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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1150398
審判番号 不服2003-7388  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-03-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-30 
確定日 2007-01-11 
事件の表示 平成11年特許願第238993号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月13日出願公開、特開2001- 62079〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願の手続の経緯
本願は、平成11年8月25日に出願したものであって、平成13年10月18日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成13年12月27日付けで手続補正がなされ、平成14年6月5日付けで拒絶理由が通知され、再びこれに対し平成14年8月12日付けで手続補正がなされ、平成15年4月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成15年4月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年5月30日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成15年5月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年5月30日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成15年5月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項に特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部を設け、所定条件の成立により、当該図柄表示部に所定の図柄が確定表示され、大入賞口が所定回数繰り返し開成する特別遊技状態が生起する遊技機であって、
前記所定条件成立の判定のために、更新範囲が異なる相互に同期しない第1乱数発生手段及び第2乱数発生手段を有し、
前記第1乱数発生手段の値が特別遊技状態生起値の場合には直ちに前記所定条件の成立を確定し、
前記第1乱数発生手段の値が第2乱数移行値の場合には前記第2乱数発生手段の値により前記所定条件の成立を判定し、 更に、前記第2乱数発生手段に対する判定値の範囲を複数用意し、選択手段によりこれら複数の判定値の範囲の何れかを選択可能とし、第2乱数発生手段の値がその選択された判定値の範囲内の値であった場合には、前記所定条件の成立とすることを特徴とする遊技機。」

