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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C |
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管理番号 | 1151053 |
審判番号 | 不服2004-8910 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-12-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-04-30 |
確定日 | 2007-01-25 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第133844号「光学機器の表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月 8日出願公開、特開平10-325718〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成9年5月23日の出願であって、平成16年3月26日付け(発送日;同月30日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成16年4月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月27日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年5月27日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年5月27日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は、補正前の特許請求の範囲、 「【請求項1】 焦点調節レンズ群を有する対物光学系によって形成された像を観察する観察光学系を備えた光学機器において、 前記焦点調節レンズ群と観察光学系との間に設けられた分岐光学系; この分岐光学系において反射によって分割された分割光束を受光して焦点状態を検出する焦点検出手段; この焦点検出手段が検出した焦点状態に基づいて前記焦点調節レンズ群を合焦位置まで移動させるレンズ駆動手段; 前記焦点調節レンズ群の位置を検出するレンズ位置検出手段; 前記レンズ位置検出手段が検出した前記焦点調節レンズ群の位置に基づいて物体距離を求める距離検出手段;および、 前記焦点調節レンズ群が合焦位置まで移動したときに前記距離検出手段が検出した物体距離を表示する表示手段;を備えたことを特徴とする光学機器の表示装置。 【請求項2】 前記表示手段は、前記距離情報を前記観察光学系の視野内に表示する視野内表示手段であることを特徴とする請求項1に記載の光学機器の表示装置。 【請求項3】 前記光学機器は、物体側から順に、固定の対物レンズ群、可動の焦点調節レンズ群、正立光学系および接眼レンズ群を備えた望遠鏡であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学機器の表示装置。 【請求項4】 前記光学機器は、物体側から順に、固定の対物レンズ群、可動の焦点調節レンズ群、水平補償光学系、焦点板および接眼レンズ群を備えた、オートレベルの視準望遠鏡であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学機器の表示装置。 【請求項5】 前記表示手段は、表示部を前記焦点板の周辺部に備えていることを特徴とする請求項4に記載の光学機器の表示装置。 【請求項6】 前記分岐光学系は、前記水平補償光学系と焦点板との間に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の光学機器の表示装置。 【請求項7】 前記視野内表示手段は、前記距離情報を、前記分岐光学系に向けて射出し、前記分岐光学系により反射されて前記焦点板の周辺領域に投影する投影光学系を備えていることを特徴とする請求項6に記載の光学機器の表示装置。 【請求項8】 前記光学機器は、前記焦点調節レンズ群を、前記レンズ駆動手段に替わって手動で移動させるマニュアル焦点調節操作手段を備えていることを特徴とする請求項1または6に記載の光学機器の表示装置。 【請求項9】 前記距離検出手段は、前記焦点調節レンズ群を移動させるなんらかの操作を受けたときに前記物体距離を検出して前記表示手段によって表示することを特徴とする請求項8に記載の光学機器の表示装置。 