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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01F
管理番号 1150697
審判番号 不服2003-21201  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-04-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-30 
確定日 2007-01-18 
事件の表示 平成10年特許願第276105号「ガス絶縁機器のガス漏れ判断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月21日出願公開、特開2000-114055〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯
本件に係る手続きの主な経緯は次のとおりである。
特許出願(特願平10-276105号)平成10年 9月29日
拒絶理由通知 (起案日) 平成15年 5月26日
意見書・手続補正書(1) 平成15年 7月31日
拒絶査定(起案日) 平成15年 9月24日
審判請求(不服2003-21201号)平成15年10月30日
手続補正書(2) 平成15年12月 1日
補正却下の決定(起案日) 平成18年 1月27日
(平成15年12月1日付けの手続補正(2)に対して)
最後の拒絶理由通知 (起案日) 平成18年 1月27日
意見書・手続補正書(3) 平成18年 4月 3日

第2.平成18年4月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年4月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「絶縁性ガスを所定圧力で封入したガス絶縁機器の容器と、
この容器内に設置され、前記容器内の絶縁性ガスと同圧力に設定した気体を内部に封止し、密封した伸縮体と、
前記容器のガス漏れによるガス圧力の変化に基づいた前記伸縮体の変位を前記容器外から目視可能で気密に固定された覗き窓とを備え、
前記伸縮体は前記覗き窓の近傍に設けられ、伸縮体の一端が前記容器内で気密に固定され、その他端が自由端に設定され、前記覗き窓で伸縮体の自由端側を目視可能としたことを特徴とするガス絶縁機器のガス漏れ判断装置。」(以下、「本願補正第1発明」という。)と補正し、
さらに、特許請求の範囲の請求項2は
「絶縁性ガスを所定圧力で封入したガス絶縁機器の容器と、
この容器内に設置され、前記容器内の絶縁性ガスと同圧力に設定した気体を内部に封止し、密封した伸縮体と、
前記容器のガス漏れによるガス圧力の変化に基づいた前記伸縮体の変位を前記容器外から目視可能で気密に固定された覗き窓と、
前記伸縮体の変位量を検知する変位量検知手段と、
この変位量検知手段の検知信号に基づいて前記容器外にガス漏れを表示する表示手段とを備え、
前記伸縮体は前記覗き窓の近傍に設けられ、伸縮体の一端が前記容器内で気密に固定され、その他端が自由端に設定され、前記覗き窓で伸縮体の自由端側を目視可能としたことを特徴とするガス絶縁機器のガス漏れ判断装置。」(以下、「本願補正第2発明」という。)と補正された。
上記補正は、請求項1及び請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「封止した伸縮体」を「封止し、密封した伸縮体」と限定するとともに、「前記伸縮体は前記覗き窓の近傍に設けられ、伸縮体の一端が前記容器内で気密に固定され、その他端が自由端に設定され、前記覗き窓で伸縮体の自由端側を目視可能とした」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、前記本願補正第1発明及び本願補正第2発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例に記載された発明
当審における拒絶理由において引用された実願平2-14707号(実開平3-106809号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)は、ガス圧判定装置付電力機器に関するもので、第1図と共に以下の点が記載されている。
「1.SF6などの絶縁性ガスを封入した電力機器類またはガス機器(以下単に電力機器という)内のガス圧変化を外部から目視できるようにしたガス圧判定装置を備えた電力機器において、当該ガス圧判定装置は、ガス圧力の変化により膨張収縮するベローと該ベローを囲包する保護カバーとを具備してなり、該保護カバーにガス-圧変化を外部から目視するためのスリット窓を設け、当該スリット窓を設けた保護カバー内部に前記ベローを取付けし、当該ベロー内に前記電力機器からの絶縁性ガスが通気孔を通って流入するようにし、該ベローに標識を設け、当該標識が当該ベローの膨張収縮に伴ない動くようにし、当該標識を前記保護カバーのスリット窓から目視して電力機器内のガス圧変化を外部から目視できるようにして成ることを特徴とするガス圧判定装置付電力機器。
」(第1頁、実用新案登録請求の範囲)

