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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1150686 |
審判番号 | 不服2002-23415 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-08-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-12-05 |
確定日 | 2007-01-18 |
事件の表示 | 特願2000-376383「エンタテインメントシステム、エンタテインメント装置、記録媒体及び画像表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月21日出願公開、特開2001-224849〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成12年12月11日の(優先権主張平成11年12月10日特願平11-352295号)特許出願(特願2000-376383号)であって、平成14年7月24日付で拒絶理由が通知され、これに対して同年10月7日付で手続き補正がなされたが同年10月25日付で拒絶査定され、同年12月5日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、平成15年1月6日に手続き補正がなされたものである。 2.平成15年1月6日付け手続き補正についての補正却下 [補正却下についての結論] 平成15年1月6日付けの手続き補正(以下「本件補正」という)を却下する。 [補正却下の理由] 2-1.補正後の請求項 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1?8を、次のように補正するものである。 請求項1 「補正前【請求項1】 各種プログラムを実行するエンタテインメント装置と、使用者による操作要求を前記エンタテインメント装置に入力する少なくとも1つの操作装置と、前記エンタテインメント装置から出力された画像を表示する表示装置とを有するエンタテインメントシステムにおいて、前記表示装置に表示された背景オブジェクトの位置情報とダメージ付与オブジェクトの位置情報に基づいて、前記背景オブジェクトに対する破壊判定を行う手段と、前記破壊判定にて破壊指示を受けた破壊対象の背景オブジェクトについて、少なくとも前記破壊対象の背景オブジェクトの種類と前記ダメージ付与オブジェクトが前記破壊対象の背景オブジェクトに衝突する方向とに関連して前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する手段とを有することを特徴とするエンタテインメントシステム。」 「補正後【請求項1】 各種プログラムを実行するエンタテインメント装置と、使用者による操作要求を前記エンタテインメント装置に入力する少なくとも1つの操作装置と、前記エンタテインメント装置から出力された画像を表示する表示装置とを有するエンタテインメントシステムにおいて、前記表示装置に表示された背景オブジェクトの位置情報とダメージ付与オブジェクトの位置情報とに基づいて、前記背景オブジェクトに対する破壊判定を行う手段と、 前記破壊判定にて破壊指示を受けた破壊対象の背景オブジェクトについて、少なくとも前記破壊対象の背景オブジェクトの種類と前記ダメージ付与オブジェクトが前記破壊対象の背景オブジェクトに衝突する方向とに関連して前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する手段とを有することを特徴とするエンタテインメントシステム。」 請求項2 「補正前【請求項2】 各種プログラムを実行するエンタテインメント装置と、使用者による操作要求を前記エンタテインメント装置に入力する少なくとも1つの操作装置と、前記エンタテインメント装置から出力された画像を表示する表示装置とを有するエンタテインメントシステムにおいて、前記表示装置に表示された背景オブジェクトの位置情報とダメージ付与オブジェクトの位置情報とに基づいて、前記背景オブジェクトに対する破壊判定を行う第1の判別手段と、前記破壊判定にて破壊指示を受けた破壊対象の背景オブジェクトについて、少なくとも前記破壊対象の背景オブジェクトの種類と前記ダメージ付与オブジェクトが前記破壊対象の背景オブジェクトに衝突する方向とに関連して前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態か、あるいは発生した乱数値に応じて前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態かを、少なくとも背景オブジェクトに応じて破壊過程の表示形態に関する情報が配列された情報テーブルのうち、前記破壊対象の背景オブジェクトに対応した前記情報に基づいて判別する第2の判別手段と、前記第2の判別手段での判別結果に応じた表示形態に従って前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する手段とを有することを特徴とするエンタテインメントシステム。」 