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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1150391
審判番号 不服2001-8641  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-03-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-24 
確定日 2007-01-11 
事件の表示 平成 9年特許願第242065号「ゲーム機本体、ゲーム機用操作装置、ゲームシステム、ゲーム機本体の双方向通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月 2日出願公開、特開平11- 57212〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成9年8月24日の出願であって、平成12年8月18日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成12年10月30日付けで手続補正され、平成13年4月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成13年5月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年6月22日付けで手続補正され、その後当審において、平成13年10月1日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成13年12月7日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成13年12月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成13年12月7日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成13年12月7日付けの手続補正により、明細書の特許請求の範囲の記載は請求項1乃至19に記載のとおりに補正されたものであるところ、その請求項1は以下のとおりである。(補正された請求項2乃至19の記載は省略する。)
「【請求項1】記録媒体の再生機能を有し、複数の操作子による操作データをゲーム機用操作装置から受信し、かつ、上記ゲーム機用操作装置に対して所定の制御データを送信する双方向通信手段を有するゲーム機本体において、
上記ゲーム機用操作装置が有する不揮発性格納手段に格納され、且つゲーム機本体から設定可能な上記ゲーム機用操作装置の機能に関する機能情報を取り込み、上記機能情報に基づいて該ゲーム機用操作装置の機能を設定し、
上記機能情報として、上記ゲーム機用操作装置の通信制御モードであるアナログモードであるかディジタルモードであるかを示す情報を含み、
上記ゲーム機用操作装置を上記アナログモード又は上記ディジタルモードに設定する、ことを特徴とするゲーム機本体。」(以下、この補正を「本件補正(1)」という。)

2.補正の適否の検討
前記本件補正(1)は、平成13年6月22日付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された「双方向通信手段を有するゲーム機において」の記載の「ゲーム機」を、「ゲーム機本体」の記載事項に限定的に特定し、また同じく平成13年6月22日付けの手続補正の【請求項1】の、「上記機能情報に基づいて該ゲーム機用操作装置の機能を設定」以降の記載を「機能情報」に関して「上記機能情報として、上記ゲーム機用操作装置の通信制御モードであるアナログモードであるかディジタルモードであるかを示す情報を含み」と付加し限定的に特定し、続いて、「ゲーム機用操作装置の機能の設定」に関して「上記ゲーム機用操作装置を上記アナログモード又は上記ディジタルモードに設定する」と付加し限定的に特定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明(1)」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定において読み替えて準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