「[産業上の利用分野]
本考案は、SF6などの絶縁性ガスを封入した電力機器内のガス圧力が適正であるかどうかを知ることのできるガス圧判定装置を備えた電力機器に関する。
[従来の技術]および[その解決課題]
変圧器,しゃ断器,断路器,変成器,避雷器などの送配電機器やこれら機器などの変電用機器を容器内に収納した縮小形変電所などにおいて、ガスを封入して、絶縁性やしゃ断性などを確保することが行われている。当該ガスには各種のものが使用されているが、絶縁特性、しゃ断特性に特に優れていることからSF6(六フッ化硫黄)が一般に使用されていることが多い。
当該SF6ガス絶縁電力機器では、封入した当該ガスが適正な圧力を保持しているかどうかは、当該機器の絶縁性能などに重大な影響を与える。」(第2頁第12行?第3頁第8行)

「本考案は、簡易な構造で、コストも安く、電力機器内のガス圧の変化を、外部から容易に判定できるガス圧判定装置を備えた電力機器を提供することを目的とする。」(第3頁第14?17行)

「[課題を解決するための手段]
本考案は、ガス圧力の変化により膨張収縮するベローと該ベローを囲包する保護カバーとを具備してなり、該保護カバーにガス-圧変化を外部から目視するためのスリット窓を設け、当該スリット窓を設けた保護カバー内部に前記ベローを取付けし、当該ベロー内に電力機器からの絶縁性ガスが通気孔を通って流入するようにし、該ベローに標識を設け、当該標識が当該ベローの膨張収縮に伴ない動くようにし、当該標識を前記保護カバーのスリット窓から目視して電力機器内のガス圧変化を外部から目視できるようにして成ることを特徴とするガス圧判定装置付電力機器に存し、・・・・」(第4頁第5?17行)

「ベロー4の下部は図示のように開放されており、電力機器1内の例えばSF6よりなる絶縁性ガスは、電力機器1のケース9に孔設された、当該ベロー4への通気孔10を経て、当該ベロー4内へ流入してくる。
ベロー4の上部は、上から下にかけて順次、例えばレッド,オレンジ,グリーンに帯状に着色されている。
保護カバー3には、例えば前後、左右4ケ所にスリット11が設けられている。」(第6頁第3?12行)

「次に、これら構成よりなるガス圧判定装置Gの作用について当該実施例に基づき説明する。
電力機器1からガスが、ベロー4への通気孔10を通って、ベロー4内に流入されると、ベロー4は膨張する。この図示例では、保護カバー4のスリット11からは、ベロー4の上部のグリーンに着色された帯状部分13が目視される。電力機器1内において、ガス漏れなどがあると、当該電力機器1内のガス圧も低下し、それに伴いベロー4は収縮して、保護カバー3のスリット11から見える色部分が順次オレンジ部14,レッド部15へと変化する。
この実施例では電力機器1内の内部圧力が正常(正規)の時には、保護カバー3のスリット11とベロー4のグリーン部13との位置が一致するように、また、その内部圧力が危険圧力まで低下した時には、当該スリット11と当該レッド部15との位置が一致するように、ベロー4の強度を設定することができる。」(第7頁第2?20行)

「従って、ベロー3の動きにより、電力機器1内の内部圧力が上昇しているかあるいは低下しているか、さらには、正規の状態にあるかが判り、電力機器1内のガス圧の変化を、電力機器1外部から容易に判定することができる。」(第10頁第12?16行)

以上の記載から、引用例1には、「絶縁性ガスを所定圧力で封入した変圧器等の電力機器1のケース9と、前記ケース9のガス漏れ等によるガス圧力変化に基づいたベロー4の自由端側の変位を前記電力機器1の外部から目視可能となるスリット窓11をケース9の外に設けた保護カバー3に形成し、前記ベロー4は前記スリット窓11の近傍に設けられ、ベロー4の他端が自由端に設定され、前記スリット窓11でベロー4の自由端側を目視可能とした電力機器のガス圧判定装置。」が示されている。

