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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1150884
審判番号 不服2003-11599  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-23 
確定日 2007-01-15 
事件の表示 平成11年特許願第158848号「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月12日出願公開、特開2000-342743〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願の手続の経緯
本願は、平成11年6月7日の出願であって、平成14年2月27日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成14年4月26日付けで手続補正書が提出され、平成15年5月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成15年6月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成15年7月11日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成15年7月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年7月11日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成15年7月11日付けの手続補正により、補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】リールユニットと、
遊技情報を表示する遊技情報表示装置と、
前記リールユニットと、前記遊技情報表示装置とに接続される遊技制御装置とを備えるスロットマシンにおいて、
前記遊技情報表示装置には、
回転軸を中心に回転し、前記回転軸の周囲に位置し、前記遊技情報がそれぞれ表示された複数のパネル面を有する複数個の回転体と、
前記複数個の各回転体の1個の前記パネル面が隣接して臨む表示窓と、
前記各回転体を個々に回転可能なパネル回転駆動装置とを備え、
前記遊技制御装置には、
遊技の進行にもとづいて、前記パネル回転駆動装置の駆動を制御するためのパネル回転制御手段を備えていると共に、
3個の各回転体各々の、少なくとも1のパネル面には配当表が、他のパネル面には特定遊技の入賞状態あるいは前記特別遊技中の第1特定遊技の遊技回数が表示されていることを特徴とするスロットマシン。」