【請求項10】 前記距離検出手段は、前記レンズ位置検出手段が検出した、前記焦点調節レンズ群の基準位置からの移動量に基づいて、前記物体距離を演算することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の光学機器の表示装置。 【請求項11】 前記焦点調節レンズ群の位置と前記物体距離との関係をテーブルデータとして記憶した記憶手段を備え、前記距離検出手段は、前記テーブルデータから、前記レンズ位置検出手段が検出した前記焦点調節レンズ群の位置に対応した前記物体距離を選択することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の光学機器の表示装置。 【請求項12】 前記焦点検出手段およびレンズ駆動手段を作動させるAF開始スイッチ手段を備え、前記距離検出手段は、前記AF開始スイッチ手段が操作され、前記レンズ駆動手段が停止してから作動し、検出した物体距離を前記表示手段に所定時間表示することを特徴とする請求項1、2、5または7のいずれか一項に記載の光学機器の表示装置。 【請求項13】 焦点調節レンズ群を有する対物光学系によって所定の焦点面に形成された像を観察する観察光学系を備えた光学機器において、 前記対物光学系と観察光学系との間に配置された分岐光学系; この分岐光学系によって分割された分割光束を受光して前記焦点面と等価位置におけるデフォーカス量を検出する焦点検出手段; この焦点検出手段によって検出されたデフォーカス量に基づいてそのデフォーカス量が小さくなる位置に前記焦点調節レンズ群を駆動するレンズ駆動手段; 前記焦点調節レンズ群の位置を検出するレンズ位置検出手段; 前記レンズ位置検出手段が検出したレンズ位置および前記焦点検出手段が検出したデフォーカス量に基づいて物体距離を検出する物体距離検出手段;および、 この物体距離検出手段が検出した物体距離を表示する表示手段;を備えたことを特徴とする光学機器の表示装置。 【請求項14】 前記表示手段は、前記距離情報を前記観察光学系の視野内に表示する視野内表示手段であることを特徴とする請求項13に記載の光学機器の表示装置。 【請求項15】 前記レンズ駆動手段は、前記焦点検出手段が検出したデフォーカス量の絶対値が所定値よりも小さくなったときに前記焦点調節レンズ群の移動を停止させることを特徴とする請求項13に記載の光学機器の表示装置。 【請求項16】 前記物体距離検出手段は、前記レンズ駆動手段が前記焦点調節レンズ群の移動を停止した後に、前記焦点検出手段を介して複数回デフォーカス量を演算し、平均化して物体距離を求めることを特徴とする請求項15に記載の光学機器の表示装置。 【請求項17】 前記表示手段は、前記距離情報の外に、少なくとも合焦/非合焦、デフォーカス方向およびデフォーカス量情報の一つを表示すること、を特徴とする請求項13に記載の光学機器の表示装置。 【請求項18】 前記光学機器は、物体側から順に、固定の対物レンズ群、可動の焦点調節レンズ群、正立光学系、分岐光学系および接眼レンズ群を備えた望遠鏡であることを特徴とする請求項13から17の何れか一項に記載の光学機器の表示装置。 【請求項19】 前記光学機器は、物体側から順に、固定の対物レンズ群、可動の焦点調節レンズ群、水平補償・正立光学系、分岐光学系、焦点板および接眼レンズ群を備えた、オートレベルの視準望遠鏡であることを特徴とする請求項13から18のいずれか一項に記載の光学機器の表示装置。 【請求項20】 前記視野内表示手段は、前記焦点板の周辺部に表示部を備えていることを特徴とする請求項19に記載の光学機器の表示装置。 【請求項21】 前記視野内表示手段は、前記距離情報を、前記分岐光学系に向けて射出し、前記分岐光学系により反射されて前記焦点板の周辺領域に投影する投影光学系を備えていることを特徴とする請求項19に記載の光学機器の表示装置。」 を、 「【請求項1】 焦点調節レンズ群を有する対物光学系によって形成された像を観察する観察光学系を備えた光学機器において、 前記焦点調節レンズ群と観察光学系との間に設けられた分岐光学系; 前記対物光学系から入射し、前記分岐光学系において反射によって分割された分割光束を受光して焦点状態を検出する焦点検出手段; この焦点検出手段が検出した焦点状態に基づいて前記焦点調節レンズ群を合焦位置まで移動させるレンズ駆動手段; 前記焦点調節レンズ群の位置を検出するレンズ位置検出手段; 前記レンズ位置検出手段が検出した前記焦点調節レンズ群の位置に基づいて物体距離を求める距離検出手段;および、 前記焦点調節レンズ群が合焦位置まで移動したときに前記距離検出手段が検出した前記物体距離情報を、前記観察光学系外から前記分岐光学系に向けて射出し、前記分岐光学系により反射させて前記観察光学系の視野内周辺部に投影する投影光学系を有する視野内表示手段を備えたことを特徴とする光学機器の表示装置。 