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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1151109 |
審判番号 | 不服2002-16105 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-02-20 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-08-22 |
確定日 | 2007-01-26 |
事件の表示 | 平成11年特許願第226599号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年2月20日出願公開、特開2001-46619〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年8月10日の出願であって、平成14年1月28日付けの拒絶理由通知に対し平成14年4月4日付けで手続補正がなされ、平成14年7月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年8月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年9月12日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成14年9月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年9月12日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)本件補正の内容 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「普通図柄始動手段(16)と、遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換可能な特別図柄始動手段(14)と、遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換可能な可変入賞手段(15)と、前記普通図柄始動手段(16)が遊技球を検出することを条件に、1個又は複数個の普通図柄が所定時間変動して停止する普通図柄表示手段(24)と、前記特別図柄始動手段(14)が遊技球を検出することを条件に、1個又は複数個の特別図柄が所定時間変動して停止する特別図柄表示手段(20)と、前記普通図柄表示手段(24)の変動後の停止図柄が所定図柄又は所定図柄の組み合わせとなることを条件に、前記特別図柄始動手段(14)を第2状態から第1状態に変換させて第1利益状態を発生させる第1利益状態発生手段(30)と、前記特別図柄表示手段(20)の変動後の停止図柄が特定図柄又は特定図柄の組み合わせとなることを条件に、前記可変入賞手段(15)を第2状態から第1状態に変換させて第2利益状態を発生させる第2利益状態発生手段(35)と、所定条件時に前記普通図柄表示手段(24)及び/又は前記特別図柄表示手段(20)の図柄変動時間を短縮させる変動時間短縮手段(36)とを備えた弾球遊技機において、前記変動時間短縮手段(36)は、電源投入時又は前回の第2利益状態の発生から今回の第2利益状態の発生までの前記特別図柄の図柄変動回数を前記短縮変動期間に代入する代入機能を備え、前記図柄変動回数の違いによって前記代入機能を禁止して前記変動時間の短縮を行わない場合と禁止しない場合とを有することを特徴とする弾球遊技機。」 上記補正は、平成14年4月4日付け手続補正書の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記代入機能を禁止する場合」を「前記代入機能を禁止して前記変動時間の短縮を行わない場合」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例に記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成11年3月16日に頒布された「特開平11-70217号公報」(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。 「図1はパチンコ機の正面を示したものであり、パチンコ機1の正面の中央よりやや上方には略円形の遊技部2が設けられている。また、図2はパチンコ機1の遊技部2を拡大して示したものであり、遊技部2の中央上部には、1枚の液晶板によって形成された特別図柄表示部3が設けられており、その下側に普通電動役物4が設けられている。普通電動役物4の両サイドには左ゲート5、右ゲート6がそれぞれ設けられており、さらに、普通電動役物4の下側には大入賞口7、電飾ランプ8等が配設されており、大入賞口7の下側には、普通図柄表示部9が設けられている。」(段落0009) 「また、パチンコ機1は、左ゲート5、あるいは右ゲート6を遊技球が通過した場合に普通図柄表示部4(「9」の誤記と認められる。)