同様に引用された実願平5-44276号(実開平7-14616号)のCD-ROM(以下、「引用例2」という。)は、変圧器封入ガス洩れ警報装置に関するもので、図1と共に以下の点が記載されている。
【0004】
本考案は、上記の点に鑑みなされたもので、変圧器の絶縁油温度変化に関係なく、封入された不活性ガス洩れを検出し、警報を発する変圧器ガス洩れ警報装置を提供することを目的とする。
【0007】
【実施例】
次に本考案の一実施例を説明する。図1において、1は内部に絶縁油2を貯留し密封ガス7で封入した変圧器タンク、・・・・8は変圧器タンク内に設けられ中側を密封したダイヤフラム、9はダイヤフラム8の先端に設けられて密封ガス7が低下した場合に作動して警報するマイクロスイッチであり、・・・・変圧器上部空間部に設置したダイヤフラム8は内,外の圧力差による変位を検出し、警報を発する警報部を備えて成る変圧器油洩れ警報装置である。
【0009】
一方、変圧器内の絶縁油2の上部と変圧器の上蓋13の間は、空間部が形成され、この空間部には封入がス7が或る圧力を加えられて封入されている。上蓋13は、ガスケット14を介し、タンク壁と、密封接合されている。また、この空間部には、ダイヤフラム8が上蓋13の下面に取付けられている。ダイヤフラム8の内部は空間部の圧力と同じ圧力に調整されている。このダイヤフラム8の先端には、マイクロスイッチ9が上蓋13に取付けられた支え板10により支持されている。マイクロスイッチ9の接点は、口出線11により外部に警報信号を出すようになっている。口出線11と上蓋13の貫通部はシール材12により密封されている。
【0014】
また一方封入ガスも変圧器の温度変化による膨脹,収縮により、圧力が変化する。
【0015】
この補正は、ダイヤフラム8の内部の圧力をあらかじめ、変圧器内の封入ガス7の圧力と同じにしておくと、ダイヤフラム8の内側と外側(封入ガス7)は、温度もほぼ同一であるため、圧力も同一となる。この場合、ダイヤフラム8の圧力差による変位は無い。
【0016】
もし、封入ガス7が洩れて、圧力が低下した場合は、ダイヤフラム8の外側の圧力が低下するため、ダイヤフラム8は、伸長し、マイクロスイッチ9の接点が閉(または開)する。これにより、口出線11を介して外部に信号が発せられ、封入ガス洩れ警報を発することになる。尚、図2のCは変圧器運転中の正常圧力変化である。
【0017】
【考案の効果】
本考案によれば、変圧器の油温,気温変化に関係なく、封入ガス洩れを適確に検出することのできる変圧器封入ガス洩れ警報装置を提供することができる。

以上の記載から、引用例2には、「ガス7を所定圧力で封入した変圧器タンク1と、この変圧器タンク1内に設置され、前記変圧器タンク1内のガス7と同圧力に設定した気体を内部に封止したダイヤフラム8と、前記変圧器タンク1のガス漏れによるガス圧力の変化に基づいた前記ダイヤフラム8の変位を検知するマイクロスイッチ9と、このマイクロスイッチ9からの信号に基づいて変圧器タンク1外にガス漏れを警報する警報部を備えた変圧器封入ガス漏れ警報装置。」が示されている。

同様に引用された実願昭46-29055号(実開昭47-25707号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)は、圧力抑制装置に関するもので、第1、2図と共に以下の点が記載されている。

「本考案は、油入変圧器などの油入電気機器と、絶縁性ガスを封入したガス絶縁電気機器を大気中に露出することなく大地と絶縁し、安全に接続する絶縁導体装置において、内部の異常圧力を早期に発見して警報を出し、装置の安全を保持するための異常圧力保護装置を付属した圧力抑制装置に関するものである。」(第1頁第11?17行)

「本考案はこれら、絶縁ガスまたは絶縁性液体の漏洩を早期に検出して、警報を出し大事故を未然に防止することを目的とした異常圧力保護装置を付属した圧力抑制装置を提供するものである。
次にこの圧力抑制装置(5)の第1の実施例につき第2図により詳細に説明する。
絶縁導体装置の金具部(11)に取付フランジ(12)を設け、これにべローズで構成された圧力抑制部分(13)を取り付け、絶縁導体装置内部の圧力抑制を外気としや断した状態で行う構成とする。この圧力抑制部分(13)の外側にカバー(14)を被せて保護し、圧力抑制部分(13)の上面とカバー(14)の間にバネ(15)を配して絶縁導体装置内部に適当な内部圧力を与える。またカバー(14)と圧力抑制部分(13)の上面の間にスイツチ(16)を設ける。そして絶縁導体装置内部の温度変化による絶縁性液体の膨張収縮による圧力抑制部分(13)の絶縁導体装置の安全な運転状態の変化量においては、スイツチ(16)は関係しない位置に設定し、また絶縁導体装置内にガスが浸入したり、絶縁導体装置自身が異常温度上昇をきたし内部圧力が異常上昇した場合には、ベローズが伸びることによつてスイツチ(16)の接点(a)(b)が接触する位置に設定する。そしてこの接点(a)(b)より警報ランプなどの警報装置に接続すれば、絶縁導体装置より油入電気機器側へ油漏れするなど運転不能となる以前に内部異常圧力を発見し、過当な処置を施こすことが可能なわけである。
なおこのとき圧力抑制部分(13)の上面に指針(17)をとりつけると共に表示窓(18)を設けておけば、この窓(18)より指針(17)の位置が確認出来、従つて常に内部圧力の変化を読みとることが出来て機器としてより安全な保守が可能となる。」(第3頁第9行?第4頁第20行)