【3】引用例に記載の発明
1.原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特表平9-504132号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
(ア)「本発明は、データ処理装置とこの処理装置に接続される周辺機器との間の通信の改善に係り、とくに、ゲーム装置に接続される周辺機器の通信方式を識別する装置および多様な種類の通信方式を有する周辺機器に適したコネクタの構成に関する。」(第17頁第5?8行)
(イ)「図1は本発明が適用されたゲーム機1の斜視図を示す。このゲーム機1は、ゲームプログラムを処理するとともに各種の操作を制御するデータ処理装置として機能するゲーム装置と、そのゲーム装置の周辺機器の例としてのコントロールスイッチアセンブリすなわちコントローラ3a,3bとを備えている。このコントローラとしては、例えば米国特許出願第08/245,446で開示されているコントロールキーを使うことができる。ゲーム装置2は周辺機器接続用のコネクタポート4a,4bを備えている。このコネクタポート4a,4bのそれぞれはプラグ、または、プラグコネクタ4ap(4bp)を着脱自在に接続可能なソケット、または、ソケットコネクタ4as(4bs)を有する。
プラグ4ap,4bpは、それぞれ、ケーブル5a,5bを介してコントローラ3a,3bに接続されている。プラグ4ap,4bpがソケット4as,4bsに挿入されたとき、コントローラ3a.3bはケーブル5a.5bを介してゲーム装置2の内部回路に電気的に機能的に接続される。プラグ4ap,4bpのそれぞれのプラグピンは、コントローラ3a,3bに採用された通信方式をゲーム装置2に確実に伝送する配列になっている。ゲーム装置2は、図示しないが、ビデオ出力端子およびオーディオ出力端子を備えている。」(第21頁第22行?第22頁第9行)
(ウ)「ゲーム装置2は、この装置の中央部に位置するCD-ROMドライブ・ブロック14を有する。CD-ROMドライブ・ブロック14は、CD-ROMドライブ9と、このドライブに装着されたCD-ROMディスクからゲームプログラムのデータまたはオーディオ/ビデオのソフトウエアを読み出す光学的ピックアップとを備える。」(第22頁第13?17行)
(エ)「図2はゲーム装置2のブロック図を例示している。ゲーム装置2は図示の如く、処理ブロック11,ビデオブロック12、オーディオブロック13、および補助ブロックすなわちCD-ROMドライブ・ブロック14を備えている。」(第22頁第27?29行)
(オ)「処理ブロック11は、メイン処理ユニット(CPU)2L RAM22、ROM23、システムコントロールユニット24、およびサブCPU25を備える。メインCPU21は、バスライン26を介して、RAM22、ROM23、システムコントロールユニット24、およびサブCPU25に機能的に接続されている。」(第23頁第4?8行)
(カ)「電源がオンになるか、または/および、リセットボタンが押し下げられると、サブCPU25はシステム全体をリセットするとともに、コントローラ3a,3bといった周辺機器からのデータ収集を開始し、周辺機器を制御する。」(第24頁第2?4行)
(キ)「図3は、周辺機器を制御・管理する装置として機能するサブCPU25のブロック構成を示す。図に示す如く、サブCPU25はバスライン26を経由してメインCPU21に接続されている。このサブCPU25は、CPUコア31、ROM32、RAM33、レジスタテーブル34、レジスタ群35、マルチプレクサ36、およびI/Oインターフェイス37を備える。」(第24頁第24行?第25頁第1行)
(ク)「CPUコア31は例えば、4ビットCPUで成る。このCPUコア31はROM32に接続されており、ROM32から必要なプログラムデータを受ける。このCPUコア31にはまたバスライン38を通してRAM33、レジスタテーブル34、およびレジスタ群35が接続されている。さらに、レジスタ群35はマルチプレクサ36を介してI/Oインターフェイス37に接続されている。このレジスタ群35及びマルチプレクサ36は前記接続切換手段40を構成する。」(第25頁第2?7行)
(ケ)「マルチプレクサ36は共通端子を有し、この端子がI/Oインターフェイス37に接続されている。I/Oインターフェイス37はコネクタポート4aおよび4bに接続されている。コネクタポート4a,4bはそれぞれ、ケーブル5a,5bを介してコントローラ3a,3bに接続されている。マルチプレクサ36は、I/Oセクションレジスタ353で指定されたデータに応答して、コントローラ3a,3bといった周辺機器を、レジスタ群352およびバスライン38を通してCPUコア31、または、レジスタ群351およびバスライン39、26を通してメインCPU21のいずれかに選択的に接続する機能を有する。」(第25頁第17?25行)
(コ)「CPUコア31は、このCPUコア31がマルチプレクサ36を通して周辺機器に電気的に繋がったとき、「ペリフェラルID-1」、「ペリフェラルID-2」、「データサイズ」、「データ」の順でその周辺機器と通信を行い、それらのID(識別データ)から通信方式を判断し、そのデータの収集、伝送、交換などを実行するように構成されている。」(第25頁第26行?第26頁第2行)「本実施例では、「ペリフェラルID-1」のデータは4ビットデータで成り、周辺機器の種類に応じた通信方式を表わす。「ペリフェラルID-2」のデータはこれも4ビットデータで成り、周辺機器の機種を表わすデータの一形式であって、信号が例えばアナログかデジタルかを表わす信号形態に着目した機種を示す一組のデータから成る。」(第25頁第3?7行)
(サ)「図4に示すように、I/Oインターフェイスはペリフェラルポート4a,4bに接続される2チャンネルを有する。このペリフェラルポート4a,4bのそれぞれは1組のソケットピン1?9を備えている。この内、ピン2?8はI/Oインターフェイスに接続され、一連の指定信号を送受するように割り当てられている。」(第26頁第18?22行)
