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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G09B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09B 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 G09B |
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管理番号 | 1150421 |
審判番号 | 不服2004-7633 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-01-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-04-15 |
確定日 | 2007-01-11 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第166857号「展示場用建物」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月22日出願公開、特開平11- 15363〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年6月24日に出願したものであって、平成16年3月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月15日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月7日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。 2.平成16年5月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年5月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正により、特許請求の範囲は、 「【請求項1】 展示場に建設される展示場用建物であって、壁パネルによって構成した外壁を有し、屋外から建築物の内部構造躯体が見えるように少なくとも前記外壁を構成する壁パネルの一部が除去されていることを特徴とする展示場用建物。 【請求項2】 外壁を構成する壁パネルが補強鉄筋を埋設したコンクリート系壁材であり、前記外壁を構成する壁パネルの除去部分から前記補強鉄筋がみえるように露出していることを特徴とする請求項1に記載した展示場用建物。 【請求項3】 外壁を構成する壁パネルの除去部分の内部に位置する内壁及び床材を構成する床パネルの一部が除去され、屋外から床下部分が見えるようになされていることを特徴とする請求項1又は2に記載した展示場用建物。 【請求項4】 外壁を構成する壁パネルの除去部分が透明部材で外部と遮断されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載した展示場用建物。 【請求項5】 外壁を構成する壁パネルの除去部位が玄関脇の部分を構成する壁パネルであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載した展示場用建物。」 から 「【請求項1】 展示場に建設される展示場用建物であって、補強鉄筋を埋設したコンクリート系壁材によって構成した外壁を有し、屋外から建築物の内部構造躯体が見えるように少なくとも前記外壁の一部が除去され、該外壁の除去部分から前記補強鉄筋がみえるように露出していることを特徴とする展示場用建物。 【請求項2】 外壁の除去部分の内部に位置する内壁及び床材の一部が除去され、屋外から床下部分が見えるようになされていることを特徴とする請求項1に記載した展示場用建物。 【請求項3】 外壁の除去部分が透明部材で外部と遮断されていることを特徴とする請求項1又は2に記載した展示場用建物。 【請求項4】 外壁の除去部位が玄関脇の部分を構成する外壁であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載した展示場用建物。」 と補正された。 (2)補正目的についての検討 請求人は、平成16年5月7日付けの審判請求書についての手続補正書第3頁下から第12?9行で「請求項1の「補強鉄筋を埋設したコンクリート系壁材によって構成した外壁を有し、」及び「外壁の除去部分から前記補強鉄筋がみえるように露出している」との補正は、願書に最初に添付した明細書に於ける請求項1に対し、請求項2を要件として合体させることで減縮したものであり」と述べているので、補正前の請求項1及び2が補正後の請求項1に、補正前の請求項3?5が補正後の請求項2?4にそれぞれ対応するものと一応考えられる。 しかしながら、「外壁」について、補正前後を比較すると、補正前の各請求項は「壁パネルによって構成した外壁」、「外壁を構成する壁パネル」と記載され、壁パネルによって構成されたもの(つまり、「パネル」という形状を有するもの)であったが、補正後の各請求項では「壁パネル」という文言が削除され、「パネル」という形状を有さないものが含まれることになった。 