に表示された普通図柄が変動を開始するようになっており、変動後に停止表示された普通図柄が特定の図柄である場合には、通常は閉成した状態になっている普通電動役物4が一定時間開成するようになっている。…さらに、その普通電動役物4に遊技球が入賞した場合には、特別図柄表示部3に表示された左図柄10、右図柄11、中図柄12の各特別図柄が変動を開始するようになっている。そして、所定時間後に停止表示した各特別図柄が特定の組み合わせとなった場合には、遊技者にとって有利な「大当たり状態」が生起し、大入賞口7がきわめて高い確率で断続的に開成するように構成されている。なお、大入賞口7は「大当たり状態」以外では開成しないようになっており、また、閉成状態である場合には遊技球が入賞しないようになっている。」(段落0011) 「また、パチンコ機1においては、「大当たり状態」の終了後に、特別図柄が特定回数変動表示するまで普通図柄の変動時間が短縮される「変動短縮状態」が生起するようになっているが、パチンコ機1には、その普通図柄の変動時間を短縮する状態を奏する特別図柄の変動表示回数(以下、単に変動短縮回数という)を決定するカウンタであるD_COUも内蔵されている。」(段落0012) 「「大当たり状態」終了後の変動短縮回数を決定するカウンタであるD_COUは、電源投入時からの特別図柄の変動表示回数をカウントして、遊技者に報知するために特別図柄表示部3の一部に特別図柄の変動表示回数を表示するようになっている。なお、このD_COUは、「大当たり状態」の終了後からの特別図柄の変動表示回数をカウントするように切り替えることができるようになっている。」(段落0016) 「そして、「大当たり状態」が終了した場合には、「大当たり状態」が生起したときのD_COUの値(たとえば、その「大当たり状態」が生起するまでに特別図柄が200回変動した場合には「200」)を取り出し、「大当たり状態」終了後の変動短縮回数を決定する。図8に示すように「大当たり状態」が生起するまでの特別図柄の変動回数が50回以内であればその回の「大当たり状態」終了後の変動短縮回数を10回とし(すなわち、その「大当たり状態」終了後、特別図柄が10回変動・停止表示を繰り返す期間における普通図柄の変動時間を短縮する)、大当たりが生起するまでの特別図柄の変動回数の増加に伴って、その回の「大当たり状態」終了後の変動短縮回数を多く設定するようになっている。」(段落0026) 「また、「変動短縮状態」においては、普通図柄の変動時間ばかりでなく、特別図柄の変動時間も短縮される。」(段落0028) 図2から、引用例に記載されるパチンコ機の普通図柄表示部9は、変動する普通図柄が1個であると認められる。 図8には、「大当たり」生起までに要した特別図柄変動回数(D_COU値)の範囲に応じて、獲得する変動短縮回数を対応させたテーブルが記載されている。 また、引用例に記載されるパチンコ機は、その機能を実現するために、通電動役物4を閉成状態から開成状態に変換させる手段、大入賞口7を閉成状態から開成状態に変換させる手段、また、普通図柄表示部9及び特別図柄表示部3の図柄変動時間を短縮させる手段を備えることは明らかである。 前記摘示の記載及び図面によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「左ゲート5、右ゲート6と、開成状態と閉成状態とに変換可能な普通電動役物4と、開成状態と閉成状態とに変換可能な大入賞口7と、前記左ゲート5、右ゲート6を遊技球が通過した場合に、1個の普通図柄が変動を開始して変動後に停止表示する普通図柄表示部9と、普通電動役物4に遊技球が入賞した場合に、3個の特別図柄10、11、12が変動を開始して所定時間後に停止表示する特別図柄表示部3と、前記普通図柄表示部9の変動後の停止図柄が特定の図柄である場合には、前記普通電動役物4を閉成状態から開成状態に変換させる手段と、前記特別図柄表示部3の変動後の停止図柄が特定の組み合わせとなった場合には、前記大入賞口7を閉成状態から開成状態に変換させて遊技者に有利な「大当たり状態」を生起させる手段と、「大当たり状態」の終了後に前記普通図柄表示部9及び前記特別図柄表示部3の図柄変動時間を短縮させる手段とを備えたパチンコ機において、前記図柄変動時間を短縮させる手段は、電源投入時又は前回の「大当たり状態」の終了後からの特別図柄変動回数を取り出し、前記特別図柄変動回数の範囲に応じて、獲得する変動短縮回数を対応させたテーブルを用いて、その回の「大当たり状態」終了後の変動短縮回数を多く設定するように決定する機能を備えるパチンコ機。」 (3)対比 本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「左ゲート5、右ゲート6」は本願発明の「普通図柄始動手段」に相当し、以下同様に、「普通電動役物4」は「特別図柄始動手段」に、「大入賞口7」は「可変入賞手段」に、「図柄変動時間を短縮させる手段」は「図柄変動時間を短縮させる変動時間短縮手段」に、「パチンコ機」は「弾球遊技機」に相当する。 