(シ)「図4に示す如く、ソケット4as,4bsに各別に接続されるプラグ4ap,4bpのそれぞれは、前記ソケットピン1?9に対向する1組のプラグピン1?9を備えている。プラグ4ap,4bpはそれぞれケーブル5a,5bを介して周辺機器のメイン回路に接続されている。4番?6番ピンは制御信号に割り当てられている。4番ピンは第1の制御ピンであり、ゲーム装置2から周辺機器(例えばコントローラ3a,3b)への周辺機器セレクト信号THの伝送用に割り当てられている。5番ピンは第2の制御ピンであり、ゲーム装置から周辺機器へのデータリクエスト信号TRの伝送用に割り当てられている。6番ピンは第3の制御ピンであり、周辺機器からゲーム装置への周辺機器応答信号TLの伝送用に割り当てられている。2番、3番、7番および8番のピンはデータ信号用に割り当てられている。2番ピン(第1のデータピン)はビットデータD、3番ピン(第2のデータピン)はビットデータU、7番ピン(第3のデータピン)はビットデータR、および8番ピン(第4のデータピン)はビットデータLの伝送用にそれぞれ割り当てられている。」(第26頁第23行?第27頁第11行」
(ス)「これらの信号D.U,RおよびLに対するデータ入出力方向は、ゲーム装置2に接続される周辺機器の種類に応じて任意に指定可能である。信号Rは周辺機器データの第3ビットを、信号Lは第2ビットを、信号Dは第1ビットを、および信号Uは第0ビットをそれぞれ表わす。」(第27頁第11行?第28頁第1行」
(セ)「図5Aから図5Cは、プラグ4ap,4bpの各種のピン配列をそれぞれ示す。このピン配列は周辺機器が採用している通信方式により変わる。図5Aは標準タイプの通信方式のピン配列を示しており、標準タイプの通信方式としては、TH/TRセレクション通信方式、3線ハンドシェイク通信方式などが在る。図5Bはクロックドパラレル通信方式(つまり、クロック同期式パラレル通信方式)のピン配列を示す。さらに図5Cはクロックドシリアル通信方式(つまり、クロック同期式シリアル通信方式)のピン配列を示す。クロックドパラレル通信方式及びクロックドシリアル通信方式はここでは非標準タイプの通信方式である。これらのピン配列は、コントロールパッド(PAD)、マウス、キーボード、モデム、記憶装置といった多種類にわたる周辺機器にも容易に対応でき、しかも周辺機器に応じて変わることのある様々な通信方式にも容易に対処できるように準備されたものである。」(第28頁第17?28行)
(ソ)「次いで、上述した種々の通信方式を採用している周辺機器を代表するコントローラの機能的およびハードウエア的な構成図を、図6A?6Dおよび図7A?7Dを参照して方式別に説明する。なお、これらの図では前述したものと同一符号を一部に使用する。」(第31頁第19?22行)
(タ)「図6Bは3線ハンドシェイク通信方式を採っているコントローラ3aを示す。このコントローラ3aは、プラグコネクタ4ap、このプラグコネクタ4apの1番?9番の9本のプラグピンに接続された9本の線を有するケーブル5a、およびケーブル5aの線が接続されているメイン回路3Mとを備える。この1番?9番の9本のプラグピンは互いに電気的に独立しており、ケーブル5aの9本の線に個々に接続されている。メイン回路3Mは操作部3MaおよびCPU装置3Mbを有する。このCPU装置3MbはCPUを有し、操作部3Maに応答するデータ発生器として機能する。なお、ハードウエア・ロジック回路で構成されたデータ発生器を上記CPU装置の代わりに採用することもできる。CPU装置3Mbは、プラグコネクタ4apを通して順に入出力する3つの信号TH,TR,TLを使用してゲーム装置2と交信し、操作部3Maで発生したデータを含む4ビットのパラレルデータR,L,D,Uをプラグコネクタ4apを介してゲーム装置2に供給する。」(第32頁第24行?第33頁第8行)
(チ)「図8に示す如く、サブCPU25は起動すると、最初に制御信号TH=“1”かつTR=“1”を出力する(図8ステップS101参照)。サブCPU25のCPUコア31は、各周辺機器により7番、8番、2番および3番のピンに生成されるデータ信号R,L,D,Uの論理値を読み込み、その読み込んだ論理値をRAM33の所定メモリ領域に格納する(ステップS102)。CPUコア31は再度、制御信号TH=“0”かつTR=“1”を出力する(ステップS103)。これに応じて、CPUコア31は再び、周辺機器により生成されるデータ信号R,L,D,Uの論理値を読み込み、それらをRAM33の所定メモリ領域に格納する(ステップS104:図13中の期間T10および図14中の期間T20参照)。
CPUコア31は次いで「ペリフェラルID-1」を演算する(ステップS105)。「ペリフェラルID-1」は以下の式を使って計算できる。
[ID-1]={(TH="1"時のデータR)または(TH="1"時のデータL)}×8h
+{(TH="1"時のデータD)または(TH="1"時のデータU)}×4h
+{(TH="0"時のデータR)または(TH="0"時のデータL)}×2h
+{(TH="0"時のデータD)または(TH="0"時のデータU)}×1h
ここで、hは16進数のサフィックスを表す。この[ID-1]の演算結果を使って、CPUコア31は周辺機器の種類を識別する」(第36頁第4?21行)
(ツ)「最初に、図10に示す3線ハンドシェイク通信方式のアクセスサブルーチンを図13に示す各信号のタイミングチャートを使って説明する。図13における参照符号tは時間を示す。 図13における期間T11の間に、CPUコア31は「ペリフェラルID-2」を読み込む(図10ステップS301)。すなわち、期間T11の間にCPUコア31によってR,L,DおよびUのデータID-23,ID-22,ID-21およびID-20が取り込まれ、それらのデータID-23?ID-20のそれぞれが“0h”?“Fh”のいずれに該当するかを判定する(表5に示す「ID-2」参照)。この読込みに加えて、CPUコア31は読み込んだ「ペリフェラルID-2」の各値について表5をルックアップする。例えば、CPUコア31は、「ペリフェラルID-2」=0hであるとき周辺機器がデジタル機器であり、「ペリフェラルID-2」=1hであるとき周辺機器がアナログ機器であり、「ペリフェラルID-2」=2hであるとき周辺機器がポインティングデバイスであり、「ペリフェラルID-2」=3hであるとき周辺機器がキーボードであると言った具合に判定する。」(第41頁第6行?第42頁第7行)

