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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60G |
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管理番号 | 1150498 |
審判番号 | 不服2003-14653 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-10-20 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-30 |
確定日 | 2007-01-12 |
事件の表示 | 平成9年特許願第105300号「後2軸車の駆動力付加装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月20日出願公開、特開平10-278534〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本願は、平成9年4月8日の出願であって、原審において、平成14年7月22日付で拒絶理由が通知され、これに対して、請求人(出願人)は平成14年9月24日に意見書及び手続補正書を提出したが、平成15年6月24日付で拒絶査定を受け、この査定を不服として、平成15年7月30日に本件審判請求をすると共に、平成15年8月29日付で手続補正がなされたものである。 【2】平成15年8月29日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年8月29日付の手続補正を却下する。 [理 由] 1.補正後の本願発明 平成15年8月29日付の手続補正(以下、「本件補正」という)により、特許請求の範囲の請求項2は、 「【請求項2】 従動軸から成る後々軸を懸架するサスペンション装置のエアスプリングの空気を排出することによって駆動軸から成る後前軸の軸重を増加させて駆動輪の駆動力を大きくするようにした後2軸車の駆動力付加装置において、 前記後前軸と前記後々軸とを互いに別々のリーフスプリングによって車体にそれぞれ懸架し、しかも前記後前軸側のリーフスプリングの一端と車体との間に後前軸側のエアスプリングを介装し、前記後々軸側のリーフスプリングの一端と車体との間に後々軸側のエアスプリングを介装し、 駆動力付加状態において後2軸に加わる軸重または車両総重量に対する駆動軸から成る後前軸に加わる軸重の割合を駆動軸重比とした場合に、該駆動軸重比が空車時の駆動軸重比とほぼ等しくなるように後々軸側のエアスプリングの内圧を積載荷重の増加に応じて高くするようにしたことを特徴とする後2軸車の駆動力付加装置。」 と補正された。 上記補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2.引用例及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された実公昭62-22406号公報(以下、「引用例」という。)には、次の技術事項が記載されている。 (イ)「レベリングバルブによつて車高を調整するとともに、圧力制御装置と2ウエイバルブとを組合せ、2ウエイバルブを切換えることによつて圧力制御装置の出口側の圧力を高低2段に変化させ、空車時も積載時も安定した駆動力を得ることができる。」 (第2頁第3欄第29行?第34行) (ロ)「符号1は車体の後方部分を示し、この部分には図示されない機関により駆動される駆動車軸3と、駆動されない従動車軸2とによつてそれぞれのエアスプリング4,5を介して支持されている。そして駆動車軸3のエアスプリング4は第1図の従来例と同様にコンプレツサから、レベリングバルブ6、ライン7、サージタンク8およびライン9を通して圧力空気が直接供給されるようになつている。 機関により駆動されない従動車軸2のエアスプリング5はライン11とライン12との間に介装されている圧力制御装置13を介してサージタンク8から圧力空気が供給されるようになつている。」 (第2頁第4欄第1行?第14行) (ハ)「第4図において、全体を13で示すリミツテイングクイツクリリーズバルブは……ケーシング30を備えこのケーシング30には4つのポートP1,P2,P3,P4……が設けられている。そしてケーシング30の中には小径部31と大径部32とを有するピストンPが設けられ、ポートP1からの流体圧は小径部31に印加され、ボートP2からの流体圧は大径部32に印加されるようになつている。このピストンPはばね33の作用で常時ポートP1側に押圧されている。さらにピストンPの中心部にはロツド34が収納されており、その一端34aはポートP1と連通するピストン内室35内に突出し、大径部32に隣接して画成された室36とピストン内室35とを連通遮断するようになつており、他端34bはポートP4を連通遮断するようになつている。そして室36はポートP3を連通している。さてポートP1はライン11に接続され、ポートP2はライン20に接続されポートP3はライン12に接続されポートP4は大気に開放されているものとする。」 (第2頁第4欄第18行?第39行) (ニ)「ライン11に圧力が印加されると、ピストンPはばね33に抗して下動する。