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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1151033
審判番号 不服2003-1379  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-08-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-23 
確定日 2007-01-25 
事件の表示 特願2000-28962「タイプ練習機能を有するアミューズメントシステム、タイプ練習システムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年8月7日出願公開、特開2001-212369〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成12年2月1日の出願であって、平成13年9月13日付で拒絶理由が通知され、平成13年11月26日付で意見書並びに手続補正書が提出され、平成14年12月18日付で拒絶査定がなされ、平成15年1月23日に審判請求がなされ、平成15年2月19日付で手続補正がなされ、当審において平成18年8月1日付で平成15年2月19日付の手続補正の補正却下の決定がなされるとともに、拒絶理由が通知され、平成18年10月6日付で意見書並びに手続補正書が提出されたものである。

そして、平成18年10月6日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?23に係る発明は、その請求項1?23に記載されたとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明は、その請求項1において特定される下記のとおりのものである。
「タイプ入力のために操作される複数のキーを有し、前記複数のキーのそれぞれには各キーに固有の文字が一つずつ割り当てられ、各キーの操作状態に対応した信号を出力可能なキーボードと、入力された映像信号に対応する画像を表示可能な表示装置と、前記表示装置を通じて前記キーボードの操作を指示可能な制御装置と、を具備するアミューズメントシステムにおいて、ユーザーの指毎に操作を指示するための各指に対応付けられた複数の領域が視覚的に区分可能な態様で設けられた操作指示部を前記表示装置の画面上に表示させる手段と、各領域に対応付けられた指にて操作されるべきキーを指定するための指示標識であって、操作されるべきキーに割り当てられた文字を示す標識を含んでいる指示標識を前記複数の領域のそれぞれに表示させる手段と、前記指示標識と所定の基準標識とを所定の方向に相対的にスクロールさせ、該指示標識と前記基準標識との位置関係に基づいて、各指示標識にて指定されたキーの操作時期を指示する手段と、を前記制御装置が備えていることを特徴とするアミューズメントシステム。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例とその記載事項
(1)引用例1について
当審の拒絶の理由に引用した特開平11-15588号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

・記載事項1
「【発明の属する技術分野】本発明は、キー入力練習方法、キー入力練習システム、及びキー入力練習の為に表示装置の表示を制御するプログラムを記録した記録媒体に関する。」(段落【0001】)

・記載事項2
「【従来の技術】パーソナルコンピュータやワードプロセッサ(以下、単に、コンピュータと略称することもある。)におけるキー入力を練習する為、キー入力練習用のソフトウェアが市販されている。そして、初心者は、このキー入力練習用ソフトウェアに従って、キー入力の練習を行っている。すなわち、表示装置(ディスプレイ)、入力装置(キーボード)、及び制御装置などを有するコンピュータにおいて、キー入力の練習は次のようにして行われている。先ず、コンピュータのスイッチがオンになると、ディスプレイにはキーボードのキー配列と同じ配列で全てのキーが表示される。そして、ランダムに選ばれたキーを点滅ランプあるいは特定色で指示し、この指示されたキーに対応して練習者がキーボードのキーを押すと、次のキーが点滅ランプあるいは特定色で指示されるようになっている。」(段落【0002】)

・記載事項3
「インストール後、ゲーム開始(キー入力練習開始)により、CPU3はハードディスク4の画像データファイル4bから左手の小指、薬指、中指、及び人指し指を認識させる指認識用の文字(及び/又は、記号、図形)、例えば「小指」、「薬指」、「中指」、及び「人指し指」の文字の画像データと、右手の小指、薬指、中指、及び人指し指を認識させる指認識用の文字(及び/又は、記号、図形)、例えば「小指」、「薬指」、「中指」、及び「人指し指」の文字の画像データとを読み出す(Step100)。そして、各画像データに基づいてゲームプログラムで指定されたディスプレイ1の画面上の座標位置に文字を表示する(Step101)。すなわち、ディスプレイ1の画面上に、図5に示す如く、左手用の「小指」、「薬指」、「中指」、及び「人指し指」の文字を左側から中側に順に並んで表示し、かつ、右手用の「小指」、「薬指」、「中指」、及び「人指し指」の文字を右側から中側に順に並んで表示する。」(段落【0037】)

・記載事項4
「次に、CPU3は、ハードディスク4に格納されている画像データファイルから人間グラフィックデータを読み出す(Step102)。更に、「A」キーに該当する人間グラフィックの基準座標を表示管理テーブルから検索する(Step103)。そして、検索された基準座標によって決まるディスプレイ1の画面上の位置に人間グラフィックを表示させる(Step104)。」(段落【0038】)

・記載事項5
「ここで、表示管理テーブル及び基準座標について説明する。表示管理テーブルとは、人間グラフィック等の表示位置を管理するテーブルである。そして、この表示管理テーブルは、人間グラフィックの表示位置と前記人間グラフィックに対応するキーとが関連付けられているものである。例えば、図4の如く、キー「1,Q,A,Z」のキーの組の人間グラフィックの表示位置は基準座標(x1,y1)、キー「2,W,S,X」のキーの組の人間グラフィックの表示位置は基準座標(x2,y2)に対応付けられて管理されている。従って、Ste104では、「A」キーに対応する表示位置は基準座標(x1,y1)であるので、基準座標を(x1,y1)とする位置に読み出された人間グラフィックのデータに基づいて人間グラフィックを表示する。又、この表示管理テーブルには各文字に対しても基準座標が設けられており、この文字の基準座標は後述する文字を表示する場合に用いられる。尚、ここで基準座標とは、画面上のどこの位置を基準として人間グラフィック等を表示させるかを示す座標であり、本実施例では人間グラフィック等の所定の一点が基準座標で示される画面位置に来るように人間グラフィック等を表示させるようにした。」(段落【0039】)

・記載事項6
「続いて、CPU3は人間グラフィックの表示レイヤーと対応して、表示した人間グラフィックに対応するキーの文字レイヤー、すなわち「1」の文字が人間グラフィックの頭の位置、「Q」の文字が人間グラフィックの胸の位置、「A」の文字が人間グラフィックの腹の位置、「Z」の文字が人間グラフィックの足の位置に配置された文字レイヤーを作成する(Step105)。尚、この文字レイヤーに表示される文字は、上述した表示管理テーブルによって決定される。そして、練習で押させようとするキーのみが見えるように表示する(Step106)。ここでは、練習で押させようとするキーが「A」であるので、人間グラフックの腹の位置に「A」のみが見えるように表示される(図6参照)。尚、各文字の人間グラフィックにおける表示位置は、キーボードにおける列位置に対応している。」(段落【0040】)

・記載事項7
「同一の場合には、ハードディスク4の音声データファイル4cから音声データを読み出し、押したキーが正しい旨の正解可聴音をスピーカ9から出力する(Step109)。そして、図5に示される如く、該人間グラフィック(ターゲット)及び「A」の文字をディスプレイ1の画面上から消去する(Step110)。(段落【0042】)

以上の記載事項1?7および図1?7から総合的に勘案すると、引用例1には、下記の発明が記載されている。

「タイプ入力のために操作される複数のキーを有し、複数のキーのそれぞれには各キーに固有の文字が一つずつ割り当てられ、各キーの操作状態に対応した信号を出力可能なキーボードと、入力された映像信号に対応する画像を表示可能なディスプレイと、ディスプレイを通じてキーボードの操作を指示可能なCPUと、を具備するキー入力練習システムにおいて、練習者の指毎に操作を指示するための各指に対応付けられた人間グラフィックをディスプレイの画面上に表示させる手段と、指にて操作されるべきキーを指定するための標的となる上下方向に長手の図形である人間グラフィックであって、操作されるべきキーに割り当てられたAを示す標識を含んでいる人間グラフィックを表示させる手段と、をCPUが備えているキー入力練習システム。」(以下、「引用例1に記載された発明」という。)

(2)引用例2について
当審の拒絶の理由に引用した特開平8-305356号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

・記載事項8
「【産業上の利用分野】本発明は、電子楽器の教習用として、またはゲーム機として使用することができる音楽的アミューズメントシステムに関する。」(段落【0001】)

