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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1151018
審判番号 不服2003-22733  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-08-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-21 
確定日 2007-01-19 
事件の表示 特願2002- 27325「手造りアルバム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月12日出願公開、特開2003-226083〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成14年2月4日の出願であって、平成15年10月28日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年11月21日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年11月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
本件補正は特許請求の範囲を補正するものであり、補正後の請求項1に対応する補正前の請求項は請求項1であって、それぞれの記載は次のとおりである。

(補正前請求項1)一部を印刷面ページ、手書きページにして複数枚の台紙を重ね綴じ、または産院や病院の紹介記事ページのあとに複数枚の台紙を横開き形または縦開き形にて重ね綴じしてなるアルバム帳において、該アルバム帳を構成する各台紙上に位置決め枠を画設するとともに、該各台紙上に重ね合わせされる表紙フィルムの前記位置決め枠内を無色透明の透視部とし、枠外の四周を額縁面とし、且つ内面の全面を糊付面にして内端を台紙に貼付けるとともに該糊付面に剥離紙を当て付け、該各台紙上の位置決め枠内に写真など保存したい資料を載せて剥離紙を内端から引き剥がしながら表紙フィルムを台紙上に接着することにより、写真など保存したい資料を外部の人手を煩わさずに、額縁面に囲まれて透視されるように表面接着により被覆した手造りのアルバム帳を作成することを特徴とする手造りアルバム。

(補正後請求項1)産院や病院の紹介記事を含む印刷面ページと手書きページと複数枚の台紙を横開き形または縦開き形にて重ね綴じしてなるアルバム帳において、該アルバム帳を構成する各台紙上に位置決め枠を画設するとともに、該各台紙上に重ね合わせされる表紙フィルムの前記位置決め枠内を無色透明の透視部とし、枠外の四周を額縁面とし、且つ該表紙フィルムの内面に接着時に空気を排出する糊不着細面を多設する糊付面にして該糊付面に剥離紙を当て付け、該各台紙上の位置決め枠内に写真など保存したい資料を載せて剥離紙を内端から引き剥がしながら表紙フィルムを台紙上に接着することにより、写真など保存したい資料を外部の人手を煩わさずに、額縁面に囲まれて透視されるように空気を排出して接着し被覆するようにしたことを特徴とする手造りアルバム。

2.補正目的
要するに当該補正は、(1)補正前請求項1で「一部を印刷面ページ、手書きページにして複数枚の台紙を重ね綴じ、または産院や病院の紹介記事ページのあとに複数枚の台紙を横開き形または縦開き形にて重ね綴じしてなるアルバム帳」と記載されていたものを、補正後請求項1で「産院や病院の紹介記事を含む印刷面ページと手書きページと複数枚の台紙を横開き形または縦開き形にて重ね綴じしてなるアルバム帳」と補正した点と、(2)補正前請求項1で、表紙フィルムの「内面の全面を糊付面にして・・・表紙フィルムを台紙上に接着することにより、写真など保存したい資料を・・・表面接着により被覆した」、と記載されていたものを、補正後請求項1で、「該表紙フィルムの内面に接着時に空気を排出する糊不着細面を多設する糊付面にして・・・表紙フィルムを台紙上に接着することにより、写真など保存したい資料を・・・空気を排出して接着し被覆するようにした」と補正した点である。当該補正の目的が、請求項削除及び、誤記の訂正に該当しないことは明らかである。また、原査定の拒絶理由は進歩性欠如に係る拒絶理由のみであるので、当該補正の目的が明りょうでない記載の釈明に該当するものともいえない。
当該補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するか検討する。
(1)の点は、補正前請求項1では、「一部を印刷面ページ、手書きページにして複数枚の台紙を重ね綴じ」してなるアルバム帳と、「産院や病院の紹介記事ページのあとに複数枚の台紙を横開き形または縦開き形にて重ね綴じしてなるアルバム帳」とが、択一的記載の要素であったものを、補正後請求項1で、その択一的記載の要素の一部を削除して、「印刷面ページと手書きページと複数枚の台紙を横開き形または縦開き形にて重ね綴じしてなるアルバム帳」のみに限定し、そのアルバム帳が、「産院や病院の紹介記事を含む」ことを限定しているので、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としているものと解される。
(2)の点は、補正前請求項1に記載の「糊付面」が、「接着時に空気を排出する糊不着面を多設」したものであることを限定した補正であり、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としているものと解される。
よって、本件補正の目的は、特許法第17条の2第4項第2号に規定された、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものと認める。