「以上は油入電気機器とガス封入機器の接続について説明したが絶縁媒体として液体対液体、あるいはガス対ガスの機器相互の接続装置においても同様の作用効果を得ることができる。
以上のように本考案によれば、絶縁流体の漏洩を早期に発見して適切な処置を施こし、大事故を未然に防止できるすぐれた効果を有するものである。」(第7頁第5?11行)

以上の記載から、引用例3には、「絶縁性ガス封入電気機器等を接続する接続装置において、絶縁ガス漏れが原因で起こる内部の異常圧力の変化に基づいた圧力抑制部分(ベローズで構成されている)13の自由端側の変位を目視できるような位置に表示窓18を設ける(ベローズの自由端側に取り付けた指針17が表示窓18の近傍になるように設ける)と共に前記圧力抑制部分13の変位を電気的スイッチ16により検知して警報する」技術が示されている。

3.本願補正第1発明と引用例記載の発明との対比・判断
本願補正第1発明と上記引用例1記載の発明とを対比すると、上記引用例1記載の発明の「絶縁性ガスを所定圧力で封入した変圧器等の電力機器1」、「ケース9」、「ベロー4」、「スリット窓11」は、それぞれ本願補正第1発明の「絶縁性ガスを所定圧力で封入したガス絶縁機器」、「容器」、「伸縮体」、「覗き窓」に相当する。
そして、上記引用例1には、「ガス圧判定装置」はガス漏れによるガス圧力変化に対しても判定することが記載されているから、引用例1記載の発明の「ガス圧判定装置」は本願第1発明の「ガス漏れ判断装置」に相当する。
従って、本願補正第1発明と引用例1記載の発明とは
「絶縁性ガスを所定圧力で封入したガス絶縁機器の容器と、
前記容器のガス漏れによるガス圧力の変化に基づいた伸縮体の変位を前記容器外から目視可能となる覗き窓とを備え、
前記伸縮体は前記覗き窓の近傍に設けられ、伸縮体の他端が自由端に設定され、前記覗き窓で伸縮体の自由端側を目視可能としたガス絶縁機器のガス漏れ判断装置。」の点で一致し、
相違点:本願補正第1発明では伸縮体が容器内の絶縁性ガスと同圧力に設定した気体を内部に封止し、密封した伸縮体であり、その伸縮体が気密に固定された覗き窓を有する容器内に設置され、さらにその伸縮体の一端が前記容器内で気密に固定されるようになっているのに対して、引用例1記載の発明ではそのようになっていない点、
において両者は相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
引用例2には、変圧器タンク内に所定圧力で封入したガスと同圧力に設定した気体を内部に封止したダイヤフラムが記載され、そして、このダイヤフラムを変圧器タンク内に設置して、前記変圧器タンクのガス漏れによるガス圧力の変化に基づいた前記ダイヤフラムの変位を検知する技術が記載されている。
そして、上記引用例2の技術を引用例1記載の発明に組み合わせることに格別の阻害要因は認められない。
従って伸縮体の変位をケース(容器)外から目視可能とするために、引用例1の電力機器(ガス絶縁機器)のケース(容器)の外に設置されたベロー(伸縮体)に代えて、ケース(容器)に封入したガスと同圧力に設定した気体を内部に封止した伸縮体を前記電力機器(ガス絶縁機器)のケース(容器)内に設置し、その際に上記伸縮体の自由端側を目視可能となるようにケース(容器)に気密に固定された覗き窓を形成し、その覗き窓の近傍に上記伸縮体が設けられるようにその一端を固定することは上記引用例2の記載を参酌すれば当業者が容易になし得ることにすぎない。

