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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1150444
審判番号 不服2004-25710  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-04-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-16 
確定日 2007-01-11 
事件の表示 特願2002-196140「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月11日出願公開、特開2003-110064〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、特許法第41条の規定に基づく優先権主張を伴う平成14年7月4日(優先日、平成13年7月26日)に出願したものであって、原審において平成16年8月6日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成16年10月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成16年11月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年12月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成17年1月14日付けで手続補正書が提出されたところ、平成17年4月12日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成17年6月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

II.平成17年6月13日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年6月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1?7のうち、請求項1は次のとおりに補正された。
「【請求項1】発熱素子と、この発熱素子の両面から放熱するための一対の放熱板とを備え、前記一対の放熱板の一面が露出するように装置のほぼ全体を樹脂でモールドした半導体装置において、
前記発熱素子の厚さ寸法をt1とし、前記一対の放熱板のうちの少なくとも一方の放熱板の厚さ寸法をt2としたときに、予め前記発熱素子における圧縮応力または前記発熱素子の表面におけるせん断応力を測定することにより、
t2/t1≧5
が成立するように構成すると共に、
前記発熱素子と前記放熱板とは、半田により接合されていることを特徴とする半導体装置。」

上記補正は、補正前の請求項1の「発熱素子の厚さ寸法をt1とし、前記一対の放熱板のうちの少なくとも一方の放熱板の厚さ寸法をt2としたときに、t2/t1≧5が成立するように構成する」ことについて、「発熱素子の厚さ寸法をt1とし、前記一対の放熱板のうちの少なくとも一方の放熱板の厚さ寸法をt2としたときに、予め前記発熱素子における圧縮応力または前記発熱素子の表面におけるせん断応力を測定することにより、t2/t1≧5が成立するように構成する」ことと補正したものである。
そこで、上記補正を検討すると、本願明細書の「本発明者らは、試作や実験等を実行することにより、上記厚さ比率の条件式が成立する構成であれば、半導体チップ2を保持するための圧縮応力を大きくすることができると共に、半導体チップ2の表面のせん断応力を低減することができることを確認した。」(段落【0028】)との記載から、「予め発熱素子(半導体チップ)における圧縮応力または半導体素子(半導体チップ)の表面のせん断応力を測定し」て、圧縮応力やせん断応力の好適条件を基にして「t2/t1≧5」について限定したものと理解されるから、上記補正は補正前の「発熱素子の厚さ寸法をt1とし、前記一対の放熱板のうちの少なくとも一方の放熱板の厚さ寸法をt2としたときに、t2/t1≧5が成立するように構成する」ことを限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、上記補正については、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内である。

次に、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかについて以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
平成17年4月12日付け拒絶理由通知の拒絶の理由に引用した本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2001-156219号公報(以下、「刊行物1」という。)、及び特開昭58-165348号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)刊行物1(特開2001-156219号公報)
(1a)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、半導体チップの上下から放熱する構成を有する半導体装置に関する。」

(1b)「【0007】 本発明は、上記問題点に鑑み、半導体チップの両面を放熱部材で挟んでなる構成を有する半導体装置において、放熱性を改善し、半導体チップの搭載位置のばらつきを抑えた半導体装置を提供することを目的とする。」

(1c)「【0031】 【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の半導体装置を上面から見た模式図であり、図2(a)は、図1におけるB-B断面を模式的に示す図であり、図2(b)は、図1におけるD-D断面を模式的に示す図である。図1および図2に示すように、平面的に配置された2つの半導体チップとしてのSiチップ1a、1bに対して、それらのSiチップ1a、1bの両面を挟む様にして、熱伝導性を有する接合部材2を介して一対の放熱部材である第1および第2の放熱部材3、4が接合されている。」

(1d)「【0039】 また、第1および第2の放熱部材3、4は、例えばCu(銅)等を用いている。接合部材2としては、高熱伝導接着部材を用いており、その様な部材としては、例えば半田やろう材などがある。」

(1e)「【0045】 そして、図1および図2に示すように、第1および第2の放熱部材3、4の各々の面のうちSiチップ1a、1bと対向する面とは反対側の面が露出した状態で、上述のように固定された各々のSiチップ1a、1bと各々の放熱部材3、4とが樹脂14により封止されている。図1において、この樹脂14の外枠が破線で示されている。・・・」

(1f) 図2には、半導体装置のほぼ全体が樹脂14により封止されていることが記載されている。

(2)刊行物2(特開昭58-165348号公報)
(2a)「1.一つまたは複数個の半導体素子を一つのパッケージに組み込んだ半導体装置において、素子にろう付された配線板の面積を、パッケージの素子を含む面に平行な断面積の1/2以上にし、さらに配線板の厚さを素子の厚さの2倍以上にしたことを特徴とする半導体装置の配線板。」(特許請求の範囲)

(2b)「従来の放熱効率を向上させる技術としては・・・を用いたりしている。しかし、これらの技術はいずれも生産原価を上昇させ、また素子に発生する熱応力の低減の妨げとなつていた。」(第1頁左欄16行?第1頁右欄3行)

(2c)「本発明は、素子で発生する熱の放熱効率を向上されることを目的とする。」(第1頁右欄20行?第2頁左上欄1行)

(2d)「下配線板6および上配線板7は、・・・さらに素子1の厚さの2倍以上の厚さを有しているので、熱伝導性に優れ、熱容量が大きい。素子1で発生した熱は、2つの経路で逃げることができる。1つは下配線板6,絶縁板4を経て放熱板5へ至る経路である。このとき素子1で発生した熱はすみやかに下配線板6全体に広がるので、放熱は下配線板6の下側全体で起こり、放熱効率が向上する。」(第2頁左上欄12行?第2頁右上欄1行)