3.補正後請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)の独立特許要件の判断

A.引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前である平成10年1月23日に頒布された登録実用新案第3045013号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

(ア)「表シート及び裏シートよりも1回り小さくカットされた写真が前記表シートと前記裏シートとの間に挟み込まれて接着されるためのフォトカードであって、
前記表シートは透明シートから構成されており、前記表シートには前記写真の周辺のカットラインを覆い隠す枠部が施されており、
前記裏シートは前記表シートと同一の大きさ及び形状をなし、前記裏シートの表面には接着層が全面に亘って設けられており、前記裏シートの表面のうち前記表シートの縁部が接着するための縁部を除いた部分には剥離シートが剥離可能の接着されており、
前記表シートの裏面の縁部が前記裏シートの表面の縁部に接着されていることを特徴とするフォトカード。」(【請求項1】)

(イ)「本考案は、写真、絵葉書等の絵画、イラスト、グラフィック、プリント等々(本明細書においては、ただ単に写真と称する)を携帯に便利となすためにカード化するフォトカードに係り、特に写真の保護に優れ、また写真のセットが簡便であるフォトカードに関するものである。」(段落【0001】)

(ウ)「この表シート1は、多少のフレキシブル性を有すると共にある程度の剛性を有する透明な合成樹脂製の板(シート)から構成されている。」(段落【0009】)

(エ)「この裏シート2は、上述の表シート1と同一の大きさ及び形状をなす。また、この裏シート2は、フレキシブル性を有する不透明な合成樹脂製若しくは紙製のシートから構成されている。この裏シート2の表面には接着層20が全面に亘って設けられている。」(段落【0010】)

(オ)「次に、図5乃至図8に示すように、本考案のフォトカードの表裏を引っ繰り返して裏シート2の裏面側を上にし、表シート1から裏シート2を開く。このとき、表シート1の裏面と裏シート2の表面の接着層20との間には剥離シート3が介装されているので、上述の表シート1から裏シート2を簡単に開くことができる。また、表シート1の裏面の一短辺側の縁部12と裏シート2の表面の一短辺側の縁部22とは接着層20により接着されているので、表シート1と裏シート2とは容易には分離しない。
それから、図9及び図10に示すように、裏シート2の接着像20から剥離シート3を剥離する。この例では、表シート1及び裏シート2の接着部分12及び22側の辺から剥離シート3を剥離しているが、その他の辺から剥離シート3を剥離しても良い。
そして、一旦、表シート1及び開いた状態のままの裏シート2及び写真4の表裏を引っ繰り返して、表シート1の表面から目視しながら、写真4の対象物に対して表シート1の枠部10の位置を決める。
位置が決まったところで、図11及び図12に示すように、表シート1の裏面及び写真4の裏面に裏シート2の表面を接着層20を介して接着する。」(段落【0015】?【0017】)

(カ)「上述の枠部10は、額縁形状をなしているが、その額縁形状以外に、円、楕円、長円、多角形の環状形状であっても良い。」(段落【0023】)