【請求項2】 前記観察光学系の視野内周辺部に表示部を備え、前記投影光学系は前記物体距離情報をこの表示部に投影する請求項1記載の光学機器の表示装置。 【請求項3】 前記光学機器は、物体側から順に、固定の対物レンズ群、可動の焦点調節レンズ群、正立光学系、前記分岐光学系、焦点板および接眼レンズ群を備えた望遠鏡であって、前記視野内表示手段は、前記焦点板の周辺部に表示部を備え、前記投影光学系は、この表示部に距離情報を投影することを特徴とする請求項1または2に記載の光学機器の表示装置。 【請求項4】 前記光学機器は、物体側から順に、固定の対物レンズ群、可動の焦点調節レンズ群、水平補償・正立光学系、前記分岐光学系、焦点板および接眼レンズ群を備えたオートレベルの視準望遠鏡であって、視野内表示手段は前記焦点板の周辺部に表示部を備え、前記投影光学系は、この表示部に距離情報を投影することを特徴とする請求項1または2に記載の光学機器の表示装置。 【請求項5】 前記光学機器は、前記焦点調節レンズ群を、前記レンズ駆動手段に替わって手動で移動させるマニュアル焦点調節操作手段を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学機器の表示装置。 【請求項6】 前記距離検出手段は、前記焦点調節レンズ群を移動させる操作を受けて前記焦点検出レンズ群が移動した後に前記物体距離を検出して前記表示手段によって表示することを特徴とする請求項5に記載の光学機器の表示装置。 【請求項7】 前記距離検出手段は、前記レンズ位置検出手段が検出した、前記焦点調節レンズ群の基準位置からの移動量に基づいて、前記物体距離を演算することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光学機器の表示装置。 【請求項8】 前記焦点調節レンズ群の位置と前記物体距離との関係をテーブルデータとして記憶した記憶手段を備え、前記距離検出手段は、前記テーブルデータから、前記レンズ位置検出手段が検出した前記焦点調節レンズ群の位置に対応した前記物体距離を選択することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の光学機器の表示装置。 【請求項9】 前記焦点検出手段およびレンズ駆動手段を作動させるAF開始スイッチ手段を備え、前記距離検出手段は、前記AF開始スイッチ手段が操作され、前記レンズ駆動手段が停止してから作動し、検出した物体距離を前記表示手段が所定時間表示することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の光学機器の表示装置。 【請求項10】 焦点調節レンズ群を有する対物光学系によって所定の焦点面に形成された像を観察する観察光学系を備えた光学機器において、 前記対物光学系と観察光学系との間に配置された分岐光学系; 前記対物光学系から入射し、前記分岐光学系によって分割された分割光束を受光して前記焦点面と等価位置におけるデフォーカス量を検出する焦点検出手段; この焦点検出手段によって検出されたデフォーカス量に基づいてそのデフォーカス量が小さくなる位置に前記焦点調節レンズ群を駆動するレンズ駆動手段; 前記焦点調節レンズ群の位置を検出するレンズ位置検出手段; 前記レンズ位置検出手段が検出したレンズ位置および前記焦点検出手段が検出したデフォーカス量に基づいて物体距離を検出する物体距離検出手段;および、 この物体距離検出手段が検出した前記物体距離情報を、前記観察光学系外から前記分岐光学系に向けて射出し、前記分岐光学系により反射させて前記観察光学系の視野内周辺部に投影する投影光学系を有する視野内表示手段を備えたことを特徴とする光学機器の表示装置。 【請求項11】 前記観察光学系の視野内周辺部に表示部を備え、前記投影光学系は前記物体距離情報をこの表示部に投影する請求項10記載の光学機器の表示装置。 【請求項12】 前記レンズ駆動手段は、前記焦点検出手段が検出したデフォーカス量の絶対値が所定値よりも小さくなったときに前記焦点調節レンズ群の移動を停止させることを特徴とする請求項11に記載の光学機器の表示装置。 【請求項13】 前記物体距離検出手段は、前記レンズ駆動手段が前記焦点調節レンズ群の移動を停止した後に、前記焦点検出手段を介して複数回得たデフォーカス量を演算し、平均化して物体距離を求めることを特徴とする請求項10に記載の光学機器の表示装置。 