2.補正の適否の検討
本願補正発明に係る請求項1の補正は、平成14年8月12日付けで補正された【請求項1】に記載の「第2乱数発生手段」に関して、「第2乱数発生手段の値により前記所定条件の成立を判定する」を、「第2乱数発生手段の値により前記所定条件の成立を判定し、更に、前記第2乱数発生手段に対する判定値の範囲を複数用意し、選択手段によりこれら複数の判定値の範囲の何れかを選択可能とし、第2乱数発生手段の値がその選択された判定値の範囲内の値であった場合には、前記所定条件の成立とする」と限定的に特定するものであるから、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用例に記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開平11-151355号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「本発明の第1の実施の形態に係る遊技機の適用例であるパチンコ機の一例について、図1、図2および図3を参照して説明する。第1の実施の形態に係る遊技機は、二つの表示装置を備え、それらによって、第1および第2の抽選遊技を実行する形式の装置である。」(段落【0017】)
(イ)「さらに、本発明に係るパチンコ機は、図1に示すように、動作を制御する制御系を構成するものとして、制御装置30を備えている。制御装置30は、遊技盤面11の裏側等の機体内に取り付けられている。また、制御装置30には、遊技場内の他のコンピュータと接続するための通信制御装置(図示せず)が接続される。・・」(段落【0019】)
(ウ)「・・特に、例示したパチンコ機10は、遊技盤面11上の特定入賞口12への入賞に基づき、表示装置20(または21)によって表示されて行なわれる抽選遊技が当たりの場合には、価値発生装置40の可動片49の開放動作により遊技者に有利な特別価値状態が発生するように、制御装置30のプログラムに従って動作する機種の遊技機である。」(段落【0021】)
(エ)「制御装置30は、図1に示すように、コンピュータで構成され、制御のための処理を実行する中央処理装置(CPU)31と、CPU31が実行するプログラムおよび処理に用いるデータを格納する第1のメモリ32と、CPU31が使用する第2のメモリ33と、インタフェース34とを有する。」(段落【0022】)
(オ)「第1のメモリに32に格納されるプログラムとしては、抽選遊技を実行するための第1および第2の遊技実行手段を制御装置30に実現させるためものがある(図4および図5参照)。、は、例えば、入賞検知スイッチ13により入賞が通知されると、抽選遊技を実行して、その結果が、当たり、再抽選および外れのいずれであるかを判定すると共に、その抽選結果に対応する図柄パターンを前記表示装置20に表示させ、かつ、その抽選結果が当たりの場合、前記価値発生装置40の駆動を指示する信号を出力する処理を行わせる。また、第2の遊技実行手段としては、例えば、前記抽選結果が再抽選である場合に、図柄パターンのうちの一部の図柄について再抽選を行って、その結果が、前記再抽選の図柄パターンの内の一つと置き換えるとその図柄パターンが当たりおよび外れのいずれとなるかを判定すると共に、その抽選結果に対応する図柄を前記表示装置21に表示させ、かつ、その再抽選結果が当たりの場合、前記価値発生装置40の駆動を指示する信号を出力する処理を行わせる。」(段落【0023】)
(カ)「入賞検知スイッチ13の出力する入賞検知信号71は、制御装置30に入力される。制御装置30は、入賞検知スイッチ13から入賞検知信号71が入力されるごとに、第1の遊技である第1の抽選遊技を行なう。すなわち、図示しない乱数発生手段により無作為抽選を行う。無作為抽選における当たりは、予め定めた確率によって定まる。この場合の当たりには、複数の当たりの可能性がある。制御装置30は、抽選結果信号72を出力する。なお、本実施の形態では、当たりにランクを設けていない。しかし、当たりにランクを設けることもできる。」(段落【0024】)
(キ)「前記第1の遊技実行手段は、抽選結果として出すべき複数種の図柄パターンを有し、抽選結果に応じて対応する図柄パターンを表示装置に表示させる。本実施の形態では、スロットマシンを模擬して、複数種の図柄を三つのリール対応に用意し、抽選結果に対応して、三つの図柄からなるパターンを、当たり、再抽選、外れのそれぞれについて複数組み定めてある。」(段落【0025】)
(ク)「価値発生装置40は、球がそこに入ると入賞する入賞機構41と、当該入賞機構41の入口401を開閉する可動機構45とを有する。」(段落【0038】)
(ケ)「可動機構45は、例えば、入賞機構41の入口401の開閉に用いられる可動片(アタッカ)49と、この可動片49を開閉する駆動するソレノイド48と、ソレノイド48の開閉動作を制御する開閉制御装置46とを備えている。」(段落【0039】)