・記載事項9
「同図において、本実施例の音楽的アミューズメントシステムは、音高情報を入力するための鍵盤1と、各種情報を入力するためのパネル操作子2と、システム全体の制御を司るCPU3と、該CPU3が実行する制御プログラムや画像情報等を格納するROM4と、演奏中の演奏データやCPU3が実行する演算結果等を一時的に記憶するRAM5と、複数の演奏データを記憶する、例えばメモリカードやROMカートリッジ等の外部記憶装置6と、演奏情報や各種情報を表示するディスプレイ7と、外部からのMIDI(Musical Instrument Digital Interface)信号を入力したり、MIDI信号として外部に出力したりするためのMIDIインターフェース(I/F)8と、鍵盤1から入力された音高情報等の各種楽音を楽音信号に変換する音源9と、該音源9からの楽音信号を音響に変換する、例えばスピーカ等のサウンドシステム10とにより構成されている。そして、上記構成要素2?9は、アドレス・データバス11を介して相互に接続され、音源9にはサウンドシステム10が接続されている。(段落【0016】)

・記載事項10
「図2は、本実施例の音楽的アミューズメントシステムが行う動作の概要を説明するための図である。図中、(a)は、通常の楽譜を示し、(b)は、(a)の楽譜を時計方向に90°回転した楽譜を示し、(c)は、(b)の楽譜を直線L1を中心にして折り返した楽譜を示している。そして、本実施例の音楽的アミューズメントシステムは、(c)の楽譜に基づいて動作する。すなわち、曲の進行(テンポ)に従って(c)の楽譜(すなわち各音符)が図のスクロール方向にスクロールされ、演奏者は、楽譜の各音符が所定の位置に到達した時点で、当該音符に対応する鍵盤1を押鍵して、曲を演奏する。」(段落【0017】)

・記載事項11
「そして、リンゴ化された音符は、画面上、上から下にアニメーションスクロールされて移動してくる。演奏者は、直線L2で示す「現在の演奏位置」の直線にリンゴが差し掛かるタイミングを見計らって、弾くべき鍵盤1を押鍵すると、矢が発射されてリンゴに刺さり、矢の刺さったリンゴは画面上から消滅する。リンゴが消滅すると得点が加算される一方、演奏者が弾くべきタイミングをはずすと、矢はリンゴに刺さらずにリンゴは消滅せず、表示画面の最後までスクロールされて行く。同様にして、タイミングを見計らって押鍵している鍵を離鍵すると、得点が加算される。」(段落【0021】)

・記載事項12
「この処理は、後述するようにCPU3によってなされるので、曲本来のタイミングで鍵盤1を弾いたときのみ、すなわちCPU3が処理できる最小時間で正確に弾いたときのみ、リンゴに矢が刺さるようにすると、上級者でもリンゴに矢が刺さらないことなる。このため、押鍵タイミングの範囲を発音許可範囲a1とし、離鍵タイミングの範囲を消音許可範囲a2として、鍵盤1を弾くタイミングにある程度余裕を持たせている。したがって、この範囲a1,a2が直線L2に差し掛かっているときに、演奏者は対応する鍵盤1を押鍵すればよい。」(段落【0022】)

・記載事項13
「なお、リンゴに矢が刺さったときに、その音符の音を鳴らすようにしてもよいし、鳴らさないようにしてもよい。また、演奏者のレベルに応じて音を鳴らすか否かを切り換えてもよい。音を鳴らさないようにした場合には、演奏する曲と無関係な曲をBGMとして流すようにしてもよい。例えば、クラシックのピアノ曲の譜面に基づいてアニメーションスクロールが行われている場合に、BGMはロックミュージックでもよい。ただし、テンポは、アニメーションスクロールを行っている曲と一致させた方がよい。テンポによってスクロール速度が変わり、シューティングゲームとしての演奏の難しさが変わるため、BGMもテンポによって変更する方が望ましいからである。」(段落【0023】)

・記載事項14
「また、発音許可範囲および消音許可範囲にそれぞれレベルを設け、イベントが正規のタイミングにより近いときには、得点をより多く加算するようにしてもよい。」(段落【0057】)

・記載事項15
「次に、獲得した得点とその難易度での合格ラインおよび不合格ラインとを比較する得点判断を行い(ステップS46)、この判断結果に応じて次のステージでの難易度(テンポ)を変更し(ステップS47)、所定の得点以上か否かを判別する(ステップS48)。」(段落【0061】)