【請求項14】 前記表示手段は、前記距離情報の外に、少なくとも合焦/非合焦、デフォーカス方向およびデフォーカス量情報の一つを表示すること、を特徴とする請求項10または11に記載の光学機器の表示装置。 【請求項15】 前記光学機器は、物体側から順に、固定の対物レンズ群、可動の焦点調節レンズ群、正立光学系、前記分岐光学系、焦点板および接眼レンズ群を備えた望遠鏡であって、前記視野内表示手段は、前記焦点板の周辺部に表示部を備え、前記投影光学系は、この表示部に距離情報を投影することを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載の光学機器の表示装置。 【請求項16】 前記光学機器は、物体側から順に、固定の対物レンズ群、可動の焦点調節レンズ群、水平補償・正立光学系、前記分岐光学系、焦点板および接眼レンズ群を備えたオートレベルの視準望遠鏡であって、前記視野内表示手段は、前記焦点板の周辺部に表示部を備え、前記投影光学系は、この表示部に距離情報を投影することを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載の光学機器の表示装置。」 と補正する内容を含むものである。 なお、アンダーラインは、補正箇所を示すために請求人が付したものである。 (2)補正の目的の適合性 上記補正により、請求項数は、補正前の21から補正後は16となり、また、上記補正は、補正前の請求項1及び13に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示手段」について、「物体距離情報を、観察光学系外から分岐光学系に向けて射出し、前記分岐光学系により反射させて前記観察光学系の視野内周辺部に投影する投影光学系を有する視野内表示手段を備えた」との限定を付加して補正後の請求項1及び10とし、補正後の請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2ないし9、補正後の請求項10を直接的又は間接的に引用する請求項11乃至16についても、同様の限定が付加されているものである。したがって、上記手続補正は、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、特許法第17条の2第4項第1号及び第2号の規定に該当するものである。 (3)独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。 (3-1)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-278124号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 1a.「【請求項1】測定対象の像を視準用面上に結像させる視準用望遠鏡を有する測量機において、 前記視準用望遠鏡の光軸方向に進退することにより前記測定対象の結像位置を移動させるための合焦用レンズと、 前記合焦用レンズの位置を検出する位置検出手段と、 前記位置検出手段によって検出された前記合焦用レンズの位置に応じて、前記視準用面上に結像している物体の物体距離を特定する物体距離特定手段と、 前記物体距離特定手段によって特定された物体距離を表示する物体距離表示手段と を備えたことを特徴とする測量機。 ・・・ 【請求項4】前記物体距離表示手段は前記視準用望遠鏡内に設けられていることを特徴とする請求項1記載の測量機。 【請求項5】前記物体距離表示手段は前記視準用面上に前記物体距離を表示することを特徴とする請求項4記載の測量機。 【請求項6】前記視準用望遠鏡は、接眼レンズ及びこの接眼レンズと前記視準用面との間に配置されたハーフミラーを有するとともに、 前記物体距離表示手段は前記ハーフミラーに関して前記視準用面と光学的等価な位置に配置されていることを特徴とする請求項4記載の測量機。 【請求項7】前記位置検出手段は前記合焦用レンズの位置に対応するデジタル信号を出力するエンコーダであることを特徴とする請求項1記載の測量機。」(【特許請求の範囲】) 1b.「【0010】 【実施例】以下、図面に基づいて、本発明の実施例を説明する。各実施例の詳細な説明を行う前に、本発明の各構成要件の概念を説明する。 【0011】(測量機)本発明は、測距儀や測角器等、測点を正確に特定する必要がある全ての測量機に適用することができる。測距儀としては、光波測距儀に適用することができる。また、測角器としては、電子セオドライト等のセオドライトやトランシットに適用することができる。