーム中央のベッド4に半導体チップ1をエポキシペーストで接着し、半導体チップ1上の電極パッドとリード2のベッド4側先端とを金等のワイヤ5で接続して電気的な導通を取る。引き続き、リード2を半導体チップ1側または半導体チップ1反対側にリード2を折り曲げて、整形し、パッケージ下面予定面にリード2の外側先端を位置させるようにする。この後、リード2の先端部下部のみを露出させて、半導体チップ1及びリード2全体を樹脂3によって封止する」ものであり、一見リードフレームの途中部が「途中部が前記一端部に対して該一端部と他端部とがオーバーラップしないように傾斜されると共に前記樹脂本体中に埋設され」る構成を有するとも見えるが、この発明は、半導体チップを含むリード部をモールドするタイプを対象としており、請求項1に係る発明のように中空部を形成する思想が無いので、リードフレームの一端部の自由端について、その一端部の自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみが露出する構成とする必然性もなく、刊行物発明Bと組み合わせる動機付けがない。たとえ組み合わせたとしても、相違点1の構成とすることは容易ではない。刊行物Eに記載の発明についても同様である。また、刊行物Fに記載の発明は、リードインダクタンスの低減のために、二重モールド構造のパッケージを用いたもので、発明の目的が相違し、組み合わせる根拠がなく、容易になし得るものでもない。
よって、相違点1の構成は、刊行物A?Hに記載が無いので、当業者が容易になし得るものとは認められない。

相違点2について
他端部が前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に前記外部に露出されている点は、刊行物発明A1に記載されている。刊行物発明A1と刊行物発明Bとは、同じ固体撮像素子を搭載するパッケージに関する発明であり、パッケージの寸法精度に関し、共通の課題を有しており、両発明を組み合わせることは当業者が容易になし得ることである。

まとめ
本件発明1は、刊行物発明A1、Bに基づいて容易に発明することができたものとすることはできない。また、刊行物A?H記載の発明から容易になし得るものとも認められない。

(1-2)特許無効理由通知について、
本件発明1と、刊行物発明A2とを対比すると、
また、絶縁基体はエポキシ樹脂からなっているので、刊行物発明A2の、「基台」、「中空の空間」、「搭載部」、「銅材等」、「インナーリード」、「アウターリード」、「半導体素子」が、本件発明1の「樹脂本体」、「中空部」、「内底面」、「導電性金属板」、「一端部」、「他端部」、「半導体チップ」に相当する。
よって、刊行物発明A2と、本件発明1とは、
「固体撮像素子である半導体チップを装着する半導体チップ装着用パッケージにおいて、
パッケージ本体を構成する樹脂本体と、
中空部の底側にあって前記半導体チップを装着するために形成された前記樹脂本体の内底面と、
前記半導体チップと前記パッケージ本体の外部との電気的導通を実現するリードと、
からなる半導体チップ装着用パッケージであって、
前記リードは、導電性金属板を切断・屈曲して得られるとともに、前記内底面と平行とされると共に前記樹脂本体に埋設された一端部が、その自由端側の前記中空部の開口側を向く面のみを該中空部に対し露出させており、その途中部が前記樹脂本体中に埋設され、その他端部が前記外部に露出されていることを特徴とする半導体チップ装着用パッケージ。」の点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1
本件発明1では、「樹脂本体内に形成された中空部」であるのに対し、刊行物発明A2では「基台3と、この基台3の上面に取り付けられた蓋4の間に中空の空間5が形成され」ている点

相違点2
本件発明1では「一端部が、その自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみを該中空部に対し露出させ、途中部が前記一端部に対して該一端部と他端部とがオーバーラップしないように傾斜されると共に前記樹脂本体中に埋設され」ているのに対し、刊行物発明A2では一端部の全てが中空部に露出し、傾斜部を有さない点

相違点3
本件発明1では「他端部が前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に前記外部に露出されている」のに対し、刊行物発明A2では、インナーリードからアウターリードを延設した点

