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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23K
管理番号 1150467
審判番号 不服2003-12996  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-04-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-09 
確定日 2007-01-09 
事件の表示 平成 6年特許願第271923号「魚類用有効成分投与ビーズ」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 4月 9日出願公開、特開平 8- 89177〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年9月29日の出願であって、平成15年6月6日付で拒絶査定がなされ、これに対して同年7月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、平成18年4月14日付で当審より前置報告書の内容に基づく審尋がなされ、これに対して同年6月13日に回答書が提出され、同年8月17日付で当審より平成15年7月9日付の手続補正についての補正の却下の決定および拒絶理由の通知がなされ、これに対して平成18年10月16日付で意見書および手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成18年10月16日付手続補正書によって補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「アルギン酸ゲル(水溶性成分を含まない)を外膜として用いて、耐酸性の低い魚類用有効成分を環境水中への散逸しないように包含してビーズ化したことを特徴とする耐酸性の低い有効成分を環境水中への散逸なく確実に体内に送り込み吸収させるための魚類用有効成分投与ビーズ。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用刊行物記載の発明
これに対して、当審における、平成18年8月17日付で通知した拒絶の理由に引用した本願の出願日前に頒布されている刊行物である、特開平6-189689号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「魚貝類養殖用難崩壊性人工餌料及びその製造方法」に関して、以下の記載がある。
(イ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 人工餌料100重量部に対し、アルギン酸ナトリウム0.5?20重量部の割合で配合されて形成される未硬化の人工餌料成形物の表面に、アルギン酸ナトリウムの0.2?30重量%水溶液を塗布し、架橋硬化せしめてなることを特徴とする魚貝類養殖用難崩壊性人工餌料。
【請求項2】 硬化した餌料の表面にアルギン酸硬化膜が配置された二層を有する請求項1に記載された、魚貝類養殖用難崩壊性人工餌料。
【請求項3】 人工餌料100重量部に対し、アルギン酸ナトリウム0.5?20重量部の割合で配合されて形成される未硬化の人工餌料成形物の表面に、アルギン酸ナトリウムの0.2?30重量%水溶液を塗布し、ついで該人工餌料成形物を2価以上の多価アルカリ金属塩水溶液及び酸性水溶液にそれぞれ浸漬して架橋硬化させたのち、100℃以下の温度で乾燥することを特徴とする魚貝類養殖用難崩壊性人工餌料の製造方法。」
(ロ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、魚貝類養殖用難崩壊性人工餌料及びその製造方法に関するものである。本発明における魚貝類養殖用人工餌料とは、魚、貝類の他、エビ、カニ、シヤコ等の甲殻類、スッポン、海亀などの亀類、ホヤなどの背策動物、ウニ、ナマコ等の棘皮動物、タコ、イカ類等頭足類などの水生動物の養殖を行なう餌料の総称である。
【0002】
【従来の技術】養殖用人工餌料は養殖事業の成長と共に多量に使用されるようになった。さらに、養殖対象生物類の多様化に従ってその種類も多くなって来ている。一方、これらの人工餌料は海水中に投下されると吸水し膨潤して強度劣化おこし、波浪等の外力で物理的に崩壊したり、海水に含まれる種々のイオンによって化学的に崩壊する。このような崩壊した餌料は摂餌されることなく海底に蓄積し、環境汚染を引き起こすことが知られている。このため、環境汚染を最小限に押えることができる海水中で崩壊し難い養殖用人工餌料が求められている。」
(ハ)「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記した課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、アルギン酸ナトリウムを含有する未硬化の人工餌料を成形後、その表面にアルギン酸ナトリウム水溶液を塗布して架橋硬化することによって解決できることを見出し本発明を完成するに至った。」
(ニ)「【0008】この問題を解決するため成形された餌料の表面の強度を向上させるべく種々研究した結果、未硬化餌料の表面にアルギン酸ナトリウム水溶液を塗布して良好な硬化を得た。本発明で得られる人工餌料は、餌料表面と硬化剤(アルギン酸ナトリウム)単独皮膜は明瞭な界面を作らず、海水中において互いに剥離することなく餌料本体の崩壊性を低減する。これは、餌料本体に含まれる硬化剤と同一の硬化剤が餌料本体の硬化前に塗布されるために、餌料表面と硬化剤単独皮膜とがなじみやすく明瞭な界面を形成しないためである。例えば、餌料本体を硬化させた後に硬化剤単独液を塗布した場合は、餌料表面に残存するCaイオン等の架橋成分によって硬化剤単独液は餌料表面で架橋し、硬化剤単独皮膜を形成するが餌料表面は既に硬化しているため、餌料表面と硬化剤単独皮膜とは界面を形成した2層構造皮膜となる。このような界面は乾燥されても存在しこの餌料を海中に投下すると吸水、膨潤した後、界面剥離し崩壊しやすくなる。かくして、餌料本体の硬化前に硬化剤単独液を塗布して得られる本発明の2層構造を有する人工餌料は、2層相互の間に界面を形成せずに硬化しているため崩壊しにくいものとなる。これが本発明の第2の特徴である。以下、本発明を具体的に順次説明する。
