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審決分類 |
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1150734 |
審判番号 | 不服2004-21451 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-10-14 |
確定日 | 2007-01-18 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第312410号「半導体装置およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月28日出願公開、特開平11-145410〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年11月13日に出願され、平成16年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月15日に手続補正がなされ、その後、当審において、平成17年12月21日付けで審尋がなされ、これに対して、平成18年3月10日に回答書が提出されたものである。 2.平成16年11月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について [補正却下の決定の結論] 平成16年11月15日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を以下のとおりに補正するとともに、発明の詳細な説明の0024段落及び0026段落の記載を補正するものである。 「【請求項1】 半導体基板と、 この半導体基板上に形成されたメモリセルのスイッチングトランジスタと、 このスイッチングトランジスタ上に層間絶縁膜を介して形成された前記メモリセルの電荷蓄積用キャパシタであって、前記層間絶縁膜上に形成された第1のキャパシタ電極と、この第1のキャパシタ電極の側面および上面の上に設けられた金属酸化物からなるキャパシタ絶縁膜と、このキャパシタ絶縁膜の側面および上面の上に設けられた第2のキャパシタ電極と、この第2のキャパシタ電極の側面および上面の上にこれらの面に接して設けられた水素浸透防止膜とから構成され、前記第1のキャパシタ電極の側面、前記キャパシタ絶縁膜の側面および前記第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する電荷蓄積用キャパシタと を具備してなることを特徴とする半導体装置。 【請求項2】 半導体基板と、 この半導体基板上に形成されたメモリセルのスイッチングトランジスタと、 このスイッチングトランジスタ上に層間絶縁膜を介して形成された前記メモリセルの電荷蓄積用キャパシタであって、前記層間絶縁膜の開口部の底面および側面上に設けられた第1のキャパシタ電極と、前記開口部内の前記第1のキャパシタ電極上に設けられ、金属酸化物からなるキャパシタ絶縁膜と、前記開口部内の前記キャパシタ絶縁膜上に設けられた第2のキャパシタ電極と、前記開口部内の前記第2のキャパシタ電極上にそれに接して設けられた水素浸透防止膜とから構成され、前記第1のキャパシタ電極の側面、前記キャパシタ絶縁膜の側面および前記第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する電荷蓄積用キャパシタと を具備してなることを特徴とする半導体装置。 【請求項3】 前記水素浸透防止膜は、酸素親和性が前記金属酸化物と同じまたはそれよりも高い絶縁材料から形成された絶縁膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。 【請求項4】 半導体基板にメモリセルのスイッチングトランジスタを形成する工程と、 前記半導体基板上に層間絶縁膜を形成した後、前記スイッチングトランジスタに対してのコンタクトホールを前記層間絶縁膜に開孔する工程と、 前記コンタクトホール内に接続電極を形成する工程と、 前記接続電極を介して前記スイッチングトランジスタと電気的に接続する第1のキャパシタ電極を形成した後、この第1のキャパシタ電極の側面および上面の上に金属酸化物からなるキャパシタ絶縁膜を形成し、このキャパシタ絶縁膜の側面および上面の上に第2のキャパシタ電極を形成し、この第2のキャパシタ電極の側面および上面の上にこれらの面に接する水素浸透防止膜を形成して、前記第1のキャパシタ電極の側面、前記キャパシタ絶縁膜の側面および前記第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する、前記メモリセルの電荷蓄積用キャパシタを形成する工程と、 水素雰囲気中での熱処理により、前記スイッチングトランジスタに生じたダメージを回復させる工程と を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。 