以下、各相違点について検討する
相違点1について
刊行物発明A2では、基台3の上面に取り付けられた凹部を有する蓋4の間に中空の空間5が形成されているが、中空部は実質的に蓋の内部に形成された凹部であり、樹脂本体内に形成された中空部と構成が相違し、リードの接続についての技術的課題の問題意識もないので、当業者が容易になし得たものとは認められない。

相違点2について
一端部が、その自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみを該中空部に対し露出させ、途中部が前記一端部に対して該一端部と他端部とがオーバーラップしないように傾斜されると共に前記樹脂本体中に埋設され、ている構成は、刊行物AないしHに記載がなく、第8、(1)、(1-1)の相違点1で検討したのと同様の理由により当業者が容易になし得たものとは認められない。

相違点3について
他端部が前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に前記外部に露出されている構成は、刊行物発明A1に記載されている。刊行物発明A1と刊行物発明A2とは、同じ固体撮像素子を搭載するパッケージに関する発明であり、パッケージの寸法精度に関し、共通の技術的課題を有しており、両発明を組み合わせることは当業者が容易になし得ることである。

まとめ
本件発明1は、刊行物発明A2、A1に基づいて容易に発明することができたものとすることはできない。また、刊行物A?H記載の発明から容易になし得るものとも認められない。

(1-3)まとめ
以上、(1-1)、(1-2)の無効理由はいずれも認められない。
よって、本件発明1は、刊行物A?Hに基づいて容易に発明することができたものとすることはできない。

(2)本件発明2ないし5について
本件発明2ないし5については、本件発明1を引用しているので本件発明1の場合と同様の理由により容易に発明することができたものとすることはできない。

(3)本件発明6について
本件発明6と、刊行物発明Bとを対比すると、
刊行物発明Bの、「絶縁基体」、「絶縁基体の凹部」、「金属材料」、「外部リード端子」、「凹部底面」、「半導体素子」、「電気的に接続」が、本件発明6の「樹脂本体」、「中空部」、「導電性金属板」、「リード」、「内底面」、「半導体チップ」、「電気的に導通」に相当する。
また、絶縁基体はエポキシ樹脂からなっている。半導体素子をボンディングワイヤーにて配線することは、半導体チップの表面に設けられた電極とリードの一端部が電気的に導通していることに相当する。また、図1において外部リード端子の途中部が埋め込まれた構成が示されている。
よって、両者は、
「半導体装置を構成する樹脂本体と、
固体撮像素子である半導体チップと、
前記樹脂本体内に形成された中空部の底側にあって前記半導体チップを装着するために形成された前記樹脂本体の内底面と、
前記半導体チップの表面に設けられた電極とその一端部が電気的に導通され、その途中部が前記樹脂本体中に埋設された導電性金属板からなるリードと、
前記半導体チップの装着された中空部を封止するために前記樹脂本体に装着される蓋体とからなることを特徴とする半導体装置。」の点で一致し、

相違点
本件発明6では、「他端部が前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に外部に露出された」構成を有するのに対し、刊行物発明Bでは、外部リード端子を絶縁基体の凹部内側から外側にかけて導出している点で相違する。

相違点についての検討
他端部が前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に外部に露出された構成は、摘記(A-8)に記載されている。
刊行物発明A1と刊行物発明Bとは、同じ固体撮像素子を搭載するパッケージに関する発明であり、パッケージの寸法精度に関し、共通の技術的課題を有しており、両発明を組み合わせることは当業者が容易になしうるものである。

よって、本件発明6は、刊行物発明A1と刊行物発明Bから当業者が容易になしうるものである。

(4)本件発明7について
本件発明7は、本件発明6に「前記蓋体は光透過特性を有する板材である」構成を付加する発明であるが、光透過特性を有する蓋体を装着することは刊行物摘記(B-2)において「蓋体がガラス等の透明部材から成る場合」と記載されている。
したがって、本件発明7は、刊行物発明B及び、刊行物発明A1の記載から、当業者が容易に為し得たものである。