・記載事項16
「このように本機能を付加することで、難易度に応じて最適な曲の練習(またはゲーム)を行うことができ、継続して練習をする場合に、演奏者を飽きさせないようにすることができる。」(段落【0063】)

以上の記載事項8?16および図1?9から総合的に勘案すると、引用例2には、下記の発明が記載されている。

「入力のために操作される複数の各鍵盤を有し、複数の各鍵盤のそれぞれには各鍵盤にキャラクタ化された音符が一つずつ割り当てられ、各鍵盤の操作状態に対応した信号を出力可能な鍵盤と、入力された映像信号に対応する画像を表示可能なディスプレイと、ディスプレイを通じて鍵盤の操作を指示可能なCPUと、を具備する音楽的アミューズメントシステムにおいて、演奏者の指毎に押鍵を指示するための各指に対応付けられ、かつ視覚的に区分可能な態様で設けられた複数の領域と、各指に対応付けられた複数の領域が視覚的に区分可能な態様で設けられた操作指示部をディスプレイの画面上に表示させる手段と、各領域に対応付けられた指にて押鍵されるべき各鍵盤を指定するためのキャラクタ化された音符であって、押鍵されるべき各鍵盤に割り当てられた音符を示すキャラクタを含んでいるキャラクタ化された音符を複数の領域のそれぞれに表示させる手段と、キャラクタ化された音符と直線L2とを所定の方向に相対的にスクロールさせ、キャラクタ化された音符と直線L2との位置関係に基づいて、各キャラクタ化された音符にて指定された各鍵盤の押鍵時期を指示する手段と、複数の領域はディスプレイの画面の上下方向に向かって上下方向に互いに平行に延びており、直線L2の表示位置がディスプレイの画面の下端部に固定され、キャラクタ化された音符をその直線L2に向かって上から下にスクロールする手段とをCPUが備えている音楽的アミューズメントシステム。」(以下、「引用例2に記載された発明」という。)

(3)引用例3について
当審の拒絶の理由に引用した特開平11-151380号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

・記載事項17
「【発明の属する技術分野】本発明は、音楽に合わせて演出操作を楽しむゲーム機およびそれに用いて好適な演出操作指示システムに関する。」(段落【0001】)

・記載事項18
「図9は、ゲームのプレイ中に、画面描画制御装置51を介してモニタ6に表示されるゲーム画面を示すものである。このゲーム画面の中央には主表示部60が設けられ、その主表示部60の上方にはグルーヴゲージ表示部61が、下方には一対のスコア表示部62A,62Bが設けられる。主表示部60には、ゲームの雰囲気を盛り上げるためのビデオその他が表示される。例えば、ゲーム機1にて演奏される音楽に合わせたダンスシーンが表示される。」(段落【0089】)

・記載事項19
「グルーヴゲージ表示部61には、ゲージ枠61aと、プレイの優劣に応じてゲージ枠61aの左端を基準に伸縮するゲージバー(図中のハッチング部)61bとが表示される。スコア表示部62Aには演出操作部12Aの演出操作に対応したゲームのスコア(点数)が表示され、スコア表示部62Bには演出操作部12Bの演出操作に対応したゲームのスコアが表示される。」(段落【0090】)

・記載事項20
「主表示部60の左右には、演出操作の時期をプレイヤーに指示するためのインジケータ65A,65Bが表示される。各インジケータ65A,65Bの内容は同一であり、これらを区別する必要のないときはインジケータ65と表記する。インジケータ65には、上下方向に延びる5本の鍵盤トラック66A,66B,66C,66Dおよび66Eと、1本のターンテーブルトラック67とが設けられている。鍵盤トラック66A?66Eはそれぞれ鍵盤キー15A?15Eの操作時期を個別に示すために設けられ、ターンテーブルトラック67はスライドディスク23の操作時期を示すために設けられている。」(段落【0091】)

・記載事項21
「鍵盤トラック66A?66Eには鍵盤キー15A?15Eにそれぞれ対応したアイコン68…が表示され、ターンテーブルトラック67にはスライドディスク23に対応したアイコン69が表示される。これらのアイコン68,69は演奏の進行に伴って鍵盤トラック66A?66Eまたはトラック67を矢印Vで示したように下方に移動する(トラック66Bに表示された想像線参照)。」(段落【0092】)