上記(ア)の【請求項1】の記載、上記(イ)の「写真、絵葉書等の絵画、イラスト、グラフィック、プリント等々」を「本明細書(引用例1)においては、ただ単に写真と称する」との記載及び「写真のセットが簡便であるフォトカードに関する」との記載、上記(ウ)の表シートについての記載、上記(エ)の裏シートについての記載、上記(オ)の写真の接着工程に関する記載、及び、上記(カ)の「枠部10は、額縁形状をなしている」との記載により、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「表シート及び裏シートよりも1回り小さくカットされた、写真、絵葉書等の絵画、イラスト、グラフィック、プリント等々(以下、ただ単に「写真」と称する)が前記表シートと前記裏シートとの間に挟み込まれて接着されるためのフォトカードであって、
前記表シートは多少のフレキシブル性を有すると共にある程度の剛性を有する透明な合成樹脂製の板(透明シート)から構成されており、前記表シートには前記写真の周辺のカットラインを覆い隠す額縁形状の枠部が施されており、
前記裏シートはフレキシブル性を有する不透明な合成樹脂製若しくは紙製のシートから構成されており、前記表シートと同一の大きさ及び形状をなし、前記裏シートの表面には接着層が全面に亘って設けられており、前記裏シートの表面のうち前記表シートの縁部が接着するための縁部を除いた部分には剥離シートが剥離可能に接着されており、
前記表シートの裏面の縁部が前記裏シートの表面の縁部に接着されており、
前記表シート及び前記裏シートの接着部分側の辺から前記剥離シートを剥離し、
前記表シートの表面から目視しながら、前記写真の対象物に対して前記表シートの枠部の位置を決め、
位置が決まったところで、前記表シートの裏面及び前記写真の裏面に前記裏シートの表面を前記接着層を介して接着する、写真のセットが簡便であるフォトカード。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前である平成12年11月24日に頒布された登録実用新案第3073373号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(キ)「透明で凸紋を具備しないか或いは立体又は平面凸紋を具え、一面に接着剤が塗布された自己接着機能を有する保護膜と、
透明ウインドウとパターン或いは画像が印刷され、一面が上記保護膜の接着剤塗布面との接着面とされ、もう一面に接着剤が塗布された印刷膜と、
半透明或いは透明とされて印刷膜の接着剤塗布面に剥離可能に接着され、剥離用の切り込みを具えたライナ層とを具え、
該保護膜、印刷膜及びライナ層が結合された特殊効果保護フィルムであって、消費者が購入後に自分で写真と該特殊効果保護フィルムを整合させ並びにライナ層の切り込みの側の小片を剥離し、特殊効果保護フィルムを写真と接着し、余分のライナ層を切除して特殊効果保護フィルムを緊密に写真に接合して特殊効果と保護機能を有する写真、グラビア写真、証明写真を形成できることを特徴とする、画像合成機能を有する写真の特殊効果保護フィルム。」(【請求項1】)

同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前である平成4年3月12日に発行された実願平2-72787号(実開平4-30977号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ク)「(イ)郵便ハガキ(1)と一辺(2)を接する郵便ハガキ大の紙(3)を設ける。
(ロ)ハガキ大の紙(3)に写真プリントが見えるよう覗き穴(4)を設ける。
(ハ)郵便ハガキ(1)と郵便ハガキ大の紙(3)を接着するための粘着面(5)を設ける。
(ニ)粘着面(5)が不必要な時に接着しないように難接着性の紙(6)を設ける。」(実用新案登録請求の範囲第1項)

(ケ)「郵便ハガキ(1)の裏面に写真プリント貼り付け位置(8)を示した実用新案登録請求の範囲第1項記載の写真郵送用ハガキ。」(実用新案登録請求の範囲第5項)