(5)本件発明8について
本件発明8は、本件発明6に「前記リードの他端部は、前記樹脂本体の一面上においてその周縁とほぼ等しいかまたは内方に位置している」構成を付加する発明であるが、リードの他端部は、前記樹脂本体の一面上においてその周縁とほぼ等しくすることは、刊行物摘記(A-8)に記載されている。
したがって、本件発明8は、刊行物発明B及び、刊行物Aの記載から、当業者が容易に為し得たものである。

(6)本件発明9について
本件発明9は、本件発明6、7、8に「リードの他端部は、前記樹脂本体の一面に対して傾斜して外部に露出されている」構成を付加する発明である。
リードの他端部が樹脂本体の一面に対して傾斜して外部に露出された構成は刊行物発明B、及び、刊行物Aに記載が無い。また、刊行物Gおよび刊行物Hには、樹脂本体の外側に張り出したリードの先端部を折り曲げた構成が記載されているが、「その途中部が前記樹脂本体中に埋設され、その他端部が前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に外部に露出された導電性金属板からなるリード」において、「前記樹脂本体の一面に対して傾斜して外部に露出されている」ものではない。
また、刊行物発明Cは、リードの他端部が樹脂本体の一面に対して傾斜して外部に露出しているとは認められず、発明の目的も相違するので刊行物発明Bに組み合わせる動機付けが無い。また、刊行物A?Hには、「当該露出された構成」の記載が無いので、当業者が容易になし得るものとは認められない。
よって、本件発明9は、刊行物発明B及び、刊行物発明A1から、当業者が容易に為し得たものではなく、さらに、刊行物A?Hに基づいて当業者が容易になし得るものとも認められない。

(7)本件発明10について
本件発明10は、本件発明6に「前記リードの他端部が外部に露出される樹脂本体の一面は、前記中空部の内底面側に位置する外底面である」構成を付加する発明であるが、この構成は、刊行物発明B、及び、刊行物発明A1の組み合わせより当業者が容易になし得るものである。


(8)本件発明11について
本件発明11は、本件発明6に「前記リードの他端部が外部に露出される樹脂本体の一面は、前記中空部の開口側に位置する開口面である」構成を付加する発明であるが、この構成は、刊行物発明A、及び、刊行物発明Bに記載が無い。また、第8、(1)、(1-1)の相違点1で検討したのと同様の理由により当業者が容易になし得るものとは認められない。

(9)本件発明12について
本件発明12は、本件発明1の製造方法に関する発明であり、(1)で検討したのと同様の理由により容易に発明することができたものとすることはできない。