・記載事項22
「そして、アイコン68,69が各トラック66A?66E,67の下端に設定された演出操作位置PPに達したとき、そのトラック66A?66Eまたは67に対応する鍵盤キー15A?15Eまたはスライドディスク23の操作時期が到来する。演出操作位置PPには、鍵盤キー15A?15Eをそれぞれ模した鍵盤状アイコン70A?70Eと、ターンテーブル入力装置14のスライドディスク23を模したターンテーブル状アイコン71とがトラック66A?66Eおよび67に対応させて表示される。(段落【0093】)

・記載事項23
「図10では左端の鍵盤トラック66Aに表示されたアイコン68が演出操作位置PPに達しており、この時点を基準としてアイコン68がトラック66Aの下方に消え去るまで鍵盤キー15Aを操作することがプレイヤーに指示される。アイコン68,69の長さL1,L2は鍵盤キー15またはスライドディスク23の操作継続時間に応じて伸縮され、それにより、プレイヤーに対して操作開始時刻のみならず操作継続時間までも指示することができる。」(段落【0094】)

以上の記載事項17?23および図9、図10によれば、以下の発明が引用例3に記載されている。
「基準標識である演出操作位置PPに向かって指示標識であるアイコンを相対的に矢印Vが示す下方向にスクロールするとともに、各演出操作位置PPにおいて指定された鍵盤状アイコン70A?Eの操作時期を指示する手段を有することにより、操作者に操作すべき左右の手が操作する鍵盤の操作時期を指示することができる音楽アミューズメントシステム」(以下、「引用例3に記載された発明」という。)

3.対比・検討
(1)本願発明と引用例1に記載された発明との対比
引用例1に記載された発明の「キーボード」は、本願発明の「キーボード」、に相当し、以下同様に、「ディスプレイ」は「表示装置」、「CPU」は「制御装置」、「キー入力練習システム」は「アミューズメントシステム」、「練習者」は「ユーザー」、「人間グラフィック」は「指示標識」、「A」は「文字」にそれぞれ相当している。
そして、引用例1に記載された発明は以下の事項が実質的に具備しているといえる。

・実質的具備事項1
引用例1の記載事項3の「・・・すなわち、ディスプレイ1の画面上に、図5に示す如く、左手用の「小指」、「薬指」、「中指」、及び「人指し指」の文字を左側から中側に順に並んで表示し、かつ、右手用の「小指」、「薬指」、「中指」、及び「人指し指」の文字を右側から中側に順に並んで表示する。」なる記載、及び図5?7に基づけば、ディスプレイの画面上の下端部に左手用、右手用に分けて指の文字画像が並んで表示され、かつ、操作すべき指に対応する領域に指の文字画像とともに入力する文字(A)を示した標的としての人間グラフィックが表示されていることから、引用例1に記載された発明の人間グラフィックを表示する部分をディスプレイの画面上に表示させることができる操作指示部と有しているということができ、かつ、そのような機能を有する手段を有していると解される。
そして、上記3.対比・検討(1)の柱書きのとおり、引用例1に記載された発明の「ディスプレイ」、「練習者」、「A]は、本願発明の「表示装置」、「ユーザー」「文字」にそれぞれ相当している。
そうすると、引用例1に記載された発明は、「ユーザーの指毎に操作を指示するための各指に対応づけられた複数の領域が視覚的に区分可能な態様で設けられた操作指示部を表示装置の画面上に表示させる手段」なる構成を実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項2
実質的具備事項1で示した同じ理由により、ディスプレイの画面上の下端部に左手用、右手用に分けて指の文字画像が並んで表示され、かつ、操作すべき指に対応する領域に指の文字画像とともに入力する文字(A)を示した標的としての人間グラフィックが表示されている。
そして、上記3.対比・検討(1)の柱書きのとおり、引用例1に記載された発明の「標的としての人間グラフィック」、「A]は、本願発明の「指示標識」、「文字」にそれぞれ相当している。
そうすると、引用例1に記載された発明は、「各領域に対応づけられた指にて操作されるべきキーを指定するための指示標識であって、操作されるべきキーに割り当てられた文字を示す標識を含んでいる指示標識を領域に表示させる手段」を実質的に具備しているということができる。