B.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「写真」は「写真、絵葉書等の絵画、イラスト、グラフィック、プリント等々」を包含しており、本願補正発明の「写真など保存したい資料」に相当する。
引用発明の「表シート」は、「多少のフレキシブル性を有すると共にある程度の剛性を有する透明な合成樹脂製の板(透明シート)から構成」されていることから、フィルム状のシート材であると解されるので、本願補正発明の「表紙フィルム」に相当する。
引用発明の「裏シート」は、「フレキシブル性を有する不透明な合成樹脂製若しくは紙製のシートから構成」されているものであり、写真の裏面に裏シートの表面を接着することから、本願補正発明の「台紙」に相当する。
引用発明の「枠部」は、表シートに施されたものであり、額縁形状で、写真の周辺のカットラインを覆い隠すことから、本願補正発明の「額縁面」に相当し、引用発明の表シートは透明シートであり、枠部内に写真の対象物を配置して表シートの表面から見えるようにするのであるから、表シートの枠部で囲まれた内部が、本願補正発明の「透視部」に相当する。
引用発明の「接着層」及び「剥離シート」は、その設けられた位置が、表紙フィルムと台紙の重ね合わせられる内面の、表紙フィルム側か台紙側かについて、本願補正発明と相違するものの、いずれも、写真を接着するための接着層であり、その接着層上に設けられた剥離シートであることにおいて、これらは、本願補正発明の「糊付面」及び「剥離紙」にそれぞれ相当する。
引用発明の「フォトカード」と、本願補正発明の「アルバム帳」を構成する、「台紙」と「表紙フィルム」の1組とは、写真などを見える状態で保持する、「写真などの保持部材」である点で、機能的に共通している。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>「台紙上に重ね合わされる表紙フィルムに無色透明の部分を透視部とし、透視部の四周を額縁面とし、表紙フィルムと台紙の重ね合わされる内面の一方の面を糊付面にして該糊付面に剥離紙を当て付け、台紙上に写真など保存したい資料を載せ、剥離紙を引き剥がし、表紙フィルムを台紙上に接着することにより、写真など保存したい資料を、額縁面に囲まれて透視されるように被覆した写真などの保持部材。」

<相違点1>本願補正発明が「写真などの保持部材」を構成する「台紙」を複数枚、「産院や病院の紹介記事を含む印刷面ページと手書きページ」とともに横開き形または縦開き形にて重ね綴じして「アルバム帳」としているのに対し、引用発明は、「写真などの保持部材」を上記のように綴じてアルバム帳としていない点。

<相違点2>本願補正発明では「糊付面」が表紙フィルムの内面に設けられているのに対して、引用発明では、台紙上に「糊付面」に相当する接着層が設けられている点。

<相違点3>本願補正発明の糊付面には、接着時に空気を排出する「糊不着細面」が多設されているのに対して、引用発明には、「糊不着細面」が設けられているか定かでない点。

<相違点4>本願補正発明では「該アルバム帳を構成する各台紙上に位置決め枠を画設するとともに、該各台紙上に重ね合わせされる表紙フィルムの前記位置決め枠内を無色透明の透視部とし、枠外の四周を額縁面とし・・・該各台紙上の位置決め枠内に写真など保存したい資料を載せて」と特定されているのに対して、引用発明では「位置決め枠」が設けられておらず、前記「位置決め枠」と「透視部」及び「額縁面」との位置関係などが上記のように特定されていない点。

<相違点5>本願補正発明では「該各台紙上の位置決め枠内に写真など保存したい資料を載せて剥離紙を内端から引き剥がしながら表紙フィルムを台紙上に接着する」と特定されているのに対して、引用発明では前記特定を有しない点。

<相違点6>本願補正発明では「写真など保存したい資料を外部の人手を煩わさずに、額縁面に囲まれて透視されるように空気を排出して接着し被覆するようにした」と特定されているのに対して、引用発明では前記特定を有しない点。

C.判断
<相違点1>について
本願出願時において、印刷面ページ、手書きページ、複数枚の台紙を横開き形または縦開き形にて重ね綴じしてなるアルバム帳は、周知である(例えば、実願平4-80259号(実開平6-36869号)のCD-ROM、実願平4-63914号(実開平6-21958号)のCD-ROM、実願昭53-175712号(実開昭55-90467号)のマイクロフィルム、実願昭53-96126号(実開昭55-13049号)のマイクロフィルムを参照)。
また、引用発明の「フォトカード」と本願補正発明のアルバム帳を構成する「台紙」とは、上記したように写真を見える状態で保持する「写真などの保持部材」である点で共通の機能を有するものであるから、引用発明の「フォトカード」は、その複数枚を重ね、端部を綴じ合わせれば、アルバムを構成することができるものである。
さらに、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のうち、印刷面ページに「産院や病院の紹介記事を含む」点は、印刷内容を例示し、産院や病院で用いることを例示しただけのことであり、単なる設計事項にすぎない。
よって、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用例1及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得えたことである。