【0009】本発明の難崩壊性人工餌料は、従来から一般に使用されている餌料材料に磯(当審注:「硬」の誤り)化剤成分であるアルギン酸ナトリウムを加えた成分からなる人工餌料の成形物表面にアルギン酸ナトリウム自身の被覆層を形成した2層構造を有するものである。上記餌料材料としては、例えば下記の材料を挙げることが出来、これらを適宜組合せて用いられる。
【0010】蛋白質源として;大豆ミール、大豆フレーク、魚ミール、ボンミール、フェザーミール等。
炭水化物として;澱粉、小麦粉、蕎麦粉、米粉、海藻粉末、ふすま等。
脂質として;大豆、向日葵、胡麻、椰子等の植物油、イワシ、イカ等の動物油、ラード、乳脂肪等。
増量材として;大豆かす、米ぬか、繊維等。
栄養剤として;アミノ酸、ビタミン、各種ミネラル等。
生理活性物質として;大豆レシチン、卵製レシチン等。
【0011】上記した餌料材料を用いて、2層構遣を有する人工餌料を作るには、硬化剤成分としてアルギン酸ナトリウムを使用することが必要である。アルギン酸ナトリウムは、Ca2+イオンや酸性条件下で常湿で容易に硬化(ゲル形成)する。さらに、アルギン酸ナトリウムは常温で水溶液となることが出来るため餌料に適する各種の物質を容易に混合混練しうる。しかし、この2層構造を効果的に作成するには餌料本体に配合される硬化剤量、硬化剤単独水溶液の濃度が深く関係する。即ち、餌料成分100重貴部に配合される硬化剤量が0.5?20重量部、好ましくは1?10重量部であることが望ましい。硬化剤量が0.5重量部以下では、餌料自体が硬化不足となり崩壊しやすくなり、他方20重量部以上では餌料混練時の粘度が高くなり混合が不十分となったり、多量の水を必要とするなどの作業性の低下を来す。」
(ホ)「【0018】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。実施例に使用される人工餌料を以下のように調製した。
【0019】(A);大豆フレーク800重量部、コンブ粉末50重量部及び澱粉150重量部を配合し、ヘンシェルミキサーで混合した。
【0020】(B);大豆フレーク300重量部、大豆ミール300重量部、コンブ粉末100重量部、澱粉200重量部及びイワシミール100重量部を配合し、ヘンシェルミキサーで混合した。
【0021】(C);大豆ミール200重量部、ふすま100重量部、澱粉300重量部、ケルプ粉末150重量部、イカゴロ100重量部及び米ぬか150重量部を配合し、ヘンシェルミキサーで混合した。
【0022】実施例1
調製された人工餌料(A)100重量部及びアルギン酸ナトリウム5重量部をよく混合し、次いでこれに上水120重量部を加えて混練し、さらに小型ニーダーを使用して良く混合する。得られた混練物を巾2cm、長さ15cm、厚さ3mmに成型枠にて成型した。次いで3%アルギン酸ナトリウム水溶液をローラー塗装した。塗布量は600g/m2であった。塗装後、成型枠と共に5%CaCl2水溶液に浸漬し、硬化させた。5%CaCl2水溶液に浸漬後20分経過した段階で、人工餌料を成型枠から分離し、さらに1時間5%CaCl2水溶液に浸漬し、人工餌料の全体を硬化させた。次いで1%Fe(SO4)2NH4水溶液に5分間浸漬した後、流水中で10分間水洗し、60℃×5時間乾燥を行ない、人工餌料とした。得られた人工餌料は、暗褐色で、重量は5.4gであった。0.1%コウシ酸水溶液による表面での赤色化反応(*1)が認められ、表面に鉄分が付着していることが確認された。
【0023】実施例2
調製された人工餌料(B)100重量部及びアルギン酸ナトリウム10重量部をよく混合し、これに温水(60℃)150重量部を加えて混練し、これに小型ニーダーで混練した。得られた混練物は成形枠にて、巾2.5cm、長さ20cm、厚さ3mm成型後、1%アルギン酸ナトリウム水溶液をその表面にスプレー塗装した。塗布量は600g/m2であった。塗装後、2%CaCl2水溶液中に20分間浸漬し、成型枠から人工餌料を分離した。さらに1時間2%CaCl2水溶液に浸漬し、人工餌料の全体を硬化させた後、pH=1?2に調製された1%塩酸水溶液に10分間浸漬し、流水で20分間水洗した。50℃×7時間乾燥させ、人工餌料とした。得られた人工餌料は、黄褐色で、重量は7.3gであった。
【0024】実施例3
調製された人工餌料(C)100重量部及びアルギン酸ナトリウム15重量部を加えてよく混合し、次いでこれに温水(70℃)200重量部及び大豆レシチン2重量部を加えてよく混練し、さらに小型ニーダーで混練した。混練物は成形枠で、巾1.5cm、長さ20cm、厚さ4mmに成型後、20%アルギン酸水溶液(400g/m2)をその表面にローラーで塗装した。塗布量は300g/m2であった。次いで、成型枠ごと、10%CaCl2水溶液中に浸漬し、20分後に成型枠から分離し、さらに1時間10%CaCl2水溶液中に浸漬して、全体を硬化させた。次いでpH=2にHClで調製されたFeCl31%水溶液に5分間浸漬後、流水で20分間水洗した。このものを60℃×7時間で乾燥させ、人工餌料とした。得られた人工餌料は、暗褐色で、重さは8.4gであった。実施例1による方法にて、人工餌料表面のFe分を検査した。赤色化が観測され、表面にFeが付着していることが確認出来た。」
(ヘ)「【0028】
【発明の効果】本発明の人工餌料は表面にアルギン酸ナトリウムの硬化膜を設けたので水中に投入した時崩壊や流出が少く餌料として摂取される有効割合が高い効果を奏する。」