そこで、本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、
「タイプ入力のために操作される複数のキーを有し、複数のキーのそれぞれには各キーに固有の文字が一つずつ割り当てられ、各キーの操作状態に対応した信号を出力可能なキーボードと、入力された映像信号に対応する画像を表示可能な表示装置と、表示装置を通じてキーボードの操作を指示可能な制御装置と、を具備するシステムにおいて、ユーザーの指毎に操作を指示するための各指に対応づけられた複数の領域が視覚的に区分可能な態様で設けられた操作指示部を表示装置の画面上に表示させる手段と、各領域に対応づけられた指にて操作されるべきキーを指定するための指示標識であって、操作されるべきキーに割り当てられた文字を示す標識を含んでいる指示標識を複数の領域に表示させる手段と、を制御装置が備えているシステム。」の点で一致するとともに、以下の点で相違している。

・相違点1
本願発明がアミューズメントシステムであるのに対して、引用例1に記載された発明はキー練習システムである点。

・相違点2
ユーザーの指毎に操作を指示するための各指に対応づけられた複数の領域における指示標識の表示が、本願発明においては、それぞれの領域で行うに対して、引用例1に記載された発明においては、1つの領域のみで行われている点。

・相違点3
本願発明が、指示標識と所定の基準標識とを所定の方向に相対的にスクロールさせ、指示標識と基準標識との位置関係に基づいて、各指示標識にて指定されたキーの操作時期を指示する手段を有しているのに対して、引用例1に記載された発明は、そのような手段を有していない点。

(2)相違点についての検討
<相違点1について>
引用例2の記載事項11の「そして、リンゴ化された音符は、画面上、上から下にアニメーションスクロールされて移動してくる。演奏者は、直線L2で示す「現在の演奏位置」の直線にリンゴが差し掛かるタイミングを見計らって、弾くべき鍵盤1を押鍵すると、矢が発射されてリンゴに刺さり、矢の刺さったリンゴは画面上から消滅する。リンゴが消滅すると得点が加算される一方、演奏者が弾くべきタイミングをはずすと、矢はリンゴに刺さらずにリンゴは消滅せず、表示画面の最後までスクロールされて行く。同様にして、タイミングを見計らって押鍵している鍵を離鍵すると、得点が加算される。」及び図3に基づけば、リンゴ化された音符が、直線L2上に4つ差し掛かっており、その音符と鍵盤はそれぞれ対応していることは明らかである。
また、特開平10-69215号公報、特開平11-344977号公報、特開平7-261750号公報および特開平7-334073号公報等に示されるように、手形や指形の表示手段を用いて、左右の手の指にて操作されるべきキーを指示する指示標識を設けて運指練習をすることは、キーの練習システムにおいて周知技術(以下、「周知技術A」という。)にすぎない。
さらに、引用例2の記載事項16の「・・・難易度に応じて最適な曲の練習(またはゲーム)を行うことができ、・・・」なる記載および引用例3に記載された発明のキー練習システムを音楽アミューズメントシステムとして用いることができる旨の記載に基づけば、キーの練習システムと音楽アミューズメントシステムは相互に代替性があると認識されていること、および基準標識に向かって指示標識を相対的に下方向にスクロールしつつ、各基準標識において指示されたキーの操作時期を示す手段を設けることは、ゲーム技術分野において周知技術にすぎない(以下、「周知技術B」という。さらに、必要であれば、上記で示した特開平10-69215号公報に加えて、特開平11-313979号公報および特開2000-14931号公報等を参照されたい)。
そして、キーの練習システムと音楽アミューズメントシステムは相互に代替性があると認識されていることは上記の周知技術Bに示したように周知であるから、鍵盤を表示して、その鍵盤の操作時期を操作者に示す点で関連するキーの練習システムである引用例1に記載された発明、音楽アミューズメントシステムである引用例2に記載された発明、上記周知技術Aおよび上記周知技術Bを、相互に技術利用することに格別困難性はないと解される。
そうすると、キーの練習システムである引用例1に記載された発明を、音楽アミューズメントシステムである引用例2に記載された発明を参酌して、音楽アミューズメントシステムとすること、すなわち、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が引用例1に記載された発明および引用例2に記載された発明に基づき容易に想到し得る程度のことということができる。