するとロツド34の下端34bは排気ポートP4を閉じると共に、上端34aは室35と室36とを連通するので、室36の圧力は上昇する。しかしながら室36の圧力は大径部32を上動させようとするので、小径部31と大径部32との面積差によつてピストンPは上動して室35と室36との連通を遮断するようになる。この作動が繰返されるので、結局室36の圧力は室35の圧力よりも大径部と小径部との面積比だけ低い圧力に保たれる。…… すなわちポートP1の圧力とポートP3との圧力の比は一定となる。」 (第2頁第4欄第43行?第3頁第5欄第12行) (ホ)「バルブ13はポートP2に圧力が印加されないときはポートP3の圧力をポートP1の圧力より一定比で低くし、……」 (第3頁第5欄第26行?第28行) (ヘ)「2ウエイバルブ17のレバー18を操作してオフの状態にすると、駆動車軸3のエアスプリング4にはサージタンク8と同圧の空気圧が供給され、一方駆動されない従動車軸2のエアスプリング5には圧力制御装置13によりサージタンク8内の圧力より減圧された空気圧が供給される。従つて駆動車軸3の軸重を大きくセツトすることができる。」 (第3頁第6欄第2行?第9行) 上記記載事項(イ)によれば、引用例のエアサスペンシヨンチユービング装置は、レベリングバルブによって車高調節を行っているのであるから、エアスプリング4,5の内圧が、積載荷重の増加に応じて高くなるように構成されていることは明らかである。 また、上記記載事項(ヘ)によれば、レバー18を操作して2ウエイバルブ17をオフに操作した状態では、従動車軸2のエアスプリング5に対して、駆動車軸3のエアスプリング4の圧力P1を一定比で低くした圧力P3が印加されるようになっており、この圧力P1とP3の比は、2ウエイバルブ17をオフに操作している状態(このような操作状態は特に空車時に必要とされる。)にあっては、空車時においても、積載荷重が増加した場合においても変わりがないものと認められる。そして、従動車軸2のエアスプリング5に対して、駆動車軸3のエアスプリング4の圧力を一定比で低くした圧力を印加するということは、従動車軸2に加わる軸重に対する駆動車軸3に加わる軸重の割合を一定にするということであり、これは従動車軸2と駆動車軸3に加わる軸重、即ち、後2軸に加わる軸重に対する駆動車軸3に加わる軸重の割合を一定にすることと同じである(引用例において、P1/P3が一定であるならば、P1/(P1+P3)も一定である。)。してみれば、上記引用例のエアサスペンシヨンチユービング装置は、レバー18を操作して2ウエイバルブ17をオフに操作する状態において、後2軸に加わる軸重に対する駆動軸から成る後前軸の軸重の割合を駆動軸重比とした場合に、該駆動軸重比を空車時の駆動軸重比とほぼ等しくしているものということができる。 さらに、上記エアサスペンシヨンチユービング装置において、レバー18を操作して2ウエイバルブ17をオフに操作する状態は、駆動軸から成る後前軸の軸重を相対的に増加させて駆動輪の駆動力を大きくする状態であるから、この状態は駆動力付加状態ということができ、また、このような操作を行う上記エアサスペンシヨンチユービング装置は、駆動力付加装置ということができる。 したがって、上記引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「従動車軸2から成る後々軸を懸架するサスペンション装置のエアスプリング5に対して、駆動車軸3のエアスプリング4の圧力を一定比で低くした圧力を印加し、駆動車軸3から成る後前軸の軸重を増加させて駆動輪の駆動力を大きくするようにした後2軸車の駆動力付加装置において、 駆動力付加状態において後2軸に加わる軸重または車両総重量に対する駆動軸から成る後前軸に加わる軸重の割合を駆動軸重比とした場合に、該駆動軸重比が空車時の駆動軸重比とほぼ等しくなるように後々軸側のエアスプリングの内圧を積載荷重の増加に応じて高くするようにした後2軸車の駆動力付加装置。」 3.対比 本願補正発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「従動車軸2」、「駆動車軸3」は、本願補正発明の「従動軸」、「駆動軸」に相当するから、両者は、 「駆動軸から成る後前軸の軸重を増加させて駆動輪の駆動力を大きくするようにした後2軸車の駆動力付加装置において、 駆動力付加状態において後2軸に加わる軸重または車両総重量に対する駆動軸から成る後前軸に加わる軸重の割合を駆動軸重比とした場合に、該駆動軸重比が空車時の駆動軸重比とほぼ等しくなるように後々軸側のエアスプリングの内圧を積載荷重の増加に応じて高くするようにした後2軸車の駆動力付加装置。」 の点で一致するが、次の点で相違するものと認められる。 <相違点1> 本願補正発明は、従動軸から成る後々軸を懸架するサスペンション装置のエアスプリングの空気を排出することによって駆動軸から成る後前軸の軸重を増加させて駆動輪の駆動力を大きくするようにしたのに対し、引用発明では、従動軸から成る後々軸を懸架するサスペンション装置のエアスプリングに対して、駆動軸のエアスプリングの圧力を一定比で低くした圧力を印加し、駆動軸から成る後前軸の軸重を増加させて駆動輪の駆動力を大きくするようにした点。 <相違点2> 本願補正発明は、後前軸と後々軸とを互いに別々のリーフスプリングによって車体にそれぞれ懸架し、しかも後前軸側のリーフスプリングの一端と車体との間に後前軸側のエアスプリングを介装し、後々軸側のリーフスプリングの一端と車体との間に後々軸側のエアスプリングを介装しているのに対し、引用発明では、このような構成を備えていない点。 4.当審の判断 <相違点1>について 引用例の記載事項(ヘ)でいう、「駆動されない従動車軸2のエアスプリング5には圧力制御装置13によりサージタンク8内の圧力より減圧された空気圧が供給される。従つて駆動車軸3の軸重を大きくセツトすることができる。」によれば、従動車軸2のエアスプリング5が通常より減圧されることによって駆動車軸3の軸重を大きくセツトすることを可能としており、したがって、従動軸を懸架するエアスプリングの空気を排出することによって駆動軸の軸重を増加させて駆動輪の駆動力を大きくすることと同効の働きをすることが明らかであるから、この相違点1でいう本願補正発明の構成に格別の創意を見出すことができない。 <相違点2>について 後前軸と後々軸とを互いに別々のリーフスプリングによって車体にそれぞれ懸架し、しかも前記後前軸側のリーフスプリングの一端と車体との間に後前軸側のエアスプリングを介装し、前記後々軸側のリーフスプリングの一端と車体との間に後々軸側のエアスプリングを介装する後2軸車の懸架形式は、従来周知(例えば実願平5-75698号(実開平7-40212号)のCD-ROM、実願昭63-157612号(実開平2-77114号)のマイクロフィルム、実公平1-27444号公報参照)の技術的事項である。そして、この技術的事項も、後2軸車の後前軸及び後々軸を懸架するサスペンション装置に係るものである点で引用発明と同じ技術分野に属しているものであるし、この技術を引用発明に採用することに関しては何ら技術的な困難性はないから、この技術的事項を引用発明に適用して、相違点2でいう本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到することができたものというべきである。 そして、本願補正発明の効果も、引用発明及び前記の従来周知の技術的事項から当業者であれば予測できる程度のものであり、格別なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、前記の従来周知の技術的事項を考慮することにより、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 【3】本願発明について 1.本願発明 平成15年8月29日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成14年9月24日付の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項によって特定されるものと認められるが、そのうち請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりである。 「【請求項2】 従動軸から成る後々軸を懸架するサスペンション装置のエアスプリングの空気を排出することによって駆動軸から成る後前軸の軸重を増加させて駆動輪の駆動力を大きくするようにした後2軸車の駆動力付加装置において、 駆動力付加状態において後2軸に加わる軸重または車両総重量に対する駆動軸から成る後前軸に加わる軸重の割合を駆動軸重比とした場合に、該駆動軸重比が空車時の駆動軸重比とほぼ等しくなるように後々軸側のエアスプリングの内圧を積載荷重の増加に応じて高くするようにしたことを特徴とする後2軸車の駆動力付加装置。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記の【2】2.に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明の構成を全て備えており、当該発明の構成に更に限定を付加している本願補正発明が、前記【2】3.以下に記載したとおり、前記従来周知の技術的事項を考慮することにより、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、前記従来周知の技術的事項を考慮することにより、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 【4】むすび 以上のとおり、本願発明(本願の請求項2に係る発明)は、前記従来周知の技術的事項を考慮することにより、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の請求項1に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-13 |
結審通知日 | 2006-11-15 |
審決日 | 2006-11-29 |
出願番号 | 特願平9-105300 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B60G)
P 1 8・ 121- Z (B60G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 増岡 亘 |
特許庁審判長 |
藤井 俊明 |
特許庁審判官 |
永安 真 ぬで島 慎二 |
発明の名称 | 後2軸車の駆動力付加装置 |
代理人 | 松村 修 |