第9.まとめ
以上のとおりであるから、請求項6、7、8、10に係る発明の特許については、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、該特許を無効とすべきものである。
また、本件請求項1ないし5、9、11、12に係る特許については、特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、その3分の2を請求人の負担とし、3分の1を被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体チップ装着用パッケージ、半導体装置およびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像素子である半導体チップを装着する半導体チップ装着用パッケージにおいて、
パッケージ本体を構成する樹脂本体と、
前記樹脂本体内に形成された中空部の底側にあって前記半導体チップを装着するために形成された前記樹脂本体の内底面と、
前記内底面に装着される前記半導体チップと前記パッケージ本体の外部との電気的導通を実現するリードと、
からなる半導体チップ装着用パッケージであって、
前記リードは、
導電性金属板を切断・屈曲して得られるとともに、
前記内底面と平行とされると共に前記樹脂本体に埋設された一端部が、その自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみを該中空部に対し露出させており、
その途中部が前記一端部に対して該一端部と他端部とがオーバラップしないように傾斜されると共に前記樹脂本体中に埋設され、
その他端部が前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に前記外部に露出されていることを特徴とする半導体チップ装着用パッケージ。
【請求項2】
前記リードの他端部は、前記樹脂本体の一面上においてその周縁とほぼ等しいかまたは内方に位置していることを特徴とする請求項1記載の半導体チップ装着用パッケージ。
【請求項3】
前記リードの他端部は、前記樹脂本体の一面に対して傾斜して外部に露出されていることを特徴とする請求項1または2記載の半導体チップ装着用パッケージ。
【請求項4】
前記リードの他端部が外部に露出される樹脂本体の一面は、前記中空部の内底面側に位置する外底面であることを特徴とする請求項1記載の半導体チップ装着用パッケージ。
【請求項5】
前記リードの他端部が外部に露出される樹脂本体の一面は、前記中空部の開口側に位置する開口面であることを特徴とする請求項1記載の半導体チップ装着用パッケージ。
【請求項6】
半導体装置を構成する樹脂本体と、
固体撮像素子である半導体チップと、
前記樹脂本体内に形成された中空部の底側にあって前記半導体チップを装着するために形成された前記樹脂本体の内底面と、
前記内底面と平行とされると共に前記樹脂本体に埋設された一端部の自由端側の一部における前記中空部の開口側を向いて前記中空部に対し露出された面が前記半導体チップの表面に設けられた電極と電気的に導通され、その途中部が前記一端部に対して該一端部と他端部とがオーバラップしないように傾斜されると共に前記樹脂本体中に埋設され、その他端部が前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に外部に露出された導電性金属板からなるリードと、
前記半導体チップの装着された中空部を封止するために前記樹脂本体に装着される蓋体
とからなることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記蓋体は光透過特性を有する板材であることを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記リードの他端部は、前記樹脂本体の一面上においてその周縁とほぼ等しいかまたは内方に位置していることを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項9】
前記リードの他端部は、前記樹脂本体の一面に対して傾斜して外部に露出されていることを特徴とする請求項6,7または8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記リードの他端部が外部に露出される樹脂本体の一面は、前記中空部の内底面側に位置する外底面であることを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項11】
前記リードの他端部が外部に露出される樹脂本体の一面は、前記中空部の開口側に位置する開口面であることを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項12】
あらかじめ屈折加工されることで、一端部と他端部とがオーバラップしないように該一端部に対し傾斜した途中部が形成されたリードフレームを金型上に載置し、
