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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D05B |
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管理番号 | 1151085 |
審判番号 | 不服2005-10589 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2005-02-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-06-09 |
確定日 | 2007-01-25 |
事件の表示 | 特願2003-200567「刺繍・染色システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月17日出願公開、特開2005- 40192〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成15年7月23日(優先日、平成15年5月29日)の出願であって、その請求項1乃至9に係る発明は、平成17年1月11日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「制御装置と、前記制御装置の制御下にある刺繍機と、前記制御装置の制御下にあり、前記制御装置及び前記刺繍機とは別体をなし且つ前記刺繍機に対しては任意の位置に設置される染色装置とを備え、前記制御装置は選択された刺繍模様を生成する刺繍データに応じて、前記刺繍機をして、前記染色装置によるワークへの染色の前/後若しくは前記染色と並行して、前記ワークを刺繍せしめるようにしてなる、刺繍・染色システム。」 2.引用例の記載事項 原査定において引用された本願出願前に頒布された「特開平5-272046号公報」(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。 (a)「【請求項1】 縫い針(4a)を装着した針棒(4)を布地(9)に対し往復動させることにより所要の縫い目を形成するミシン機構と、前記布地(9)を展延状態で支持する刺繍枠(8)を、前記針棒(4)と直交する方向に移動させる枠駆動機構と、前記布地(9)に向けてインクを噴射するインクヘッド(10)を有するプリント装置とから構成したことを特徴とするプリント装置を備える刺繍機。」 (b)「【0014】 すなわち、各刺繍部分6a?6dの刺繍を行なうためには、ミシンの起動に先立って、上記柄に対応する刺繍データを刺繍機に備え付けのコンピュータに入力する。図7(a)は刺繍部分6aの拡大図で、そのステッチ状態を詳細に示したものである。ここでは、各ステッチを形成するのに必要な刺繍枠8の移動量を表わすX-Yデータの集合が、刺繍データとして用いられている。図7(a)および図6に示す符号S1は、刺繍部分6aの刺繍開始点を示すもので、このS1から刺繍が開始されると共に、最終的に該S1で刺繍が終了する。同様に図6に示すS2?S4は、刺繍部分6b?6dの夫々の刺繍開始点を示している。各刺繍部分6a?6dの刺繍データの集合が、図6に示す柄全体の刺繍データとなり、各刺繍開始点S1?S4は、図6に示す所定の基準点S0を基準に規定されている。」 (c)「【0015】 前記の如く刺繍データを入力した後、刺繍枠8を移動させて針棒4の縫い針4aに布地9の所望位置を合わせる。そしてミシンの起動を開始すると、刺繍枠8が移動することにより相対的に縫針4aがS0の位置からS1の位置に移動し、しかる後に刺繍が開始される。こうして刺繍部分6aの刺繍が終了すると、刺繍枠8が移動して相対的に縫針4aがS2に移り、刺繍部分6bの刺繍が行なわれる。以後、同様に刺繍部分6c,6dの刺繍が行なわれ、6dの刺繍が終了すると縫い針4aがS0に戻る。続いて刺繍枠8が図5に示すように、縫針4aとインクヘッド10のノズル10aとの距離Lだけ後方へオフセット移動することにより、インクヘッド10のノズル10aがS0の上方に合致する。すると、図5に示す如く、インクヘッド10が図示しない昇降装置により実線位置から想像線位置まで下降させられ、ノズル10aが布地9の直上に対向する。その後に、前述の刺繍時に用いた刺繍データに基づいて刺繍枠8が駆動されると共に、インクヘッド10のノズル10aよりインクが噴出され、図7(b)に示すように、各ステッチを形成している白糸にインクが順次噴き付けられる。」 (d)「【0016】 刺繍枠8の駆動には、前記刺繍データがそのまま用いられているため、各刺繍部分6a?6dは刺繍時と同一の順で色付けされ、ノズル10aから噴出されるインクの色は、予め設定された設定データに従い各刺繍部分6a?6d毎に切換えられる。