以上の(ア)乃至(ツ)の記載事項、及び図面の記載から、「引用例1」には、以下の発明(以下、「引用例1に記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

<引用例1に記載の発明>
「CD-ROMディスクからゲームプログラムのデータを読み出し、コントローラ3aの操作部3Maで発生したデータが供給され、かつ、コントローラ3aに対して一連の指定信号を送受するゲーム装置2において、コントローラ3aにより生成されるデータ信号を読み込み、その読み込んだ理論値を演算して、コントローラ3aの種類を識別するゲーム装置2。」

【4】対比
1.本願補正発明(1)と引用例1に記載の発明との対比
本願補正発明(1)と引用例1に記載の発明とを対比すると、引用例1に記載の発明の「CD-ROMディスク」、「操作部3Ma」、「データ」、「コントローラ3a」、「一連の指定信号を送受」、「ゲーム装置2」が、本願補正発明(1)の「記録媒体」、「複数の操作子」、「操作データ」、「ゲーム機用操作装置」、「所定の制御データを送信」、「ゲーム機本体」にそれぞれ相当する。
また、引用例1に記載の発明のゲーム機本体は「CD-ROMディスクからゲームプログラムのデータを読み出」せることから、本願補正発明(1)と同様に「記録媒体の再生機能を有」していることは明らかである。
さらに、引用例1に記載の発明のゲーム機本体は「コントローラ3aの操作部3Maで発生したデータが供給され、かつ、コントローラ3aに対して一連の指定信号を送受する」機能を有することから、互いにデータをやりとりしていることは明らかであり、かつ、そのような手段を有することは当然であるから、本願補正発明(1)と同様に「双方向通信手段」を構成しているといえる。
そして、引用例1に記載の発明のゲーム機本体は、「コントローラ3aにより生成されるデータ信号を読み込」むことにより、読み込んだ理論値を演算してゲーム機用操作装置がどのような機能を有しているか判断する機能を備えるから、本願補正発明(1)と同様に「ゲーム機用操作装置の機能に関する機能情報を取り込」む機能を備えているといえる。