該金型内に熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を注入し、前記樹脂内に形成された中空部の底側にあって固体撮像素子である半導体チップを装着するための内底面を前記樹脂内に形成し、かつ当該中空部内に前記内底面と平行とされた前記リードフレームの一端部の自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみが露出し、その他端部が外部に露出する樹脂本体を形成し、
前記樹脂本体の一面上においてその周縁から外方に突出されるリードフレームの他端部の先端を切断除去する半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、半導体装置、特に回路基板への装着性および回路基板との電気的導通信頼性向上さらにはハンドリング特性に優れ安価に製造できる半導体パッケージ構造技術に適用して有効である。
【0002】
【従来の技術】
リードピンを備えた半導体装置の実装技術としては、DIP(Dual Inline Package)またはSIP(Single Inline Package)と呼ばれるパッケージ構造の半導体装置を用いて、パッケージから突出されたリードピンの先端を回路基板に設けられた挿通孔に挿入し当該挿通孔の周囲の電極とリードピンとの半田付けを行うもの(差込実装方式)が知られている。
【0003】
この差込実装方式では、回路基板に挿通孔を形成する作業が必要であり、かつ当該挿通孔の位置に対してリードピンの折曲精度が要求され、実装時のハンドリングが難しいという問題があった。
【0004】
また、リードピンの先端を回路基板表面の表面と同方向に折曲して表面実装を行う形式のものも知られている。この表面実装型の樹脂パッケージの構造を図1?4を用いて説明する。
【0005】
所定形状に加工されたリードフレーム1を用意する。このリードフレーム1は、中央に半導体チップを装着するアイランド部2を有しており、アイランド部近傍まで延出されたインナーリード3と、このインナーリード3を支持するアウターリード4とを有している。同図に示した状態ではこれらの部位は全て一体に加工されている。
【0006】
次に、図2に示すように、前記アイランド部2の上面に半導体チップ5を超音波振動あるいは熱圧着によって接合する。そして、この半導体チップ5の上面に設けられた電極とインナーリード3とを金あるいはアルミニウム等からなる導電性の細線(ワイヤ6)により導通させる。
【0007】
次に、図3に示すように、前記半導体チップ5、ワイヤ6およびインナーリード3を樹脂により封止する。これはキャビティを有する金型内に当該リードフレームを位置決めして、この金型内に熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を注入することにより行われる。
【0008】
最後に図4に示すように、樹脂本体7から突出されたアウターリード4を折曲加工する。すなわち、まず樹脂本体7から突出されたアウターリード4を同図において樹脂本体7の外底面方向にL字状に折曲する。次に、アウターリード先端において樹脂本体7の側外方に折曲する。これによりアウターリードの先端(図中「C」で示す部分)は平坦になり、回路基板上の電極に対して半田により接合が可能となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このような表面実装構造の半導体装置は、回路基板側に挿通孔を準備する等の加工が不要であるため、差込実装方式に較べて実装効率は向上するものの、樹脂本体の最上面からアウターリード先端(C)までの距離(図中「A」で示す距離)の精度、インナーリード(3)からアウターリード先端(C)までの距離(図中「A’」で示す距離)の精度、およびアイランド部2の中心位置からアウターリード先端(C)までの距離(図中「B」で示す距離)に誤差を生じないようにするために高い加工精度が必要であった。
【0010】
つまり、これらの加工精度が確保されなければ実装時に回路基板の電極位置とアウターリードの接合位置(C)とのズレを生じ、半導体装置への電源供給あるいは信号の読み書きに支障が出る可能性があった。
さらにインナーリード3の先端からアイランド部2までの距離(D)に自由度がなくパッケージ設計が制約されていた。
【0011】
また、多数のアウターリードの中にわずかでもリード浮きがあると、回路基板の電極との接合不良が生じてしまう可能性もあった。
さらに、図4に示したように樹脂本体の形成後にリードの折曲加工を最低2回は行うために樹脂本体(同図「d」で示す位置)に対して折曲時にストレスが加わり、樹脂クラックを生じ外観不良となったり耐湿性の低下が生じ易かった。
【0012】
加えて、樹脂本体からアウターリードが大きく突出した構造であるために、実装基板へのハンドリングがしにくく、また回路基板上において広い装着スペースが必要であり高密度実装に適さないという問題もあった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記のような点を解消すべく以下のような手段を講じた。