「補正後【請求項2】 各種プログラムを実行するエンタテインメント装置と、使用者による操作要求を前記エンタテインメント装置に入力する少なくとも1つの操作装置と、前記エンタテインメント装置から出力された画像を表示する表示装置とを有するエンタテインメントシステムにおいて、前記表示装置に表示された背景オブジェクトの位置情報とダメージ付与オブジェクトの位置情報とに基づいて、前記背景オブジェクトに対する破壊判定を行う第1の判別手段と、前記破壊判定にて破壊指示を受けた破壊対象の背景オブジェクトについて、少なくとも前記破壊対象の背景オブジェクトの種類と前記ダメージ付与オブジェクトが前記破壊対象の背景オブジェクトに衝突する方向とに関連して前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態か、あるいは前記破壊対象の背景オブジェクトの種類及び発生した乱数値に応じて前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態かを、少なくとも背景オブジェクトに応じて破壊過程の表示形態に関する情報が配列された情報テーブルのうち、前記破壊対象の背景オブジェクトに対応した前記情報に基づいて判別する第2の判別手段と、前記第2の判別手段での判別結果に応じた表示形態に従って前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する手段とを有することを特徴とするエンタテインメントシステム。」 請求項3は補正箇所なし 請求項4 「補正前【請求項4】 使用者による操作要求を出力する操作装置と、画像を表示するための表示装置とが接続可能とされたエンタテインメント装置において、前記表示装置に表示された背景オブジェクトの位置情報とダメージ付与オブジェクトの位置情報とに基づいて、前記背景オブジェクトに対する破壊判定を行う第1の判別手段と、前記破壊判定にて破壊指示を受けた破壊対象の背景オブジェクトについて、少なくとも前記破壊対象の背景オブジェクトの種類と前記ダメージ付与オブジェクトが前記破壊対象の背景オブジェクトに衝突する方向とに関連して前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態か、あるいは発生した乱数値に応じて前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態かを、少なくとも背景オブジェクトに応じて破壊過程の表示形態に関する情報が配列された情報テーブルのうち、前記破壊対象の背景オブジェクトに対応した前記情報に基づいて判別する第2の判別手段と、前記第2の判別手段での判別結果に応じた表示形態に従って前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する手段とを有することを特徴とするエンタテインメント装置。」 「補正後【請求項4】 使用者による操作要求を出力する操作装置と、画像を表示するための表示装置とが接続可能とされたエンタテインメント装置において、前記表示装置に表示された背景オブジェクトの位置情報とダメージ付与オブジェクトの位置情報とに基づいて、前記背景オブジェクトに対する破壊判定を行う第1の判別手段と、前記破壊判定にて破壊指示を受けた破壊対象の背景オブジェクトについて、少なくとも前記破壊対象の背景オブジェクトの種類と前記ダメージ付与オブジェクトが前記破壊対象の背景オブジェクトに衝突する方向とに関連して前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態か、あるいは前記破壊対象の背景オブジェクトの種類及び発生した乱数値に応じて前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態かを、少なくとも背景オブジェクトに応じて破壊過程の表示形態に関する情報が配列された情報テーブルのうち、前記破壊対象の背景オブジェクトに対応した前記情報に基づいて判別する第2の判別手段と、前記第2の判別手段での判別結果に応じた表示形態に従って前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する手段とを有することを特徴とするエンタテインメント装置。」 請求項5は補正箇所なし。 