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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1150497
審判番号 不服2003-9911  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-09-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-02 
確定日 2007-01-12 
事件の表示 平成 6年特許願第 54589号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 9月12日出願公開、特開平 7-236743〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願の手続の経緯
本願は、平成6年2月28日に出願したものであって、平成14年11月18日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成15年1月24日付けで手続補正がなされ、平成15年4月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成15年6月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされる共に平成15年7月1日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成15年7月1日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年7月1日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成15年7月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項に特定されるとおりのものである。
「【請求項1】遊技盤面に設けられた始動入賞領域と、該始動入賞領域へのパチンコ球の通過に基づいて予め所定順序に配列されている複数種の識別情報を前記配列にしたがって、複数行・複数列で構成された表示部材の各列または各行に、各列単位または各行単位で異なる所定の変動時間づつ変動表示させ、該変動表示の終了に基づいて前記識別情報のいずれかを順次時間差をおいて各列毎または各行毎に停止表示する可変表示装置と、前記表示部材の有効ライン上に停止表示した停止識別情報の組合せが同一の識別情報である特別組合せの場合に、大入賞口を開放させる可変入賞球装置を備えたパチンコ機において、
前記識別情報を変動表示させ、かつ、停止表示させるための変動停止領域および選択した前記識別情報を停止表示させるための停止領域を前記有効ラインに沿って前記表示部材に設け、
前記停止領域に表示させる停止識別情報を選択するための選択部材をパチンコ機の前面側に配置し、
前記選択部材によって選択した識別情報を予め前記停止領域に停止表示させ、該選択した識別情報と前記変動停止領域に表示される停止識別情報の前記有効ライン上の組合せが予め定められた同一の識別情報である特別組合の場合に、前記可変入賞球装置に設けた開放部材によって前記大入賞口が所定時間だけ開放されることを特徴とするパチンコ機。」