また、「床材」について、補正前の請求項3と補正後の請求項2を比較すると補正前は「床材を構成する床パネル」と記載されていたのが、「床材」と補正され、床材についても「パネル」という形状を有さないものが含まれることになった。 「外壁」、「床材」についての補正は、いずれも「パネル」という形状の限定を削除したものであるから、上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。 また、上記補正は、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもなく、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。 (3)独立特許要件についての検討 本件補正は上記のように補正目的に関して違反しているが、念のため独立特許要件に関しても検討しておく。 (a)補正後の本願発明 補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、以下の通りである。 「展示場に建設される展示場用建物であって、補強鉄筋を埋設したコンクリート系壁材によって構成した外壁を有し、屋外から建築物の内部構造躯体が見えるように少なくとも前記外壁の一部が除去され、該外壁の除去部分から前記補強鉄筋がみえるように露出していることを特徴とする展示場用建物。」 (b)先願発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平8-297578号(特開平10-123925号公報参照)の願書に最初に添附した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、次の事項が記載されている。 ア.【請求項1】 構造を断面状態で示してある展示部分を有することを特徴とする展示用ハウス。 イ.【0004】この発明は前記のような課題を解決するものであり、特に建築予定者が知りたい住宅の構造のうち、一般には住宅完成後は目に触れることができない内部構造や下地などを、営業マンの説明によることなく、建築予定者自身の目で確認および判断できるようにする展示用ハウスを提供することを目的とする。 ウ.【0011】図4は前記展示用ハウス1の1階部分を示し、ここでは、外壁13および内壁8,9によって、下地展示ルーム10,構造展示ルーム11および完成展示ルーム12に分けられており、下地展示ルーム10内は、前記透明材7および掃出し窓2を通して外からルーム内が観察できるようになっている。また、ルーム内をこれの側面側から観察し易いように外壁13の一部に切欠部14が設けられている。 エ.【0012】そして、この下地展示ルーム10では、床としてのフローリング15、このフロールング15を支持する図6に示すような根太15a(必要に応じ大引き)、この根太15aを支持する下地モルタル部16、この下地モルタル部16を支持するコンクリート床17およびこのコンクリート床17が打設される割りぐり石などを含む地盤部18が、切断部Aで切断されて、全体の構造が切断面によって観察できるようになっている。 オ.【0013】また、外壁13を取り付けたり、後述の梁を支持する支柱19は裸とされて、割りぐり石(図示しない)上に配力筋を施してコンクリートが打設施工されたフーチング20上の前記布基礎4の角部に、ボルト固定されている。そして、このフーチング20の構造を断面で見えるようにするため、そのフーチング20周辺の地盤が掘削されている。なお、この下地展示ルーム10内では、フローリング15が施工されている部位上には、完成展示ルーム12における場合と同様の水場設備21などの諸設備が、図4および図6に示すように配設されている。 カ.【0015】図5は前記展示用ハウス1の2階部分を示し、1階部分の切断部Aに略対応する部位の床部が切断され、その切断部Bに、フローリング31,コンパネ材32,根太33および天井材34の各構造部材および断面構造が、前記フローリング31上に居ながらにして観察できるようになっている。 キ.【0016】また、この2階部分のフローリング31上においても、前記支柱19や外壁側の梁35,掃出し窓枠(図示しない),天井36,屋根6に至るまでの各構造材の配置や取付構造を容易に看取できる。また、この2階のフローリング31上の別の場所には、内壁や家族で使う水場設備などが適当に配置されている。なお、41は顧客である建築予定者が2階の展示場に昇降するための外付け階段である。 ク.【図1】から、切断部A、Bにおいて、根太が露出していること、支柱や梁が展示用ハウスの外から見えることが看取できる。 ケ.【図4】、【図5】は、それぞれ展示ハウスの1、2階部分を示す平断面図であって、外壁13(斜線でハッチングされている。)は、透明材7で囲まれた部分においては、除かれて設けられていることが看取できる。 上記記載及び図面を含む先願明細書全体の記載から、上記先願明細書には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が開示されていると認められる。 「展示用ハウスであって、外壁13を有し、屋外から建築物の支柱19や梁35が見えるように少なくとも前記外壁13の一部が除かれて設けられている展示用ハウス。」 (c)対比 本願補正発明と先願発明とを比較すると、先願発明の「展示用ハウス」、「支柱19や梁35」は、それぞれ本願補正発明の「展示場に建設される展示場用建物」、「内部構造躯体」に相当するから、両者は、 「展示場に建設される展示場用建物であって、外壁を有し、屋外から建築物の内部構造躯体が見えるように少なくとも前記外壁の一部が除去されている展示場用建物。」 