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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1150749
審判番号 無効2005-80293  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-08-08 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-10-07 
確定日 2007-01-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第3585761号発明「安全性及び炊飯性に優れた発芽玄米並びにその製造法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3585761号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件特許第3585761号に係る発明(平成11年2月2日出願、平成16年8月13日設定登録。)は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】澱粉の糊化度が50?90%、水分含量が25?40%、α-アミラーゼ活性が2IU/g以下であり、付着微生物菌数が5000個/g以下であることを特徴とする発芽玄米。
【請求項2】発芽させた玄米を、熱水処理又は蒸気処理することを特徴とする請求項1記載の発芽玄米の製造法。
【請求項3】熱水処理を、60?100℃の熱水中に5?30分間発芽玄米を浸漬することにより行う請求項2記載の発芽玄米の製造法。
【請求項4】蒸気処理を、0.5?1.5kg/cm2 の蒸気で10?60分間発芽玄米を処理することにより行う請求項2記載の発芽玄米の製造法。」

2.請求人の主張
請求人は、「特許第3585761号発明の請求項1?4に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として下記の甲第1号証ないし甲第6号証を提出して、
「本件特許発明では、『澱粉の糊化度が50?90%』が構成要件の一つとして特定されているが、この糊化度は時間と共に変化するものであるにも拘らず、いつの時点の糊化度かは、明細書中に一切説明されていない。このことは、特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件を欠くものであるから、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきである。」と主張している。(なお、本件特許発明についての出願は、平成11年2月2日にされたものであるから、「特許法第36条第4項第1号」は「平成14年改正前特許法第36条第4項」の誤記と認める。)


甲第1号証:論文「米飯における初期老化の評価方法」井川佳子、菊池智
恵美、兼平咲江、村川由紀子、井尻哲著[J.Appl,
Glycosct.Vol.49,No.1,p.29-
33(2002)]
甲第2号証:論文「澱粉質食品の老化に関する研究(第1報)米飯の老化
について」松永暁子、貝沼圭二著[家政学雑誌]編集者・発
行者:日本家政学会、Vol.32 No.9(1981)
甲第3号証:ドーマー株式会社の2005年7月12日付書面
甲第4号証:ドーマー株式会社の平成十七年六月十四日付通知書
甲第5号証:判決公報(平成10年(行ケ)第164号)
甲第6号証:パテント2000 Vol.53,No.4,76頁

3.被請求人の主張
被請求人は、平成17年12月22日付け答弁書において、「本件特許明細書には、請求人の指摘するような記載不備は存在しないものと確信する。よって、請求人の主張は失当であることは明白である。」と主張し、さらに、上記主張事実を立証するために平成18年9月28日付け回答書及び下記の乙第1号証ないし乙第3号証を提出している。

乙第1号証:「β‐アミラーゼ-プルラナーゼ(BAP)系を用いた澱粉
の糊化度、老化度の新測定法」(貝沼・松永・板川・小林:
澱粉科学,28(4),235-240,1981.)
乙第2号証:特許第3294244号公報
乙第3号証:特許第3548892号公報

