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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23F
管理番号 1150738
審判番号 不服2004-24063  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-11-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-25 
確定日 2007-01-18 
事件の表示 平成 9年特許願第130452号「乳入りコーヒー飲料とその製法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月17日出願公開、特開平10-304823〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年5月2日の出願であって、平成16年10月19日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年11月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年12月24日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年12月24日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年12月24日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正は、補正前の請求項1を「(A)コーヒー抽出液のフィルター孔径0.45μm以下のフィルターを用いた濾過除菌液および(B)液状乳成分の加熱殺菌液との混合物よりなることを特徴とする乳入りコーヒー飲料。」と補正するものである。
上記補正は、補正前の請求項1に係る「濾過除菌」という発明特定事項を「フィルター孔径0.45μm以下のフィルターを用いた濾過除菌」に限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2、4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2、5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された「特開昭60-110271号公報」(以下、「引用例1」という。)には、
(a)「果実の搾汁液、茶、コーヒーの水抽出液などの飲料原液から限外濾過膜装置を使用して微生物および酵素を除去した飲料を濾過生成することを特徴とするバイオレス飲料の製造方法。」(特許請求の範囲の項)、
(b)「本発明は果実の搾汁液、茶、コーヒーの水抽出液などの飲料原液から限外濾過膜により微生物、酵素を除去した長期保存可能なバイオレス飲料を製造する方法に関するものである。なおバイオレス飲料とは、細菌、カビ、酵母(微生物そのもの)および生物に由来するものである酵素が無い状態の飲料のことで、バイオレスとはbio‐less(生命のない)を称している。」(1頁左下欄11行?18行)、
(c)「濾過膜の孔径は少なくとも最終段において孔径2?4nm(・・)あるいは分画分子量2000?8000の膜を使用する。」(2頁左上欄19行?右上欄1行)、
(d)「また、コーヒー、茶においては揮発性物質を失うことなく、黒変、褐変がなく、抽出液の風味、色調を保つた飲料の製造ができる。」(2頁左下欄7?9行)、
(e)「実施例2 焙煎コーヒー豆24kgに90℃の熱水を加え、布濾過して抽出液200lを得た。これにショ糖約12kgを加えて糖度9°BXに調製しプレート熱交換機を用いて5Uに冷却した。次いで実施例1と同様に限外濾過膜処理を行い非透過液は実施例1と同様に無菌充填しブラツクコーヒー製品を得た。」(2頁右下欄12?末行)と記載されている。
上記摘示事項(a)ないし(e)からみて、引用例1には、「コーヒー抽出液を孔径2?4nmの膜で限外濾過した濾過除菌液からなるコーヒー飲料」という発明が記載されているといえる。
同「特開平1-257430号公報」(以下、「引用例2」という。)には、「(1)、除菌濾過処理を施した無菌緑茶抽出液と、殺菌処理を施した茶葉粉末とが無菌的に混合されてなることを特徴とする無菌緑茶。」(特許請求の範囲の項)及び「上記緑茶抽出液の除菌濾過処理は、限外濾過膜、超精密濾過膜、精密濾過膜等を使用して行う。例えば、0.45μの孔径の膜を使用することにより、大腸菌、霊菌、枯草菌などを完全に除去することができる。」(2頁右上欄10?14行)と記載されている。
(3)対比・判断
本願補正発明と引用例1に記載された発明を対比すると、両者は、「コーヒー抽出液のフィルターを用いた濾過除菌液よりなることを特徴とするコーヒー飲料」である点で一致し、ただ、(イ)フィルターが、前者では「フィルター孔径0.45μm以下のフィルター」であるのに対し、後者では「フィルター孔径2?4nmのフィルター」である点、及び(ロ)前者は、コーヒー抽出液の濾過除菌液に「液状乳成分の加熱殺菌液」を加えて乳入りコーヒー飲料としているのに対し、後者には、「液状乳成分の加熱殺菌液」を加えることについて記載されていない点で、両者は相違する。
相違点(イ)について
引用例2には、緑茶抽出液を0.45μmの孔径のフィルターを用いて濾過除菌処理することにより、緑茶抽出液中に存在する大腸菌、霊菌、枯草菌などを完全に除去できることが記載され、この記載は、緑茶抽出液中に存在する大腸菌、霊菌、枯草菌などの微生物が孔径0.45μmのフィルターを通過できないことを教えるものであるから、コーヒー抽出液を濾過して該抽出液中に存在する大腸菌等の微生物を除去するに当たって、孔径0.45μmのフィルターを用いることは、当業者にとって格別困難なことではない。
相違点(ロ)について
乳入りコーヒー飲料は、請求人も本願明細書の「従来技術」の欄で指摘しているように本願出願前に周知の飲料であるから、引用例1に記載の「濾過除菌したコーヒー飲料」に液状乳成分を加えて乳入りコーヒー飲料とすることは、当業者が容易になし得ることであり、その際、乳入りコーヒー飲料を製品として保存可能とするためには該飲料を無菌状態にする必要があることは当業者の技術常識であったこと及び引用例1に係る「コーヒー飲料」自体すでに除菌されていることを併せ考慮すると、液状乳成分として「液状乳成分の加熱殺菌液」を加えることは、当業者が容易に想到し得る域を出るものではない。
そして、本願補正発明に係る効果についてみても、「本発明により製造した乳入りコーヒー飲料は、従来の乳成分・糖類・コーヒー成分等の原料を混合した後に加熱殺菌する製造方法で製造した乳入りコーヒー飲料に対してコーヒの香の強さ、香の好み、コーヒー感の好み、後味の良さ、味の総合評価のすべての項目において高い嗜好性を示した。」という本願補正発明に係る効果は、引用例1の上記摘示事項(d)から予測されるところを超えて優れているとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたといえるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(4)むすび
したがって、本件補正は、特許法17条の2、5項において準用する同法126条5項の規定に違反するものであるから、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年12月24日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成16年2月13日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「濾過除菌したコーヒー成分と加熱殺菌した液状乳成分とを混合したものであることを特徴とする乳入りコーヒー飲料。」
(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。
(3)対比・判断
本願発明と引用例1に記載された発明を対比するに、本願明細書の記載に徴し、本願発明に係る「コーヒー成分」とは、コーヒー抽出液のことであるから、両者は「濾過除菌したコーヒー成分からなるコーヒー飲料」の点で一致し、ただ、前者では、濾過除菌したコーヒー成分に「加熱殺菌した液状乳成分」を加えて乳入りコーヒー飲料とするのに対し、後者には、「加熱殺菌した液状乳成分」を加えることについて記載されていない点で、両者は相違する。
上記相違点について
乳入りコーヒー飲料は、請求人も本願明細書の「従来技術」の欄で指摘しているように本願出願前に周知の飲料であるから、引用例1に記載の「濾過除菌したコーヒー飲料」に液状乳成分を加えて乳入りコーヒー飲料とすることは、当業者が容易になし得ることであり、上記液状乳成分を加えるに当たって、液状乳成分を予め加熱殺菌しておくことも、上記「2.(3)の相違点(ロ)について」に記載したとおりの理由により、当業者が容易に想到し得ることである。
また、本願発明に係る上記効果は、引用例1の上記摘示事項(d)から予測されるところを超えて優れているとはいえない。
(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-02 
結審通知日 2006-11-07 
審決日 2006-12-04 
出願番号 特願平9-130452
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23F)
P 1 8・ 575- Z (A23F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 阪野 誠司
河野 直樹
発明の名称 乳入りコーヒー飲料とその製法  
代理人 友松 英爾  

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