請求項6 「補正前【請求項6】 各種プログラムを実行するエンタテインメント装置と、使用者による操作要求を前記エンタテインメント装置に入力する少なくとも1つの操作装置と、前記エンタテインメント装置から出力された画像を表示する表示装置とを有するエンタテインメントシステムを、 前記表示装置に表示された背景オブジェクトの位置情報とダメージ付与オブジェクトの位置情報に基づいて、前記背景オブジェクトに対する破壊判定を行う第1の判別手段、前記破壊判定にて破壊指示を受けた破壊対象の背景オブジェクトについて、少なくとも前記破壊対象の背景オブジェクトの種類と前記ダメージ付与オブジェクトが前記破壊対象の背景オブジェクトに衝突する方向とに関連して前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態か、あるいは発生した乱数値に応じて前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態かを、少なくとも背景オブジェクトに応じて破壊過程の表示形態に関する情報が配列された情報テーブルのうち、前記破壊対象の背景オブジェクトに対応した前記情報に基づいて判別する第2の判別手段、前記第2の判別手段での判別結果に応じた表示形態に従って前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する手段、として機能させるためのプログラムが記録されたコンピュータにて読取り可能な記録媒体。」 「補正後【請求項6】 各種プログラムを実行するエンタテインメント装置と、使用者による操作要求を前記エンタテインメント装置に入力する少なくとも1つの操作装置と、前記エンタテインメント装置から出力された画像を表示する表示装置とを有するエンタテインメントシステムを、前記表示装置に表示された背景オブジェクトの位置情報とダメージ付与オブジェクトの位置情報とに基づいて、前記背景オブジェクトに対する破壊判定を行う第1の判別手段、前記破壊判定にて破壊指示を受けた破壊対象の背景オブジェクトについて、少なくとも前記破壊対象の背景オブジェクトの種類と前記ダメージ付与オブジェクトが前記破壊対象の背景オブジェクトに衝突する方向とに関連して前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態か、あるいは前記破壊対象の背景オブジェクトの種類及び発生した乱数値に応じて前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態かを、少なくとも背景オブジェクトに応じて破壊過程の表示形態に関する情報が配列された情報テーブルのうち、前記破壊対象の背景オブジェクトに対応した前記情報に基づいて判別する第2の判別手段、前記第2の判別手段での判別結果に応じた表示形態に従って前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する手段、として機能させるためのプログラムが記録されたコンピュータにて読取り可能な記録媒体。」 請求項7は補正箇所なし。 請求項8 「補正前【請求項8】 各種プログラムを実行するエンタテインメント装置と、使用者による操作要求を前記エンタテインメント装置に入力する少なくとも1つの操作装置と、前記エンタテインメント装置から出力された画像を表示する表示装置とを有するエンタテインメントシステムにおける画像表示方法において、前記表示装置に表示された背景オブジェクトの位置情報とダメージ付与オブジェクトの位置情報に基づいて、前記背景オブジェクトに対する破壊判定を行う第1の判別ステップと、前記破壊判定にて破壊指示を受けた破壊対象の背景オブジェクトについて、少なくとも前記破壊対象の背景オブジェクトの種類と前記ダメージ付与オブジェクトが前記破壊対象の背景オブジェクトに衝突する方向とに関連して前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態か、あるいは発生した乱数値に応じて前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態かを、少なくとも背景オブジェクトに応じて破壊過程の表示形態に関する情報が配列された情報テーブルのうち、前記破壊対象の背景オブジェクトに対応した前記情報に基づいて判別する第2の判別ステップと、前記第2の判別手段での判別結果に応じた表示形態に従って前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示するステップとを有することを特徴とする画像表示方法。」 「補正後【請求項8】 各種プログラムを実行するエンタテインメント装置と、使用者による操作要求を前記エンタテインメント装置に入力する少なくとも1つの操作装置と、前記エンタテインメント装置から出力された画像を表示する表示装置とを有するエンタテインメントシステムにおける画像表示方法において、前記表示装置に表示された背景オブジェクトの位置情報とダメージ付与オブジェクトの位置情報とに基づいて、前記背景オブジェクトに対する破壊判定を行う第1の判別ステップと、前記破壊判定にて破壊指示を受けた破壊対象の背景オブジェクトについて、少なくとも前記破壊対象の背景オブジェクトの種類と前記ダメージ付与オブジェクトが前記破壊対象の背景オブジェクトに衝突する方向とに関連して前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態か、あるいは前記破壊対象の背景オブジェクトの種類及び発生した乱数値に応じて前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する表示形態かを、少なくとも背景オブジェクトに応じて破壊過程の表示形態に関する情報が配列された情報テーブルのうち、前記破壊対象の背景オブジェクトに対応した前記情報に基づいて判別する第2の判別ステ ップと、前記第2の判別手段での判別結果に応じた表示形態に従って前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示するステップとを有することを特徴とする画像表示方法。」 2ー2.補正の目的 本件補正により補正された、 請求項1、7は、補正前の請求項に、「と」の文字を加え不明瞭な記載を明瞭化したものであり、 請求項2、4、6、8は、「破壊過程を表示する」を更に限定し具体化したものである。 また、補正によって請求項に加わった事項は、願書に最初に添付された明細書及び図面に記載されていた事項である。 よって、本件補正は、新規事項の追加ではなく、請求の範囲を限定的に減縮する補正である。 そこで、この補正が、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるか(本件補正後の各請求項が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか)、検討する。 2-3.本件補正後の請求項1についての独立特許要件 2-3-1.本件補正後の請求項1に係る発明の認定 本件補正により補正された明細書及び図面に基づけば、本願の本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正後発明」という)は、上記2-1.の請求項1についての項において認定した、「補正後【請求項1】」の記載のとおりのものである。 2-3-2.引用文献 引用文献1:月刊ゲームウォーカー,株式会社角川書店,1996年8月1日,第3巻第8号通巻22号,第137頁上欄 (原審における平成14年7月24日付拒絶理由引用文献1) 引用文献2:特許第2939223号公報(原審における平成14年7月24日付拒絶理由通知の「先行技術文献調査結果の記録」記載文献) 引用文献3:システム制御情報学会誌 1995年Vol.39. No3 p49 「マルチメディア展望-V-ゲームにおけるリアリティ」の項 引用文献4:情報処理学会第59回(平成11年後期)全国大会後援論文集(4)1999年9月28日 社団法人情報処理学会 「衝突検出エージェントを用いた仮想入力デバイス構築フレイムワーク」第4-93、4-94頁「2アバター」、「3.1動作原理」の項 引用文献5:「プレイステーションFIGHTING ILLUSION V K-1 GRAND PRIX’99 公式ガイドブック」 初版 1999年11月1日 小学館発行 第10頁「多彩なダウンシーンを見てみよう」第18頁「上下を打ち分けて攻撃する」の項 これに対して、本願出願日前に頒布された上記各引用文献には、以下の事項が記載されている。 引用文献1(月刊ゲームウォーカー,株式会社角川書店,1996年8月1日,第3巻第8号通巻22号,第137頁上欄 (原審における平成14年7月24日付拒絶理由引用文献1))記載事項 (記載1) 「新作ソフトカタログ パソコンソフト」(第137頁最上部見出し) (記載2) 「壮絶バトルを楽しむ3Dシューティングゲーム」(第137頁上欄右見出し) (記載3) 「ゲームの目的は大気圏内外でのミッションを達成し、得点を稼ぎ、自機をグレードアップさせていくこと。特徴的な部分は画面上のすべてのものが破壊可能になっている点・・・」(第137頁上欄右) (記載4) 「搭載されるさまざまな武器群」「画面上のすべてのモノが破壊可能 敵の母艦・戦闘機はもちろん建造物、地表(えぐり取ることが可能)など画面上のすべてのものが破壊可能。 映像表現には特殊なポリゴン処理を施し・・・」(第137頁上覧左) これら記載からみて、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という)が記載されている。 「引用発明1」 「パソコンソフトによる3Dシューティングゲームであって、ゲームの目的は大気圏内外でのミッションを達成し、得点を稼ぎ、自機をグレードアップさせていくことであり、画面上のすべてのモノが武器を用いて破壊可能であり、 敵の母艦・戦闘機はもちろん建造物、地表(えぐり取ることが可能)など画面上のすべてのものが破壊可能なゲーム。」 引用文献2特許第2939223号公報(原審における平成14年7月24日付拒絶理由通知の「先行技術文献調査結果の記録」記載文献)記載事項 (記載5) 「【0002】【背景技術及び発明が解決しようとする課題】 従来より、ガン型コントローラ等のシューティングデバイスを用いて、標的オブジェクトをシューティングできる画像生成装置が開発、実用化されている。