4.本願補正第2発明と引用例記載の発明との対比・判断
次に、本願補正第2発明と上記引用例2記載の発明とを対比すると、上記引用例2記載の発明の「ダイヤフラム」、「マイクロスイッチ」、「信号」、「警報装置」は、それぞれ本願補正第2発明の「伸縮体」、「変位量検知手段」、「検知信号」、「判断装置」に相当する。
従って、本願補正第2発明と引用例2記載の発明とは
「容器と、
容器内に設置され、前記容器内の封止ガスと同圧力に設定した気体を内部に封止し、密封した伸縮体と、
前記容器のガス漏れによるガス圧力の変化に基づいた前記伸縮体の変位量を検知する変位量検知手段と、
この変位量検知手段の検知信号に基づいて前記容器外にガス漏れを知らせる報知手段とを備えた絶縁機器のガス漏れ判断装置。」の点で一致し、次の点で相違している。
(1)容器が、本願補正第2発明では「絶縁性ガスを所定圧力で封入したガス絶縁機器の容器」であるのに対して、引用例2記載の発明では絶縁性ガスを封入した容器ではない点、(以下、「相違点1」という。)、
(2)本願補正第2発明では「ガス絶縁機器の容器のガス漏れによるガス圧力の変化に基づいた伸縮体の変位を前記容器外から目視可能で気密に固定された覗き窓を備え、さらに前記伸縮体は前記覗き窓の近傍に設けられ、伸縮体の一端が容器内で気密に固定され、その他端が自由端に設定され、前記覗き窓で伸縮体の自由端側を目視可能とし」ているのに対して、引用例2記載の発明ではそのような構成を有していない点(以下、「相違点2」という。)、
(3)ガス漏れを知らせる報知手段として、本願補正第2発明では「ガス漏れを表示する表示手段」を用いているのに対して、引用例2記載の発明では「ガス漏れを警報する警報部」を用いている点(以下、「相違点3」という。)。
そこで、上記相違点について検討する。
相違点1について検討すると、「絶縁性ガスを所定圧力で封入したガス絶縁機器の容器(ケース)」は、例えば引用例1にも記載されているように周知であり、単に周知の容器を用いたものにすぎない。
次に、相違点2について検討すると、上記引用例1には、「絶縁性ガスを所定圧力で封入した変圧器等の電力機器1のケース9と、前記ケース9のガス漏れ等によるガス圧力変化に基づいたベロー4の自由端側の変位を前記電力機器1の外部から目視可能となるスリット窓11をケース9の外に設けた保護カバー3に形成し、前記ベロー4は前記スリット窓11の近傍に設けられ、ベロー4の他端が自由端に設定され、前記スリット窓11でベロー4の自由端側を目視可能とした電力機器のガス圧判定装置。」が示され、さらに上記引用例3には「絶縁性ガス封入電気機器等とを接続する接続装置において、絶縁ガス漏れが原因で起こる内部の異常圧力の変化に基づいた圧力抑制部分(ベローズで構成されている)13の自由端側の変位を目視できるような位置に表示窓18を設ける(ベローズの自由端側に取り付けた指針17が表示窓18の近傍になるように設ける)と共に前記圧力抑制部分13の変位を電気的スイッチ16により検知して警報する」技術が示されている。
そして、引用例1及び引用例3の技術を引用例2記載の発明に組み合わせることに格別の阻害要因は認められない。
従って、引用例2に記載の変圧器タンク1内に設置されたダイヤフラム8(伸縮体)を、例えば引用例1にも記載されているような周知のガス絶縁機器の容器内に適用して、ダイヤフラム8(伸縮体)の変位をマイクロスイッチ9(変位量検知手段)で検知してガス漏れを検知することは当業者が容易になし得ることにすぎない。この際に、ダイヤフラム8(伸縮体)の変位を容器外から目視できるようにもするために、上記ダイヤフラム8(伸縮体)の自由端側を目視可能となるように容器に気密に固定された覗き窓を形成し、その覗き窓の近傍に上記ダイヤフラム8(伸縮体)が設けられるようにその一端を固定することは上記引用例1及び引用例3の記載を参酌すれば当然考慮すべき設計的事項にすぎない。
次に相違点3について検討すると、ガス漏れを知らせる報知手段として、本願補正第2発明の「ガス漏れを表示する表示手段」を用いるか、または引用例2記載の発明の「ガス漏れを警報する警報部」を用いるかは当業者が容易に選択しうる手段にすぎない。
したがって、本願補正第1発明及び本願補正第2発明は、引用例1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1. 本願発明
平成18年4月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成15年7月31日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりの「ガス絶縁機器のガス漏れ判断装置」と認められるところ、請求項1及び2に係る発明は以下のとおりである。