(コ)「本実施の形態では、入賞機構41における可動片49の開閉は、一定周期で、予め定めた特定回数、例えば、16回開閉することが設定される。ここでの当たりは、いわゆる「大当たり」または「フィーバー」に相当し、非常に多くの球が入賞可能となる。」(段落【0044】)
(サ)「図4において、制御装置30は、入賞検知スイッチ13からの入賞検知信号71が特定入賞口12に球が入賞したことを示す入賞検知信号を通知しているかを調べる(ステップ101)。ここで、入賞が通知された場合には、制御装置30は、第1の遊技として、第1の抽選を行うと共に、当たり、外れ、再抽選かを決定する(ステップ102)。抽選は、例えば、予め定めた図柄パターン群の中から無作為に選ぶことで行なう。したがって、抽選の結果、いずれかの図柄パターンが決定される。」(段落【0048】)
(シ)「制御装置30は、抽選の結果が、当たり、外れ、再抽選かの判定を行う(ステップ103)。その結果、外れであれば、外れの図柄パターンの表示を表示装置20に行わせて処理を終了する(ステップ109)。また、当たりであれば、当たりの図柄パターンの表示を表示装置に行わせて(ステップ104)、価値発生装置40の開閉制御装置46を起動して、処理を終了する(ステップ105)。なお、当たりの場合には、当たりの図柄を表示すると共に、イルミネーション装置60および音響装置902に対して、当たり表示の際の雰囲気を盛り上げるための照明および音響の発生を指示する。」(段落【0049】)
(ス)「一方、制御装置30は、抽選の結果が、例えば、図3に示すように、二つの「6」と、ハートの図形とが一列に並んでいると、再抽選の条件を満たしているので、再抽選の図柄パターンを表示すると共に、音響装置90に対して、「もう一回リーチね」、「再度アタックね」といったメッセージを出力させ、遊技者に、再抽選が行なわれる旨を報知する(ステップ106)。その後、再抽選処理を行って(ステップ107)、その結果の判定を行う(ステップ108)。ここで、再抽選が当たりかどうかは、例えば、図柄パターンのうちの一部の図柄について再抽選を行って、その結果が、前記再抽選の図柄パターンの内の一つと置き換えるとその図柄パターンが当たりおよび外れのいずれとなるかによって決定する。」(段落【0050】)
(セ)「当たりであれば、前述したステップ104に進んで、当たりとしての処理が行われる。また、外れであれば、外れの図柄パターンの表示を表示装置20に行わせて処理を終了する(ステップ109)。」(段落【0051】)
(ソ)「次に、再抽選処理について、図5を参照して説明する。図5は、本実施の形態における再抽選処理の流れを示す。この例では、優遇パターンが存在する場合も考慮している。」(段落【0053】)
(タ)「まず、再抽選パターンが、特別処理が必要な「優遇パターン」であるかを調べる(ステップ1901)。特別処理が必要でなければ、再抽選を実行する(ステップ1092)。この再抽選処理は、再抽選パターンを構成する図柄が数字のみであれば、0?9の数字のいずれかを無作為で選んで決定する。また、再抽選パターンを構成する図柄が数字の他の図柄を含む場合には、0?9の数字およびそれ以外の図柄の群の中から、いずれかを無作為で選んで決定する。」(段落【0054】)
(チ)「一方、特別の処理を行う場合には、第1の遊技での抽選結果である再抽選パターンを構成する図柄を調べ、当たり図柄を検出する(ステップ1093)。その上で、その図柄と同じ図柄を抽選結果として決定する(ステップ1094)。」(段落【0055】)
(ツ)「これにより、特別処理がなされていない場合には、無作為で、第2の遊技の結果として抽選結果が得られ、また、特別処理の場合には、必ず当たりとなる抽選結果が得られる。これらの抽選結果については、前述した図4のステップ108で判定される。以後の処理は、前述した通りである。」(段落【0056】)
(テ)「価値発生装置40は、制御装置から当たりの通知を受けると、開閉制御装置46が起動されて、予め定めた周期および回数で、ソレノイドを駆動させて、可動片(アタッカ)を開閉させる。」(段落【0057】)
(ト)「このように、特定入賞口12への球の入賞によって抽選が行われ、当たりの場合には、特別価値の発生が行われ、惜しくも当たりではなかった場合のうち、特別の場合には、再抽選となり、再度、遊技が行なわれて、その結果、当たりであれば、当たりとしての特別価値を受けることができる。したがって、リーチとなった後、惜しくも外れ場合であっても、再抽選により当たりを期待することができ、遊技者の失望感が生じることを低減することができる。それに伴って、当たりへの期待を持続させることが可能となる。」(段落【0058】)