【請求項5】 半導体基板にメモリセルのスイッチングトランジスタを形成する工程と、 前記半導体基板上に第1の層間絶縁膜を形成した後、前記スイッチングトランジスタに対してのコンタクトホールを前記第1の層間絶縁膜に開孔する工程と、 前記コンタクトホール内に接続電極を形成する工程と、 前記第1の層間絶縁膜上に第2の層間絶縁膜を形成する工程と、 前記接続電極が露出するように前記第2の層間絶縁膜に開口部を開口する工程と、 前記開口部の底面および側面の上に設けられた、前記接続電極を介して前記スイッチングトランジスタと電気的に接続する第1のキャパシタ電極を形成した後、前記開口部内の前記第1のキャパシタ電極上に金属酸化物からなるキャパシタ絶縁膜を形成し、前記開口部内の前記キャパシタ絶縁膜上に第2のキャパシタ電極を形成し、前記開口部内の前記第2のキャパシタ電極上にそれに接する水素浸透防止膜を形成して、前記第1のキャパシタ電極の側面、前記キャパシタ絶縁膜の側面および前記第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する、前記メモリセルの電荷蓄積用キャパシタを形成する工程と、 水素雰囲気中での熱処理により、前記スイッチングトランジスタに生じたダメージを回復させる工程と を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。」 (2)本件補正の整理 本件補正を整理すると以下のとおりである。 [補正事項1] 本件補正前の請求項1の「水素浸透防止膜とから構成された電荷蓄積用キャパシタ」を「水素浸透防止膜とから構成され、前記第1のキャパシタ電極の側面、前記キャパシタ絶縁膜の側面および前記第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する電荷蓄積用キャパシタ」と補正する。 [補正事項2] 本件補正前の請求項2の「水素浸透防止膜とから構成された電荷蓄積用キャパシタ」を「水素浸透防止膜とから構成され、前記第1のキャパシタ電極の側面、前記キャパシタ絶縁膜の側面および前記第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する電荷蓄積用キャパシタ」と補正する。 [補正事項3] 本件補正前の請求項4の「水素浸透防止膜を形成して、前記メモリセルの電荷蓄積用キャパシタを形成する工程」を「水素浸透防止膜を形成して、前記第1のキャパシタ電極の側面、前記キャパシタ絶縁膜の側面および前記第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する、前記メモリセルの電荷蓄積用キャパシタを形成する工程」と補正する。 [補正事項4] 本件補正前の請求項5の「水素浸透防止膜を形成して、前記メモリセルの電荷蓄積用キャパシタを形成する工程」を「水素浸透防止膜を形成して、前記第1のキャパシタ電極の側面、前記キャパシタ絶縁膜の側面および前記第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する、前記メモリセルの電荷蓄積用キャパシタを形成する工程」と補正する。 [補正事項5] 発明の詳細な説明の0024段落及び0026段落の記載を補正する。 (3)補正の目的の適否についての検討 [補正事項1について] 本件補正前後の請求項1に共通する「層間絶縁膜上に形成された第1のキャパシタ電極と、この第1のキャパシタ電極の側面および上面の上に設けられた金属酸化物からなるキャパシタ絶縁膜と、このキャパシタ絶縁膜の側面および上面の上に設けられた第2のキャパシタ電極」という記載のみによって「電荷蓄積用キャパシタ」が「第1のキャパシタ電極の側面および上面の上」の双方に容量を有することは明らかである。 したがって、本件補正前の請求項1に「前記第1のキャパシタ電極の側面、前記キャパシタ絶縁膜の側面および前記第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する」という記載を追加する補正は、単に「電荷蓄積用キャパシタ」が「第1のキャパシタ電極の側面および上面の上」の双方に容量を有することの確認的な記載を単に追加したものにすぎず、「電荷蓄積用キャパシタ」の構成を新たに限定するものではないから、補正事項1についての補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また、同法同条同項第1号、第3号、及び第4号にそれぞれ掲げる請求項の削除、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。 [補正事項2について] 本件補正前後の請求項2に共通する「層間絶縁膜の開口部の底面および側面上に設けられた第1のキャパシタ電極と、前記開口部内の前記第1のキャパシタ電極上に設けられ、金属酸化物からなるキャパシタ絶縁膜と、前記開口部内の前記キャパシタ絶縁膜上に設けられた第2のキャパシタ電極」という記載のみによって「電荷蓄積用キャパシタ」が「層間絶縁膜の開口部の底面および側面上」の双方に容量を有することは明らかである。 したがって、本件補正前の請求項2に「前記第1のキャパシタ電極の側面、前記キャパシタ絶縁膜の側面および前記第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する」という記載を追加する補正は、単に「電荷蓄積用キャパシタ」が「層間絶縁膜の開口部の底面および側面上」の双方に容量を有することの確認的な記載を単に追加したものにすぎず、「電荷蓄積用キャパシタ」の構成を新たに限定するものではないから、補正事項2についての補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また、同法同条同項第1号、第3号、及び第4号にそれぞれ掲げる請求項の削除、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。 [補正事項3について] 本件補正前後の請求項4に共通する「第1のキャパシタ電極を形成した後、この第1のキャパシタ電極の側面および上面の上に金属酸化物からなるキャパシタ絶縁膜を形成し、このキャパシタ絶縁膜の側面および上面の上に第2のキャパシタ電極を形成し」という記載のみによって「電荷蓄積用キャパシタ」が「第1のキャパシタ電極の側面および上面の上」の双方に容量を有することは明らかである。 したがって、本件補正前の請求項4に「前記第1のキャパシタ電極の側面、前記キャパシタ絶縁膜の側面および前記第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する」という記載を追加する補正は、単に「電荷蓄積用キャパシタ」が「第1のキャパシタ電極の側面および上面の上」の双方に容量を有することの確認的な記載を単に追加したものにすぎず、「電荷蓄積用キャパシタ」の構成を新たに限定するものではないから、補正事項3についての補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また、同法同条同項第1号、第3号、及び第4号にそれぞれ掲げる請求項の削除、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。 [補正事項4について] 本件補正前後の請求項5に共通する「第2の層間絶縁膜に開口部を開口する工程と、 前記開口部の底面および側面の上に設けられた」「第1のキャパシタ電極を形成した後、前記開口部内の前記第1のキャパシタ電極上に金属酸化物からなるキャパシタ絶縁膜を形成し、前記開口部内の前記キャパシタ絶縁膜上に第2のキャパシタ電極を形成し、」という記載のみによって「電荷蓄積用キャパシタ」が「第2の層間絶縁膜」の「開口部の底面および側面の上」の双方に容量を有することは明らかである。 したがって、本件補正前の請求項5に「前記第1のキャパシタ電極の側面、前記キャパシタ絶縁膜の側面および前記第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する」という記載を追加する補正は、単に「電荷蓄積用キャパシタ」が「第2の層間絶縁膜」の「開口部の底面および側面の上」の双方に容量を有することの確認的な記載を単に追加したものにすぎず、「電荷蓄積用キャパシタ」の構造を新たに限定するものではないから、補正事項4についての補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また、同法同条同項第1号、第3号、及び第4号にそれぞれ掲げる請求項の削除、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。 以上のとおり、補正事項1ないし補正事項4についての補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものではないから、適法でない補正事項1ないし補正事項4についての補正を含む本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 (4)独立特許要件についての検討 ここで、仮に、補正事項2についての補正が、特許法第17条の2第3項の規定を満たすとともに、同法同条第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項2に係る発明が同法同条第5項において準用する同法第126条第5項に規定された独立特許要件を満たすか否かについて以下検討する。 (4-1)本件補正後の請求項2に係る発明 本件補正後の請求項2に係る発明(以下、「本件補正後発明」という。)