<相違点2>について
引用例2には、上記(キ)にあるように、写真の表面を保護する特殊効果保護フィルム(本願補正発明の表紙フィルムに相当)の写真と接する面に接着剤が塗布されたものが記載されており、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、従来から知られている技術事項である。
本願明細書には、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を採用することによる作用効果について、記載されていないが、写真の表面(画像が形成されている面)を糊付けすると、表紙フィルムと写真との密着性は向上すると思われる。反面、写真の表面と糊付面とが一度接触すると、貼り直しが困難であり、写真表面の糊付面が、写真画像の見え方に影響したり、ゴミを写真表面に付着させやすくなるなどの不利な点も容易に考えられる。
本願補正発明とは逆に、引用発明のように台紙上に糊付面に相当する接着層を設けた場合は、写真の画像面を破損することなく、貼り直しをすることが比較的容易であるが、接着の際、写真表面全体に空気を取り残す可能性があると考えられる。
以上のように、台紙側に糊付面を設けることも、表紙フィルム側に糊付面を設けることも、引用例1あるいは引用例2に記載されているように、本願出願前公知の技術であり、それぞれが有利な点も不利な点も併せ持つものであることを踏まえれば、どちらを採用するかは、用途、要請に応じ、当業者が適宜に選択し得る設計事項であるといえる。
よって、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用例1及び引用例2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点3>について
本願出願前において、アルバムの台紙など写真を接着する接着剤面に、接着時に空気を排出するための接着剤のない部分を複数設けること(本願補正発明の糊不着細面に相当)は、周知技術であって(例えば、実願昭54-62778号(実開昭55-160870号)のマイクロフィルム、実願昭59-158939号(実開昭61-74476号)のマイクロフィルムを参照)、接着剤面にそのような構造を採用することは当業者にとって容易に想到し得ることである。
また、そのような構造を採用する際に、接着剤のない部分の幅や接着剤面との面積比率などどのように配分するかは、接着剤の接着力や、接着時の空気を排出する方向など各種条件を考慮して適宜に設定し得る程度のことにすぎない。
そして、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項は、それを本願補正発明の他の発明特定事項とともに採用することによって、格別の効果を奏するものとは認めらず、その効果は、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得る程度のものである。
よって、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用例1及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点4>について
上記(ク)及び(ケ)に記載されているように、引用例3には、覗き穴(4)から写真が見えるように「写真プリント貼り付け位置」を写真を接着する面に示すことが記載されており、当該「写真プリント貼り付け位置」が、相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項の「位置決め枠」に相当している。
また、引用発明と、引用例3に記載された発明とは、写真を見える状態で保持する保持部材である点で、共通の機能を有するものであり、引用発明に上記「写真プリント貼り付け位置」を採用することは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
そして、「写真プリント貼り付け位置」(「位置決め枠」に相当)を採用する際に、該「写真プリント貼り付け位置」により、額縁形状の枠部(「額縁面」に相当)と表シートの該枠内の透明部分(「透視部」に相当)との位置を特定し、該「写真プリント貼り付け位置」内に写真などを接着させるようにするか否かは、写真などにおける余分な部分をすべてカットし、カットした残りの部分を全部を見えるようにするか、写真などの周辺のカットラインを隠すために周辺部分の一部を残しておくかといった、レイアウト上の相違であって、このような点は、当業者にとって、適宜に選択実施し得る設計事項にすぎない。
よって、相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用例1及び引用例3に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点5>について
本願補正発明は「手造りアルバム」という物の発明であり、相違点5のような、表紙フィルムの台紙への接着方法に関する記載は、その方法的な記載により、「手造りアルバム」の構造など、物としての発明特定事項が特定される場合を除き、本願補正発明の発明特定事項であるとは認められず、その点、相違点5は、できあがった「手造りアルバム」の構造などを何ら特定するものではないので、物の発明である本願補正発明の発明特定事項であるとは認められない。
仮に、本願補正発明の発明特定事項であると認めたとしても、本願出願前において、剥離紙を備えた接着用のシートは様々な分野で知られており、そのような接着用シートを接着する際に、剥離紙を全て引き剥がしてから接着することも、剥離紙を引き剥がしながら接着することも、どちらも、分野を問わず普通に行われていることであり、相違点5は、当業者にとって適宜になし得る程度のことにすぎない。
なお、本願補正発明の「剥離紙を内端から引き剥がしながら表紙フィルムを台紙上に接着する」との記載は、本願補正発明において、「内端」がどの部分を示すのか特定されておらず、「表紙フィルム」と「台紙」が「該各台紙上に重ね合わせされる表紙フィルム」と記載されているだけで、両者が互いに端部で固定されているのものなのか否かが不明であり、固定されているとして、どの部分で固定されているのかが不明であるため、相違点5とした、本願補正発明の上記点は、引用発明との明確な比較ができないが、仮に「内端」がアルバム帳における綴じられている側であり、「台紙」と「表紙フィルム」とが、前記綴じられている側で固定されているもの(本願明細書に記載の実施例と同様のもの)と特定した場合、剥離紙を内端から引き剥がしながら接着することは、通常行われる自然な行為であって、引き剥がしながら表紙フィルムを台紙に接着することを採用する場合には、「内端」から引き剥がしながら接着するのは当然のことと解せる。
よって、相違点5は、それを本願補正発明の発明特定事項であると認めたとしても、引用例1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点6>について
本願補正発明の「写真など保存したい資料を外部の人手を煩わさずに、額縁面に囲まれて透視されるように空気を排出して接着し被覆するようにした」点は、作用や接着方法を記載したものであり、上記相違点5と同様に、物の発明である本願補正発明の発明特定事項であるとは認められない。
仮に、本願補正発明の発明特定事項であると認めたとしても、引用発明は写真のセットが簡便なフォトカードに係る発明であって、専門の業者に頼まなくとも自らが取り扱えるものであり、その写真の接着に際し、外部の人手を煩わさずに接着できることは、当業者でなくとも容易に想到し得ることである。
なお、「空気を排出して接着」する点は、相違点3で既に記載したとおりである。
よって、相違点6は、それを本願補正発明の発明特定事項であると認めたとしても、引用例1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2、3に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本件審判請求についての判断