さらに、本発明は、光波測距儀と電子セオドライトの機能を組み合わせたトータルステーションに適用することも可能である。 ・・・ 【0013】(視準用面)視準用面は、視準線等の視準用の枠が形成されている平面である。この視準用の枠は、視準用望遠鏡の光軸の位置を示すように形成されていることが望ましい。この視準用枠は、透明板の平滑面又はスリガラス等の乱反射面に描かれていても良いし、空間中に支持されていても良い。 【0014】(合焦用レンズ)合焦用レンズは単レンズであっても良いし、一体に移動する複合レンズであっても良い。合焦レンズは、視準用望遠鏡の対物レンズ自体であっても良いし、他の固定レンズとともに視準用望遠鏡の対物レンズを構成しても良い。 【0015】(位置検出手段)位置検出手段は合焦用レンズの位置に対応するデジタル信号を出力するエンコーダとして構成することができる(請求項7に対応)。このエンコーダは、アブソリュート方式でも良いし、インクリメンタル方式でも良い。また、合焦レンズの位置に応じて抵抗値や静電容量を可変するボリュームであっても良い。 【0016】(物体距離特定手段)物体距離特定手段は、合焦用レンズの位置に一定演算を施して物体距離を算出するように構成されても良いし、合焦用レンズの位置と物体距離とを一覧したテーブルを備えてこのテーブルから合焦用レンズの位置に対応する物体距離を読み出すように構成されても良い。 【0017】(物体距離表示手段)・・・ 【0018】一方、物体距離表示手段は、前記視準望遠鏡内に設けられても良い(請求項4に対応)。この場合、物体距離表示手段は、前記視準用面上に前記物体距離を表示するように構成されても良い(請求項5に対応)。このようにすれば、視準枠と物体距離とを同一視度で見ることができる。また、視準用望遠鏡に、接眼レンズとこの接眼レンズと前記視準用合焦板との間に配置されたハーフミラーとを内蔵した場合には、物体距離表示手段を、前記ハーフミラーに関して前記視準用面と光学的等価な位置に配置することができる(請求項6に対応)。このように構成しても、視準枠と物体距離とを同一視度で見ることができる。」 1c.「【0044】ところで、液晶表示板14上にその実像が結像する物体の位置から対物光学系10までの間の距離(物体距離)と、合焦レンズ12の位置とは、一義的に定まる関係にある。従って、合焦レンズ12の位置を検出すれば、直ちに、物体距離を知ることができる。そのため、カムピン28と固定環部1bとの間には、合焦レンズ12の位置を検出するためのアブソリュート方式の物体距離エンコーダが内蔵されている。この位置検出手段としての物体距離エンコーダの構成を、図4を参照して説明する。 【0045】図4は、図3のIV-IV線に沿った横断面の一部を示す断面図である。なお、この図4では、便宜上、カム環30,固定環部1d,及びレンズ枠27を、板状に示している。この図4から明らかなように、直進溝29の片側壁は、固定環部1dの外表面の直下において大きく側方(周方向)に切り欠かれており、エンコーダ収容空間29aを形成している。このエンコーダ収容空間29aの内面には、その長軸を光軸lと平行にし,且つその短軸をカムピン28と平行にした状態で板状のエンコーダ板36が固着されている。このエンコーダ板36は透明部材からなり、その表面には、縦4ビットの2進値パターンが黒色塗料を用いて描かれている。この2進値パターンは、透明部が“1”に対応するとともに黒色が“0”に対応している。 【0046】 一方、カムピン28には、エンコーダ板36を両面側から挟む形状の読取りユニット35が固着されている。この読取りユニット35のカムピン側には発光ダイオード35a及びコンデンサレンズ35bが取付られており、エンコーダ板36を挟んだ反対側にはホトトランジスタ35cが取付られている。従って、コンデンサレンズ35bとホトトランジスタ35cとの間に2進値パターンの透明部が位置するとホトトランジスタ35cがonし、黒色部が位置するとホトトランジスタ35cがoffする。この発光ダイオード35a,コンデンサレンズ35b,及びホトトランジスタ35cの組み合わせは、2進値パターンが4ビットであるのに合わせて、4段重ねになっている。従って、コンデンサレンズ35bとホトトランジスタ35cとの間に位置するエンコーダ板36上の4ビット2進値パターンを、ホトトランジスタ35cのon/offとして読み取ることができるのである。 【0047】なお、4ビットで表せる数値は16通りであるので、エンコーダ36上における読取りユニット35の移動可能範囲が16等分され、各々に異なった値が割り振られている。