2.補正の適否の検討
本願補正発明に係る補正は、平成14年4月26日付けで補正された【請求項1】の「回転体」に関して、「少なくとも1のパネル面には配当表が表示されている」を、「少なくとも1のパネル面には配当表が、他のパネル面には特定遊技の入賞状態あるいは前記特別遊技中の第1特定遊技の遊技回数が表示されている」に限定的に特定するものであって、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用例に記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開平11-114137号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「本発明の一実施形態に従って提供されるビデオ・ディスプレイ・ゲーム機210が図2に図示されている。ゲーム機210は、ゲーム機ハウジング212、頂部ガラス214、腹部ガラス218及び主ディスプレイ220を含む。主ディスプレイ220は、スピニング・リール表示器のような機械的表示器、又はCRTのようなビデオ・ディスプレイでよい。プレイの結果を主ビデオ・ディスプレイ上に表示し得るゲームの事例には、ビデオ・スロット・ゲーム、電子的ビデオ・ポーカ・カード・ゲーム、電子的キーノ・ゲーム、電子的ブラックジャック・ゲーム、スピニング・リール・スロット・ゲーム等が含まれる。スピニング・リール表示器は、通常ステッパー・モータ駆動されるリール組立体である1組のスピニング・リールを含み、該1組のスピニング・リールの各々はその周辺部に複数の印又は記号を含む。リール上の印が所定の組合わせで整列すると、プレーヤにはジャックポットが支払われる。」(段落【0018】)
(イ)「頂部ガラス214内に頂部ガラス副ビデオ・ディスプレイ219が取り付けられ、該頂部ガラス副ビデオ・ディスプレイ219は前述の副ゲーム情報のようなビデオ内容221を与える。提示された事例においては、ビデオ内容221は、ゲーム機がボーナスを与えるのにどの程度近付いて来たかを示す温度計を含む。また、頂部ガラス214内に別個のユーティリティ・メータ(需給計器)領域又は照光されたディスプレイ領域246a及び246bが備えられており、これらユーティリティ・メータ領域又は照光されたディスプレイ領域246a及び246bは前述の主及び副ゲーム情報を提示し得る。必ずしも好ましいというものではないが、腹部ガラス218内に、ボーナスが使用可能であることを示すプレーヤ・アトラクション・マテリアル(player attraction material)のようなビデオ内容225を与える腹部ガラス・ビデオ・ディスプレイ223を取り付けることも可能である。ビデオ・ディスプレイ221及び223は、高解像度のフラット・パネルLCD、陰極線管、投射型LCD、プラズマ・ディスプレイ、電界放出ディスプレイ、ディジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)、又は他の通常の電子的に制御されたビデオ・モニタであるのが好ましい。」(段落【0019】)
(ウ)「システム電子機器 図12は、本発明のゲーム機510のための1つの好適なアーキテクチャのブロック図である。ゲーム機CPU 502はゲーム機にとって中心であり、該ゲーム機CPU 502は、ゲーム機上でプレイを実行することと関連した動作を実施し、ゲーム機プレーヤと対話をし、ネットワーク情報を処理し、追跡デバイスにより用いられる情報を与え、ゲーム結果を発生する等々のための論理を含む。CPU 502は、IGTゲーム機で用いられ且つIntel Corporationにより製造された80960マイクロプロセッサのようなカスタム・ゲーム機CPUであることが好ましい。」(段落【0032】)
(エ)「CPU 502は、主ディスプレイ220に接続され、その内容を、IGTがプロプラエタリである「ネットプレクス」プロトコルのような任意の適切なフォーマットで与えられる制御信号を介して制御する。ネットプレクスは、光学的に分離された電流ループを利用するシリアル・データ通信インタフェースに使用のため実施されている。ネットプレクスの目的は、ゲーム機内で全てのインテリジェント周辺装置に対して一貫性のある通信プロトコルを与えることである。3つのネットプレクス信号、即ち、受信、送信及びリセットが存在する。更に、2つのパワー接続が存在する。リセット信号の目的は、全ての周辺装置を同期してリセットすることである。IGTのネットプレクス・プロトコルは、ディジタル回路設計及びプログラミングの当業者には既知である他のプロトコル・スキームと置換することができることを理解すべきである。」(段落【0033】)
(オ)「主ディスプレイ220は、1組のスピニング・リール、又はCRTディスプレイであることが好ましい。しかしながら、LCDディスプレイ、プラズマ・ディスプレイ、電界放出ディスプレイ、ディジタル・マイクロミラー・ディスプレイ、LCDタッチスクリーン等のような他のタイプのディスプレイを用いることも可能である。好適な実施形態において、CPU 502は、スピニング・リール・スロット・マシンの場合ステッパー・モータ(図示せず)を、又はビデオ・ディスプレイの場合ビデオ主グラフィック・システム(図示せず)を、間接的に介して主ディスプレイ220を制御する。ビデオ主グラフィック・システムは、主ディスプレイ220を駆動するよう機能する。」(段落【0034】)
(カ)「ゲーム機CPU 502はまた、「マルチスレーブ」モジュール508と通信する。次いで、マルチスレーブ・モジュール508は、LCDであることが好ましい副ディスプレイ219に結合されている。マルチスレーブ・モジュール508は、CPU 502と、前述したようにリセットするためのプロプラエタリ・ネットプレクス・プロトコルを介して通信する。通信は、RS232シリアル・ポートのような任意の標準ポートを通してである。副ディスプレイ219は、前述のように、液晶ディスプレイ、陰極線管、プラズマ・ディスプレイ、電界放出ディスプレイ、ディジタル・マイクロミラー・ディスプレイ、LCDタッチスクリーン、及びこれらの組合わせ等を含むより大きなクラスのビデオ・ディスプレイを表す。好適な実施形態において、副ディスプレイ219は、ワシントン(WA) 、CamasのSharp Electronicsから入手可能であるLCDフラット・パネルLQ10D421である。」(段落【0035】)