また、「開成状態」は遊技者に有利であり、「閉成状態」は、遊技者に不利であることが明らかであるから、引用発明の「開成状態と閉成状態」は、本願発明の「遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態」に相当し、引用発明の「開成状態」は、本願発明の「第1状態」に、同様に、「閉成状態」は、「第2状態」ということもできる。 ゲートを遊技球が通過した場合、又は、役物に遊技球が入賞した場合に遊技球を検出されることは明らかであるから、引用発明の「遊技球が通過した場合に」、又は、「遊技球が入賞した場合」は、本願発明の「遊技球を検出することを条件に」ということができる。 「1個」は、「1個又は複数個」に含まれる概念なので、引用発明の「1個の普通図柄が変動を開始し、変動後に停止表示する普通図柄表示部9」は本願発明の「1個又は複数個の普通図柄が所定時間変動して停止する普通図柄表示手段」ということができ、以下同様に、「3個の特別図柄10、11、12が所定時間変動して停止する特別図柄表示部3」は「1個又は複数個の特別図柄が所定時間変動して停止する特別図柄表示手段」と、「前記普通図柄表示部9及び前記特別図柄表示部3の図柄変動時間を短縮させる手段」は「前記普通図柄表示手段及び/又は前記特別図柄表示手段の図柄変動時間を短縮させる変動時間短縮手段」と、「変動後の停止図柄が特定の組み合わせとなった場合には、」は「変動後の停止図柄が所定図柄又は所定図柄の組み合わせとなることを条件に、」ということができる。 引用発明の「(前記普通電動役物4を閉成状態から開成状態に変換させる)手段」は、遊技者に有利な状態、すなわち、利益状態を発生させる手段であるから、本願発明の「(前記特別図柄始動手段を第2状態から第1状態に変換させて)第1利益状態を発生させる第1利益状態発生手段」ということができ、同様に、「(前記大入賞口7を閉成状態から開成状態に変換させて遊技者にとって有利な「大当たり状態」を生起させる)手段」は「(前記可変入賞手段を第2状態から第1状態に変換させて)第2利益状態を発生させる第2利益状態発生手段」ということができ、また、引用発明の「大当たり状態」は本願発明の「第2利益状態」ということもできる。 引用発明の「電源投入時又は前回の第2利益状態の終了後から」は、本願発明の「電源投入時又は前回の第2利益状態の発生から」に対して、「電源投入時」について一致するものであるから、本願発明の「電源投入時又は前回の第2利益状態の発生から」ということができる。 引用発明の「変動短縮回数」は、変動短縮された回数により、その回数に応じた期間が決まることから、本願発明の「変動短縮期間」ということができる。 そうすると両者は、「普通図柄始動手段と、遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換可能な特別図柄始動手段と、遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換可能な可変入賞手段と、前記普通図柄始動手段が遊技球を検出することを条件に、1個又は複数個の普通図柄が所定時間変動して停止する普通図柄表示手段と、前記特別図柄始動手段が遊技球を検出することを条件に、1個又は複数個の特別図柄が所定時間変動して停止する特別図柄表示手段と、前記普通図柄表示手段の変動後の停止図柄が所定図柄又は所定図柄の組み合わせとなることを条件に、前記特別図柄始動手段を第2状態から第1状態に変換させて第1利益状態を発生させる第1利益状態発生手段と、前記特別図柄表示手段の変動後の停止図柄が特定図柄又は特定図柄の組み合わせとなることを条件に、前記可変入賞手段を第2状態から第1状態に変換させて第2利益状態を発生させる第2利益状態発生手段と、所定条件時に前記普通図柄表示手段及び/又は前記特別図柄表示手段の図柄変動時間を短縮させる変動時間短縮手段とを備えた弾球遊技機において、前記変動時間短縮手段は、電源投入時又は前回の第2利益状態の発生から今回の第2利益状態の発生までの前記特別図柄の図柄変動回数を用いる機能を備えた弾球遊技機。」で一致し、以下の点で相違する。 相違点1;変動時間短縮手段について、本願発明は、「(電源投入時又は前回の第2利益状態の発生から今回の第2利益状態の発生までの前記特別図柄の図柄変動回数を)前記短縮変動期間に代入する代入機能を備え」るのに対して、引用発明は、(電源投入時又は前回の第2利益状態の発生から今回の第2利益状態の発生までの前記特別図柄の図柄変動回数を)取り出し、特別図柄変動回数の範囲に応じて、獲得する変動短縮期間を対応させたテーブルを用いて、その回の「大当たり状態」終了後の変動短縮期間を多く設定するように決定する機能を備える点。 相違点2;本願発明は、「前記図柄変動回数の違いによって前記代入機能を禁止して前記変動時間の短縮を行わない場合と禁止しない場合とを有する」のに対して、引用発明は、そのように構成されていない点。 (4)判断 相違点1について 弾球遊技機において、所定のカウント値から何らかの結果を得るために、所定のカウント値を何らかの結果に代入することと、所定のカウント値の範囲に応じて、何らかの結果を対応させたテーブルを用いることは、それぞれ慣用される手段であり、当業者によって必要に応じて適宜採用されている設計事項であるから、引用発明において、「…取り出し、…決定する」に際して、所定のカウント値を何らかの結果に代入する、すなわち、電源投入時又は前回の第2利益状態の発生から今回の第2利益状態の発生までの前記特別図柄の図柄変動回数を前記短縮変動期間に代入するように変更することは、当業者が容易に想到できることである。 相違点2について 図柄表示手段の図柄変動時間を短縮させる遊技内容を有する弾球遊技機において、図柄変動時間を短縮させない場合を有するように遊技内容を設定することは、周知の技術(下記周知例1乃至3参照)であるから、引用発明においても、図柄変動時間を短縮させない場合を有するように遊技内容を変更することは、当業者が適宜成し得る程度のことである。 ところで、弾球遊技機において、遊技者にとって不利な場合を設ける際に、何らかの回数の違いによって不利な場合を有するように設定することは、周知の技術(下記周知例4又は5参照)であり、一般的な遊技機においても慣用される遊技内容(下記周知例6参照)であり、さらに、相違点1について検討したことを前提とすれば、引用発明において、図柄変動時間を短縮させない場合を有するように遊技内容を変更する際に、図柄変動回数の違いによって、代入機能を禁止して変動時間の短縮を行わない場合と禁止しない場合とを有するようにすることは、当業者が容易に想到できることである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる域を超えるものではない。 したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成14年9月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成14年4月4日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「普通図柄始動手段(16)と、遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換可能な特別図柄始動手段(14)と、遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換可能な可変入賞手段(15)と、前記普通図柄始動手段(16)が遊技球を検出することを条件に、1個又は複数個の普通図柄が所定時間変動して停止する普通図柄表示手段(24)と、前記特別図柄始動手段(14)が遊技球を検出することを条件に、1個又は複数個の特別図柄が所定時間変動して停止する特別図柄表示手段(20)と、前記普通図柄表示手段(24)の変動後の停止図柄が所定図柄又は所定図柄の組み合わせとなることを条件に、前記特別図柄始動手段(14)を第2状態から第1状態に変換させて第1利益状態を発生させる第1利益状態発生手段(30)と、前記特別図柄表示手段(20)の変動後の停止図柄が特定図柄又は特定図柄の組み合わせとなることを条件に、前記可変入賞手段(15)を第2状態から第1状態に変換させて第2利益状態を発生させる第2利益状態発生手段(35)と、所定条件時に前記普通図柄表示手段(24)及び/又は前記特別図柄表示手段(20)の図柄変動時間を短縮させる変動時間短縮手段(36)とを備えた弾球遊技機において、前記変動時間短縮手段(36)は、電源投入時又は前回の第2利益状態の発生から今回の第2利益状態の発生までの前記特別図柄の図柄変動回数を前記短縮変動期間に代入する代入機能を備え、前記図柄変動回数の違いによって前記代入機能を禁止する場合と禁止しない場合とを有することを特徴とする弾球遊技機。」 (1)引用例に記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例である特開平11-70217号公報は、前記2.(2)において記載した引用例と同一文献であって、この引用例の記載事項及び該記載事項に基づいて認定される発明(以下、「引用発明」という。)は、前記したとおりのものである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の「前記代入機能を禁止して前記変動時間の短縮を行わない場合」を「前記代入機能を禁止する場合」として、概念的に上位にしたものである。 そうすると、本願発明を概念的に下位にしたものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明について論じるまでもなく、結論のとおり審決する。 <周知例に開示される技術> 周知例1.特開平10-33769号公報 「また、可変表示部4aにおいては第2の可変表示遊技(後述図3参照)が第1の可変表示遊技と同時に行われ、第2の可変表示遊技の遊技結果如何により、特別遊技状態(例えば、大当たり状態)終了後に特定遊技状態(例えば、普図の時間短縮遊技状態)の発生の有無が決定される。