具体的には、図3に示すように、接眼側(即ち、無限遠側)から物体側(即ち、最短撮影距離側)に向かって値が大きくなるように、対応する値が割り振られている。 【0048】以上の構成により、合焦つまみ30bを操作して合焦レンズ12を任意の位置に移動させると、この合焦レンズ12の位置に対応した物体距離を、4ビットの2進値として読み取ることができる。」 1d.「【0064】物体距離特定手段としての制御演算部55は、さらに、物体距離エンコーダ58によって入力された4ビット2進値に基づいて、合焦レンズ12の位置に応じた物体距離を読み出す。図3において説明したように、物体距離エンコーダ58は、合焦レンズ12の位置を4ビット(0?15)の精度で検出する。制御演算部55は、ある2進値に対応する範囲の中点に合焦レンズ12が位置したときの物体距離を、この2進値に対応する物体距離として予めテーブルに格納してある。そして、物体距離エンコーダ58から何れかの2進値が入力されてきた時に、この2進値に対応する物体距離をテーブルから読み出すのである。 【0065】物体距離表示手段としての表示部8は、制御演算部55によって算出された測距値,測角値,各種データ処理プログラムによる処理結果,及び、その他各種情報を表示する装置である。また、表示部8は、図1に示すように、制御演算部55によって読み出された物体距離を表示する。 【0066】物体距離表示手段としての望遠鏡内表示部56は、制御演算部55によって読み出された物体距離を液晶表示板14の液晶表示部に表示させるドライバである。電源部57は、トータルステーション全体に電源を供給する電源部分である。 【0067】<物体距離表示処理>図6は、図5の制御演算部55において物体距離表示のために実行される物体距離表示処理の内容を示すフローチャートである。 【0068】このフローチャートは、トータルステーションに電源を投入することによりスタートする。そして、最初のS01においてエンコーダの絶対位置を取得する。即ち、物体距離エンコーダ58から、合焦レンズ12の位置に対応する4ビット2進値を読み込む。 【0069】 次のS02では、読み込んだ合焦レンズの絶対位置,即ち物体距離エンコーダ58から読み込んだ4ビット2進値から、これに対応する物体距離を計算する。即ち、この4ビット2進値に対応する物体距離をテーブルから読み出す。 【0070】次のS03では、計算した物体距離を表示部8及び液晶表示板14(望遠鏡内表示部56)上に表示する。その後、処理をS01に戻して、この表示制御処理を繰り返す。」 1e.「【0079】 【実施例2】以下、図面に基づいて本発明の第2実施例を説明する。本実施例は、第1実施例に比較して、物体距離エンコーダ58がインクリメンタル方式である点,及び、液晶表示板が焦点板から独立して設けられている点のみが相違し、その他の構成を同一とする。以下では、この相違点についてのみ説明し、その他の構成の説明を省略する。 ・・・ 【0086】図8に戻り、接眼固定筒31の内周面には、ホルダ63aを介して焦点板63が固定されている。この焦点板63の接眼側面には、図7に示す十字線を含む視準線,及び「距離」,「m」なる文字のみが描かれている。この十字線は、視準光軸lに合致している。 【0087】この焦点板63と接眼光学系15との間には、図10に示すように、視準光軸lに対して45°傾けたハーフミラー62が固定されている。このハーフミラー62の接眼側面に関して焦点板63の接眼側面と光学的に等価な位置には、物体距離表示手段としての液晶表示板64が取り付けられている。この液晶表示板64は、図5の望遠鏡内表示部56によって駆動され、制御演算部55によって読み出された物体距離を表示する。その結果、作業者が接眼光学系15を介して覗くと、図7に示すように、液晶表示板64によって表示された物体距離が焦点板63上の視準線や文字と重なって見えるのである。」 1f.図面の図7から、「物体距離」が視野内の周辺下部に表示されることがみてとれる。 (3-2)対比・判断 引用刊行物の(3-1)の「1a.」乃至「1f.」の記載から、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「測定対象の像を焦点板63上に結像させ、接眼光学系15により観察する視準用望遠鏡1を有する測量機において、 前記視準用望遠鏡1の光軸方向に進退することにより前記測定対象の結像位置を移動させるための合焦用レンズ12と、 前記合焦用レンズ12の位置を検出する位置検出手段58と、 前記位置検出手段58によって検出された前記合焦用レンズ12の位置に応じて、前記焦点面63上に結像している物体の物体距離を特定する物体距離特定手段55と、 前記物体距離特定手段55によって特定された物体距離を表示する物体距離表示手段64の表示内容を、前記接眼光学系15と前記焦点板63との間に配置されたハーフミラー62を介して、前記焦点板63の周辺下部に表示する構成 を備えていることを特徴とする測量機。」 