「絶縁性ガスを所定圧力で封入したガス絶縁機器の容器と、この容器内に設置され、前記容器内の絶縁性ガスと同圧力に設定した気体を内部に封止した伸縮体と、前記容器のガス漏れによるガス圧力の変化に基づいた前記伸縮体の変位を前記容器外から目視可能な覗き窓とを備えたことを特徴とするガス絶縁機器のガス漏れ判断装置。」(以下、「本願第1発明」という。)、
「絶縁性ガスを所定圧力で封入したガス絶縁機器の容器と、この容器内に設置され、前記容器内の絶縁性ガスと同圧力に設定した気体を内部に封止した伸縮体と、前記容器のガス漏れによるガス圧力の変化に基づいた前記伸縮体の変位を前記容器外から目視可能な覗き窓と、前記伸縮体の変位量を検知する変位量検知手段と、この変位量検知手段の検知信号に基づいて前記容器外にガス漏れを表示する表示手段とを備えたことを特徴とするガス絶縁機器のガス漏れ判断装置。」(以下、「本願第2発明」という。)

2.引用例に記載された発明
当審の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2.2」に記載したとおりである。

3.本願第1発明と引用例記載の発明との対比・判断
本願第1発明と上記引用例1記載の発明とを対比すると、上記引用例1記載の発明の「絶縁性ガスを所定圧力で封入した変圧器等の電力機器1」、「ケース9」、「ベロー4」、「スリット窓11」は、それぞれ本願第1発明の「絶縁性ガスを所定圧力で封入したガス絶縁機器」、「容器」、「伸縮体」、「覗き窓」に相当する。
そして、上記引用例1には、「ガス圧判定装置」はガス漏れによるガス圧力変化に対しても判定することが記載されているから、引用例1記載の発明の「ガス圧判定装置」は本願第1発明の「ガス漏れ判断装置」に相当する。
従って、本願第1発明と引用例1記載の発明とは
「絶縁性ガスを所定圧力で封入したガス絶縁機器の容器と、伸縮体と、前記容器のガス漏れによるガス圧力の変化に基づいた前記伸縮体の変位を前記容器外から目視可能な覗き窓とを備えたガス絶縁機器のガス漏れ判断装置。」の点で一致し、
相違点:本願第1発明では伸縮体が容器内の絶縁性ガスと同圧力に設定した気体を内部に封止し、その伸縮体を容器内に設置して覗き窓から目視可能となっているのに対して、引用例1記載の発明ではそのようになっていない点、
において両者は相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
引用例2には、変圧器タンク内に所定圧力で封入したガスと同圧力に設定した気体を内部に封止したダイヤフラムが記載され、そして、このダイヤフラムを変圧器タンク内に設置して、前記変圧器タンクのガス漏れによるガス圧力の変化に基づいた前記ダイヤフラムの変位を検知する技術が記載されている。
そして、上記引用例2の技術を引用例1記載の発明に組み合わせることに格別の阻害要因は認められない。
従って伸縮部材の変位をケース(容器)外から目視可能とするために、引用例1の電力機器(ガス絶縁機器)のケース(容器)の外に設置されたベロー(伸縮体)に代えて、ケース(容器)に封入したガスと同圧力に設定した気体を内部に封止したベロー(伸縮体)を電力機器(ガス絶縁機器)のケース(容器)内に設置し、その際にベロー(伸縮体)の変位を前記ケース(容器)外から目視可能となる箇所(位置)にスリット窓(覗き窓)を設けることは上記引用例2の記載を参酌すれば当業者が容易になし得ることにすぎない。