は、(1)に掲げた特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (4-2)刊行物記載の発明 (a)刊行物1:特開平8-46152号公報 原査定において最後の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物1には、図1とともに、以下の事項が記載されている。 「1個のトランスファトランジスタと1個のキャパシタとで構成されるメモリセルを有する半導体記憶装置おいて、前記トランスファトランジスタの上部に平坦化した絶縁膜層が形成され、前記平坦化した絶縁膜層に溝が形成され、前記溝の内部に第1の導電体膜が形成され、前記第1の導電体膜の上に第1の誘電体膜が形成され、前記第1の誘電体膜の上に第2の導電体膜が形成され、前記第1の導電体膜が前記トランスァトランジスタのソース又はドレイン領域になる拡散層と電気的に接続され、前記キャパシタが前記第1の導電体膜と第2の導電体膜と前記第1の誘電体膜とを有して前記溝部に形成されていることを特徴とした半導体記憶装置。」(特許請求の範囲の請求項1) 「図1に示すように、導電型がp型のシリコン基板1の表面に・・・ゲート絶縁膜を形成し、トランスファゲート電極6,6a・・・を形成する。ここでトランスファゲート電極6aは隣接するメモリセルのトランスファゲート電極の配線されたものが示されている。」(0022段落) 「絶縁体膜13の所定の領域すなわち容量電極を形成する領域に溝を形成する。そして図1に示すように、この溝の内壁に容量電極14形成する。・・・このようにして絶縁体膜13に埋設して容量電極14が形成され、更にこの容量電極14を被覆して容量誘電体膜15が形成され、キャパシタの対向電極となるセルプレート電極16が形成される。」(0025段落) 「容量誘体膜・・・は・・・タンタル酸化膜、チタン酸ストロンチウム(以下、STOと呼称する)膜、チタン酸バリウムストロンチウム(以下、BSTと呼称する)膜、あるいはチタン酸ジルコン酸鉛(以下、PZTと呼称する)膜等の強誘電体膜で構成される。」(0031段落) また、「溝の内壁」(0025段落)が底面及び側面を有することは、図1を参酌すれば明らかであり、さらに、「タンタル酸化膜、チタン酸ストロンチウム(以下、STOと呼称する)膜、チタン酸バリウムストロンチウム(以下、BSTと呼称する)膜、あるいはチタン酸ジルコン酸鉛(以下、PZTと呼称する)膜等の強誘電体膜」(0031段落)からなる「容量誘電体膜」が金属酸化物であることも技術的に明らかである。 したがって、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。 「シリコン基板と、 前記シリコン基板上に形成されたトランスファトランジスタとキャパシタとで構成されるメモリセルを有する半導体記憶装置であって、 前記キャパシタは、前記トランスファトランジスタ上部の平坦化した絶縁膜層に形成された溝の底面及び側面の上に形成された第1の導電体膜と、前記第1の導電体膜の上に形成された金属酸化物からなる容量誘電体膜と、前記容量誘電体膜の上に形成された第2の導電体膜とを有し、前記キャパシタが前記第1の導電体膜と第2の導電体膜と前記容量誘電体膜とを有して前記溝部に形成されていることを特徴とした半導体記憶装置。」 (b)刊行物2:特開平7-111318号公報 原査定において最後の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物2には、図1とともに、以下の事項が記載されている。 「半導体基板と、この基板上に設けられ、下部電極,酸化物強誘電体薄膜,上部電極の順次積層して構成される強誘電体薄膜キャパシタと、このキャパシタ表面に被覆された、アルミニウム,シリコンもしくはチタンの窒化物薄膜を主要な構成要素とする保護膜とを具備したことを特徴とする強誘電体メモリ。」(特許請求の範囲の請求項1) 「強誘電体メモリは・・・半導体シリコン基板の単結晶構造中に多数の格子欠陥を生じ、これが基板上のMOSトランジスター特性を劣化させる。 【0009】このため、特性改善のために最終工程において水素混合窒素ガス(フォーミングガス)雰囲気中において350?450℃の熱処理(MOSシンター)を行なうことにより、H2 の還元性を利用して単結晶シリコン中に発生したダングリングボンド等の欠点を終端し劣化したMOS特性を修復する必要がある。 【0010】ところが、強誘電体薄膜用電極材料として水素に対して易透過性である白金等が使用される。そのため、還元性雰囲気中の熱処理工程において、上記層間絶縁膜及び上部電極を拡散通過して上部電極と強誘電体薄膜の界面及びキャパシタ側面まで到達した水素の還元作用によって、界面近傍の酸化物が酸化還元反応を起こしたり分解して、この界面における化学変化に起因して上部電極との密着性が低下したり、反応生成物である酸素、水等によって上部電極が押し上げられたりして、その結果上部電極と強誘電体薄膜との界面で剥離を発生させる問題があった。 