(キ)「図13を参照して以下に記述されるように、マルチスレーブ・モジュール508は、副ディスプレイ219を駆動するための論理回路を含む。マルチスレーブ・モジュール508はまた、ハード・ドライブ及び/又はPCMCIAカードのような大容量記憶装置を含んでもよい。この記憶装置は、副ディスプレイ219上に頻繁に表示される多数のイメージ並びに関連の音を保持するため用いられる。ゲーム機CPU 502はまた、プレーヤ追跡情報を取り扱うための別個のプロセッサであることが好ましいプレーヤ追跡デバイス516に接続され得る。該プレーヤ追跡デバイス516は、ディスプレイ518、カード・リーダ520及びキーパッド522を含むインタフェースを介してゲーム機プレーヤと通信する。カード・リーダ520は、カジノ又は他の存在物(entities)により発行された特別のプレーヤ追跡カードを読むため用いられ得る。代替的に、又は更に、カード・リーダ520はまた、プレーヤの遠隔財務勘定に直接アクセスするためクレディット又はデビット・カードを読み取り得る。これに関しては、キーパッド522は、ゲーム機510とプレーヤの遠隔財務機関(institution)との間での電子ファンド転送を可能にする勘定情報を入力するため用いられ得る。遠隔財務機関にクレディット又はデビット・カードを介してアクセスすることを可能にするゲーム機は、先に援用した米国特許出願Serial No. 08/639,762に記載されている。プレーヤ追跡カードの挿入は、特定の客がプレイしているゲーム機に警報を出し得ることに注目されたい。応答において、ゲーム機は特定のイメージをLCD 219上に表示し得る。」(段落【0036】)
(ク)「ビデオ内容 通常、本発明の副ディスプレイ219のようなビデオ・ディスプレイ上に表示されるビデオ内容は、注意深く制御される。前述したように、当該内容は、少なくとも3つのカテゴリ、即ち、主情報(一次情報)、副情報(二次情報)及び三次情報のうちの1つに入り得る。主情報の例は、ゲーム機がプレイを開始するため貨幣又は紙幣の挿入を待つ「通貨入れ」段階の指示、プレーヤがプレイ(例えば、スロット・マシン上のスピニング・リール)を開始した「ゲーム・プレイ」段階の指示、及び支払い金を登録し得る「ゲーム結果」段階の指示を含む。主ゲーム結果情報は、あるならばいくらの支払い金をプレーヤがゲームの完了で支払い線上の特定の記号の整列の際に受け取るかを示す、ゲーム機プレーヤに対して与えられる支払い金情報を含む。主ゲーム結果情報はまた、勝ちの組合わせを記載する支払い表、及び所与の組合わせが与えるであろう支払い金の額のような情報を含み得る。他の主イベントは、故障(例えば、チルト)のような一般のゲーム機状態の変化を含む。副情報の例は、スロット・トーナメント、進行式ゲーム、ボーナス・スキーム、及びプレイするのを続ける又は特定の要領でプレイするためプレーヤに興味をかき立たせる他の刺激についての情報を含む。三次情報は、ビルボード情報、広告、テレビジョン番組、プレーヤ・アトラクション・マテリアル、カジノ・キオスク、ビデオ会議、及びそれらの組合わせを含む。」(段落【0066】)
(ケ)「関心の第1のイベントは、ステップ912で示されるように、紙幣挿入イベント(又は、代替として、貨幣挿入イベント)である。この実施形態においては、紙幣又は他の適切な通貨がゲーム機に挿入されると、副ディスプレイ219は、ステップ914で示されるように、或る一定の時間量適切な金種の通貨のイメージを提示する。図13を参照して上記したように、このステップは、CPU 502がCPU 621に、挿入された紙幣金種又は貨幣の数を知らせることにより実行される。他のイメージもまた提示できる。例えば、挿入された金種と関連した支払い表を表示してもよい。適切な情報がステップ914で表示された後で、処理制御はステップ908へ戻り、そこで副ディスプレイ219は、例えば、適切なボーナス情報でもって更新され得る。代替として、副ディスプレイ219は、ステップ912での紙幣挿入イベントが起こる前に提示された表示に単純に戻ってもよい。ボーナスが表示されない場合、「ゲーム・アトラクト(attract)」モードに入る。」(段落【0077】)
(コ)「ステップ910後に起こる関心の第3の代替イベントは、ステップ922で示されるように、スピニング・リールのようなプレイ・イベントである。リールが停止すると、判断ステップ924は、勝ちの組合わせが主ディスプレイに提示されたか否かを判断する。否である場合、処理制御は単純にステップ908へ戻り、そこで副ディスプレイ219は前述のように更新される。他方、システムが、ステップ924でプレイが勝ちの組合わせを結果として生じたと判断した場合、システムは、当該勝ちが判断ステップ926で「最高支払い」を構成するかを判断しなければならない。そのような最高支払いは、以下でより詳細に記載される状況のような副ゲーム状況と関連する。システムがステップ926で勝ちが最高支払いに相当しないと判断した場合、副ディスプレイ219は、例えばゲーム機が最高支払いに向かって進んでいるかも知れないこと、及び連続したプレイが最高支払いでのチャンスを結果として生じるかも知れないことを示す適切なアニメーションを示す。そのようなアニメーションがステップ930で表示された後、処理制御はステップ908へ戻り、そして副ディスプレイ219が前述した手続きに従う。」(段落【0079】)
(サ)「システムが判断ステップ926で勝ちが実際最高支払いに相当すると判断した場合、システムは、ステップ928で示されるように、副ディスプレイ219に適切な賞賛のビデオ・イメージを表示し得る。例えば、副ディスプレイ219は、支払いが完了するまで、花火アニメーションを提示し得て、そしてゲーム機は従業員によりリセットされる。その後、処理制御はステップ908へ戻り、システムは前述したように振る舞う。」(段落【0080】)