そこで、本願補正発明(前者)と上記引用発明(後者)とを対比する。 ・後者の、「測定対象の像」、「焦点板63及び接眼光学系15」、「視準用望遠鏡1を有する測量機」は、それぞれ、前者の、「焦点調節レンズ群を有する対物光学系によって形成された像」、「観察光学系」、「光学機器」に相当する。 ・後者の、「合焦用レンズ12」、「位置検出手段58」、「物体距離特定手段55」は、それぞれ、前者の、「焦点調節レンズ群」、「レンズ位置検出手段」、「距離検出手段」に相当する。 ・後者の「物体距離特定手段55によって特定された物体距離を表示する物体距離表示手段64の表示内容を、接眼光学系15と焦点板63との間に配置されたハーフミラー62を介して、前記焦点板63の周辺下部に表示する構成」は、「物体距離表示手段64」の表示内容がハーフミラーを介して「焦点板63」に投影されるものと解されることから、前記相当関係も勘案すれば、前者の「焦点調節レンズ群が合焦位置まで移動したときに距離検出手段が検出した物体距離情報を、観察光学系外から分岐光学系に向けて射出し、前記分岐光学系により反射させて前記観察光学系の視野内周辺部に投影する投影光学系を有する視野内表示手段」と、「焦点調節レンズ群が合焦位置まで移動したときに距離検出手段が検出した物体距離情報を、前記観察光学系の視野内周辺部に投影する視野内表示手段」である点で共通する。 ・後者の「測量機」は、前者と上記相当・対応関係にある表示のための構成を備えているから、「表示装置」であるともいえる。 したがって、両者は、 「焦点調節レンズ群を有する対物光学系によって形成された像を観察する観察光学系を備えた光学機器において、 前記焦点調節レンズ群の位置を検出するレンズ位置検出手段; 前記レンズ位置検出手段が検出した前記焦点調節レンズ群の位置に基づいて物体距離を求める距離検出手段;および、 前記焦点調節レンズ群が合焦位置まで移動したときに距離検出手段が検出した物体距離情報を、前記観察光学系の視野内周辺部に投影する視野内表示手段を備えたことを特徴とする光学機器の表示装置。」 の点の構成で一致し、以下の各点で相違する。 [相違点1] 前者が、焦点調節レンズ群と観察光学系との間に設けられた分岐光学系、対物光学系から入射し、前記分岐光学系において反射によって分割された分割光束を受光して焦点状態を検出する焦点検出手段、この焦点検出手段が検出した焦点状態に基づいて前記焦点調節レンズ群を合焦位置まで移動させるレンズ駆動手段を備えているのに対し、後者には、この点の記載がない点。 [相違点2] 前者が、物体距離情報を、観察光学系外から分岐光学系に向けて射出し、前記分岐光学系により反射させて前記観察光学系の視野内周辺部に投影する投影光学系を有する視野内表示手段を備えているのに対し、後者は、物体距離表示手段64の表示する物体距離をハーフミラー62を介して焦点板63の周辺下部に投影して表示するものではあるものの、ハーフミラー62は合焦用レンズ12と焦点板63の間に設けられてはおらず、また、前者のような投影光学系により観察光学系外から分岐光学系に向けて射出する点の構成に相当する構成も備えていない点。 そこで、上記各相違点について検討する。 [相違点1]について 測量機において、測量者が焦点調節を行う代わりに自動焦点調節方式を採用すること、及び、自動焦点調節のための構成として、焦点調節レンズ群と観察光学系との間に設けられた分岐光学系、対物光学系から入射し、前記分岐光学系において反射によって分割された分割光束を受光して焦点状態を検出する焦点検出手段、この焦点検出手段が検出した焦点状態に基づいて前記焦点調節レンズ群を合焦位置まで移動させるレンズ駆動手段を備えることは周知である(例えば、特開昭63-252216号公報[5ページ左上欄16行?右上欄2行に「また上述の実施例においては、測量技士が水準儀3の接眼レンズ6cをのぞいて合焦状態とするようになっているが、・・・自動焦点方式にしてもよい。例えば、イメージセンサ9の像出力の微分レベルが最大となるようにサーボ動作する合焦レンズモータ及びそのサーボ回路を付加することができる。」との記載があり、図面の図1に水準儀の光学系が示されている。]、特開平4-93711号公報[1ページ右下欄12行?2ページ左上欄10行に「従来の測量機では、測量者が測量機の視準望遠鏡で視準する場合、常に合焦操作をすることが必要であるため、多点観測の時は、測量者の疲労のもとになっている。