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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1150667
審判番号 不服2004-22160  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-28 
確定日 2007-02-13 
事件の表示 平成 7年特許願第 48067号「撮像具」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月27日出願公開、特開平 8-251457、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
第一 経緯

1.手続
本願は、平成7年3月8日の出願である。
本件は、本願についてされた拒絶査定(平成16年9月22日付け)を不服とする平成16年10月28日の審判の請求であり、請求後、手続補正書(平成16年11月29日付け、明細書及び図面について請求の日から30日以内にする補正)が提出された。

2.査定の理由
査定の理由は、概略、下記のとおりである。
記(査定の理由)
請求項1に係る発明は、下記刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:実願平1-75038号(実開平3-14638号)のマイク ロフィルム
刊行物2:特開平8-130236号公報
刊行物3:特開平4-107417号公報
刊行物4:実願平2-41952号(実開平4-2183号)のマイクロ フィルム
刊行物5:特開平5-64046号公報

第二 補正の却下の決定

平成16年11月29日付けの手続補正について以下のとおり決定する。

《結論》
平成16年11月29日付けの手続補正を却下する。
《理由》
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むところ、その補正は特許請求の範囲に記載した1つの請求項(補正前の請求項1)を2つの請求項(補正後の請求項1と請求項2)とするものである。
特許請求の範囲についてする補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、または明りょうでない記載の釈明を目的とするものに限られるところ(特許法第17条の2第3項)、請求項の数を増加する補正は、これらのいずれにも該当しない。
本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第三 本願発明

平成16年11月29日付けの手続補正は上記のとおり却下する。
本願の請求項1に係る発明は、本願明細書及び図面(平成16年3月8日付け手続補正書により記載された明細書及び図面)の特許請求の範囲の請求項1に記載した次のとおりのものである(以下本願発明という)。
記(本願発明)
ズーム機能を有するカメラユニットを内蔵の撮像具本体と、
所定の拡大倍率を持つ補助レンズを有し、この補助レンズを撮像具本体におけるカメラユニットへの像光の入射経路に対し選択的に位置決め可能とする拡大撮像アダプタと、
撮像具本体に組み込まれた照明手段とを備えてなり、
補助レンズをカメラユニットへの像光の入射経路から外した状態での撮像具本体による撮像と、補助レンズをカメラユニットへの像光の入射経路に位置決めさせた状態で、照明手段により撮像対象物を照明しつつ行う拡大撮像とを選択的に行えるようになっている撮像具であって、
補助レンズに関し物体距離を固定的に与える物体距離固定部を拡大撮像アダプタに設けると共に、この拡大撮像アダプタを撮像具本体に対し着脱可能とし、
拡大撮像に際しては拡大撮像アダプタを撮像具本体に装着することで補助レンズをカメラユニットへの像光の入射経路に位置決めさせ、その物体距離固定部の先端を撮像対象物に当接させた状態で撮像できるようになっている、
撮像具。

第四 査定の検討

1.本願発明について
(a)主要構成
査定で引用された上記刊行物のいずれを見ても、本願発明が備える下記主要構成は記載されていない。また、各刊行物を組み合わせても、同主要構成を導くことはできない。
記(本願発明の主要構成)
撮像具本体が「ズーム機能を有するカメラユニットを内蔵」すると共に、補助レンズを「入射経路に対し選択的に位置決め可能」とし、拡大撮像アダプタに「所定の拡大倍率を持つ補助レンズに関し物体距離を固定的に与える物体距離固定部を設ける」ことにより「その物体距離固定部の先端を撮像対象物に当接させた状態で撮像できる」ようにしたこと。
(b)効果等
そして、本願発明は、上記主要構成を備えることにより、本願明細書に記載された「汎用的なズーム機能による手軽な倍率変更を有効に活かしつつ、通常倍率での撮像と高倍率での拡大撮像を必要に応じて手軽に使い分けることができるので、ビデオ映像分野にさらに大きな広がりをもたらすことができる。」(段落0027)、「補助レンズが与える拡大倍率に応じた高倍率での拡大撮像をズーム機能におけるズーム比の範囲で可変的に行うことができる。」(段落0009)等の作用効果を奏し得るものと認められる。
(c)結論
以上によれば、本願発明は上記刊行物に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