すなわち第1に、半導体チップを装着するための内底面を有する中空部と、当該中空部に装着される半導体チップとパッケージ外部との電気的導通を実現するリードと、パッケージ本体を構成する樹脂本体とからなる半導体チップ装着用パッケージにおいて、前記リードを導電性金属板を切断・屈曲して得るとともに、前記内底面と平行とされると共に前記樹脂本体に埋設された一端部の自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみを前記中空部に対して露出させ、途中部を前記一端部に対して該一端部と他端部とがオーバラップしないように傾斜されると共に前記樹脂本体中に埋設し、他端部を前記樹脂本体の一面上においてその周縁近傍より略面一状に外部に露出させた構造とした。
【0014】
ここで、面一状とは、樹脂本体の上面または下面の一部を構成するという意味である。
このような構造、特にリードの他端部先端を樹脂本体の一面と略面一状に外部に露出させることにより、外部に露出させたリードを加工することなく回路基板の電極との電気的導通を確保できるため、効率的に信頼性の高い半導体チップ装着用パッケージを提供できる。
【0015】
ここで、後に搭載する半導体チップは、固体撮像素子、マイクロプロセッサ、論理回路、メモリ等のいかなる回路を持ったものでもよい。また、固体撮像素子である場合には、後に中空部を封止する蓋体はガラス等の光透過性のあるものが望ましい。
【0016】
樹脂本体はエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂、または液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリスルホン、ポリアミド・イミド、ポリアリルスルホン樹脂などの耐熱性熱可塑性樹脂によって成形されることが望ましい。これらのうち、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、PPSなどが特に好ましい。エポキシ樹脂としては、具体的にはビスフェノールA型、オルソクレゾールノボラック型、ビフェニル型、ナフタレン型、グリシジルアミン型などのエポキシ樹脂を用いることができる。ポリイミド樹脂としては、具体的にはポリアミノビスマレイミド、ポリピロメリットイミド、ポリエーテルイミドなどのポリイミド樹脂を用いることができる。
【0017】
これらの耐熱性樹脂には、無機充填剤を添加してもよい。この無機充填剤としては、アルミナ粉末、シリカ粉末、窒化ケイ素粉末、ボロンナイトライド粉末、酸化チタン粉末、炭化ケイ素粉末、ガラス繊維、アルミナ繊維などの耐熱性無機充填剤が挙げられる。これらのうち、アルミナ粉末、シリカ粉末、窒化ケイ素粉末、ボロンナイトライド粉末がより好ましい。無機充填剤の粒径は、0.1?100μm、好ましくは1?40μmである。無機充填剤は耐熱性樹脂100重量部に対して40?1900重量部、好ましくは100?900重量部配合される。また、無機充填剤の他に、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0018】
リードはリードフレーム形式で提供され、銅、鉄、アルミニウムまたはこれらの合金からなる群より選ばれたもの、特に42アロイ、またはリン青銅のような銅合金で形成されていることが望ましい。このリードフレームはことさら表面処理する必要はないが、必要に応じて全面ないし部分的に表面処理を施すことができ、たとえば、金、銀、ニッケル、半田などのメッキを施してもよい。メッキとしては、サッカリンなどの光沢剤を配合しないニッケルメッキを使用することができ、光沢剤を添加してメッキ表面を平滑化してもよい。なお、中空パッケージ構造の場合、半導体チップを搭載するアイランド部は不要であるが、当該アイランド部を樹脂本体中に埋設させて耐湿板として用いてもよい。さらに、中空部内で通常のリードフレームと同様にアイランド部に半導体チップを接合した構造としてもよい。この場合には、アイランド部には放熱性を向上させるために銅などの他の材料をあらかじめ接合しておいてもよい。
【0019】
第2に、リードの他端部を、前記樹脂本体の一面上においてその周縁とほぼ等しいかまたは内方に位置するようにした。
これにより、樹脂本体から外部にリードが突出しない構造となるため、ハンドリング時におけるリードの変形や損傷を防止できる。
【0020】
第3に、リードの他端部を、樹脂本体の一面に対して傾斜して外部に露出させた。
このように、リード他端部を樹脂本体に対して面一状に形成する他に、傾斜した状態で外部に露出させることも可能である。
【0021】
このように傾斜させることにより、傾斜部分に半田等の接合材が入り込み接合信頼性を高めることができる。特に半田は溶融時における表面張力が高いために有効である。
【0022】