上記記載事項(ア)乃至(ト)の記載及び図面からみて、引用例には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明1>
「複数種の図柄を表示させる表示装置20を設け、抽選遊技が当たりの場合に抽選結果に対応する図柄パターンを前記表示装置20に表示させ、価値発生装置40の可動片49を例えば、16回開閉するパチンコ機10であって、
抽選遊技を実行するために、制御装置30に第1の遊技実行手段と第2の遊技実行手段を備え、乱数発生手段により無作為抽選を行い、第1の遊技実行手段としては、抽選を行って、当たり、外れ、再抽選かを決定し、その結果が、当たり、再抽選および外れのいずれであるかを判定し、抽選結果が当たりの場合、当たりの図柄パターンの表示を表示装置20に行わせて、価値発生装置40の可動片49の開放動作により遊技者に有利な特別価値状態が発生し、抽選の結果が再抽選の場合、第2の遊技実行手段としては、再抽選処理を行って、その結果が当たりであれば、価値発生装置40の可動片49を予め定めた回数で開閉させるパチンコ機10。」

(2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開平3-80884号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ナ)「(1)遊技盤面に配設された始動入賞口への入賞に基いて複数種の識別情報を予め設定された所定時間変動表示させる可変表示装置と、
該可変表示装置の変動表示の停止に基いて前記可変表示装置に停止表示される停止識別情報を予め定められた手順に基いて前記複数種の識別情報から選択する識別情報選択装置と、
該識別情報選択装置に選択された停止識別情報を判定する判定装置と、
該判定装置に判定された停止識別情報が予め定められた特定識別情報である場合に前記遊技盤面に配設された大入賞口を開放する可変入賞球装置とを設けたパチンコ機において、
前記識別情報選択装置に前記特定識別情報または非特定識別情報を選択する第1選択部と、該第1選択部によって選択された前記特定識別情報の種別または非特定識別情報を選択する第2選択部とを設けたことを特徴とするパチンコ機。」(特許請求の範囲)
(ニ)「識別情報選択装置8は、停止識別情報の図柄を表わす数値データを発生させ、発生させた数値データを判定装置9と可変表示装置1とに入力するものである。本発明にあっては、識別情報選択装置8に第1選択部19と第2選択部20とを設けている。第1選択部19は特定識別情報または非特定識別情報を選択するためのもので、第2選択部20は第1選択部19によって選択された特定識別情報の種別または非特定識別情報を選択するためのものである。第1選択部19には第1乱数発生回路21を設ける一方、第2選択部20には第2乱数発生回路22を設けている。」(第5頁左上欄第10行?同頁右上欄第17行)
(ヌ)「さらに詳しく説明すれば、第1乱数発生回路21は、パチンコ機3の制御プログラムの処理がlサイクル終了し、4msec周期のリセット信号の入力待機時間を利用して、数値を更新してゆき、「0」ないし「63」の範囲でこの演算を繰り返す。他方第2乱数発生回路22は、第1乱数発生回路21が「0」ないし「63」の数値を全て更新したのち、上記同様に「l」づつ加算することにより数値を更新してゆく(第9図参照)
そして第2乱数発生回路22は、第9図に示すように「0」ないし「11」の範囲で上記演算を行う。左および中の表示素子2に表示される停止識別情報は各8種類、同右用のものは12種類有している。すなわち3桁の表示素子2,2,2に表示される停止識別情報に係る数値データの組み合わせNは、
N=8x8x12=768
768通りあることになる。このうち、停止識別情報の組み合わせNを、4msec周期のリセット信号か入力される毎に、「l」づつ加算することによって作成しているが、3桁全てが、「1」、「4」、または「7」に相当する3種類の特定識別情報(大当り)に係る上記数値の組み合わせは除かれている。これにより第2乱数発生回路22は、765通りの非特定識別情報(はずれ)に係る数値データの組み合わせを作成することになる(後述)。すなわち第2乱数発生回路22は上記「0」ないし「11」の演算とは別個に、非特定識別情報に係る数値データを更新してゆく(第10図参照)。」(第5頁右上欄第18行?同頁右下欄第8行)

上記記載事項(ナ)乃至(ヌ)の記載及び図面からみて、引用例には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明2>
「遊技盤面に配設された可変表示装置と、
前記可変表示装置に停止表示される停止識別情報を予め定められた手順に基いて複数種の識別情報から選択する識別情報選択装置と、
該識別情報選択装置に選択された停止識別情報を判定する判定装置と、
該判定装置に判定された停止識別情報が予め定められた特定識別情報である場合に大入賞口を開放する可変入賞球装置とを設けたパチンコ機において、
前記識別情報選択装置に前記特定識別情報または非特定識別情報を選択する第1選択部と、該第1選択部によって選択された前記特定識別情報の種別または非特定識別情報を選択する第2選択部とを設け、第1選択部19には第1乱数発生回路21を設ける一方、第2選択部20には第2乱数発生回路22を設け、第1乱数発生回路21は、パチンコ機3の制御プログラムの処理がlサイクル終了し、4msec周期のリセット信号の入力待機時間を利用して、数値を更新してゆき、「0」ないし「63」の範囲でこの演算を繰り返し、他方第2乱数発生回路22は、第1乱数発生回路21が「0」ないし「63」の数値を全て更新したのち、上記同様に「l」づつ加算することにより数値を更新してゆき、「0」ないし「11」の範囲で演算を行うパチンコ機。」