このような画像生成装置では、図1(A)に示すように、ガン型コントローラ522のトリガをプレーヤ520が引くと、ガン型コントローラ522により指示される表示画面512上の2次元位置が光学的に検出される。そして、この検出された2次元位置が、画面上に表示される2次元の標的オブジェクトの位置と一致した場合には当たりと判定され、一致しなかった場合には外れと判定される。この画像生成装置によれば、プレーヤは、本物の銃を使用することなく射撃や銃撃戦を仮想体験できるようになるため、ゲームとしての人気が高い。」(段落番号0002) (記載6) 「【0005】しかしながら、再生される標的オブジェクトのモーションがリアルさに欠け、単調であると、仮想現実感の向上という課題の達成が不十分になる。 【0006】 本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、標的オブジェクトのモーションのリアル度やバラエティ度を増すことができる画像生成装置及び情報記憶媒体を提供することにある。」(段落番号0005、0006) (記載7) 「【0007】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、オブジェクト空間内の標的オブジェクトを少なくとも1人のプレーヤがシューティングデバイスを用いて・・・ ・・・プレーヤによるショットと標的オブジェクトとのヒットチェックを行う手段と、標的オブジェクトのモーションデータを記憶する手段と、標的オブジェクトにショットがヒットした場合に前記モーションデータに基づいて標的オブジェクトのモーションを再生すると共に、標的オブジェクトにヒットしたショットの軌道の方向に応じて、標的オブジェクトのモーションを変化させる手段と、オブジェクト空間内の所与の視点での画像を生成する手段とを含むことを特徴とする。」(段落番号0007) 引用文献3(システム制御情報学会誌 1995年Vol.39. No3 p49 「マルチメディア展望-V-ゲームにおけるリアリティ」)記載事項 (記載8) 「ところで、次世代のゲーム機で実現されることとして、リアリティの向上があげられる」(第49頁左欄第11,12行) (記載9) 「さらに、ゲーム作りの段階では、当たり判定と呼ばれる微妙な感覚に基づく微調整にきわめて多くの労力を費やす。これは、画面上のあるオブジェクト-例えば攻撃の弾-が敵に命中したかどうかの判定だが、プレーヤのそれまでの経験に照らして違和感なく感じ取られるように調整する必要がある。これも人間の知覚をベースとし、一般人の内的モデルに沿うことが基準となる。」(第151頁右欄第3-9行) (記載10) 「ゲームの制作者は、ゲームの作り込みの段階でしばしばディテイルにこだわる。たとえば、レースゲームのコースに見られるシミ、あるいは道路のペイントの長さや幅、時に、こうした細かなことの差が、ゲームの味わいに関わってくるものと考えられる。 セガの最近のヒット作「バーチャファイター」(第1図参照)では、格闘技の「間」がよく再現されているとされ、空手や合気道の経験者から見て納得のゆく物なのだそうである。」(第151頁右欄第15-23行) 引用文献4(情報処理学会第59回(平成11年後期)全国大会後援論文集(4)1999年9月28日 社団法人情報処理学会 「衝突検出エージェントを用いた仮想入力デバイス構築フレイムワーク」第4-93、4-94頁)記載事項 (記載11) 「計算機ハードウエア性能の向上によって計算機上に仮想の3次元空間を構築できるようになり、仮想博物館や美術館、3次元シミュレーションシステムなど、3次元仮想空間を利用した研究は急速に進歩している。」(第4-93頁左欄第2-5行) (記載12) 「データをリアルタイムに取り扱うことの出来る磁気式モーションキャプチャ装置をIntelligentBoxと組み合わせることで、演技者の動作のままに動く人形・アバターを仮想空間内に生成できる。アバターはIntelligentBoxによてt構成されており、その各関節は3自由度の回転軸を持つ回転部品(Rotate3dBox)である。演技者の各関節に取り付けられたセンサの確度情報はネットワークを透して仮想空間内のアバターの各関節に反映され、アバターはリアルタイムで演技者の動きを再現する。モーションキャプチャを装着した演技者は、大型プロジェクタまたはヘッドマウントディスプレイなどで仮想空間内のアバターの動作を確認しながら操作を行う。」(第4-93頁左欄第25行-右欄第5行) (記載13) 「衝突検出を基にした動作認識について、ハンドルの操作を例にとり、仮想入力デバイスの動作原理を説明する(図1)。回転部品(RotateBox)で構成されるハンドルの横に、二つの衝突検出センサ(CollisionSenseAgent)を上下に間隔をあけて設置する。ハンドルとセンサの間には親子関係を持たせる。上部(下部)のセンサは回転部品に対して反時計(時計)方向への微少の回転値を保持している。