してみると、引用例1に記載の発明と本願補正発明(1)とは

「記録媒体の再生機能を有し、複数の操作子による操作データをゲーム機用操作装置から受信し、かつ、上記ゲーム機用操作装置に対して所定の制御データを送信する双方向通信手段を有するゲーム機本体において、上記ゲーム機用操作装置の機能に関する機能情報を取り込むゲーム機本体。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願補正発明(1)のゲーム機用操作装置には、ゲーム機用操作装置に関する機能情報を格納する不揮発性格納手段を備えており、また、機能情報は通信制御モードであるアナログモードやディジタルモードが含まれるのに対し、引用例1に記載の発明のゲーム機用操作装置には、かかる機能情報を格納する不揮発性格納手段を備えていない点。

<相違点2>
本願補正発明(1)のゲーム機本体は、該ゲーム機本体からゲーム機用操作装置に対し取り込んだ機能情報に基づいてゲーム機用操作装置の機能を設定するのに対し、引用例1に記載の発明のゲーム機本体は、ゲーム用操作装置に対し機能を設定するか否か定かでない点。

2.相違点についての検討
<相違点1について>
本願補正発明(1)のようにビデオゲームを行う当該ゲームシステムにおいては、ゲーム機用操作装置は入力装置、ゲーム機本体は該入力装置の入出力処理を行う装置として各々機能し双方向通信が行われるものである。
ところで、入力装置或いは周辺装置とコンピュータ等の入出力処理を行う装置との間で双方向通信が行われる技術分野において、周辺装置或いは入力装置側にデータを通信する方式に関する情報である通信機能情報や入出力モードを記憶する手段として不揮発性の記憶手段を備えることは、例えば、特許第2600005号公報(第3頁右欄第40行?第4頁左欄16行参照)、特開平4-336358号公報(第2頁右欄第30?42行参照)に記載されているように、入力装置或いは周辺装置と、コンピュータ等の入出力処理を行う装置との通信手段における一般的技術として従来周知の技術である。
また、本願補正発明(1)のようにビデオゲームの技術分野において、ゲーム機本体が基本的にパソコンと同じコンピュータで構成され、データ入力装置にキーボードやマウスが用いられているように、上記コンピュータ本体と周辺機器の技術がゲーム技術分野に適用されていることも技術常識(例えば、特開平9-47578号公報(段落【0002】?【0005】参照)、特開平9-47579号公報(段落【0002】?【0005】参照)、特開平9-167260号公報(段落【0009】参照)である。
したがって、引用例1に記載の発明の通常コンピュータで構成されるゲーム機本体への入力装置に相当するゲーム機用操作装置に、データ通信の方式に関する情報の通信機能情報や入出力モードを記憶する手段として機能情報を格納する不揮発性格納手段を設けることは、当業者にとって容易であり、また、格納する通信機能に関する情報をアナログモードやディジタルモードとすることは、前記【3】1.(セ)の「・・・これらのピン配列は、コントロールパッド(PAD)、マウス、キーボード、モデム、記憶装置といった多種類にわたる周辺機器にも容易に対応でき、しかも周辺機器に応じて変わることのある様々な通信方式にも容易に対処できるように準備されたものである。」、及び【3】1.(ツ)の「・・・例えば、CPUコア31は、「ペリフェラルID-2」=0hであるとき周辺機器がデジタル機器であり、「ペリフェラルID-2」=1hであるとき周辺機器がアナログ機器であり、・・・」なる記載から、引用例1に記載の発明の入力装置は、ゲーム機本体に対しアナログ機器或いはディジタル機器でも入出力が可能であり、また、これらの機器に合わせ通信方式をアナログモードやディジタルモードにすることは当然に行われることであるから、格納される通信機能情報にアナログモードやディジタルモードを含めることは、当業者であれば適宜に設定し得る設計事項にすぎない。
そうすると、引用例1に記載の発明のゲーム機用操作装置に、入力装置或いは周辺装置に機能情報を格納する不揮発性格納手段を備える上記周知技術を適用し、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
入力装置或いは周辺装置と、コンピュータ等の入出力処理を行う装置で双方向通信が行われる技術分野において、コンピュータ等の入出力処理を行う装置側から周辺装置に対し読み込んだ通信に関する機能情報である入出力モードに基づき周辺装置に対し入出力モードを設定すること(例えば、特開平4-336358号公報(第2頁右欄第30?42行参照)や、コンピュータ等の入出力処理を行う装置から入力装置に対し所定の通信機能を持つように設定すること(例えば、特許第2600005号公報(第3頁右欄第40行?第4頁左欄16行参照)は、入力装置或いは周辺装置と、コンピュータ等の入出力処理を行う装置との通信手段における一般的技術として従来周知の技術である。
そして、上記コンピュータ本体と周辺機器の技術が、ゲーム技術分野に適用されていることも、前記同様に技術常識(特開平9-47578号公報(段落【0002】?【0005】参照)、特開平9-47579号公報(段落【0002】?【0005】参照)、特開平9-167260号公報(段落【0009】参照)である。
そうすると、引用例1に記載の発明のコンピュータで構成され入出力処理を行うゲーム機本体に、通信手段における一般的技術である上記周知技術を適用することが格別に困難なものと認められないので、ゲーム機本体からゲーム機用操作装置に対しゲーム機用操作装置の機能を設定すること、即ち本願補正発明(1)の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