2.補正の適否の検討
本願補正発明に係る請求項1の補正は、平成15年1月24日付けで補正された【請求項1】に記載の「停止識別情報」に関して、「表示部材に停止表示した停止識別情報の組合せに応じて」を、「表示部材の有効ライン上に停止表示した停止識別情報の組合せが同一の識別情報である特別組合せの場合に、」と限定的に特定するとともに、「停止識別情報の組合せが予め定められた特別組合せである場合に」を、「停止識別情報の前記有効ライン上の組合せが予め定められた同一の識別情報である特別組合の場合に」と限定的に特定するものであり、また、【請求項1】に記載の「停止領域」に関して、「停止領域を前記表示部材に設け」を、「停止領域を前記有効ラインに沿って前記表示部材に設け」と限定的に特定するものであるから、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用例に記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開平3-103275号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「・・前面枠2の一側部には、図柄選択スイッチ9が設けられている。この図柄選択スイッチ9は、後述する組合せ表示装置20において、大当り表示態様を構成する図柄の1つを遊技者の意志によって選択するものである。・・」(第2頁右下欄第14?18行)
(イ)「・・遊技盤10には、打球を誘導するとともに遊技領域12を区画形成する誘導レール11がほぼ円状に植立されている。遊技領域12のほぼ中央には、複数の表示部21a?21cを有する組合せ表示装置20が設けられている。この組合せ表示装置20は、遊技盤10に設けられた始動人賞口13a?13cに打球が人賞することによって表示部21a?21cが可変表示開始し、一定時間t1(例えば、5秒)後に自動的にその可変表示状態を順次停止するようになっている。なお、表示部21a?21cの可変表示は、「0」?「9」及び「A」?「G」までの数字及び文字からなる図柄が如何にも回転しているかのように表示される。」(第2頁右下欄第20行?第3頁左上欄第13行)
(ウ)「・・遊技領域12の下方には、変動入賞装置14が取着されている。この変動入賞装置14には、電気的駆動源であるソレノイドによって開閉駆動される開閉板15が設けられており、この開閉板15が前記組合せ表示装置20の組み合せ態様により所定の条件で開閉駆動されるようになっている。具体的には、前記表示部21a?21cの表示態様がすべて「同一数字」、すべて「選択された図柄(文字)」、及び「2つの同一数字と選択された1つの図柄との組合せ」を表示した場合には、大当り表示態様であると判断されて、開閉板15を所定時間T(例えば、20?30秒の間で設定される時間)経過するまで、あるいは所定個数(例えば、10?15個の間で設定される個数)の入賞玉が発生するまで開放し・・」(第3頁左上欄第14行?同頁右上欄第8行)
(エ)「・・遊技領域12には、入賞口16a,16b,17a,17b,及びアウト口18等がそれぞれ設けられている。」(第3頁右上欄第16?18行)
(オ)「・・組合せ表示装置20は、その下方に複数(3つ)の表示部21a?21cと、中央の表示部2lbの上部に1つの選択図柄表示部22とを有して構成される。これらの表示部21a?21c及び選択図柄表示部22は、ドット・マトリックス・ディスプレイで構成される。・・」(第3頁右上欄第20行?同頁左下欄第6行)
(カ)「・・組合せ表示装置20の上部には、遊技客の意志で選択可能な複数の図柄を表示する選択可能図柄表示部27が設けられている。そして、複数の図柄の後方には、表示ランプが対応して設けられ、前記図柄選択スイッチ9をONさせる毎に表示ランプの点灯が移動し、点灯している表示ランプに対応する図柄が遊技客の意志で選択された選択図柄とされる。そして、この選択図柄は、前記選択図柄表示部22に表示される。なお、この実施例では、前記図柄選択スイッチ9は、前記始動人賞表示器26a?26dの少なくとも1つが点灯している場合、及び表示部21a?21cが可変表示中であるときには、不能動化されており、選択図柄を変更することができないようになっている。・・遊技客の意思で選択される図柄としては、前記17種類のうち7種類の文字「A」?「G」までであり、この中から遊技客が任意に選択することができる。・・」(第3頁右下欄第1?第4頁左上欄第9行)
(キ)「・・この実施例では、3つの表示部21a?21cのうち、左側の表示部21aが最初に可変表示を停止し、次に右側の表示部21cが可変表示を停止し、最後の中央の表示部2lbが可変表示を停止するように制御される。
ところで、この実施例においては、上記した複数の大当り表示態様に加えて、更に表示部21a?21cに表示される表示態様によって大当りとなる組合せが用意されている。すなわち、3つの表示部21a?21cのうち、所定の又は任意の2つの表示部に上記した複数の大当り表示態様のうち1種類の大当り表示態様が表示され、且つ残りの表示部に、遊技客が自分の意志で選択した図柄、すなわち選択図柄表示部22で表示されている図柄と同一の図柄が表示された場合には、大当り状態と見なすようになっている。例えば、2つの表示部21a,21cに共に「7」が表示されているときに、残りの表示部2lbに選択された図柄「A」が表示されたときにも大当り状態と判定される。もちろん、この場合、残りの表示部9Cに「7」が表示されれば、前記したように従来と同様に大当り状態と判定される。」(第4頁左上欄第9行?同頁右上欄第11行)
(ク)「電源が投入されると、まず、図柄選択スイッチ9がONされたか否かが判断され(ステップS1)、ONされた場合には、選択可能図柄表示部27の表示ランプを歩進し(ステップS2)、遊技客の好む図柄を選択させる。この場合、図柄選択スイッチ9が操作される毎に表示ランプの歩進が1つずつ行われると同時に選択図柄表示部22に表示される図柄もその都度変更される。・・」(第4頁右下欄第1?8行)
(ケ)「この実施例によれば、「0」?「9」までの数字がゾロ目となったとき、及び「A」?「G」までの文字のうち選択された文字がゾロ目となったときに大当り状態と判定されるとともに、更に、2つの表示部に同一種類の数字が表示され、残りの1つの表示部に、遊技客の意志によって選択された文字が表示されたときにも大当り状態と判断される。したがって、ゾロ目のときに大当り状態となる通常のパチンコ機に比較して、選択された図柄を1つ加えるだけで大当りとなる組合せが大幅に増加するとともに、大当り表示態様の図柄を遊技客の意志によって選択することできる。このため、遊技客は、長時間遊技しても飽きないし、遊技に対する興味を持続することができる。」(第5頁右下欄第第11行?第6頁左上欄第5行)
(コ)「なお、上記した実施例においては、組合せ表示装置20の表示部としてドット・マトリックス・ディスプレイで構成したものを示したが、これに限らず、ドラムやセグメント表示器であっても良く、また、表示部の数も3つに限定されない。また、表示態様としても数字やアルファベットだけでなく、容易に理解できる図柄(例えば、カタカナ、絵柄の数等)であればどのような表示態様であってもよい。また、表示部21a?21cの停止順序も実施例と異なるように制御しても良いし、3つの表示部21a?21cが同時に停止するようにしてもよい。また、小当り状態が発生しないようにしたものでもよい。更に、選択図柄表示部として特別に表示部22を設けなくても、例えば、上記実施例のように選択可能図柄表示部27のように選択された図柄をランプ等で光らせるだけの構造であってもよい。」(第6頁左上欄第9行?同頁右上欄第5行)
上記記載事項(ア)乃至(コ)の記載及び図面からみて、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「遊技盤10に設けられた始動人賞口13a?13cと、始動人賞口13a?13cに打球が人賞することによって「0」?「9」及び「A」?「G」までの数字及び文字からなる図柄を、複数の表示部21a?21cにおいて可変表示開始させ、左側の表示部21aが最初に可変表示を停止し、次に右側の表示部21cが可変表示を停止し、最後の中央の表示部2lbが可変表示を停止するように制御される組合せ表示装置20と、前記表示部21a?21cの表示態様がすべて「同一数字」である大当り表示態様を表示した場合に、開閉板15を開放する変動入賞装置14を取着したパチンコ機において、
「0」?「9」及び「A」?「G」までの数字及び文字からなる図柄の可変表示を開始し、一定時間後に自動的にその可変表示状態を順次停止する表示部21a?21cおよび選択された図柄(文字)を表示する選択図柄表示部22を前記組合せ表示装置20に設け、
選択図柄表示部22に表示される図柄を選択させる図柄選択スイッチ9を前面枠2の一側部に設け、
前記選択された図柄(文字)を前記選択図柄表示部22に表示させ、該選択された図柄(文字)と、前記表示部21a?21cの表示態様が2つの同一数字と前記選択された1つの図柄との組合せを表示した場合、大当り表示態様であると判定して、前記変動入賞装置14の開閉板15を所定時間開放するパチンコ機。」