の点で一致し、以下の点で一応相違している。 [相違点]外壁に関し、本願補正発明は、補強鉄筋を埋設したコンクリート系壁材によって構成したものであり、該外壁の除去部分から前記補強鉄筋がみえるように露出しているのに対し、先願発明は、外壁の材料がどのようなものであるか明らかでなく、したがって、補強鉄筋が露出しているか否か明らかでない点。 (d)判断 上記相違点について検討する。 先願発明は、展示用ハウスであるから、住宅メーカーの販売予定の住宅に合わせ、同じ外壁を用いることが当然である。また、床のような面部分に配置される長尺材料である根太は、切断面のみでは面に対してどのように配置されているか理解し難いので、上記ク.【図1】のように、切断部A、Bにおいて、根太が露出して配置されている。先願明細書の記載イ.には、「特に建築予定者が知りたい住宅の構造のうち、一般には住宅完成後は目に触れることができない内部構造や下地などを、営業マンの説明によることなく、建築予定者自身の目で確認および判断できるようにする展示用ハウスを提供することを目的とする。」と記載されているから、住宅完成後は目に触れることができない部分を目で確認および判断できるように、販売予定の住宅と同じ材料を用い、内部構造や下地などを十分表すことが求められているものである。 一方、外壁材料として、補強鉄筋を埋設したコンクリート系壁材は周知技術(例えば、特開平6-129070号公報、実公平4-4084号公報、実公平4-4083号公報)であるから、補強鉄筋を埋設したコンクリート系壁材を有する住宅を販売する場合は、展示用ハウスにおいても補強鉄筋を埋設したコンクリート系壁材を採用することは、具現化に際し、当然採用すべき事項であり、先願明細書に記載の目的を達成するために、住宅完成後は目に触れることができない長尺材である補強鉄筋を根太と同様に露出させることは、設計上の微差にすぎず、実質的に開示されているに等しいものといえる。 したがって、本願補正発明は、先願発明と同一であり、しかも、本願補正発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願補正発明は、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、仮に、そうでないとしても特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成16年5月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年1月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「展示場に建設される展示場用建物であって、壁パネルによって構成した外壁を有し、屋外から建築物の内部構造躯体が見えるように少なくとも前記外壁を構成する壁パネルの一部が除去されていることを特徴とする展示場用建物。」 (1)先願発明 原査定の拒絶の理由に引用された先願明細書及びその記載事項は、前記「2.(3)(b)」に記載したとおりである。 (2)対比 本願発明と先願発明とを比較すると、先願発明の「展示用ハウス」、「支柱19や梁35」は、それぞれ本願発明の「展示場に建設される展示場用建物」、「内部構造躯体」に相当するから、両者は、 「展示場に建設される展示場用建物であって、外壁を有し、屋外から建築物の内部構造躯体が見えるように少なくとも前記外壁の一部が除去されている展示場用建物。」 の点で一致し、以下の点で一応相違している。 [相違点]外壁に関し、本願発明は、壁パネルによって構成したものであり、外壁を構成する壁パネルの一部が除去されているのに対し、先願発明は、外壁の形状がどのようなものであるか明らかでなく、したがって、壁パネルの一部が除去されているか否か明らかでない点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 先願発明は、展示用ハウスであるから、住宅メーカーの販売予定の住宅に合わせ、同じ外壁を用いることが当然である。また、外壁として、壁パネルは周知技術(例えば、特開平6-129070号公報、実公平4-4084号公報、実公平4-4083号公報)であるから、壁パネルを有する住宅を販売する場合は、展示用ハウスにおいても壁パネルを採用することは、具現化に際し、当然採用すべき事項であり、外壁を構成する壁パネルの一部が除去されることは、外壁として壁パネルを採用した結果、当然生じる事項であり、実質的に開示されているに等しいものといえる。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-09 |
結審通知日 | 2006-11-14 |
審決日 | 2006-11-27 |
出願番号 | 特願平9-166857 |
審決分類 |
P
1
8・
16-
Z
(G09B)
P 1 8・ 575- Z (G09B) P 1 8・ 572- Z (G09B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 植野 孝郎 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
國田 正久 長島 和子 |
発明の名称 | 展示場用建物 |
代理人 | 中川 裕幸 |