上記記載事項(ア)乃至(サ)の記載、及び図面の記載からみて、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「ゲーム機210は、ゲーム機ハウジング212、頂部ガラス214、腹部ガラス218及び主ディスプレイ220とを含み、主ディスプレイ220は、リール組立体である1組のスピニング・リールを含み、頂部ガラス214内には、副ディスプレイ219が取り付けられ、CPU502は、主ディスプレイ220に接続され、マルチスレーブ・モジュール508と通信し、マルチスレーブ・モジュール508は、副ディスプレイ219を駆動してなるゲーム機210であって、
副ディスプレイ219上に表示されるビデオ内容は、主情報(一次情報)、副情報(二次情報)及び三次情報の少なくとも3つのカテゴリのうちの1つに入り得るものであり、勝ちの組合わせを記載する支払い表、及び所与の組合わせが与えるであろう支払い金の額のような情報を表示したり、勝ちの組合わせが主ディスプレイに提示されたと判断した場合、適切な賞賛のビデオ・イメージを表示し得るゲーム機210。」

4.対比
本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「リール組立体」が本願補正発明の「リールユニット」に相当し、以下同様に「副ディスプレイ219」が「遊技情報表示装置」に、「CPU502」が「遊技制御装置」に、「ゲーム機210」が「スロットマシン」にそれぞれ相当している。
また、引用例の上記記載事項(エ)「CPU502は、主ディスプレイ220に接続され、その内容を、・・制御信号を介して制御する」、同じく記載事項(オ)「主ディスプレイ220は、1組のスピニング・リール、・・であることが好ましい。CPU502は、スピニング・リール・・を、間接的に介して主ディスプレイ220を制御する。」、同じく記載事項(カ)「ゲーム機CPU502はまた、「マルチスレーブ」モジュール508と通信する。・・マルチスレーブ・モジュール508は、・・副ディスプレイ219に結合され・・」なる記載事項及び【図12】の記載からみて、CPU502(遊技制御装置)は、主ディスプレイ220のリール組立体(リールユニット)と副ディスプレイ219(遊技情報表示装置)を制御するために接続されるものであるから、引用発明の「CPU502」は、本願補正発明の「遊技情報制御装置」と同じく「リールユニットと、遊技情報表示装置とに接続され」る構成を具備することは明らかである。
また、引用例の上記記載事項(サ)「・・勝ちが実際最高支払いに相当すると判断した場合、・・副ディスプレイ219に適切な賞賛のビデオ・イメージを表示し得る。」なる記載に基づけば、副ディスプレイ219(遊技情報表示装置)は、勝ちが実際最高支払いに相当すると判断した場合、賞賛のビデオ・イメージを表示しており、これが特定の遊技状態を表示することになるから、引用発明の「副ディスプレイ219」は、本願補正発明の「遊技情報表示装置」と同じく「遊技情報を表示する」機能を備えるといえる。

してみると、引用発明と本願補正発明とは、

「リールユニットと、
遊技情報を表示する遊技情報表示装置と、
前記リールユニットと、前記遊技情報表示装置とに接続される遊技制御装置とを備えるスロットマシンにおいて、
前記遊技情報表示装置には、遊技の進行にもとづいて制御するための制御手段を備えているスロットマシン。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
遊技情報表示装置の構成が、本願補正発明においては、回転軸を中心に回転し複数のパネル面を有する3個の回転体と、各回転体を個々に回転可能なパネル回転駆動装置と、遊技の進行にもとづいてパネル回転駆動装置の駆動を制御するためのパネル回転制御手段と、各回転体の1個の前記パネル面が隣接して臨む表示窓とを備えているのに対し、引用発明においては、遊技情報表示装置は、3個の回転体で構成されておらず、併せて、上記のパネル回転駆動装置、パネル回転制御手段、表示窓も備えていない点。