【0011】また、時には還元性雰囲気のデバイス内部への浸透はキャパシタ側面を通して下部電極まで及ぶと考えられ、比較的大きな内部応力が残留し易いAl-Si配線電極を用いた場合にはキャパシタ全体が半導体基板そのものから剥離してしまうような不具合も生じることがあった。このような問題は、強誘電体薄膜キャパシタとシリコン半導体デバイスを組み合わせて強誘電体メモリを構成する上で新たな対策が必要とされてきた。 【0012】この発明はこうした事情を考慮してなされたもので、酸化物強誘電体薄膜キャパシタとシリコンデバイスとで構成される強誘電体メモリにおいて還元性雰囲気下でのMOSシンター工程において強誘電体薄膜と上下電極間の剥離を防止しえる構造を提供することを目的とする。」(0008段落ないし0012段落) 「(実施例1)図1を参照する。」(0028段落) 「強誘電体薄膜キャパシタ9は、Ptからなる膜厚200nmの下部電極10と、この下部電極10上に順次形成された強誘電体薄膜11及びPtからなる膜厚200nmの上部電極12から形成され、上部電極12上には膜厚50nmの保護膜13とから構成されている。」(0029段落) 「キャパシタ9の上面特に上部電極12の上面はAlNからなる保護膜13で被覆された構成されているため、還元性ガスの内部透過を遮断でき、強誘電体薄膜11表面の還元反応とこれに起因する電極剥離を防止することができる。」(0033段落) 「(実施例2)この実施例2は、実施例1と比べ、膜厚50nmの窒化チタン(Ti3 N4 )からなる保護膜を用いた点を除いて、全く同様な構成である。窒化チタンからなる保護膜を用いた実施例2に係る強誘電体メモリによれば、実施例1と同様な効果が得られる。」(0034段落) (4-3)対比・判断 (4-3-1)本件補正後発明と刊行物発明とを対比する。 (a)刊行物発明の「シリコン基板」は、本件補正後発明の「半導体基板」に相当する。 (b)刊行物発明の「キャパシタ」は、「メモリセル」を構成しており、電荷を蓄積するためのものであることは明らかであるから、本件補正後発明の「電荷蓄積用キャパシタ」に相当する。 (c)刊行物発明の「トランスファトランジスタ」は、「キャパシタ」の充放電時には導通状態、充放電時以外の時には非導通状態となるようなスイッチング動作をするものであるから、本件補正後発明の「スイッチングトランジスタ」に相当する。 (d)刊行物発明の「絶縁膜層」及び「溝」は、それぞれ本件補正後発明の「層間絶縁膜」及び「開口部」に相当する。 (e)刊行物発明は「トランスファトランジスタ上部の平坦化した絶縁膜層に形成された溝」を有するとともに「キャパシタが」「前記溝部に形成されている」から、刊行物発明において「トランスファトランジスタ」上に「絶縁膜層」を介して「キャパシタ」が形成されていることは明らかである。 (f)刊行物発明の「キャパシタ」は「第1の導電体膜と第2の導電体膜」と「容量誘電体膜とを有して」いるから、刊行物発明の「第1の導電体膜」、「容量誘電体膜」及び「第2の導電体膜」は、それぞれ本件補正後発明の「第1のキャパシタ電極」、「キャパシタ絶縁膜」及び「第2のキャパシタ電極」に相当し、したがって、刊行物発明の「絶縁膜層に形成された溝の底面及び側面の上に形成された第1の導電体膜と、前記第1の導電体膜の上に形成された金属酸化物からなる容量誘電体膜と、前記容量誘電体膜の上に形成された第2の導電体膜」は、本件補正後発明の「層間絶縁膜の開口部の底面および側面上に設けられた第1のキャパシタ電極と、前記開口部内の前記第1のキャパシタ電極上に設けられ、金属酸化物からなるキャパシタ絶縁膜と、前記開口部内の前記キャパシタ絶縁膜上に設けられた第2のキャパシタ電極」に相当する。 (g)刊行物発明では「キャパシタは、」「トランスファトランジスタ上部の平坦化した絶縁膜層に形成された溝の底面及び側面の上に形成された第1の導電体膜と、前記第1の導電体膜の上に形成された金属酸化物からなる容量誘電体膜と、前記容量誘電体膜の上に形成された第2の導電体膜とを有し、前記キャパシタが前記第1の導電体膜と第2の導電体膜と前記容量誘電体膜とを有して前記溝部に形成されて」いるから、刊行物発明の「キャパシタ」は「溝の底面及び側面の上」の双方に容量を有していることは明らかである。 したがって、刊行物発明が、本件補正後発明の「第1のキャパシタ電極の側面、」「キャパシタ絶縁膜の側面および」「第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する」点に相当する発明特定事項を有していることは明らかである。 (h)本件補正後発明の「半導体層」は、「メモリセルのスイッチングトランジスタと」「メモリセルの電荷蓄積用キャパシタ」「を具備してなる」から、刊行物発明の「半導体記憶装置」は、本件補正後発明の「半導体装置」に相当する。 