3.対比・判断
上記摘記事項(1a)?(1f)を総合すると、刊行物1には、「Siチップと、このSiチップの両面から放熱するための一対の放熱部材を備え、前記一対の放熱部材のうち一面が露出した状態で、装置のほぼ全体が樹脂により封止された半導体装置において、前記Siチップと前記放熱部材とは、半田からなる接合部材により接合されている半導体装置」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていることになる。

そこで、本願補正発明1と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「Siチップ」、「放熱部材」、及び、「封止」は、本願補正発明1の「発熱素子」、「放熱板」、及び、「モールド」にそれぞれ相当しているから、両者は、「発熱素子と、この発熱素子の両面から放熱するための一対の放熱板とを備え、前記一対の放熱板の一面が露出するように装置のほぼ全体を樹脂でモールドした半導体装置において、前記発熱素子と前記放熱板とは半田により接合されている半導体装置」の点で一致し、次の点で相違する。
相違点:本願補正発明1が、発熱素子の厚さ寸法をt1とし、一対の放熱板のうちの少なくとも一方の放熱板の厚さ寸法をt2としたときに、予め前記発熱素子における圧縮応力または前記発熱素子の表面におけるせん断応力を測定することにより、t2/t1≧5が成立するように構成したのに対し、刊行物1発明では、発熱素子の厚さ寸法と放熱板の厚さ寸法について、そのように特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
上記刊行物2には、素子に発生する熱応力の低減を図り、素子で発生する熱の放熱効率を向上させるために、放熱機能のある配線板の厚さを、発熱素子の厚さの2倍以上にすること、即ち、発熱素子の厚さ寸法をt1、放熱板の厚さ寸法をt2としたときに、t2/t1≧2が成立することが記載されており(上記摘記(2a)?(2d))、これは本願補正発明で特定する「t2/t1≧5」と重複している。
更に、従来から、発熱素子の厚さ寸法t1と放熱板の厚さ寸法t2の比であるt2/t1を5以上にすることも 次の文献に示されているように周知のことである。

周知例1:特開平8-222668号公報、発熱素子であるICチップ11の厚さ寸法が0.4mmであり、放熱板であるヒートスプレッダー12の厚さ寸法が0.3?2.0mmであること、かつ、ヒートスプレッダーの厚さが厚くなるほど熱の放出がスムーズになること(段落【0031】、【0037】、【0045】、図1)

周知例2:国際公開第00/55914号、放熱板である吸熱部材(heat extraction member)204の厚さ寸法が0.25mm?5.0mm、発熱素子のLEDチップ(LED chip)202の厚さ寸法が.008?.016”[インチ](0.2032?0.5080mm)であり、t2/t1≧5を満たす部分があること(12頁31行?13頁1行、22頁15?20行、Fig.2)

そして、「予め発熱素子における圧縮応力または前記発熱素子の表面におけるせん断応力を測定する」ということは、本願明細書の「本発明者らは、試作や実験等を実行することにより、上記厚さ比率の条件式が成立する構成であれば、半導体チップ2を保持するための圧縮応力を大きくすることができると共に、半導体チップ2の表面のせん断応力を低減することができることを確認した。」(段落【0028】)と記載されていることから、「t2/t1≧5」が成立する構成であれば、自ずと発熱素子を保持するための圧縮応力が大きく、発熱素子の表面におけるせん断応力が低減している状態であることを認識できうるため、「t2/t1≧5」が成立する構成であれば、「予め発熱素子における圧縮応力または前記発熱素子の表面におけるせん断応力を測定」したことと実質的に等しい事項であるといえる。

そうすると、刊行物1発明においても、放熱性をより向上させることも当然のことであって、予め発熱素子における圧縮応力または前記発熱素子の表面におけるせん断応力を測定することにより、発熱素子の厚さ寸法t1と放熱板の厚さ寸法t2の比をt2/t1≧5が成立する程度に調整することは、当業者にとって格別なものとはいえない。

また、本願補正発明1による効果も刊行物1、刊行物2の記載、及び上記周知技術から予測することができる程度のものであって格別顕著なものとは認められない。

したがって、本願補正発明1は、刊行物1、刊行物2に記載された発明、及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明1
平成17年6月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成17年1月14日付け手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1については次のとおりのものである。
「【請求項1】発熱素子と、この発熱素子の両面から放熱するための一対の放熱板とを備え、前記一対の放熱板の一面が露出するように装置のほぼ全体を樹脂でモールドした半導体装置において、
前記発熱素子の厚さ寸法をt1とし、前記一対の放熱板のうちの少なくとも一方の放熱板の厚さ寸法をt2としたときに、
t2/t1≧5
が成立するように構成すると共に、
前記発熱素子と前記放熱板とは、半田により接合されていることを特徴とする半導体装置。」

2.引用刊行物とその記載事項
平成17年4月12日付け拒絶理由通知の拒絶の理由に引用した刊行物1、刊行物2、及びその記載事項は、上記「II.2.引用刊行物とその記載事項」欄に記載されたとおりである。

3.対比・判断
本願発明1は、前記「II.平成17年6月13日付けの手続補正についての補正却下の決定」で検討した本願補正発明1から「t2/t1≧5が成立するように構成する」ことの限定事項である「予め前記発熱素子における圧縮応力または前記発熱素子の表面におけるせん断応力を測定することにより」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記「II.3.対比・判断」に記載したとおり、刊行物1、2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、刊行物1、刊行物2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、刊行物1、刊行物2に記載された発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-13 
結審通知日 2006-11-14 
審決日 2006-11-27 
出願番号 特願2002-196140(P2002-196140)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和瀬田 芳正田代 吉成  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 正山 旭
池田 正人
発明の名称 半導体装置  
代理人 加藤 大登  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 伊藤 高順  

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