1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、平成15年7月7日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された事項によって特定されるものと認めることができ、当該請求項1の記載は上記「第2[理由]1.補正内容」で(補正前請求項1)として記載したとおりである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1乃至3、及びその記載事項は、上記「第2[理由]3.A.引用例」に記載したとおりである。

3.対比、判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明の「印刷面ページと手書きページと複数枚の台紙を横開き形または縦開き形にて重ね綴じしてなるアルバム帳」との記載から「印刷面ページ」が「産院や病院の紹介記事を含む」との限定を省き、択一的記載の要素である「産院や病院の紹介記事ページのあとに複数枚の台紙を横開き形または縦開き形にて重ね綴じしてなるアルバム帳」との記載を付加し、「糊付面」が、「接着時に空気を排出する糊不着面を多設」したものであることを限定した点を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定事項を付加した、本願補正発明が、「第2[理由]3.C.判断」に記載したとおり、引用例1に記載された発明、引用例2、3に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1に記載された発明、引用例2、3に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2、3に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-02 
結審通知日 2006-11-14 
審決日 2006-11-29 
出願番号 特願2002-27325(P2002-27325)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B42D)
P 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 聡子  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 藤井 靖子
尾崎 俊彦
発明の名称 手造りアルバム  
代理人 永島 郁二  
代理人 永島 郁二  

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