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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1150887 |
審判番号 | 不服2004-3535 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-07-02 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-23 |
確定日 | 2007-01-15 |
事件の表示 | 平成6年特許願第333343号「印刷配線板及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成8年7月2日出願公開、特開平8-172270〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年12月15日の出願であって、平成16年1月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2.本願の発明 本願の請求項1?3に係る発明は、平成15年11月17日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものと認められるが、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりである。 「【請求項1】 所定位置に導体バンプ群を形設した支持基体の主面に、合成樹脂系シート主面を対接させて積層配置する工程と、この積層物を加圧し前記合成樹脂系シートの厚さ方向に前記導体バンプ群をそれぞれ貫挿させて貫通型の導体配線部を形成する工程と、貫通型の導体配線部を形成した前記合成樹脂系シートの上面に金属箔を配置して一体成形する工程とを具備し、合成樹脂のベースポリマーに長さ4mm以上の繊維状の導電性フィラーを混和してなる導電性組成物を用いて前記導体バンプ群を形設してなることを特徴とする印刷配線板の製造方法。」 3.引用例とその記載事項 (1)原査定の理由において、本願出願前に頒布された刊行物として引用された特開平6-342977号公報(以下、「引用例1」という)には、「印刷配線板の製造方法」に関して、図1?5とともに、次の事項が記載されている。 ア.「【請求項1】 所定位置に導体バンプ群を形設した支持基体の主面に、合成樹脂系シート主面を対接させて積層配置する工程と、 前記積層体の合成樹脂系シート面側に弾性ないし柔軟性を有する被押圧体を配置し、積層体を加熱して合成樹脂系シートの樹脂分が可塑状態ないしガラス転移温度以上になってから、支持基体側から1次加圧してバンプ群先端を合成樹脂系シートの厚さ方向に貫挿・露出させる工程と、 前記バンプ群先端の貫挿・露出面に導電性金属箔を積層配置する工程と、 前記導電性金属箔を積層配置した積層体を2次加圧して、前記導電性金属箔面にバンプ群先端を塑性変形により接続し、貫通型の導体配線部を形成する工程と、 前記貫通型の導体配線部を形成した積層体の導電性金属箔に、エッチング処理を施して、前記貫通型の導体配線部に接続する配線パターンを形成する工程とを具備して成ることを特徴とする印刷配線板の製造方法。」 イ.「【0008】ここで、前記導体バンプは、合成樹脂系シートの樹脂分が可塑状態ないしガラス転移温度以上にある状態での加熱加圧、すなわち1次加圧の段階では合成樹脂シートなどを貫挿(貫通)し得る程度の硬さを呈し、2次加圧段階では先端部が塑性変形し得る材質、たとえば銀,金,銅,半田粉などの導電性粉末、これらの合金粉末もしくは複合(混合)金属粉末と、たとえばポリカーボネート樹脂,ポリスルホン樹脂,ポリエステル樹脂,フェノキシ樹脂,フェノール樹脂,ポリイミド樹脂などのバインダー成分とを混合して調製された導電性組成物、あるいは導電性金属などで構成される。そして、前記バンプ群の形設は、導電性組成物で形成する場合、たとえば比較的厚いメタルマスクを用いた印刷法により、アスペクト比の高いバンプを形成でき、そのバンプ群の高さは一般的に、 100? 400μm 程度が望ましく、さらにバンプ群の高さは一層の合成樹脂系シートなどを先端が貫挿(貫通)し、露出し得る高さおよび複数層の合成樹脂系シートなどを先端が貫挿(貫通)し、露出し得る高さのものとが適宜混在していてもよい。」 ウ.「【0015】実施例1 図1 (a) (b)および図2 (a) (b)は本実施例の実施態様を模式的に示したものである。先ず、印刷配線板の製造に使用されている厚さ35μm の電解銅箔を支持基体シート1として、ポリエーテルサルホンをバインダーとする銀系の導電性ペースト(商品名,ユニメック H9141,北陸塗料KK)として、また板厚の 200μm のステンレス板の所定箇所に 0.3mm径の孔を明けたメタルマスクを用意した。そして、前記銅箔(支持基体シート)1面に、前記メタルマスクを位置決め配置して導電性ペーストを印刷し、この印刷された導電性ペーストが乾燥後、同一マスクを用い同一位置に再度印刷する方法で3回印刷を繰り返し、高さ 200μm 弱の山形のパンブ2を形成(形設)した。図1 (a)は、こうして形設された導電性バンプ2の形状を側面的に示したものである。 【0016】一方、厚さ 100μm のポリエーテルイミド樹脂フィルム(商品名,スミライト FS-1400,住友ベークライトKK)を合成樹脂系シート3として用意し、図1(b)に断面的に示すごとく、前記合成樹脂シート3を、前記形設した導電性のバンプ2に対向させて支持基体シート1を位置決め配置して積層体とした。その後、前記合成樹脂シート3裏面に、厚さ 3mm程度のシリコーンゴム板を被押圧体4として配置し、さらに当て板5を配置して、加熱・加圧・冷却機構付きプレス装置に装着し、加圧しないで加温した。温度が 250℃に上昇した時点で、 3 MPaで1次加圧したまま冷却した。この1次加圧により、図1 (c)に断面的に示すように、支持基体シート1面の導電性の各バンプ2先端が、そのまま形で、精度よく合成樹脂シート3を貫挿した積層体が得られた。 