アバターの手先に衝突部品(CollisionObject)を取り付け、演技者はモニターでアバターの動きを確認しながら2つのセンサの間にくるような位置へアバターの手を動かす。演技者が手を上(下)へ動かすと衝突検出が作用し、ハンドルに回転情報が与えられハンドルは反時計(時計)方向に回転する。」(第4-93頁右欄第22行-第4-94頁左欄第10行) 引用文献5(「プレイステーションFIGHTING ILLUSION V K-1 GRAND PRIX’99 公式ガイドブック」 初版 1999年11月1日 小学館発行 )記載事項 (記載14) 「攻撃が足や腹にヒットしたものなら、相手はその部位を抱えこんでダウンする。もちろん、そのままテンカウントを聞けばKO勝利だ。一番派手なのは、相手を吹っ飛ばしてリングに大の字に沈めるシーン。」(第10頁「多彩なダウンシーンを見てみよう」の項) 引用文献6(特開平9-75552号公報)記載事項 (記載15) 「【0016】また・・・ ・・・このようにすると、着弾位置に応じて標的のやられる時間のみならず、そのやられる際の動作がゲーム画面に反映するので、よりリアリティに富んだシューティングゲーム装置を提供することができる。」(段落番号0016) 2-3-4.対比 「本願補正後発明」と「引用発明1」とを比較すると、 「本願補正後発明」の「エンタテインメント装置」は、本願段落番号0002に「ビデオゲーム機を含むエンタテインメント装置のような情報機器(エンタテインメントシステム)として、例えばCD-ROM等の記録媒体に格納されたゲーム内容をテレビジョン受像機の画面上に表示させながら、操作装置で操作してゲームを進行させるものがある。」と記載されている。 また、「引用発明1」はパソコンソフトによるゲームであるから、このゲームソフトを搭載しプログラムを実行することができるゲームシステムの存在を前提としている。 よって、 「引用発明1」の「画面」は「本願補正後発明」の「画像を表示する表示装置」の画面に相当する。また、「引用発明1」の前提としているゲームシステムは「本願補正後発明」の「エンタテインメントシステム」に相当する。 また、「引用発明1」はパソコンゲームであるから、使用者による操作要求を入力する操作装置が存在するのは当然のことである。 また、「引用発明1」の「建造物、地表」は、敵の母艦・戦闘機というシューティング対象とは異なるものとしての位置づけであり、「本願補正後発明」の「背景オブジェクト」に、また、「武器」は「ダメージ付与オブジェクト」に相当する。 よって両発明は、 「プログラムを実行するエンタテインメント装置と、使用者による操作要求をエンタテインメント装置に入力する操作装置と、前記エンタテインメント装置から出力された画像を表示する表示装置とを有するエンタテインメントシステムにおいて、表示装置に表示された背景オブジェクトが、ダメージ付与オブジェクトによって破壊されるところが表示されるエンタテインメントシステム。」 である点において一致し、 (相違点1) 「背景オブジェクト」の破壊に関し、 「本願補正後発明」においては、 「背景オブジェクトの位置情報とダメージ付与オブジェクトの位置情報とに基づいて、前記背景オブジェクトに対する破壊判定を行う手段」を有するのに対し、 「引用発明1」においては、 「背景オブジェクト」が破壊可能であることは開示されているものの、 位置情報に基づく破壊判定を行う手段を有するかどうかは不明である点、 (相違点2) 「本願補正後発明」においては、 「破壊判定にて破壊指示を受けた破壊対象の背景オブジェクトについて、少なくとも前記破壊対象の背景オブジェクトの種類と前記ダメージ付与オブジェクトが前記破壊対象の背景オブジェクトに衝突する方向とに関連して前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する」 としているのに対し、 「引用発明1」においては、 「衝突方向に関連して」背景オブジェクトの破壊の「過程が表示」されるかどうか、 明らかでない点、 において相違する。 2-3-5.当審の判断 (相違点1)について、 「引用発明1」においても、武器によって破壊対象を破壊するものである。そして、電子ゲームにおいては、上記引用文献2((記載5)、(記載7)のヒットチェック)、引用文献3((記載9)の命中判定)、引用文献4((記載13)の衝突検出)にみられるように、オブジェクト同志の位置情報に基づいて衝突の判定をおこなうことが慣用される手法であり、衝突結果が破壊であるのか対象の運動であるのかはシステムの画像表示の目的に応じて適宜定める表現の相違にすぎないから、「位置情報に基づいて、破壊判定を行う手段」を設けるという程度の事項は、当業者が周知慣用の事項から容易に想到しうる程度の事項であると判断される。 (相違点2)について、 この相違点は、「引用発明1」における「破壊」が、どのような映像としてなされるか、についての相違から生じるものである。 