4.当審の判断
請求人が主張する上記無効理由について、以下検討する。
(i) 本件の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、「澱粉の糊化度が50?90%、水分含量が25?40%、α-アミラーゼ活性が2IU/g以下であり、付着微生物菌数が5000個/g以下であることを特徴とする発芽玄米。」というものである。
発芽玄米の上記理化学的性質のうち「澱粉の糊化度が50?90%」については、本件特許明細書の段落【0013】に「上記の試料について、・・・・・、糊化度の測定(β-アミラーゼ・プルラナーゼ法)、・・・・・を行った。結果を第2表に示す。」と、及び段落【0023】に「上記の試料について、・・・・・、糊化度の測定(β-アミラーゼ・プルラナーゼ法)、・・・・・を行った。結果を第6表に示す。」と記載されていることからみて、本件特許発明において規定する「澱粉の糊化度が50?90%」は、β-アミラーゼ・プルラナーゼ法により測定されたものと認められる。
ところで、甲第2号証には、「1)β‐アミラーゼ‐プルラナーゼ法により澱粉糊、および米飯の糊化度を測定した。・・・・・4)米飯の老化は保存条件によって異なり、冷蔵(5℃)>室温(20℃)>冷凍(-18℃)>電子ジャー(70℃)の順で進行した。」(659頁の“要約”の項)と記載され、また、被請求人が作成した本件特許に関する「通知書」の写しである甲第4号証には、「澱粉の糊化度につきましては、共同研究者である独立行政法人食品総合研究所豊島英親、岡留博司両氏の見解にもありますように、製造後の経過日数により変動することは広く知られており、・・・」と記載され、さらに、乙第1号証には、「beta‐amylase‐pullulanaseの混合酵素系を用いる本法をBAP法と名づけた。」(236頁左欄4行?5行)及び「5)BAP法を用いた二、三の食品の糊化度測定例 Table4に炊飯直後と種々の条件で貯蔵した米飯の糊化度の変化を示した。・・・・・保存の状況をみると、直後が糊化度92.4であったものが、電子ジャー24時間で84.2、室温77.3、冷蔵71.5、
冷凍81.7の値を示した。4週間後まで延長した場合には、5℃冷蔵が50.2、-18℃冷凍が80.4と高い値を示した。」(240頁左欄13行?21行)と記載されている。
これらの記載からみて、β-アミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した「澱粉の糊化度」は、時間の経過に伴って変動することは、本件特許の出願前に当業者において周知であったと認められる。
そうであるなら、「発芽玄米」を「澱粉の糊化度」により特定する場合には、製造後のいつの時点で測定された糊化度であるのか特許明細書中に明確に定義する必要があるところ、本件特許明細書には、製造後のいつの時点で測定された糊化度であるのか具体的な記載は何もない。
(ii) この点について、被請求人は平成17年12月22日付け答弁書において、「明細書の実施例1においては、『上記試料について、・・・糊化度の測定・・・を行った。』と記載されており、その前文と結びつけて判断すれば、各種の条件で製造した試料について、時をおかずに糊化度を測定したことは明らかである。すなわち、製造直後の試料について測定したことは、実施例1において測定対象の試料が、特定の条件下で保存した試料であるとの記載がないことからも明らかである。」と主張する。
しかしながら、実施例1の「上記試料について、・・・糊化度の測定・・・を行った。」との記載は、その前文の「・・・得られた発芽玄米を包装し、5℃にて低温保管した。各試料の製造条件を第1表に示す。」を受けたものであり、かかる前後の文脈をたどれば、実施例1における「上記試料」は、5℃にて低温保管した発芽玄米を指すと解することも可能であるから、実施例1の記載から、直ちに「上記試料」が製造(蒸気処理)直後のものであるということはできず、製造(蒸気処理)直後から5℃保管を経て炊飯に供されるまでのどの時点の試料であるのかは不明であるというべきである。
また、本件特許発明が達成すべき目的、効果の観点から検討しても、被請求人の上記主張が妥当でないことは、以下の理由からも明らかである。
本件特許明細書には、「本発明は、・・・炊飯性に優れた発芽玄米・・・に関する。」(段落【0001】)、「本発明者らは、・・・玄米米飯を製造できる発芽玄米が得られることを見出して、本発明に到達した。」(段落
【0006】)、及び「この発芽玄米は、常圧下で簡便に炊飯することができ、得られる玄米米飯は・・・」(段落【0006】)との記載があり、これらの記載からみて、本件特許発明に係る「発芽玄米」は、主として炊飯に供されるものと認められる。
そして、本件特許明細書には、「澱粉の糊化度」と「発芽玄米」を炊飯した時の米飯の品質評価との関係について、「試料番号3は糊化が不十分で、炊飯後の米粒が硬く、・・・一方、試料番号14は・・・糊化度が高く、米飯表面が粘りすぎること、炊飯後に硬くなること・・・試料番号4?13は・・・糊化度が適正な範囲であり・・・炊飯後の米飯が軟らかく・・・」(段落【0015】)と記載され、この記載からみて、本件特許発明においては、「発芽玄米」を炊飯に供する時点で「澱粉の糊化度」が「50?90%」の範囲内にあることが、本件特許発明の所期の効果を達成するための要件であると解することもできる。
その場合には、製造(熱水処理又は蒸気処理)直後の「発芽玄米」が「澱粉の糊化度が50?90%」という条件を満たしていたとしても、炊飯に供されるまでの経過時間中に老化が進行(糊化度が低下)して炊飯時には上記数値範囲を外れて、特許明細書に記載の所期の効果が得られない場合も想定し得ることになる。
このように、仮に、被請求人の主張するように、本件特許発明で特定する「澱粉の糊化度」が製造直後の発芽玄米について測定したものであるとした場合でも、本件特許発明に係る目的、効果との関係で上記したような問題が生ずる余地があり、結局のところ、本件特許発明の「澱粉の糊化度」がいつの時点でのものであるかは、特許明細書の記載をみても不明瞭であるといわざるを得ない。
したがって、被請求人の上記主張は採用しない。
(iii) 以上のとおり、β-アミラーゼ・プルラナーゼ法により測定した「澱粉の糊化度」の数値は、時間の経過に伴って変動することが本件特許の出願前に当業者の技術常識であったにもかかわらず、本件特許明細書には、製造後のいつの時点で測定された糊化度であるのか定義する記載は何もなく、本件特許発明において特定する「澱粉の糊化度が50?90%」がいつの時点で測定されたのか不明である以上、当業者が本件特許発明に係る「発芽玄米」を製造しようとした場合、どのように製造するかが理解できず、したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
また、本件の請求項2ないし4に係る発明についても、同じ特定がなされているから、本件特許発明と同様のことがいえる。

5.むすび
したがって、請求人の前記主張はその理由があり、本件特許明細書の記載には不備があり、本件請求項1ないし4に係る発明についての特許は、平成14年改正前の特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-14 
結審通知日 2006-11-16 
審決日 2006-12-06 
出願番号 特願平11-24694
審決分類 P 1 113・ 536- Z (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北村 弘樹  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 鵜飼 健
種村 慈樹
登録日 2004-08-13 
登録番号 特許第3585761号(P3585761)
発明の名称 安全性及び炊飯性に優れた発芽玄米並びにその製造法  
代理人 矢野 裕也  
代理人 久保田 藤郎  
代理人 矢野 裕也  
代理人 矢野 裕也  
代理人 山内 康伸  
代理人 久保田 藤郎  
代理人 中井 博  
代理人 久保田 藤郎  
代理人 矢野 裕也  
代理人 矢野 裕也  
代理人 久保田 藤郎  
代理人 久保田 藤郎  
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