第4に、リードの他端部は半導体チップが装着された樹脂本体の内底面側の外底面、または半導体チップの上方の開口側の面のいずれから外部に露出させるようにしてもよい。
【0023】
これにより、多様な実装形態が実現できる。
第5に、半導体パッケージの製造において、あらかじめ屈折加工されることで、一端部と他端部との間に該一端部と他端部とがオーバラップしないように傾斜した途中部が形成されたリードフレームを金型上に載置し、該金型内に熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を注入し、前記樹脂内に形成された中空部の底側にあって固体撮像素子である半導体チップを装着するための内底面を前記樹脂内に形成し、かつ当該中空部内に前記内底面と平行とされた前記リードフレームの一端部の自由端側の一部における前記中空部の開口側を向く面のみが露出し、その他端部が外部に露出する樹脂本体を形成し、前記樹脂本体の一面上においてその周縁から外方に突出されるリードフレームの他端部の先端を切断除去するようにした。
【0024】
このようにリードフレームを予め折曲加工した後に樹脂本体を形成することにより、リードフレームの加工にともなう樹脂本体へのストレスが無くなるため、樹脂本体のクラックによる外観不良の発生や耐湿性低下が防止される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
まず、図5に示すようなリードフレーム11を用意する。このリードフレームは、42アロイまたはリン青銅のような銅合金からなる薄板状の金属板を所定形状に加工して得ることができる。なお、本実施形態においてアイランド部は存在していないが、アイランド部を有する構造であってもよい。
【0026】
このリードフレーム11は先端が互いに独立したインナーリード12(一端部)と、それを支持するために同図の状態では互いに接続され一体構造となったアウターリード13(他端部)とで構成されている。
【0027】
このようなリードフレーム11は、図6に示すようにインナーリード12とアウターリード13との途中部14において段差状に折曲加工される。すなわち、インナーリード12の外方において同図の斜め下方向に一旦折曲され、さらにその外方で同図側外方に折曲された形状となっている。
【0028】
この折曲加工形状は金型を用いた押圧力による1回のプレス処理で実現してもよいし、2回に分けたプレス処理で実現してもよい。
なお、このとき外側のリードフレーム11の折曲に際しては、図6の右側に示したようにアウターリード13がインナーリード12と略平行となるように折曲するが、図6の左側に示したようにアウターリード13がインナーリード12の平行線に対して一定の傾斜角θを有するように折曲してもよい。
【0029】
次に、当該リードフレーム11に対して図7に示すような樹脂本体15が形成される。この樹脂本体15の形成は、リードフレーム11を図示しない金型に装着し、当該金型のキャビティにエポキシ樹脂などの樹脂を高圧注入するインサート成形によって得られる。
【0030】
インサート成形の条件は使用する樹脂によっても異なるが、エポキシ樹脂の場合を例にとると、通常圧力が10乃至800kg/cm2、温度が130乃至200℃、時間が20秒乃至5分の条件で加圧加熱が行われる。なお必要に応じてさらに後硬化工程を加えることが望ましい。
【0031】
このようにして得られた樹脂本体15には、図7に示すように、中空部を有しておりこの中空部の内底面17は、半導体チップ5を接合する接合面として機能する。また、中空部の内側壁は内底面側の断面が小面積で上方の開口部側が大面積となる段差を有しており、この段差の肩部には前記リードフレーム11のインナーリード12が中空部に対して露出されている。
【0032】
そして、リードフレーム11の途中部14は、樹脂本体15内に埋設された状態となっている。さらにアウターリード13の先端は樹脂本体15の一面を構成する外底面18の周縁近傍でこの外底面と略面一状に外部に露出されている。なお、図7に示す状態においてアウターリード13の最先端部は他のアウターリードの先端同士と互いに連結された状態となっている。
【0033】
このアウターリード13の最先端部を切断することによりリード同士が互いに電気的に絶縁され独立したリードとなる。また、このときアウターリード13の最先端部を樹脂本体15の周縁に沿って切断することにより、切断後のアウターリード13は樹脂本体の周縁から側外方には突出しない形状とすることができる。
【0034】
また、アウターリード13の切断部分を前記樹脂本体15の周縁よりも外側としてもよいことは勿論である。
このようにして得られた半導体チップ装着用パッケージに対して半導体チップを装着して回路基板に実装する手順を以下に説明する。
【0035】
まず、樹脂本体15の中空部の内底面17に半導体チップ5を接着剤により装着する。このとき内底面17には接着性および熱伝導性を高めるために金、銀あるいは銅などの金属を予め塗布しておいてもよい。また、接着剤の他超音波接合等の技術を用いてもよい。