また・・・個人差による視準誤差や観測誤差が発生しやすい。本発明は従来のこのような課題を解決することをその目的とするものである。・・・上記の目的を達成するために・・・光軸方向にスライド可能に設けられた合焦レンズと焦点板との間にビームスプリッタを設けて視準光学系に至る光路を分岐する合焦調整用光学系を形成し、・・・合焦レンズ駆動ユニットを制御する制御部を設けた」との記載があり、図面の第1図に実施例が示されている。]、特開平8-233573号公報[【特許請求の範囲】に「【請求項1】物体側から順に、視準用対物レンズと;焦点調節レンズと;水平補償光学系と;焦点面と;この焦点面上の像を観察する接眼レンズと;を備え、上記焦点調節レンズは、視準物体距離に応じて該物体像を上記焦点面上に結像させるべく位置調節可能であるインナーフォーカスの望遠鏡において、上記対物レンズから焦点面に至る光路中に、該光路を分岐させる分岐光学素子を配置して分岐光学系を設け、この分岐光学系中に、上記焦点面との等価面と、この等価面における焦点状態を検出する焦点検出系とを設けたことを特徴とするインナーフォーカスの望遠鏡。【請求項2】請求項1において、さらに焦点検出系の出力により焦点調節レンズを駆動する駆動系が備えられているインナーフォーカスの望遠鏡。【請求項3】請求項1または2において、焦点検出系の出力により焦点調節レンズを駆動するオートフォーカスモードと、焦点検出系の出力によることなく手動で焦点調節レンズを駆動するマニュアルモードとの切替手段を備えているインナーフォーカスの望遠鏡。」との記載があり、図面の第1図にその概念図が示されている。]参照。)。 そうすると、測量機の分野において、手動による焦点調節に代えて自動焦点調節方式を採用すること、また、自動焦点調節のための構成として、上記のような分岐光学系、焦点検出手段及びレンズ駆動手段からなる構成が周知であることを勘案すれば、このような周知の構成を同様の技術分野に属する引用発明に付加して相違点1に係る構成とすることは、当業者が格別の推考力を要することとは認められない。 [相違点2]について 対物光学系と観察光学系との間に設けられた分岐光学系に向けて、表示情報を観察光学系外から射出し、分岐光学系により反射させて前記観察光学系の視野内周辺部に投影するための投影光学系を設けることは、カメラ等の表示光学系として周知の構成であり(例えば、特開昭59-83133号公報参照。)、このような周知の構成を引用発明に適用して相違点2に係る構成とすることは、当業者が格別の推考力を要することとは認められない。 そして、本願補正発明による効果も、引用刊行物の記載及び周知事項から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成16年5月27日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至21に係る発明は、平成15年12月5日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至21に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、「2.(1)」の補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。 4.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「2.(3-1)」に記載したとおりのものである。 5.対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、上記限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定を付したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3-2)」に記載したとおり、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-22 |
結審通知日 | 2006-11-28 |
審決日 | 2006-12-11 |
出願番号 | 特願平9-133844 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡田 卓弥、大和田 有軌 |
特許庁審判長 |
上田 忠 |
特許庁審判官 |
小川 浩史 下中 義之 |
発明の名称 | 光学機器の表示装置 |
代理人 | 平山 巌 |
代理人 | 三浦 邦夫 |