<相違点2>
遊技情報として表示される内容が、本願補正発明においては、配当表、特定遊技の入賞状態あるいは特別遊技中の第1特定遊技の遊技回数を表示内容としており、これらが回転体各々の、少なくとも1つのパネル面には配当表、他のパネル面には特定遊技の入賞状態あるいは特別遊技中の第1特定遊技の遊技回数が表示されるのに対し、引用発明においては、特定遊技の入賞状態が表示内容として、表示される点。

5.相違点についての検討
<相違点1> について
回転軸を中心に回転し複数のパネル面を有する3個の回転体と、各回転体を個々に回転可能なパネル回転駆動装置と、遊技の進行にもとづいてパネル駆動装置の駆動を制御するためのパネル回転制御手段と、各回転体の1個の前記パネル面が隣接して臨む表示窓とを備える点に関して検討する。
回転軸を中心に回転し複数の面を有する回転体と、回転体を回転可能な回転駆動装置と、遊技の進行にもとづいて駆動装置の駆動を制御するための回転制御手段を備える点について、スロットマシンの分野において、絵柄表示体4が予め定められた絵柄の組み合わせになると、軸部を中心に回転する表示パネルが、表示パネルの表面2aに描かれたゲーム内容の表示から裏面2bに描かれたゲーム内容の表示に回転手段で回転して表示を切り換える点が、実願平2-62626号(実開平4-20381号)のマイクロフィルムに、また、軸に揺動自在な表示板に[AAA]と「7」が描かれ、ボーナスゲームになるとソレノイドが作動し、表示板が「7」から[AAA]に切り換わる点が、実公昭60-28474号公報に記載されており、いずれも、遊技の進行に基づいて特定の入賞状態を示す遊技情報を回転体を回転制御して表示するから、回転軸を中心に回転し複数の面を有する回転体と、回転体を回転可能な回転駆動装置と、遊技の進行にもとづいて駆動装置の駆動を制御するための回転制御手段を備えることは従来周知の技術(以下、「周知技術1」という。)である。
また、複数の面をパネル面として有する3個の回転体を個々に回転可能なパネル回転駆動装置と、各回転体の1個のパネル面が隣接して臨む表示窓とを備える点について、表示手段の一般的な技術として、複数の面をパネル面として有する複数個の回転体を、個々に回転可能なパネル回転駆動装置で駆動して表示を行うことは、広く採用されている周知技術(例えば、実願平2-116862号(実開平4-74385号)のマイクロフィルム、特開平7-210099号公報(段落【0022】、【0036】、【図1】)参照、以下、「周知技術2」という。)である。
また、各回転体の1個のパネル面が隣接して臨む表示窓を備える点も、回転体を回転して表示内容を切り換える形式の表示手段において、適宜設けられる技術常識(例えば、実願平2-116862号(実開平4-74385号)のマイクロフィルムの「透明パネル4」、実公昭60-28474号公報の「表示窓14,15,16」参照、以下、「技術常識1」という。)というべきである。
そして、引用発明のディスプレイで表示する遊技情報表示装置と、回転体で表示する上記周知技術1,2及び技術常識1の表示手段は、共に情報を切り換えて表示を行う点で機能が共通し、且つ慣用された表示手段であり、技術を転用することに格別に困難性は認められないから、引用発明の遊技情報表示装置に代えて、回転軸を中心に回転し複数の面を有する回転体と、回転体を回転可能な回転駆動装置と、遊技の進行にもとづいて駆動装置の駆動を制御するための回転制御手段を備える上記周知技術1、及び複数の面をパネル面として有する複数個の回転体を個々に回転可能なパネル回転駆動装置で駆動して表示を行う上記周知技術2、並びに各回転体の1個の前記パネル面が隣接して臨む表示窓を備える上記技術常識1を各々適用し、回転軸を中心に回転し複数のパネル面を有する3個の回転体と、各回転体を個々に回転可能なパネル回転駆動装置と、遊技の進行にもとづいてパネル駆動装置の駆動を制御するためのパネル回転制御手段と、各回転体の1個の前記パネル面が隣接して臨む表示窓とを備えさせること、即ち、本願補正発明に係る相違点1を構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