3.作用効果・判断
そして、本願補正発明(1)における作用効果は、引用例1に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が当然予測できるものである。
したがって、本願補正発明(1)は、引用例1に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【5】むすび
以上のとおり、本願補正発明(1)は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定において読み替えて準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下されるべきものである。
よって、上記「補正の却下の決定の結論」のとおり決定する。

【6】本件補正(2)について
1.補正後の本願発明
平成13年12月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、前記【1】手続きの経緯に従い、本願は平成13年6月22日付けの手続補正書の明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1乃至29に記載された事項により特定されるものと認められる。(以下、「本件補正(2)」という。)

2.補正の適否の検討
一方、本件補正(2)の対象となる補正前の明細書は、平成12年10月30日付けの手続補正による明細書であるところ、その明細書の特許請求の範囲の請求項の数は27(請求項1乃至27)であるから、本件補正(2)による請求項の数29(請求項1乃至29)は、補正前の明細書の請求項数を増加させるものである。そして、このように請求項の数を増加させる補正は、特許法第17条の2第4項の各号の規定する、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の限定的減縮(第2号)、誤記の訂正(第3号)、明瞭でない記載の釈明(第4号)のいずれにも該当しないものと認められるから、当該規定に適合しない。

【7】むすび
以上のとおりであるから、本件補正(2)は、平成15年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。(尚、増項補正が認められないことについては、東京高裁平成16年4月14日判決(平成15年(行ケ)第230号)、知財高裁平成17年4月25日判決(平成17年(行ケ)第10192号)を参照。)
よって、平成13年6月22日付けの手続補正を却下する。

【8】本願発明について
1.本願発明
平成13年12月7日付けの手続補正、及び平成13年6月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、前記【1】手続きの経緯に従い、本願発明は平成12年10月30日付けの手続補正書の明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に特定される以下のとおりのものである。
「記録媒体の再生機能を有し、複数の操作子による操作データをゲーム機用操作装置から受信し、かつ、上記ゲーム機用操作装置に対して所定の制御データを送信する双方向通信手段を有するゲーム機において、
上記ゲーム機用操作装置が有する不揮発性格納手段に格納され、且つゲーム機から設定可能な上記ゲーム機用操作装置の機能に関する機能情報を取り込み、上記機能情報に基づいて該ゲーム機用操作装置の機能を設定する、ことを特徴とするゲーム機。」

2.引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記【3】1.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明(1)から前記【2】2.で検討した限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに、上記限定事項を付加したものに相当する本願補正発明(1)が、前記【4】2.で検討したとおり、引用例1に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

【9】むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載の発明及び周知技術津に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
 
審理終結日 2006-09-29 
結審通知日 2006-10-03 
審決日 2006-12-01 
出願番号 特願平9-242065
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 悟秋山 斉昭宮本 昭彦  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 辻野 安人
塩崎 進
発明の名称 ゲーム機、ゲーム機用操作装置、ゲームシステム、ゲーム機の双方向通信方法、及びゲームシステムの動作プログラムが記憶されている記憶媒体  
代理人 三品 岩男  

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