そこで、「破壊」の具体的表現として、「背景オブジェクトの種類」と「衝突の方向とに関連して破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する」点について検討する。 電子ゲームに代表されるエンタテインメント装置においては、「リアリティ」を高めるという常に存在する技術課題があることは技術常識である。(引用文献3:(記載8-10)参照) そして、リアリティ向上の一具現化として、衝突方向や、衝突位置といった衝突状況に関連した結果が生じる状況を、標的オブジェクトの動きの変化等を示す画像で表現することは、周知の事項(例えば、上記引用文献2(記載6、7)、引用文献4(記載13)、引用文献5(記載14)、引用文献6(記載15)等参照)である。 また、破壊対象が異なれば破壊される様子も異なる、という事項は、リアリティ向上のために困難なく想到できることである。 そして、「本願発明」は、「方向と関連して破壊過程を表示する」という技術事項について、より具体的で進歩性のある限定は何らなされていない。 よって、上記常に存在する技術課題の解決としての、リアリティ向上のための「衝突方向に関連して結果としての過程を表示」している周知の事項から当業者が適宜採用する程度の事項であり、格別想到するに困難はない。 そして、これら(相違点1)及び(相違点2)がもたらす効果においても、格別のものはない。 よって、「本願補正後発明」は「引用発明1」及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることが出来たものである。 従って、「本願補正後発明」は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 2-4.補正却下についてのむすび 以上のとおり、「本願補正後発明」は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定によって却下されるべきものである。 3.本願発明 3-1.本願発明の認定 平成15年1月6日付け手続き補正は、上記2.のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明は、平成14年10月7日付け手続き補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1ないし8に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、請求項1に記載されたとおりの次のものである。 「【請求項1】 各種プログラムを実行するエンタテインメント装置と、使用者による操作要求を前記エンタテインメント装置に入力する少なくとも1つの操作装置と、前記エンタテインメント装置から出力された画像を表示する表示装置とを有するエンタテインメントシステムにおいて、前記表示装置に表示された背景オブジェクトの位置情報とダメージ付与オブジェクトの位置情報に基づいて、前記背景オブジェクトに対する破壊判定を行う手段と、前記破壊判定にて破壊指示を受けた破壊対象の背景オブジェクトについて、少なくとも前記破壊対象の背景オブジェクトの種類と前記ダメージ付与オブジェクトが前記破壊対象の背景オブジェクトに衝突する方向とに関連して前記破壊対象の背景オブジェクトの破壊過程を表示する手段とを有することを特徴とするエンタテインメントシステム。」 4.引用文献 これに対して、引用文献は上記「2-3-2.引用文献」に記載したとおりである。 5.当審の判断 5-1.引用発明1との対比・判断 「本願発明」は、上記「2-2.補正の適否」の項において認定したとおり、「本願補正後発明」と比較して、「と」の文言の有無の相違があるのみである。そしてこの相違は、発明の技術事項に実質的な相違をもたらすものではない。 したがって、「本願発明」の進歩性については、上記「2-3-4.対比」及び「2-3-5.当審の判断」における議論と全く同様である。 よって、「本願発明」は、「引用発明1」及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許をうけることができない。 6.むすび 以上のとおりであるので、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により、特許をうけることができない。 したがって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-15 |
結審通知日 | 2006-11-21 |
審決日 | 2006-12-06 |
出願番号 | 特願2000-376383(P2000-376383) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮本 昭彦 |
特許庁審判長 |
三原 裕三 |
特許庁審判官 |
塩崎 進 小田倉 直人 |
発明の名称 | エンタテインメントシステム、エンタテインメント装置、記録媒体及び画像表示方法 |
代理人 | 千葉 剛宏 |
代理人 | 土屋 洋 |