【0017】次いで、図2 (a)に断面的に示すように、前記積層体の導電性バンプ2先端の貫挿面に、厚さ35μm の電解銅箔6を、さらに銅箔6面上にポリイミド樹脂フィルムを保護膜7としてそれぞれ積層・配置し、 270℃に保持した熱プレスの熱板の間に配置し(図示せず)、先ず 500 kPaで加圧し、合成樹脂シート3が 270℃になってから、樹脂圧として 2 MPaで2次加圧し、そのまま冷却後取りだし、保護膜(シート)7を剥離してから、その断面を観察したところ、図2 (b)に断面的に示すごとく、前記合成樹脂シート3に対して銅箔6が接着・一体化するとともに、合成樹脂シート3を貫挿(貫通)した各導電性バンプ2は、銅箔6に対接した面で先端が塑性変形(潰された形)し、同一平面を成して銅箔6面に接続して、合成樹脂シート3を厚さ方向に貫通する導体配線部8を備えた両面銅張り型の印刷配線板用基板が得られた。 【0018】前記両面銅張り型印刷配線板用基板の両面に、通常のエッチングレジストインク(商品名,PSR-4000 H,太陽インキKK)をスクリーン印刷し、導体パターン部をマスクしてから、塩化第2銅をエッチング液としてエッチング処理後、レジストマスク剥離して、両面印刷配線板を得た。こうして製造した両面型印刷配線板について、通常実施されている電気チェックを行ったところ、全ての接続に不良ないし信頼性などの問題が認められなかった。」 上記記載事項ア?ウの記載を総合すると、引用例1には、 「所定位置に導体バンプ群を形設した支持基体の主面に、合成樹脂系シート主面を対接させて積層配置する工程と、この積層物を加圧し前記合成樹脂系シートの厚さ方向に前記導体バンプ群をそれぞれ貫挿させて貫通型の導体配線部を形成する工程と、貫通型の導体配線部を形成した前記合成樹脂系シートの上面に導電性金属箔を配置して一体成形する工程とを具備し、バインダー成分に導電性粉末を混和してなる導電性組成物を用いて前記導体バンプ群を形設してなる印刷配線板の製造方法。」 の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。 (2)同じく、特開平4-91111号公報(以下、「引用例2」という)には、「導電性樹脂組成物及びその硬化樹脂組成物」に関して、次の事項が記載されている。 エ.「電磁波遮蔽用並びに導電性塗料等の用途に供しうる導電性樹脂組成物は、通常、導電性フィラー(短繊維又は/及び微粉末)とバインダーとなる樹脂からなっている。したがって、例えば導電性塗料の場合、用途に応じた導電性、基材に対する密着性、耐熱性、作業性等を考慮して、導電性フィラーとバインダーとなる樹脂の適切な選択と組み合わせを行う必要がある。」(第1頁右下欄第7?14行) オ.「導電性樹脂組成物の(D)成分として用いられる導電性フィラーとは、カーボンブラック、グラファイト等のカーボン粉末及びカーボン繊維、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、黄銅、ステンレス等の金属粉末又は繊維、金属メッキガラス繊維等であるがこれらに限定されるものではない。 導電性フィラーは、夫々単独又は二種以上組み合わせて用いてもよい。 導電性フィラーの形状が繊維の場合、繊維の寸法は材料によって異なるが、通常は繊維径1?100μm、繊維長1?20mm程度のものが使用される。」(第7頁右下欄第18行?第8頁左上欄第9行) カ.「本発明になる導電性樹脂組成物は、例えば、導電性フィルム、リジッド板・フレキシブル板等の基板上に形成される回路・抵抗体等の素子、電磁波遮蔽用各種部品等として用いるが、これらの用途に限定されない。」(第9頁右上欄第20行?同頁左下欄第4行) 4.発明の対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「導電性金属箔」、「バインダー成分」、「導電性粉末」は、それぞれ、本願発明の「金属箔」、「合成樹脂のベースポリマー」、「導電性フィラー」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、 【一致点】 「所定位置に導体バンプ群を形設した支持基体の主面に、合成樹脂系シート主面を対接させて積層配置する工程と、この積層物を加圧し前記合成樹脂系シートの厚さ方向に前記導体バンプ群をそれぞれ貫挿させて貫通型の導体配線部を形成する工程と、貫通型の導体配線部を形成した前記合成樹脂系シートの上面に金属箔を配置して一体成形する工程とを具備し、合成樹脂のベースポリマーに導電性フィラーを混和してなる導電性組成物を用いて前記導体バンプ群を形設してなる印刷配線板の製造方法。」 に係る発明である点で一致し、次の点で相違する。 【相違点】 導電性フィラーに関して、本願発明では「長さ4mm以上の繊維状の」と限定しているのに対して、引用発明ではそのような限定がない点。 5.当審の判断 上記相違点について検討する。 引用例2には、電気的接続を行うための導電性樹脂組成物の導電性フィラーとして、通常は繊維長1?20mm程度のものが使用されることが記載されていることから(記載事項エ?カ参照)、「長さ4mm以上の繊維状の」導電性フィラーは、電気的接続を行うための導電性組成物の導電性フィラーとしては従来一般に用いられているものというべきである(必要であれば、特開平6-157876号公報、特開平6-162818号公報、特開昭58-157834号公報をも参照)。 そして、引用発明の導電性組成物は電気的接続を行う導体バンプ群を形設するために用いるものであるから、引用発明の導電性組成物の導電性フィラー(導電性粉末)として、引用例2に記載された電気的接続を行うための導電性組成物に従来一般に用いられている「長さ4mm以上の繊維状の」導電性フィラーを採用することを妨げる事由は見あたらず、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到できたことというべきである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の請求項2、3に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-22 |
結審通知日 | 2006-11-24 |
審決日 | 2006-12-06 |
出願番号 | 特願平6-333343 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 落合 弘之 |
特許庁審判長 |
前田 仁 |
特許庁審判官 |
永安 真 ぬで島 慎二 |
発明の名称 | 印刷配線板及びその製造方法 |
代理人 | 日向寺 雅彦 |