2.引用刊行物の記載
以下、査定で引用された上記刊行物の記載を見ておく。なお、刊行物2(特開平8-130236号公報)は本願の出願後に頒布された文献であり、誤って引用されたものと認められるので、これを除く。
(a)刊行物1
(a1)刊行物1には、「近接撮影用アダプタ装置」に関し、以下の記載がある。
「本考案は、近接撮影用アダプタ装置、詳しくは、照明手段を有するカメラに適合する近接撮影用アダプタ装置に関する。」(2頁9行?11行)
「第1図は・・・近接撮影用のアダプタ装置の断面図である。装着されるカメラはカメラ本体1と、撮影レンズ2と、撮影レンズ2から所定距離離隔して配された、照明手段であるストロボ光源部3を有している。そして上記近接撮影用アダプタ装置はカメラ本体と位置決めされる結合部と、ストロボ光入射部4aと投射部4bを有する支持メンバであるアダプタ本体4と、そのアダプタ本体4に固着されるクローズアップレンズ5と、・・・導光手段の一つであるミラー6と、・・・ストロボ光拡散用デフューザ7と、・・・ 導光手段の一つであるハーフミラー8によって構成されている。」(5頁15行?6頁12行)
(a2)刊行物1には、クローズアップレンズ5が固着されたアダプタ装置を、ストロボ光源部3を有するカメラ本体部1に装着して近接撮影をすることが記載されている。
(a3)しかし、カメラ本体1が「ズーム機能を有する(カメラユニットを内蔵する)」趣旨の記載はない。
また、本願発明の「補助レンズを・・・入射経路に対し選択的に位置決め可能」との構成は「拡大撮像アダプタにおける補助レンズを移動可能とし」(本願明細書の段落0012)の趣旨であるところ、このような趣旨の記載もない。
さらに、アダプタ装置の先端を被写体に「当接させる」趣旨の記載はなく、したがって「補助レンズに関し物体距離を固定的に与える物体距離固定部」に相当する構成もない。

(b)刊行物3
(b1)刊行物3には、「拡大観察装置」に関し、以下の記載がある。
「この拡大観察装置は、(中略)対物具を光学系及び光源を内蔵する前方ブロックと撮像手段及び信号処理手段を内蔵する後方ブロックとに分割し両者を接・離自在としているので、拡大率や対象被観察物の種類に応じて専用仕様とした前方ブロックを予め用意しておき、この交換だけで必要な観察に簡単に対応できることになり、扱いがより一層手軽になる。」(3頁左上欄8行?16行)
「対物具1は、全体が細長い筒状のもので、前方ブロック3と後方ブロック4とに分割されており、前方ブロック3が後方ブロック4に対し着脱できるようになっている。前方ブロック3は、その先端に対物先端部5を備えると共に、内部に被観察物拡大用の光学系6と被観察物照明用の光源7を内蔵している。対物先端部5は、その先端を被観察物Mの表面に当接させることにより光学系6の対物レンズ11の焦点に対し被観察物Mの表面が合うようにするためのものであり、前方ブロック3に対し螺着されている。」(3頁左下欄2行?13行)
「後方ブロック4は、光学系6により得られる被観察物Mの拡大像を捉える撮像手段(CCD素子)16及び撮像手段16からの信号を処理する信号処理手段17を内蔵している。」(3頁右下欄19行?4頁左上欄2行)
(b2)刊行物3には、対物レンズ11を備える前方ブロックを、後方ブロック部に装着し、前方ブロック(対物先端部5)を被観察物Mに「当接させて」撮影をすることが記載されている。
(b3)刊行物3では、後方ブロックの撮像手段(CCD素子)16と前方ブロックの光学系6とにより「カメラユニット」を構成するので、後方ブロックと前方ブロックとの結合が本願発明の「撮像具本体」に対応する。そして、「拡大率や対象被観察物の種類に応じて専用仕様とした前方ブロックを予め用意しておき、この交換だけで必要な観察に簡単に対応できる」(3頁左上欄13行?15行)としており、後方ブロックの交換を「ズーム機能」と見ることができなくもない。この場合、対物先端部5が「拡大撮像アダプタ」に対応することになる。
しかし、対物先端部5は前方ブロックに螺合(調整)されており(4頁左上欄16行)、「撮像具本体に着脱自在に取付ける」ものではない。また、光学系6の拡大率自体既に「当接」撮影時の拡大率に設定されており、したがって、この上さらに「補助レンズを有する」ことは想定されていない。
なお、後方ブロックが「(ズーム機能を有する)カメラユニットを内蔵」する趣旨の記載はないので、後方ブロックおよび前方ブロックをそれぞれ「撮像具本体」および「拡大撮像アダプタ」に対応させることもできない。