したがって、本件補正後発明と刊行物発明は、 「半導体基板と、 この半導体基板上に形成されたメモリセルのスイッチングトランジスタと、 このスイッチングトランジスタ上に層間絶縁膜を介して形成された前記メモリセルの電荷蓄積用キャパシタであって、前記層間絶縁膜の開口部の底面および側面上に設けられた第1のキャパシタ電極と、前記開口部内の前記第1のキャパシタ電極上に設けられ、金属酸化物からなるキャパシタ絶縁膜と、前記開口部内の前記キャパシタ絶縁膜上に設けられた第2のキャパシタ電極とから構成され、前記第1のキャパシタ電極の側面、前記キャパシタ絶縁膜の側面および前記第2のキャパシタ電極の側面、ならびに、前記第1のキャパシタ電極の上面、前記キャパシタ絶縁膜の上面および前記第2のキャパシタ電極の上面が、容量部を構成する電荷蓄積用キャパシタと を具備してなることを特徴とする半導体装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 本件補正後発明は、「開口部内の」「第2のキャパシタ電極上にそれに接して設けられた水素浸透防止膜」を備えているのに対して、 刊行物発明は、本件補正後発明の「水素浸透防止膜」に相当する膜を備えていない点。 (4-3-2)上記相違点について検討する。 (a)刊行物2には「強誘電体メモリは・・・半導体シリコン基板の単結晶構造中に多数の格子欠陥を生じ、これが基板上のMOSトランジスター特性を劣化させる。【0009】このため、特性改善のために最終工程において水素混合窒素ガス(フォーミングガス)雰囲気中において350?450℃の熱処理(MOSシンター)を行なうことにより、H2 の還元性を利用して単結晶シリコン中に発生したダングリングボンド等の欠点を終端し劣化したMOS特性を修復する必要がある。」(0008段落及び0009段落)と記載されている。 一方、刊行物1に「容量誘体膜・・・は・・・タンタル酸化膜、チタン酸ストロンチウム(以下、STOと呼称する)膜、チタン酸バリウムストロンチウム(以下、BSTと呼称する)膜、あるいはチタン酸ジルコン酸鉛(以下、PZTと呼称する)膜等の強誘電体膜で構成される。」(0031段落)と記載されているように、刊行物発明の「金属酸化物からなる容量誘電体膜」の材料には強誘電体が用いられている以上、刊行物発明においても「シリコン基板上に形成されたトランスファトランジスタ」の特性を修復するために水素を含む雰囲気中での熱処理が必要なことは明らかである。 (b)さらに、刊行物2には「強誘電体薄膜用電極材料として水素に対して易透過性である白金等が使用される」(0010段落)場合においても「酸化物強誘電体薄膜キャパシタとシリコンデバイスとで構成される強誘電体メモリにおいて還元性雰囲気下でのMOSシンター工程において強誘電体薄膜と上下電極間の剥離を防止」(0012段落)するために、「キャパシタ9の」「上部電極12の上面」を「保護膜13で被覆」して「還元性ガスの内部透過を遮断」(0033段落)する技術が記載されている。 上記技術は「強誘電体メモリ」の製造に不可欠の「還元性雰囲気下でのMOSシンター工程」を行いつつも「酸化物強誘電体薄膜キャパシタ」の「上部電極」に「水素に対して易透過性である白金等の」材料を使えるようにする技術であるから、「酸化物強誘電体薄膜キャパシタ」の「上部電極」の材料選択に際して「水素に対して易透過性である」であるか否かについての配慮の必要性をなくして材料選択の幅を拡げる技術であると認められる。 そして、上記(a)で検討したとおり、刊行物発明においても水素を含む雰囲気中での熱処理が必要なことは明らかであり、刊行物発明において「金属酸化物からなる容量誘電体膜」上に形成された「第2の導電体膜」の上面に、刊行物2に記載された「還元性ガスの内部透過を遮断でき」る「保護膜13」に相当する膜を形成すれば、上記「第2の導電体膜」の材料選択の幅が拡がり、例えば「水素に対して易透過性である」材料も使えるようになって「半導体記憶装置」である刊行物発明の性能や生産性を向上させる上で望ましいことは明らかであるから、刊行物発明において、刊行物2に記載された上記技術に基づいて、「金属酸化物からなる容量誘電体膜」上に形成された「第2の導電体膜」の上面に、刊行物2に記載された「還元性ガスの内部透過を遮断でき」る「保護膜13」に相当する膜を形成することは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、本件補正後発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおり、補正事項1ないし補正事項4についての補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものではないから、適法でない補正事項1ないし補正事項4についての補正を含む本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 