これら上記(イ)?(ヘ)の記載を参照すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「硬化した餌料の表面にアルギン酸硬化膜が配置された魚貝類養殖用難崩壊性人工餌料」

4.対比
引用発明における、餌料表面の「アルギン酸硬化膜」は、アルギン酸ナトリウムがアルカリ金属塩により架橋硬化して、水溶性成分を含まないゲルからなる層を形成したものであり、かつ、餌料を包含するものであるから、「アルギン酸ゲル(水溶性成分を含まない)」及び「外膜」に相当する。
そして、引用発明の「魚貝類養殖用難崩壊性人工餌料」は、「海水中で崩壊し難い」ものであることから、餌料が環境水中へ散逸しないものであることは明らかであり、餌料が環境水中への散逸なく体内に送り込むためのものであることも明らかである。
また、引用発明における「餌料」は、養殖対象の魚類にとって有用な魚類用有用成分が適宜組合される等して含まれているものといえる。
さらに、引用発明の「魚貝類養殖用難崩壊性人工餌料」と本願発明の「魚類用有効成分投与ビーズ」とは、養殖対象の魚類にとって有用成分を投与するための魚類用有効成分投与形成物である点で共通している。
そうすると、両者は「アルギン酸ゲル(水溶性成分を含まない)を外膜として用いて、魚類用有効成分を環境水中への散逸しないように包含した形成物であって、有効成分を環境水中への散逸なく体内に送り込み吸収させるための魚類用有効成分投与形成物」である点で一致して、以下の点で相違する。