4.本願第2発明と引用例記載の発明との対比・判断
次に、本願第2発明と上記引用例2記載の発明とを対比すると、上記引用例2記載の発明の「ダイヤフラム」、「マイクロスイッチ」、「信号」、「警報装置」は、それぞれ本願第2発明の「伸縮体」、「変位量検知手段」、「検知信号」、「判断装置」に相当する。
従って、本願第2発明と引用例2記載の発明とは
「容器と、容器内に設置され、前記容器内の封止ガスと同圧力に設定した気体を内部に封止した伸縮体と、前記容器のガス漏れによるガス圧力の変化に基づいた前記伸縮体の変位量を検知する変位量検知手段と、この変位量検知手段の検知信号に基づいて前記容器外にガス漏れを知らせる報知手段とを備えた絶縁機器のガス漏れ判断装置。」の点で一致し、次の点で相違している。
(1)容器が、本願第2発明では「絶縁性ガスを所定圧力で封入したガス絶縁機器の容器」であるのに対して、引用例2記載の発明では絶縁性ガスを封入した容器ではない点、(以下、「相違点1」という。)、
(2)本願第2発明では「ガス絶縁機器の容器のガス漏れによるガス圧力の変化に基づいた伸縮体の変位を前記容器外から目視可能な覗き窓を備え」ているのに対して、引用例2記載の発明ではそのような構成を有していない点(以下、「相違点2」という。)、
(3)ガス漏れを知らせる報知手段として、本願第2発明では「ガス漏れを表示する表示手段」を用いているのに対して、引用例2記載の発明では「ガス漏れを警報する警報部」を用いている点(以下、「相違点3」という。)。
そこで、上記相違点について検討する。
相違点1について検討すると、「絶縁性ガスを所定圧力で封入したガス絶縁機器の容器(ケース)」は、例えば引用例1にも記載されているように周知であり、単に周知の容器を用いたものにすぎない。
次に、相違点2について検討すると、上記引用例1には、「絶縁性ガスを所定圧力で封入した変圧器等の電力機器1のケース9と、前記ケース9のガス漏れ等によるガス圧力変化に基づいたベロー4の自由端側の変位を前記電力機器1の外部から目視可能となるスリット窓11をケース9の外に設けた保護カバー3に形成し、前記ベロー4は前記スリット窓11の近傍に設けられ、ベロー4の他端が自由端に設定され、前記スリット窓11でベロー4の自由端側を目視可能とした電力機器のガス圧判定装置。」が示され、さらに上記引用例3には「絶縁性ガス封入電気機器等とを接続する接続装置において、絶縁ガス漏れが原因で起こる内部の異常圧力の変化に基づいた圧力抑制部分(ベローズで構成されている)13の自由端側の変位を目視できるような位置に表示窓18を設ける(ベローズの自由端側に取り付けた指針17が表示窓18の近傍になるように設ける)と共に前記圧力抑制部分13の変位を電気的スイッチ16により検知して警報する」技術が示されている。
そして、引用例1及び引用例3の技術を引用例2記載の発明に組み合わせることに格別の阻害要因は認められない。
従って、引用例2に記載の変圧器タンク1内に設置されたダイヤフラム8(伸縮体)を、例えば引用例1にも記載されているような周知のガス絶縁機器の容器内に適用して、ダイヤフラム8(伸縮体)の変位をマイクロスイッチ9(変位量検知手段)で検知してガス漏れを検知することは当業者が容易になし得ることにすぎない。この際に、ダイヤフラム8(伸縮体)の変位を容器外から目視できるようにもするために、上記ダイヤフラム8(伸縮体)の変位を目視可能となるように覗き窓を備えることは上記引用例1及び3の記載を参酌すれば当然考慮すべき設計的事項にすぎない。
次に相違点3について検討すると、ガス漏れを知らせる報知手段として、本願第2発明の「ガス漏れを表示する表示手段」を用いるか、または引用例2記載の発明の「ガス漏れを警報する警報部」を用いるかは当業者が容易に選択しうる手段にすぎない。

5.むすび
本願第1発明及び第2発明は、上記引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうである以上、他の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-16 
結審通知日 2006-11-21 
審決日 2006-12-07 
出願番号 特願平10-276105
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 貞嗣  
特許庁審判長 松本 邦夫
特許庁審判官 橋本 武
浅野 清
発明の名称 ガス絶縁機器のガス漏れ判断装置  
代理人 関口 俊三  
代理人 波多野 久  

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