<相違点2>について
遊技情報として表示される内容が、本願補正発明においては、配当表、特定遊技の入賞状態あるいは特別遊技中の第1特定遊技の遊技回数を表示内容としており、これらが回転体各々の、少なくとも1つのパネル面には配当表、他のパネル面には特定遊技の入賞状態あるいは特別遊技中の第1特定遊技の遊技回数が表示される点に関して検討する。
スロットマシンの技術分野において、遊技情報の内容として、配当表(例えば、特開平9-103540号公報、特開平10-108939号公報の「配当表」参照)や、特別遊技中の特定遊技の遊技回数(例えば、実公昭60-28474号公報(第1頁第2欄第28行?第2頁第3欄第3行)、特開平9-285596号公報(段落【0081】、【0082】)等は、周知の表示内容(以下、「周知技術3」という。)である。
また、表示を施す際に、回転体各々の各面に各種内容を表示することも、例えば、上記「周知技術1」の実願平2-62626号(実開平4-20381号)のマイクロフィルムや実公昭60-28474号公報、及び上記「周知技術2」の実願平2-116862号(実開平4-74385号)のマイクロフィルムや特開平7-210099号公報(段落【0022】、【0036】、【図1】参照)に示したように、周知の表示技術(以下、「周知技術4」という。)である。
そして、引用発明と、上記周知技術3,4は、表示箇所を用いて表示を行う点で技術が共通するから、引用発明の遊技情報表示装置に代えて、表示される内容として、配当表や、特別遊技中の特定遊技の遊技回数を表示内容とする上記周知技術3を適用し、且つ、表示を施す際に、回転体各々の各面に各種内容表示する上記周知技術4を適用し、回転体各々のパネル面に、配当表、特定遊技の入賞状態あるいは特別遊技中の第1特定遊技の遊技回数の表示することは、当業者にとって容易であり、上記遊技情報の内容で表示する場合、少なくとも1つのパネル面には配当表、他のパネル面には特定遊技の入賞状態あるいは特別遊技中の第1特定遊技の遊技回数とすること、即ち、本願補正発明に係る相違点2を構成とすることは、当業者であれば適宜に選択し得る設計事項といえる。

6.作用効果・判断
そして、本願補正発明における作用効果は、引用発明及び上記周知技術・技術常識に基づいて当業者が当然予測できるものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術・技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下されるべきものである。
よって、上記「補正の却下の決定の結論」のとおり決定する。

【3】本願発明について
1.本願発明
平成15年7月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年4月26日付けの手続補正書の明細書及び図面の記載からみて、以下のとおりである。
「【請求項1】リールユニットと、
遊技情報を表示する遊技情報表示装置と、
前記リールユニットと、前記遊技情報表示装置とに接続される遊技制御装置とを備えるスロットマシンにおいて、
前記遊技情報表示装置には、
回転軸を中心に回転し、前記回転軸の周囲に位置し、前記遊技情報がそれぞれ表示された複数のパネル面を有する複数個の回転体と、
前記複数個の各回転体の1個の前記パネル面が隣接して臨む表示窓と、
前記各回転体を個々に回転可能なパネル回転駆動装置とを備え、
前記遊技制御装置には、
遊技の進行にもとづいて、前記パネル回転駆動装置の駆動を制御するためのパネル回転制御手段を備えていると共に、
3個の各回転体各々の、少なくとも1のパネル面には配当表が表示されていることを特徴とするスロットマシン。」

2.引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、前記【2】3.に摘記したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から前記【2】2.で検討した限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに、上記限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記【2】5.で検討したとおり、引用発明及び周知技術・技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-27 
結審通知日 2006-09-28 
審決日 2006-12-01 
出願番号 特願平11-158848
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 辻野 安人
塩崎 進
発明の名称 スロットマシン  
代理人 黒田 博道  

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