4.対比
本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「遊技盤10に設けられた始動人賞口13a?13c」が本願補正発明の「遊技盤面に設けられた始動入賞領域」に相当し、以下同様に、「始動人賞口13a?13cに打球が人賞すること」が「始動入賞領域へのパチンコ球の通過」することに、「「0」?「9」及び「A」?「G」までの数字及び文字からなる図柄」が「複数種の識別情報」に、「組合せ表示装置20」が「可変表示装置」に、「表示部21a?21cの表示態様がすべて「同一数字」である大当り表示態様を表示した場合」が「停止表示した停止識別情報の組合せが同一の識別情報である特別組合せの場合」に、「開閉板15を開放する変動入賞装置14」が「大入賞口を開放させる可変入賞球装置」に、「パチンコ機」が「パチンコ機」にそれぞれ相当している。
また、引用発明の「表示部21a?21c」は、「0」?「9」及び「A」?「G」までの数字及び文字からなる図柄が可変表示し、その可変表示状態を順次停止するのであるから、本願補正発明の「変動停止領域」に相当し、引用発明の「「0」?「9」及び「A」?「G」までの数字及び文字からなる図柄の可変表示を開始し、一定時間後に自動的にその可変表示状態を順次停止する」が本願補正発明の「識別情報を変動表示させ、かつ、停止表示させる」事項に相当している。
そして、引用発明の「選択された図柄(文字)を表示する選択図柄表示部22」は、図柄を選択して停止表示する領域を形成するといえるから、本願補正発明の「識別情報を停止表示させるための停止領域」に相当している。
また、引用発明の「選択図柄表示部22に表示される図柄を選択させる図柄選択スイッチ9を前面枠2の一側部に設け」る点が、本願補正発明の「停止領域に表示させる停止識別情報を選択するための選択部材をパチンコ機の前面側に配置」する点に、「該選択された図柄(文字)」が「該選択した識別情報」に、「表示部21a?21cの表示態様」が「変動停止領域に表示される停止識別情報」に、それぞれ相当している。
そして、引用発明の「「0」?「9」及び「A」?「G」までの数字及び文字からなる図柄」について、引用例の上記記載事項(イ)「・・表示部21a?21cの可変表示は、「0」?「9」及び「A」?「G」までの数字及び文字からなる図柄が如何にも回転しているかのように表示される。」なる記載に基づけば、引用発明の「図柄」は、予め所定順序に配列され、この配列にしたがって順次回転するように変動表示されるから、本願補正発明と同様に「予め所定順序に配列されている複数種の識別情報を前記配列にしたがって、変動表示」されていることは明らかである。
また、引用発明の「表示部21a?21c」及び「選択図柄表示部22」は、引用例の上記記載事項(オ)「・・組合せ表示装置20は、その下方に複数(3つ)の表示部21a?21Cと、中央の表示部2lbの上部に1つの選択図柄表示部22とを有して構成される。これらの表示部21a?21c及び選択図柄表示部22は、ドット・マトリックス・ディスプレイで構成される。・・」なる記載に基づけば、表示部21a?21c及び選択図柄表示部22は、組合わせ表示装置20において、同じ形式のディスプレイの表示部材として形成されるものといえる。
そうすると、引用発明の「表示部21a?21c」及び「選択図柄表示部22」は、本願補正発明の「表示部材」に相当している。
そして、引用発明の「組合せ表示装置20」は、引用例の上記記載事項(イ)「この組合せ表示装置20は、・・表示部21a?21cが可変表示開始し、一定時間・・後に自動的にその可変表示状態を順次停止する・・」、同じく記載事項(キ)「・・3つの表示部21a?21cのうち、左側の表示部21aが最初に可変表示を停止し、次に右側の表示部21cが可変表示を停止し、最後の中央の表示部2lbが可変表示を停止するように制御される。・・」なる記載に基づけば、組合せ表示装置20の表示部21a?21cが、各々左側と右側と中央の各列に配置される複数列の表示部を構成しており、各列単位で異なる所定の変動時間づつ変動表示させ、変動表示の終了に基づいて、順次時間差をおいて各列毎に停止表示する構成を具備するということができる。
そうすると、引用発明の「組合せ表示装置20」と、本願補正発明の「可変表示装置」は、
「複数列で構成された表示部材の各列に、各列単位で異なる所定の変動時間づつ変動表示させ、変動表示の終了に基づいて識別情報のいずれかを順次時間差をおいて各列毎に停止表示する」構成を具備する点で一致している。
また、引用発明の「選択された図柄(文字)」と「表示部21a?21cの表示態様」は、引用例の上記記載事項(ウ)「・・表示部21a?21cの表示態様が・・すべて「選択された図柄(文字)」、及び「2つの同一数字と選択された1つの図柄との組合せ」を表示した場合には、大当り表示態様であると判断されて開閉板15を所定時間・・開放・・」なる記載に基づけば、選択された図柄(文字)と、表示部21a?21cの表示態様とが予め定められた識別情報である場合に、変動入賞装置14に設けた開閉板15が所定時間だけ開放される構成を具備するといえる。
そうすると、引用発明の「選択された図柄(文字)」と「表示部21a?21cの表示態様」と、本願補正発明の「選択した識別情報」と「変動停止領域に表示される停止識別情報」は、
「選択した識別情報と変動停止領域に表示される停止識別情報が予め定められた識別情報である場合に、可変入賞球装置に設けた開放部材によって大入賞口が所定時間だけ開放される」点で共通する構成を具備している。