上記の工程を経ることにより、各刺繍部分6a?6dは、あたかも最初から夫々異った色糸で刺繍されたかの外観を呈して仕上げられる。」 (e)「【0021】 プリント柄10aのプリントが終了すると、刺繍枠8が移動してインクヘッド10のノズル10aがS0点に戻る。その後、刺繍枠8が前記第1実施例と同様に、ノズル10aと縫針4aとの距離L(図5参照)だけ前方へ移動することにより、駆動位置にある針棒4の縫針4aがS0点に合致する。しかる後、その縫針4aが刺繍開始点S1に移動し、刺繍部分10bの刺繍工程に移るが、その“V",“S",“O"の夫々に対して予め選択設定された針棒4が各部毎に選択されることにより、“V",“S",“O"は夫々設定通りの色糸で刺繍される。前記一連の作用により、プリント柄10aと刺繍部分10bとは、これら相互の位置に齟齬を来すことがなく、データ通りのコンビネーション柄が好適に作成される。」 上記(a)乃至(e)より、引用例には、下記の点が記載されている。 「コンピュータと、前記コンピュータの制御下にある刺繍機と、前記コンピュータの制御下にあるプリント装置とを備え、前記コンピュータは選択された刺繍部分を生成する刺繍データに応じて、前記刺繍機をして、前記プリント装置による布地へのプリントの前/後に、前記布地を刺繍せしめるようにしてなる、プリント装置を備える刺繍機。」 3.対比・判断 本願発明と引用例記載の発明とを対比する。 ○後者の「コンピュータ」、「プリント装置」、「刺繍部分」、「布地」、「プリント装置を備える刺繍機」は、 前者の「制御装置」、「染色装置」、「刺繍模様」、「ワーク」、「刺繍・染色システム」のそれぞれに相当している。 ○後者の「プリント(染色)の前/後に」は、前者の「染色の前/後若しくは染色と並行して」に相当している。 上記より、両者は、 「制御装置と、前記制御装置の制御下にある刺繍機と、前記制御装置の制御下にある染色装置とを備え、前記制御装置は選択された刺繍模様を生成する刺繍データに応じて、前記刺繍機をして、前記染色装置によるワークへの染色の前/後若しくは前記染色と並行して、前記ワークを刺繍せしめるようにしてなる、刺繍・染色システム。」という点で一致し、以下の点で相違しているものと認める。 前者では、刺繍機と染色装置とが同じ制御装置の制御下にあるものにおいて、染色装置を「制御装置及び刺繍機とは別体をなし且つ刺繍機に対しては任意の位置に設置されるもの」にしているのに対して、 後者には、刺繍機と染色装置とが同じ制御装置の制御下にあるものの記載はあるものの、上記事項が記載されていない点。(以下、「相違点」という。) 上記相違点について検討する。 一般に、一方の装置と他方の装置とが同じ制御装置の制御下にあるものにおいて、他方の装置を「制御装置及び一方の装置とは別体をなすもの」にすること自体、本願出願前周知の事項(例えば、原査定において引用された特開平10-5464号公報の特に【請求項2】【請求項3】【請求項4】【0007】および【0026】、同特許第2899112号公報の特に第4頁第8欄第2から25行および【図1】参照)であると認められることから、 「一方の装置と他方の装置とが同じ制御装置の制御下にあるもの」という点で上記周知の事項と軌を一にする引用例記載の発明の「刺繍機と染色装置とが同じ制御装置の制御下にあるもの」においても、上記周知の事項と同様に、染色装置を「制御装置及び刺繍機とは別体をなすもの」にすることに格別の困難性があるとはいえない。 そして、上記のように染色装置を「別体をなすもの」にする以上、染色装置を刺繍機に対してどこに設置するか、更にいうと、「刺繍機に対しては任意の位置に設置されるもの」にするかは、当業者が適宜決定する設計事項であると認める。 したがって、本願発明は、引用例記載の発明および本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび したがって、本願発明は、引用例記載の発明および本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2乃至9に係る発明について、検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-24 |
結審通知日 | 2006-11-28 |
審決日 | 2006-12-13 |
出願番号 | 特願2003-200567(P2003-200567) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(D05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西山 真二 |
特許庁審判長 |
松縄 正登 |
特許庁審判官 |
西村 綾子 豊永 茂弘 |
発明の名称 | 刺繍・染色システム |