4.対比
本願補正発明と引用発明1との対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「複数種の図柄」が本願補正発明の「複数の図柄」に相当し、以下同様に、「表示させる」が「可変表示可能」に、「表示装置20」が「図柄表示部」に、「抽選遊技が当たりの場合」が「所定条件の成立」に、「抽選結果に対応する図柄パターンを前記表示装置20に表示」が「図柄表示部に所定の図柄が確定表示」に、「可価値発生装置40の可動片49」が「大入賞口」に、「予め定めた回数で開閉」が「所定回数繰り返し開成」に、「特別価値状態が発生」が「特別遊技状態が生起」に、「パチンコ機10」が「遊技機」にそれぞれ相当している。
また、引用例1の上記記載事項(オ)「抽選遊技を実行するための第1および第2の遊技実行手段を制御装置30に実現させるためものがある・・例えば、・・入賞が通知されると、抽選遊技を実行して、その結果が、当たり、再抽選および外れのいずれであるかを判定する・・第2の遊技実行手段としては、・・抽選結果が再抽選である場合に、・・再抽選を行って、当たりおよび外れのいずれとなるかを判定する」、同じく記載事項(カ)「・・制御装置30は、・・第1の遊技である第1の抽選遊技を行なう。すなわち、図示しない乱数発生手段により無作為抽選を行う。・・」、同じく記載事項(シ)「制御装置30は、抽選の結果が、当たり、外れ、再抽選かの判定を行う・・」、同じく記載事項(タ)「・・再抽選処理は、再抽選パターンを構成する図柄が数字のみであれば、0?9の数字のいずれかを無作為で選んで決定する。・・」なる記載に基づけば、第1の遊技実行手段は、乱数発生手段により、当たり、外れ、再抽選の無作為抽選が行われ、且つ、再抽選の場合は、第2の遊技実行手段において、当たり、外れの無作為抽選が行われており、第1の遊技実行手段及び第2の遊技実行手段は、当たりを判定する抽選結果を決定するために、それぞれが乱数発生手段としての機能を実質的に具備するといえるから、引用発明1の「第1の遊技実行手段」及び「第2の遊技実行手段」は、本願補正発明と「所定条件成立判定のために、第1乱数発生手段及び第2乱数発生手段」の構成を共通に具備する点で一致している。
そして、引用発明1の「第1の遊技実行手段」は、引用例1の上記記載事項(シ)「制御装置30は、抽選の結果が、・・当たりであれば、当たりの図柄パターンの表示を表示装置に行わせて・・価値発生装置40の開閉制御装置46を起動して、処理を終了する・・」なる記載に基づけば、第1の遊技実行手段の抽選の結果が特別価値状態が発生する値の場合には直ちに当たりの成立を確定するから、本願補正発明と同様に、「第1乱数発生手段の値が特別遊技状態生起値の場合には直ちに前記所定条件の成立を確定」する機能を備えるといえる。
また、引用発明1の「第2の遊技実行手段」は、上記記載事項(オ)「第2の遊技実行手段としては、・・前記抽選結果が再抽選である場合に、・・再抽選を行って、その結果が、・・当たりおよび外れのいずれとなるかを判定すると共に、・・」なる記載に基づけば、第1の遊技実行手段の抽選の結果が再抽選になる値の場合には、第2の遊技実行手段で再抽選が行われ、再抽選結果の値により、当たりの成立が判定されるから、本願補正発明と同様に「第1乱数発生手段の値が第2乱数移行値の場合には第2乱数発生手段の値により所定条件の成立を判定」する機能を備えるものといえる。

してみると、引用発明1と本願補正発明とは、

「複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部を設け、所定条件の成立により、当該図柄表示部に所定の図柄が確定表示され、大入賞口が所定回数繰り返し開成する特別遊技状態が生起する遊技機であって、
前記所定条件成立の判定のために、第1乱数発生手段及び第2乱数発生手段を有し、
前記第1乱数発生手段の値が特別遊技状態生起値の場合には直ちに前記所定条件の成立を確定し、
前記第1乱数発生手段の値が第2乱数移行値の場合には前記第2乱数発生手段の値により前記所定条件の成立を判定する遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
第1乱数発生手段及び第2乱数発生手段が、本願補正発明においては、更新範囲が異なり、且つ、相互に同期しない乱数発生手段であるのに対し、引用発明1においては、更新範囲が異なる相互に同期しない乱数発生手段であるか否か明らかでない点。

<相違点2>
第2乱数発生手段が、本願補正発明においては、判定値の範囲を複数用意し、選択手段により複数の判定値の範囲の何れかを選択可能とし、値が選択された判定値の範囲内の値であった場合に、所定条件が成立するのに対し、引用発明1においては、判定値の範囲を選択可能な選択手段を備えているか否か明らかでない点。