してみると、引用発明と本願補正発明とは、

「遊技盤面に設けられた始動入賞領域と、該始動入賞領域へのパチンコ球の通過に基づいて予め所定順序に配列されている複数種の識別情報を前記配列にしたがって、複数列で構成された表示部材の各列に、各列単位で異なる所定の変動時間づつ変動表示させ、該変動表示の終了に基づいて前記識別情報のいずれかを順次時間差をおいて各列毎に停止表示する可変表示装置と、前記表示部材に停止表示した停止識別情報の組合せが同一の識別情報である特別組合せの場合に、大入賞口を開放させる可変入賞球装置を備えたパチンコ機において、
前記識別情報を変動表示させ、かつ、停止表示させるための変動停止領域および選択した前記識別情報を停止表示させるための停止領域を前記表示部材に設け、
前記停止領域に表示させる停止識別情報を選択するための選択部材をパチンコ機の前面側に配置し、
前記選択部材によって選択した識別情報を予め前記停止領域に停止表示させ、該選択した識別情報と前記変動停止領域に表示される停止識別情報が予め定められた識別情報である場合に、前記可変入賞球装置に設けた開放部材によって前記大入賞口が所定時間だけ開放されることを特徴とするパチンコ機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
表示部材が、本願補正発明においては、複数行・複数列で構成されるのに対し、引用発明においては、複数行・複数列では構成されていない点。