(c)刊行物4
(c1)刊行物4には、「精密部品等の遠隔指示用テレビ電話」に関し、以下の記載がある。
「この考案は遠隔地に対して宝石、貴金属、カバン及び袋物の口金等の精密部品等の修理、デザインの変更、別注加工、オーダーメード加工を依頼するのに正確な指示を与えようとする精密部品等の遠隔指示用テレビ電話に関する。」(2頁8?12行)
「本考案の精密部品等の遠隔指示用テレビ電話は、使用者が接写と標準とを任意に選択出来るカメラ部と、任意に一又は複数画像の静止画像を送信出来るモニター部とを備えた送信用テレビ電話システムにおいて、前記カメラ部を接写を選択し、前記カメラ部に拡大レンズを着脱自在に取り付けてなるものである。更に、拡大レンズは筒状吸盤内部に装着することが好ましい。」(3頁下から5行?4頁4行)
(c2)刊行物4には、拡大レンズ11を装着した筒状吸盤部をカメラ部の前部に吸着し、精密部品等を接写することが記載されている。
(c3)しかし、カメラ部が「ズーム機能を有する(カメラユニットを内蔵する)」趣旨の記載はない。
また、本願発明の「補助レンズを・・・入射経路に対し選択的に位置決め可能」に相当する構成もない。
さらに、筒状吸着部の先端を被写体(精密部品等)に「当接させる」趣旨の記載はなく、したがって「補助レンズに関し物体距離を固定的に与える物体距離固定部」に相当する構成もない。

(d)刊行物5
(d1)刊行物5には、「画像入力装置」に関し、以下の記載がある。
「図5は上記従来の画像入力装置の側面図である。カメラヘッド30の中に撮像素子31、撮影レンズ32が配置され、カメラヘッド30の先端部にクローズアップレンズ34を有するクローズアップレンズユニット33が装着されている。・・・載置台10の上に置かれた原稿1は、クローズアップレンズユニット33が装着された撮影レンズ32によって撮像素子31の上に結像され、電気的映像信号に変換されモニター(不図示)に出力される。」(段落0003、図5)
「この時、使用される撮影レンズ32は、被写体1の大きさが変わってもモニター上で見やすくするために、また撮影する範囲・大きさが調整できるように、画角が簡単に替えられるズームレンズが一般的に使用されている。しかしながら、ズームレンズの欠点として最短撮影可能距離が遠いという性質があるため、撮影レンズのすぐ近くに設置された被写体を撮影するこのような画像入力装置として使用する場合は、撮影レンズ32の前面にクローズアップレンズ34を装着して近距離撮影専用レンズ系として使用するのが一般的である。」(段落0004)
(d2)刊行物5には、撮影レンズ32にズームレンズを使用した場合において、撮影レンズのすぐ近くに設置された被写体を撮影するときは、撮影レンズ32の前面にクローズアップレンズ34を装着して近距離撮影専用レンズ系として使用することが一般的であることが記載されている。
(d3)しかし、本願発明の「補助レンズを・・・入射経路に対し選択的に位置決め可能」に相当する構成はない。
また、クローズアップレンズ34と被写体(原稿1)とは離れており「当接させる」ものではなく(図5)、したがって「補助レンズに関し物体距離を固定的に与える物体距離固定部」に相当する構成もない。
(d4)なお、刊行物5には「照明手段」に関する記載がないことから、刊行物5を主引用例としこれに刊行物1又は刊行物3を組み合わせることもできない。

第五 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2007-01-26 
出願番号 特願平7-48067
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
P 1 8・ 57- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山本 章裕益戸 宏  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 松永 隆志
北岡 浩
発明の名称 撮像具  
代理人 村松 義人  
代理人 鈴木 正剛  

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