5.相違点についての検討
<相違点1>について
パチンコ機分野において、通常、乱数発生手段を用いるのは、乱数を発生させて各抽出される値をランダムな関係にすることが目的であり、そうする際に、同期しないように行うことは抽出対象の如何によらず、従来から行われる周知技術(例えば、特開平11-9786号公報(段落【0061】)、特開平11-99251号公報(段落【0115】)参照)であり、また、乱数発生手段を複数備える場合に、乱数発生手段の発生時期や抽出時期の如何によらず、更新範囲を異ならせることも、従前から行われる周知技術(例えば、引用例2(上記記載事項(ヌ))、特開平6-198044号公報(段落【0015】?【0017】)参照)であるから、引用発明1の第1乱数発生手段及び第2乱数発生手段の更新範囲が異なり、且つ、相互に同期しないようにすることは、当業者が適宜に設定し得る設計事項にすぎないものといえる。

<相違点2について>
第2乱数発生手段の判定値の範囲を複数用意し、選択手段により複数の判定値の範囲の何れかを選択可能とし、値が選択された判定値の範囲内の値であった場合に、所定条件が成立する点に関して、値が選択された判定値の範囲内の値であった場合に所定条件が成立するように、選択手段により複数の判定値の範囲を選択可能とすることは、本願補正発明の明細書の記載によれば、カウンタにおける「当たり値」の範囲が各種選択され、値が選択された「当たり値」の範囲内の値であった場合に所定条件が成立するものと解される。(明細書の段落【0024】?【0030】参照)
ところで、乱数発生手段を備えるパチンコ機分野において、確立の設定を設定手段の操作により行うことは、広く採用される周知技術(例えば、特開平9-99140号公報(段落【0039】、【0040】、【0046】?【0048】)、特開平11-164957号公報、特開平8-38706号公報(段落【0063】?【0065】、また、第2乱数生成装置の確率値を数段階に設定する点も記載されている。)参照、以下、「周知技術A」という。)である。
また、カウンタにおける「当たり値」の範囲が各種選択され、値が選択された「当たり値」の範囲内の値であった場合に、所定条件が成立することも、従来周知の技術(例えば、特開平9-99140号公報(段落【0039】)、特開平10-137403号公報(段落【0066】)、特開平10-328371号公報(段落【0010】)参照、以下、「周知技術B」という。)といえる。
そうすると、引用発明1と上記周知技術A,Bは、共に乱数発生手段の抽選結果により所定条件が成立する点で機能が共通しており、引用発明1の第2乱数発生手段に、選択手段を付加することに格別に技術的困難性は認められないから、引用発明1の第2乱数発生手段に、確立の設定を設定手段の操作により行う上記周知技術A、及びカウンタにおける「当たり値」の範囲が各種選択され、値が選択された「当たり値」の範囲内の値であった場合に、所定条件が成立する上記周知技術Bを適用し、第2乱数発生手段に判定値の範囲を複数用意し、選択手段により複数の判定値の範囲の何れかを選択可能とし、値が選択された判定値の範囲内の値であった場合に、所定条件が成立すること、即ち、本願補正発明に係る相違点2を構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

6.作用効果・判断
そして、本願補正発明における作用効果は、引用発明1,及び上記周知技術に基づいて当業者が当然予測できるものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明1,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下されるべきものである。
よって、上記「補正の却下の決定の結論」のとおり決定する。

【3】本願発明について
1.本願発明
平成15年5月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年8月12日付けの手続補正書の明細書及び図面の記載からみて、以下のとおりである。
「【請求項1】複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部を設け、所定条件の
成立により、当該図柄表示部に所定の図柄が確定表示され、大入賞口が所定回数繰り返し開成する特別遊技状態が生起する遊技機であって、
前記所定条件成立の判定のために、更新範囲が異なる相互に同期しない第1乱数発生手段及び第2乱数発生手段を有し、
前記第1乱数発生手段の値が特別遊技状態生起値の場合には直ちに前記所定条件の成立を確定し、
前記第1乱数発生手段の値が第2乱数移行値の場合には前記第2乱数発生手段の値により前記所定条件の成立を判定することを特徴とする遊技機。」

2.引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、前記【2】3.に摘記したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から前記【2】2.で検討した限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに、上記限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記【2】5.で検討したとおり、引用発明1,及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1,及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1,技術常識及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-28 
結審通知日 2006-10-03 
審決日 2006-12-01 
出願番号 特願平11-238993
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 英司  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 塩崎 進
辻野 安人
発明の名称 遊技機  
代理人 中山 千里  
代理人 山本 尚  

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