相違点1:魚類用有用成分投与形成物が、本願発明では、耐酸性の低い有効成分を環境水中への散逸なく確実に体内に送り込み吸収させるためのものであるのに対して、引用発明では、そのようなものであるのか明らかではない点。

相違点2:魚類用有効成分投与形成物が、本願発明では、ビーズ(ビーズ化されたもの)であるのに対して、引用発明の実施例としては板状のものが記載されているだけであって、ビーズ化することは示されていない点。

5.判断
[相違点1について]
引用発明の魚類用有用成分としてはビタミンや油脂等(耐酸性の低い物質)も例示されており、さらに病気の治療および予防剤のように、例えば胃酸などの酸の影響を受けてはならないことが広く知られている耐酸性の低い物質を、アルギン酸またはその塩のような液体-ゲル相転移を起こすような形成物中に含有させて魚介類に投与することは、従来より周知技術(例えば、平成15年7月9日付で当審より通知した拒絶理由で引用した特開平6-70696号の段落【0043】?段落【0045】参照)であることから、引用発明において、養殖対象の魚類に投与する魚類用有用成分として、上記のような耐酸性の低い物質を含有させて魚類用有効成分投与形成物を構成することは、当業者が容易に想到することができる事項であるといえる。
また、本願発明において「耐酸性の低い有効成分を環境水中への散逸なく確実に体内に送り込み吸収させる」としていることが如何なる構成に基づくものであるか必ずしも明確ではないが、「耐酸性の低い有効成分を環境水中への散逸なく確実に体内に送り込み吸収させる」ために、アルギン酸化合物の組成やその膜厚などを養殖対象の魚類の種類(に応じた消化・吸収時間)や魚類用有効成分投与形成物が使用される環境(例えば、海水の水温や塩分濃度)などに応じて調整することは、上記引用発明も含め普通に行われている事項にすぎず、引用発明もこのような作用を有しているものと認められ、本願発明において「耐酸性の低い有効成分を環境水中への散逸なく確実に体内に送り込み吸収させる」としていることは、アルギン酸ゲルを外膜として用いた魚類用有用成分投与形成物に当然求められる作用を記載したものと認められ、この点が実質的な相違点を形成するものであるとはいえない。

[相違点2について]
魚介類投与組成物を粒子状に形成することは、従来より周知技術(例えば、上記特開平6-70696号の段落【0046】参照)であることから、引用発明において、当該周知技術を適用して、魚類用有効成分投与形成物を粒子状のビーズ(もしくはビーズ化されたもの)として構成することは、当業者が容易に想到することができる事項であるといえる。

そして、本願発明の奏する作用効果も引用発明および周知技術から当業者が予測し得るものであって格別のものということができない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-08 
結審通知日 2006-11-14 
審決日 2006-11-28 
出願番号 特願平6-271923
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 隆彦長井 啓子  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 西田 秀彦
宮川 哲伸
発明の名称 魚類用有効成分投与ビーズ  
代理人 須藤 阿佐子  
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