このとき、第2の表示領域41における第2の可変表示遊技の結果、特定の停止表示態様(例えば、停止した左、中、右の3つの女性キャラクターの衣装が同じになる停止表示態様)になった場合には、(通常の)特別遊技状態と同様の特別遊技状態の終了後、特定遊技状態が発生する。特定遊技状態は、例えば、通常の遊技状態に比べ、1回毎の普図の可変表示遊技の時間(普図変動時間)が短くなり、単位時間当たりの普通図柄の可変表示遊技での当たりの発生回数が多くなる状態(普図の時間短縮状態)のことである。これにより、所定時間当たりの普通変動入賞装置9の開放回数が増えて、普通変動入賞装置9への入賞が多くなるので、特図の可変表示遊技が多くなって、次の大当たり発生が容易となる。尚、第2の可変表示遊技の結果の停止表示態様が上記停止表示態様以外の場合には(通常の)特別遊技状態が発生する(即ち、大当たり終了後の普図の時間短縮状態の発生は起こらない)。」(段落0031-0034)と記載され、普図の時間短縮状態を発生させない場合を有する技術が開示されている。 周知例2.特開平10-5405号公報 「例えばこの特別図柄として「7」が設定されていれば、特別図柄表示手段に「127」や「7D5」が表示されたときに、時間短縮が行なわれる。」(段落0017)と記載され、特別図柄表示手段に「127」や「7D5」が表示されたとき以外には、時間短縮が行なわれない、すなわち、図柄変動時間を短縮させない場合を有する技術が開示されている。 周知例3.特開平9-327552号公報 「また、本発明では、準特定図柄「1、6、B」(3種類)を導入し、この準特定図柄で大当たりのときには、大当たりが終了後に、後述の第2図柄表示部(普通図柄表示部)56の図柄変動時間を30秒(FH=0)から、図柄短縮状態(図柄変動時間が5秒(FH=1))にする。尚、前記以外の図柄(0、2、4、8、9、D、E)は非特定図柄であって、大当たりが終了しても前記のような特典を与えない。」(段落0010)と記載され、準特定図柄以外で大当たりのときには、図柄短縮状態のような特典が与えられない、すなわち、図柄変動時間を短縮させない場合を有する技術が開示されている。 周知例4.特開平9-253294号公報 「なお、上記の普図時短状態の継続回数(時短回数)は、前回の大当り終了時から(1回目の大当りの場合は電源投入時から)今回の大当り発生時までの特図の可変表示遊技の始動回数に応じて振り分けられる。例えば、その始動回数と時短回数とは次のように対応している。 〈前回の大当り終了時(電源投入時)からの始動回数と時短回数との対応〉 始動回数 時短回数 0?50回 → 100回 51?100回 → 50回 101?200回 → 70回 201?300回 → 120回 301?400回 → 150回 500回以上 → 200回 この振り分けの条件となっている特図可変表示遊技の始動回数や、それに対応して発生される普図時短状態の時短回数は適宜変更可能である。」(段落0149-0150)と記載され、遊技者に不利な場合といえる最も少ない時短回数である50回を、始動回数51?100回に設定する技術、すなわち、何らかの回数の違いによって不利な場合を有するように設定する技術が開示されている。 周知例5.特開平6-170040号公報 「…継続入賞口32への入球数をカウントする継続カウンタ…」(段落0033)、「尚、上記実施例では、継続カウンタの値が「1」のときに継続入賞がない場合にS29において権利フラグを消滅させたが、例えばS28において継続カウンタの値「8か」に設定すれば、8回目に運悪く終了した場合に、権利フラグを消滅させることもできるし、「3以下か」に設定すれば、一回目ないし3回目までに終了すれば、権利フラグが消滅する。」(段落0045)と記載され、継続入賞口32への入球数をカウントする回数の違いによって権利フラグを消滅させる、すなわち、何らかの回数の違いによって不利な場合を有するように設定する技術が開示されている。 周知例6.特開平7-59948号公報 「なお、図5は、双六マップの他の一例について、その一部を示すものであるが、このように出目によってルートを分岐させてもよい。また、ダイス4の出目によって、進行のマス数を決定するだけでなく、所定のイベントを発生させるようにしてもよい。例えば、所定のマスでダイスを振ったような場合に、出目に応じて、1,2:スタートに戻る、3,4:1回休み、5,6:6マス進む、などのイベントを発生させてもよい。」(段落0017)と記載され、出目に応じてスタートに戻るなどのイベントを発生させる、すなわち、何らかの回数の違いによって不利な場合を有するように設定する遊技内容が開示されている。 |
審理終結日 | 2006-11-24 |
結審通知日 | 2006-11-28 |
審決日 | 2006-12-13 |
出願番号 | 特願平11-226599 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤田 年彦、澤田 真治 |
特許庁審判長 |
二宮 千久 |
特許庁審判官 |
土屋 保光 川島 陵司 |
発明の名称 | 弾球遊技機 |
代理人 | 谷藤 孝司 |