仮に、補正事項2についての補正が、同法第17条の2第3項の規定を満たすとともに、同法同条第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本件補正後発明は、同法第29条第2項の規定により、その特許出願の際独立して特許を受けることができないから、適法でない補正事項2についての補正を含む本件補正は、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たさず、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明 平成16年11月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項5に係る発明は、平成16年5月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載されたとおりのものであって、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項2】 半導体基板と、 この半導体基板上に形成されたメモリセルのスイッチングトランジスタと、 このスイッチングトランジスタ上に層間絶縁膜を介して形成された前記メモリセルの電荷蓄積用キャパシタであって、前記層間絶縁膜の開口部の底面および側面上に設けられた第1のキャパシタ電極と、前記開口部内の前記第1のキャパシタ電極上に設けられ、金属酸化物からなるキャパシタ絶縁膜と、前記開口部内の前記キャパシタ絶縁膜上に設けられた第2のキャパシタ電極と、前記開口部内の前記第2のキャパシタ電極上にそれに接して設けられた水素浸透防止膜とから構成された電荷蓄積用キャパシタと を具備してなることを特徴とする半導体装置。」 4.刊行物記載の発明 (1)刊行物1:特開平8-46152号公報 原査定において最後の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物1には「2.[理由](4)(4-2)(a)」に記載されたとおりの事項及び刊行物発明が記載されている。 (2)刊行物2:特開平7-111318号公報 原査定において最後の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物2には「2.[理由](4)(4-2)(b)」に記載されたとおりの事項が記載されている。 5.対比・判断 (1)本願発明と刊行物発明とを対比する。 (a)刊行物発明の「シリコン基板」は、本願発明の「半導体基板」に相当する。 (b)刊行物発明の「キャパシタ」は、「メモリセル」を構成しており、電荷を蓄積するためのものであることは明らかであるから、本願発明の「電荷蓄積用キャパシタ」に相当する。 (c)刊行物発明の「トランスファトランジスタ」は、「キャパシタ」の充放電時には導通状態、充放電時以外の時には非導通状態となるようなスイッチング動作をするものであるから、本願発明の「スイッチングトランジスタ」に相当する。 (d)刊行物発明の「絶縁膜層」及び「溝」は、それぞれ本願発明の「層間絶縁膜」及び「開口部」に相当する。 (e)刊行物発明は「トランスファトランジスタ上部の平坦化した絶縁膜層に形成された溝」を有するとともに「キャパシタが」「前記溝部に形成されている」から、刊行物発明において「トランスファトランジスタ」上に「絶縁膜層」を介して「キャパシタ」が形成されていることは明らかである。 (f)刊行物発明の「キャパシタ」は「第1の導電体膜と第2の導電体膜」と「容量誘電体膜とを有して」いるから、刊行物発明の「第1の導電体膜」、「容量誘電体膜」及び「第2の導電体膜」は、それぞれ本願発明の「第1のキャパシタ電極」、「キャパシタ絶縁膜」及び「第2のキャパシタ電極」に相当し、したがって、刊行物発明の「絶縁膜層に形成された溝の底面及び側面の上に形成された第1の導電体膜と、前記第1の導電体膜の上に形成された金属酸化物からなる容量誘電体膜と、前記容量誘電体膜の上に形成された第2の導電体膜」は、本願発明の「層間絶縁膜の開口部の底面および側面上に設けられた第1のキャパシタ電極と、前記開口部内の前記第1のキャパシタ電極上に設けられ、金属酸化物からなるキャパシタ絶縁膜と、前記開口部内の前記キャパシタ絶縁膜上に設けられた第2のキャパシタ電極」に相当する。 (g)本願発明の「半導体層」は、「メモリセルのスイッチングトランジスタと」「メモリセルの電荷蓄積用キャパシタ」「を具備してなる」から、刊行物発明の「半導体記憶装置」は、本願発明の「半導体装置」に相当する。 