【0036】
ここで用いる半導体チップ5は、たとえばビデオカメラ等に用いられるCCD(Charge-Coupled Device)などの固体撮像素子であるが、他の用途に用いられる論理回路、メモリなどであっても構わない。
【0037】
次に、半導体チップ5の図示しない電極と中空部に露出されたインナーリード12の表面とを金またはアルミニウムによる細線で構成されたワイヤをループ状に張ることで導通させる。これには公知のワイヤボンディング技術を用いることができる。
【0038】
次に、中空部の上面にガラス板からなる蓋体20を装着して中空部内を気密封止する。この蓋体20の装着は、樹脂本体15の外上面の開口周縁部に接着剤を塗布して蓋体20を載置することによって行われる。
【0039】
このようにして得られた半導体装置は、アウターリード13の先端が樹脂本体15の外底面18の周縁近傍において当該外底面18と略面一に露出された構造となっているため、回路基板への実装時のハンドリングが容易である。また、樹脂本体15の形成前にリードを予め屈折加工しているため、樹脂本体形成後にリードを折曲する従来技術に較べてリードの折曲加工精度を高く維持でき、樹脂本体に不要な押圧力をかけることもない。
【0040】
さらに、アウターリード先端の切断を樹脂本体15のパッケージ周縁に沿って行えるため、回路基板上における実装面積を狭小化でき、高密度実装を実現できる。
【0041】
さらに、アウターリード13の折曲部分に傾斜角θを設けることによって図10に示すように、リード先端と回路基板の表面との間に断面三角状の隙間部分21ができ、ここに半田の表面張力を利用して半田を入り込ませて接合精度を高めることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、アウターリード13の先端を樹脂本体15の外底面18から外部に露出させた例で説明したが、図9に示すように中空部の開口側の外上面22の周縁近傍から露出させた構造としてもよい。この場合にも同図9の左側部分に示すように、アウターリード13の先端を一定の傾斜角θで屈折させてもよい。
【0043】
なお、実施形態の説明では傾斜角θは図6に示すようなリードフレームの折曲時にあらかじめ傾斜させるようにした場合で説明したが、図7で説明したアウターリード13の先端部を切断する際に切断金型の上方からの押圧力で傾斜させるようにしてもよい。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、回路基板に対して接合信頼性が高く、高密度実装に適しかつハンドリングが容易な半導体チップ装着用パッケージおよび半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術を説明するためのリードフレームの断面図
【図2】従来技術を説明するためのリードフレームに半導体チップが装着された状態を示す断面図
【図3】従来技術を説明するためのリードフレームに樹脂本体を形成した状態を示す断面図
【図4】従来技術を説明するためのリードフレームのリード加工を行った状態を示す断面図
【図5】実施形態のリードフレームを示す断面図
【図6】実施形態のリードフレームを折曲加工した状態を示す断面図
【図7】実施形態のリードフレームに樹脂本体を形成した状態を示す断面図
【図8】実施形態の半導体装置の完成状態を示す断面図
【図9】実施形態の変形例を示す断面図
【図10】実施形態の半導体装置を回路基板に装着した状態を示す部分断面図
【符号の説明】
1・・リードフレーム
2・・アイランド部
3・・インナーリード
4・・アウターリード
5・・半導体チップ
6・・ワイヤ
7・・樹脂本体
11・・リードフレーム
12・・インナーリード
13・・アウターリード
14・・途中部
15・・樹脂本体
17・・内底面
18・・外底面
20・・蓋体
22・・外上面
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-10-17 
結審通知日 2006-10-20 
審決日 2006-10-31 
出願番号 特願平8-268972
審決分類 P 1 123・ 121- ZD (H01L)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 坂本 薫昭  
特許庁審判長 岡 和久
特許庁審判官 大嶋 洋一
城所 宏
登録日 2004-05-14 
登録番号 特許第3554640号(P3554640)
発明の名称 半導体チップ装着用パッケージ、半導体装置およびその製造方法  
代理人 福田 浩志  
代理人 西元 勝一  
代理人 加藤 和詳  
代理人 堤 隆人  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  
代理人 中島 淳  
代理人 小堀 益  
代理人 西元 勝一  

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