<相違点2について>
上記相違点1において示したように、引用例2に記載された発明のリンゴ化された音符は、直線L2上に4つ差し掛かっており、その音符と鍵盤はそれぞれ対応していることは明らかであり、手形や指形の表示手段を用いて、左右の手の指にて操作されるべきキーを指示する指示標識を設けて運指練習をすることは、キーの練習システムにおいて周知技術Aにすぎない。
さらに、同じく上記相違点1において示したように、キーの練習システムと音楽アミューズメントシステムは相互に代替性があると認識されていること、および基準標識に向かって指示標識を相対的に下方向にスクロールしつつ、各基準標識において指示されたキーの操作時期を示す手段を設けることは、ゲーム技術分野において周知技術Bにすぎないのであるから、鍵盤を表示して、その鍵盤の操作時期を操作者に示す点で関連するキーの練習システムである引用例1に記載された発明、音楽アミューズメントシステムである引用例2に記載された発明、上記周知技術Aおよび上記周知技術Bを、相互に技術利用することに格別困難性はないと解される。
そうすると、上記周知技術Aおよび上記周知技術Bを参酌しつつ、キーの練習システムである引用例1に記載された発明の1つの領域にユーザーの指毎に操作を指示するための各指に対応づけられた複数の領域における指示標識の表示するものに替えて、音楽アミューズメントシステムである引用例2に記載された発明の複数の領域にユーザーの指毎に操作を指示するための各指に対応づけられた複数の領域における指示標識の表示するものを採用すること、すなわち、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が引用例1に記載された発明および引用例2に記載された発明および周知技術A並びに周知技術Bに基づき容易に想到し得る程度のことということができる。

<相違点3について>
上記相違点2において示したように、引用例2に記載された発明は、リンゴ化された音符は直線L2に向かって上から下に相対的にスクロールさせていることは明らかであるから、指示標識に相当するリンゴ化された音符と所定の基準標識に相当する直線L2とを相対的にスクロールさせているものということができ、かつ、リンゴ化された音符が直線L2上に4つ差し掛かると、押鍵することが示されていることから、指示標識と基準標識との位置関係に基づいて、各指示標識にて指定されたキーの操作時期を指示しているということができ、またそのような機能を実現し得る手段を有しているということができる。
そして、キーの練習システムと音楽アミューズメントシステムは相互に代替性があると認識されていること、および基準標識に向かって指示標識を相対的に下方向にスクロールしつつ、各基準標識において指示されたキーの操作時期を示す手段を設けることは上記周知技術Bにすぎないから、鍵盤を表示して、その鍵盤の操作時期を操作者に示す点で関連する技術である引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明および上記周知技術Bを、相互に技術利用することに格別困難性はないと解される。
そうすると、上記周知技術Bを参酌しつつ、キーの練習システムである引用例1に記載された発明に、音楽アミューズメントシステムである引用例2に記載された発明の指示標識に相当するリンゴ化された音符と所定の基準標識に相当する直線L2とを相対的にスクロールさせ、かつ、リンゴ化された音符が直線L2上に4つ差し掛かると押鍵することを採用することにより、指示標識と所定の基準標識とを相対的にスクロールさせ、また、指示標識と基準標識との位置関係に基づいて、各指示標識にて指定されたキーの操作時期を指示する手段を設けるようにすること、すなわち、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が引用例1に記載された発明および引用例2に記載された発明並びに周知技術Bに基づき、容易に想到し得る程度のことということができる。

4.作用効果・判断
本願発明によって奏する作用効果も、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明および周知技術A並びに周知技術Bに基づいて、普通に予測できる範囲のものであって、格別なものがあるとは認められないから、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明および周知技術A並びに周知技術Bに基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のように、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-26 
結審通知日 2006-10-31 
審決日 2006-12-11 
出願番号 特願2000-28962(P2000-28962)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 宮本 昭彦
林 晴男
発明の名称 タイプ練習機能を有するアミューズメントシステム、タイプ練習システムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体  
代理人 星野 哲郎  
代理人 中村 聡延  
代理人 山本 晃司  

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