<相違点2>
停止領域の識別情報と変動停止領域の停止識別情報が予め定められた識別情報である場合が、本願補正発明においては、停止領域と変動停止領域が同一の識別情報の特別組合せであり、且つ、前記特別組合せを構成する各識別情報が有効ライン上に表示されるのに対し、引用発明においては、停止領域と変動停止領域の特別組み合わせでなく、両者が同一の識別情報であり、停止領域と変動停止領域の各識別情報が表示される位置とは無関係である点。
5.相違点についての検討
<相違点1>について
表示部材が、複数行・複数列で構成される点に関して、図柄を変動表示させるパチンコ機分野において、表示部材が複数行・複数列で構成されることは、従来周知の技術(例えば、実願平2-31686号(実開平3-107985号)のマクロフィルム(第24頁第3?7行、第25頁第1?5行、第4図)、実願昭62-57954号(実開昭63-163877号)のマイクロフィルム(第8頁第6?14行、第5?7図)参照、以下、「周知技術A」という。)である。
そして、引用発明と上記周知技術Aは、共に表示部材に表示される識別情報に基づいて遊技者に有利な権利を与える点で機能が共通し、また、引用発明は、表示部の数を増加することも示唆しており(引用例の上記記載事項(コ)参照)、且つ、表示部材の配列に変更を加えることに格別に技術的困難性は認められないから、引用発明の表示部材の配列に、表示部が複数行・複数列で構成される上記周知技術Aを適用し、本願補正発明に係る相違点1を構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
本願補正発明において、停止領域と変動停止領域が同一の識別情報の特別組合せであり、且つ、前記特別組合せを構成する各識別情報が有効ライン上に表示されることは、停止領域で選択した図柄を、識別情報の特別組合せを構成する図柄の一部とする趣旨であると解される。
ところで、図柄を変動表示させるパチンコ機分野において、停止領域で選択した図柄を、識別情報の特別組合せを構成する図柄の一部とすることは、従来周知の技術(例えば、実願平2-31686号(実開平3-107985号)のマイクロフィルム(第24頁第3?7行、第25頁第1?5行、第4図)、特開平2-297389号公報(第1頁左下欄第5行?同頁右下欄第5行、第3頁右下欄第2行?第4頁左上欄第9行、第6頁右上欄第10行?同頁左下欄第19行)参照、以下、「周知技術B」という。)である。
また、特別組合せを構成する各識別情報が有効ライン上に表示されることも、図柄を変動表示させるパチンコ機分野における技術常識(例えば、上記「周知技術B」の実願平2-31686号(実開平3-107985号)のマイクロフィルム(第24頁第3?7行、第25頁第1?5行、第4図)参照、以下、「技術常識A」という。)というべきである。
そうすると、引用発明と上記周知技術B,技術常識Aは、共に遊技者が遊技中に可変表示装置の図柄の表示態様に直接介入できる点で技術が共通し、引用発明は表示部の数を増加することも示唆しており(引用例の上記記載事項(コ)参照)、且つ、表示部材の配列に変更を加えることに格別な技術的困難性は認められないから、引用発明の表示部材の停止領域と変動停止領域の識別情報の特別組合せの態様に、停止領域で選択した図柄を、識別情報の特別組合せを構成する図柄の一部とする上記周知技術B、及び特別組合せを構成する各識別情報が有効ライン上に表示される上記技術常識Aを適用し、予め定められた識別情報である場合が、停止領域と変動停止領域が同一の識別情報の特別組合せであり、且つ、前記特別組合せを構成する各識別情報が有効ライン上に表示されること、即ち、本願補正発明に係る相違点2を構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

6.作用効果・判断
そして、本願補正発明における作用効果は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が当然予測できるものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下されるべきものである。
よって、上記「補正の却下の決定の結論」のとおり決定する。

【3】本願発明について
1.本願発明
平成15年7月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年1月24日付けの手続補正書の明細書及び図面の記載からみて、以下のとおりである。
「【請求項1】遊技盤面に設けられた始動入賞領域と、該始動入賞領域へのパチンコ球の通過に基づいて予め所定順序に配列されている複数種の識別情報を前記配列にしたがって、複数行・複数列で構成された表示部材の各列または各行に、各列単位または各行単位で異なる所定の変動時間づつ変動表示させ、該変動表示の終了に基づいて前記識別情報のいずれかを順次時間差をおいて各列毎または各行毎に停止表示する可変表示装置と、前記表示部材に停止表示した停止識別情報の組合せに応じて大入賞口を開放させる可変入賞球装置を備えたパチンコ機において、
前記識別情報を変動表示させ、かつ、停止表示させるための変動停止領域および選択した前記識別情報を停止表示させるための停止領域を前記表示部材に設け、
前記停止領域に表示させる停止識別情報を選択するための選択部材をパチンコ機の前面側に配置し、
前記選択部材によって選択した識別情報を予め前記停止領域に停止表示させ、該選択した識別情報と前記変動停止領域に表示される停止識別情報の組合せが予め定められた特別組合せである場合に、前記可変入賞球装置に設けた開放部材によって前記大入賞口が所定時間だけ開放されることを特徴とするパチンコ機。」

2.引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、前記【2】3.に摘記したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から前記【2】2.で検討した限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに、上記限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記【2】5.で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-15 
結審通知日 2006-09-20 
審決日 2006-12-01 
出願番号 特願平6-54589
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 恒明一宮 誠  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 小田倉 直人
辻野 安人
発明の名称 パチンコ機  
代理人 中村 壽夫  
代理人 萼 経夫  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 小野塚 薫  

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