したがって、本願発明と刊行物発明は、 「半導体基板と、 この半導体基板上に形成されたメモリセルのスイッチングトランジスタと、 このスイッチングトランジスタ上に層間絶縁膜を介して形成された前記メモリセルの電荷蓄積用キャパシタであって、前記層間絶縁膜の開口部の底面および側面上に設けられた第1のキャパシタ電極と、前記開口部内の前記第1のキャパシタ電極上に設けられ、金属酸化物からなるキャパシタ絶縁膜と、前記開口部内の前記キャパシタ絶縁膜上に設けられた第2のキャパシタ電極とから構成された電荷蓄積用キャパシタと を具備してなることを特徴とする半導体装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 本願発明は、「開口部内の」「第2のキャパシタ電極上にそれに接して設けられた水素浸透防止膜」を備えているのに対して、 刊行物発明は、本願発明の「水素浸透防止膜」に相当する膜を備えていない点。 (2)上記相違点について検討する。 (a)刊行物2には「強誘電体メモリは・・・半導体シリコン基板の単結晶構造中に多数の格子欠陥を生じ、これが基板上のMOSトランジスター特性を劣化させる。【0009】このため、特性改善のために最終工程において水素混合窒素ガス(フォーミングガス)雰囲気中において350?450℃の熱処理(MOSシンター)を行なうことにより、H2 の還元性を利用して単結晶シリコン中に発生したダングリングボンド等の欠点を終端し劣化したMOS特性を修復する必要がある。」(0008段落及び0009段落)と記載されている。 一方、刊行物1に「容量誘体膜・・・は・・・タンタル酸化膜、チタン酸ストロンチウム(以下、STOと呼称する)膜、チタン酸バリウムストロンチウム(以下、BSTと呼称する)膜、あるいはチタン酸ジルコン酸鉛(以下、PZTと呼称する)膜等の強誘電体膜で構成される。」(0031段落)と記載されているように、刊行物発明の「金属酸化物からなる容量誘電体膜」の材料には強誘電体が用いられている以上、刊行物発明においても「シリコン基板上に形成されたトランスファトランジスタ」の特性を修復するために水素を含む雰囲気中での熱処理が必要なことは明らかである。 (b)さらに、刊行物2には「強誘電体薄膜用電極材料として水素に対して易透過性である白金等が使用される」(0010段落)場合においても「酸化物強誘電体薄膜キャパシタとシリコンデバイスとで構成される強誘電体メモリにおいて還元性雰囲気下でのMOSシンター工程において強誘電体薄膜と上下電極間の剥離を防止」(0012段落)するために、「キャパシタ9の」「上部電極12の上面」を「保護膜13で被覆」して「還元性ガスの内部透過を遮断」(0033段落)する技術が記載されている。 上記技術は「強誘電体メモリ」の製造に不可欠の「還元性雰囲気下でのMOSシンター工程」を行いつつも「酸化物強誘電体薄膜キャパシタ」の「上部電極」に「水素に対して易透過性である白金等の」材料を使えるようにする技術であるから、「酸化物強誘電体薄膜キャパシタ」の「上部電極」の材料選択に際して「水素に対して易透過性である」であるか否かについての配慮の必要性をなくして材料選択の幅を拡げる技術であると認められる。 そして、上記(a)で検討したとおり、刊行物発明においても水素を含む雰囲気中での熱処理が必要なことは明らかであり、刊行物発明において「金属酸化物からなる容量誘電体膜」上に形成された「第2の導電体膜」の上面に、刊行物2に記載された「還元性ガスの内部透過を遮断でき」る「保護膜13」に相当する膜を形成すれば、上記「第2の導電体膜」の材料選択の幅が拡がり、例えば「水素に対して易透過性である」材料も使えるようになって「半導体記憶装置」である刊行物発明の性能や生産性を向上させる上で望ましいことは明らかであるから、刊行物発明において、刊行物2に記載された上記技術に基づいて、「金属酸化物からなる容量誘電体膜」上に形成された「第2の導電体膜」の上面に、刊行物2に記載された「還元性ガスの内部透過を遮断でき」る「保護膜13」に相当する膜を形成することは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、本願発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-15 |
結審通知日 | 2006-11-21 |
審決日 | 2006-12-04 |
出願番号 | 特願平9-312410 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 574- Z (H01L) P 1 8・ 573- Z (H01L) P 1 8・ 571- Z (H01L) P 1 8・ 575- Z (H01L) P 1 8・ 572- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松嶋 秀忠 |
特許庁審判長 |
松本 邦夫 |
特許庁審判官 |
河合 章 長谷山 健 |
発明の名称 | 半導体装置およびその製造方法 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 河野 哲 |