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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1150857
審判番号 不服2005-1041  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-17 
確定日 2007-01-17 
事件の表示 特願2000-502570「風力発電所で用いられる同期発電機および風力発電所」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月21日国際公開、WO99/03187、平成13年 7月31日国内公表、特表2001-510320〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1998年7月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年7月8日 ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成16年10月8日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年1月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年1月17日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年1月17日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「固定子と、回転子とを備え、
前記回転子は、前記固定子に対して移動可能で、電気エネルギーを生成する複数の磁極を含み、
前記磁極は、3つの異なる磁極間距離を用いて前記回転子上に配置されており、
前記回転子の前記磁極は磁極片上に少なくとも1つの前縁を保有し、前記磁極片は、前記回転子の移動方向に対して実質的に斜めに設けられている同期発電機。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「非対称に配置されている回転子の磁極」について「3つの異なる磁極間距離を用いて回転子上に配置されており、前記回転子の磁極は磁極片上に少なくとも1つの前縁を保有し、前記磁極片は、前記回転子の移動方向に対して実質的に斜めに設けられている」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭62-81143号(実開昭63-191864号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
・「本考案は上記事情に鑑み、出力波形のスロットリップルを低減し得る2周波出力発電機を提供することを目的とする。」(明細書第5頁18?20行)
・「2周波出力発電機において、上記各界磁磁極についてそれぞれ複数の突極のうちの一部の突極を、電機子スロットピッチの略1/2ピッチだけ不等間隔になるように回転方向に対して位置ずれさせて形成した2周波出力発電機を特徴とするものである。」(明細書第6頁9?14行)
・「本考案は、上記手段において、他の突極に対して、電機子スロットピッチの略1/2ピッチだけ位置ずれした突極の存在によって、高周波出力巻線に誘起された起電力に含有するスロットリップル分にも位相のずれたものが生じ、他の突極において発生したスロットリップル分との間において互いに打ち消しあって、合成された高周波出力波形のスロットリップル分を低減させるものである。」(明細書第6頁16行?第7頁3行)
・「固定子鉄心1の電機子スロット2に低周波出力巻線3と高周波出力巻線4とを従来と同様にして巻装してある。一方、回転子鉄心5には、界磁巻線6を巻装する。界磁巻線6は、回転子鉄心5を2分してN極とS極とに励磁される2極の界磁磁極が形成されるように巻装することは勿論である。」(明細書第7頁11?16行)
・「本考案は、複数の突極7a?7c、8a?8cのうち中央部の突極7b、8bを第1図に破線で示す従来の位置から実線で示す如き電機子スロットピッチの略1/2ピッチθだけ回転子の回転方向に対して位置をずらして形成したものである。」(明細書第7頁20行?第8頁4行)
・「本考案においては第2図に示す如く、他の突極7a、7c、8a 、8cに対して電機子スロットピッチの略1/2ピッチだけ位置をずらして不等間隔とした突極7b、8bの存在によってスロットリップルが低減する。」(明細書第8頁19行?第9頁3行)

また、上記記載と第1図の記載から、回転子鉄心5上に配置された突極7a?7c、8a?8cは、その突極間距離が、電機子スロット2のピッチの略1/2ピッチだけ位置をずらしたことによって、広くなったものと、狭くなったもの、および元のままのものの3つからなるものであることは明らかである。

以上の記載と図示内容によれば引用文献1には、次の事項からなる発明が記載されている。(以下「引用発明」という。)
「固定子鉄心1と、回転子鉄心5とを備え、前記回転子鉄心5は、前記固定子鉄心1に対して移動可能で、複数の突極7a?7c、8a?8cを含み、前記突極7a?7c、8a?8cは、3つの異なる突極間距離を用いて前記回転子鉄心5上に配置されている2周波出力発電機。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「固定子鉄心1」は前者の「固定子」に相当し、以下同様に「回転子鉄心5」は「回転子」に、「突極7a?7c、8a?8c」は「磁極」にそれぞれ相当する。
また、後者の「2周波出力発電機」と前者の「同期発電機」とは「発電機」である点で共通する。
そして、引用発明は、発電機であるから、その磁極は、回転することで電気エネルギーを生成するものであることは明らかである。
したがって両者は
[一致点]
「固定子と、回転子とを備え、前記回転子は、前記固定子に対して移動可能で、電気エネルギーを生成する複数の磁極を含み、前記磁極は、3つの異なる磁極間距離を用いて前記回転子上に配置された発電機」である点で一致し、
[相違点]
(イ)本件補正発明では、回転子の磁極は磁極片上に少なくとも1つの前縁を保有し、前記磁極片は、前記回転子の移動方向に対して実質的に斜めに設けられているのに対して、引用発明では、このような構成を有していない点、および
(ロ)発電機の種類が、本件補正発明では、「同期発電機」であるのに対して、引用発明では、「2周波出力発電機」である点で相違している。

(4)相違点に対する判断
(イ)について
本件補正発明において、上記「前縁」とは、本願明細書の段落【0020】,【0021】の記載からみて、図6に記載された縁32,34からなる「前縁」26を意味し、上記「磁極片は、回転子の移動方向に対して実質的に斜めに設けられている」とは、同じく図6の前縁32,34の様な形状を示すものと認められるところ、このように磁極前縁を斜めに設けることは、原査定の拒絶の理由に引用された、仏国特許出願公開第1215804号明細書及び特開平8-322171号公報に記載されており、周知技術と認められる。
そして、該周知技術は、発電機におけるトルクリップルを減少させるためのものであるから、スロットリップルを減少させることを目的とする引用発明において、この周知技術を用いて、リップルをさらに減少させることは、当業者が容易になし得たことと認められる。

(ロ)について
発電機として同期発電機は周知のものであり、同期発電機においてリップルを減少させようとすることは周知の課題であるから、引用発明の構成を周知の、同期発電機に適用することで相違点(ロ)に係る本件補正発明の構成とすることは適宜設計し得る事項と認められる。

また、本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び上記周知技術から予測しうる程度のものと認められる。
したがって、本件補正発明は、引用発明および上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年1月17日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年3月30日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「固定子と、回転子とを備え、
前記回転子は、前記固定子に対して移動可能で、電気エネルギーを生成する複数の磁極を含み、
前記磁極は、前記回転子上に非対称に配置されている同期発電機。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記したとおりであって、前記2.で検討した本件補正発明から「非対称に配置されている回転子の磁極」について「3つの異なる磁極間距離を用いて回転子上に配置されており、前記回転子の磁極は磁極片上に少なくとも1つの前縁を保有し、前記磁極片は、前記回転子の移動方向に対して実質的に斜めに設けられている」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-21 
結審通知日 2006-08-22 
審決日 2006-09-05 
出願番号 特願2000-502570(P2000-502570)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02K)
P 1 8・ 575- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安池 一貴牧 初  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 高木 進
高橋 学
発明の名称 風力発電所で用いられる同期発電機および風力発電所  
代理人 河宮 治  
代理人 青山 葆  
代理人 石野 正弘  

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