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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1151122
審判番号 不服2002-15916  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-12-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-21 
確定日 2007-01-24 
事件の表示 平成10年特許願第147517号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月 7日出願公開、特開平11-333084〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成10年5月28日の出願であって、平成14年6月26日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年8月21日に拒絶査定不服審判請求がなされたものであり、その請求項1?2に係る発明は、平成14年6月3日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「遊技領域に設けられた変動図柄を表示する図柄表示装置を備え、前記変動図柄が変動後所定の態様で停止すると大当りとして遊技者に有利な遊技状態が発生するパチンコ機において、
前記変動図柄のリーチ状態の発生を予告する複数種類のリーチ予告映像データが格納されるリーチ予告映像記憶手段と、
前記変動図柄がリーチ状態の場合に表示されるリーチアクションの表示画像として複数種類のリーチ映像データが格納されるリーチ映像記憶手段と、
リーチ状態を発生させるか否かを決定するリーチ発生決定手段と、
前記変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合に、第1選択確率に基づき前記リーチ映像記憶手段に記憶された第1リーチ映像データ、及び、前記リーチ予告映像データ記憶手段に記憶された第1リーチ予告映像データからなる第1組み合わせを選択する第1選択手段と、
前記変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合に、前記第1選択確率とは異なる第2選択確率に基づき前記リーチ映像記憶手段に記憶された第1リーチ映像データ、及び、前記リーチ予告映像データ記憶手段に記憶された第2リーチ予告映像データからなる第2組み合わせを選択する第2選択手段と、
前記変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合に、第3選択確率に基づき前記第1組み合わせを選択する第3選択手段と、
前記変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合に、前記第3選択確率とは異なる第4選択確率に基づき前記第2組み合わせを選択する第4選択手段とを備え、
前記大当たりの場合に、第1組み合わせを選択する第1選択確率と第2組み合わせを選択する第2選択確率との間に存在する大小関係は、前記変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合に、第1組み合わせを選択する第3選択確率と第2組み合わせを選択する第4選択確率との間に存在する大小関係と逆転されていることを特徴とするパチンコ機。」

2.引用刊行物記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-5406号公報(平成10年1月13日出願公開、以下、「第1引用例」という。)の記載事項
「【0014】
……図1を参照して実施形態に係る弾球遊技機(図示ではパチンコ遊技機)の遊技盤1の構成について説明する。……遊技領域3のほぼ中央には、左・中・右の特別図柄表示部33a?33cで特別図柄の可変表示(以下、変動ともいう)を可能にする特別可変表示装置30が配置されている。……」

「【0017】……打玉が普通可変入賞球装置5に入賞して始動玉検出器6をONさせると、特別可変表示装置30が変動を開始し、一定時間が経過すると、例えば左・右・中の順で特別図柄が確定され、その確定された図柄の組み合せが所定の大当り組合せ(同一図柄のゾロ目)となったときに特定遊技状態となる。……」

「【0021】……特別可変表示装置30での図柄変動には、図2(A)に示すような9種類のランダム数が使用されており、これらのランダム数は、……リーチ動作用のC_RND_RCH(0?99)と、……リーチ予告動作用のC_RND_K(0?9)と、……から構成されている。……」

「【0024】先ず、リーチ以外となる図柄変動を図5を参照して説明する。……
【0025】次に、リーチとなる図柄変動を図6及び図7を参照して説明する。……」

「【0027】……各種リーチ1?6の選択は、図8に示す※2の一覧表図に基づいて決定される。図8に示す※2の一覧表図は、ハズレ時及び大当り時毎にリーチ種類を決定するための各条件1?5(図9(C)参照)とC_RND_RCHの抽出値との振り分け表図である。また、本実施形態では、図9(A)の一覧表図に示すように、C_RND_Kの抽出値に応じてリーチ予告を行うようになっている。図9(A)の一覧表図は、リーチ予告の種類毎にC_RND_Kの抽出値を振り分けたものであり、これを確変図柄及び通常図柄毎に設定している。リーチ予告の種類は、リーチ予告1?3の3種類であり、各リーチ予告1?3毎の設定数(5匹、3匹、1匹)で「おばけ」を画面表示することにより遊技者にリーチを予告的に報知する。「おばけ」を表示するリーチ予告の表示画面については後で詳述する。また、このようなリーチ予告は、その種類に応じて確変図柄の出現率を異なって設定している。……」

「【0032】……また、リーチ予告を行うときには、図12(C)?(F)に示すように、キャラクタ表示部33dに表示した城50の上におばけ51のキャラクタを重畳表示することでその旨を報知する。なお、図12(C)(D)の表示画像は、それぞれ城50の上に1匹のおばけ51を重畳表示したリーチ予告3の画像であり、予告後に「6」の通常図柄でリーチした場合を例示している。図12(E)(F)の表示画像は、それぞれ城50の上に5匹のおばけ51を重畳表示したリーチ予告1の画像であり、予告後に「7」の確変図柄でリーチした場合を例示している。
【0033】また、キャラクタリーチ(リーチ2)を行うときには、図13(A)?(C)に示すように、表示画面の右端にハンマー53を持ったキャラクタ52を重畳表示する。そして、表示上のキャラクタ52がハンマー53で中図柄を叩くことにより中図柄を左方向へ順次コマ送りしていき中図柄のリーチ変動を行う。レーダーリーチ(リーチ3)を行うときには、先ず、表示画面全体を1つの表示領域とした特別図柄表示部33a?33cに画面を切り換える。そして、図13(D)(E)に示すように、現在表示の中図柄(同図中では、「6」の図柄)の中心部を回転中心として境界線(レーダーの走査線)54を時計回りの方向に回転させ、その境界線54の回転領域に次位の中図柄(同図中では、「7」の図柄)を表示する。これにより、境界線54の回転角度(0°?360°)に応じて現在表示の中図柄の表示割合を徐々に減少していく一方、次位の中図柄の表示割合を徐々に増大していき中図柄のリーチ変動を行う。なお、レーダーリーチにおける前記変動パターンJは、図13(F)に示すように、中図柄の下側部分の所定範囲内で境界線54の回転方向を時計回りの方向と反時計回りの方向とに交互に切り換えることで行われる。即ち、レーダーリーチでの最終の変動パターンとなり得る変動パターンJは(変動パターンJを行わない場合もある)、大当り該当図柄とその前の図柄(ハズレを決定する図柄)との間で表示割合の増減を交互に繰り返すことで、当り外れの決定を表示上で焦らして遊技者に緊張感を持たせるようになっている。
【0034】また、図柄回転リーチ(リーチ4)を行うときには、先ず、表示画面全体を1つの表示領域とした特別図柄表示部33a?33cに画面を切り換える。そして、図14(A)(B)に示すように、現在表示の中図柄(同図中では、「6」の図柄)の中心部を回転中心として中図柄を所定範囲内で往復回転させ、その往復回転中に次位の中図柄(同図中では、「7」の図柄)に切り換えて中図柄のリーチ変動を行う。なお、図柄回転リーチによる図柄の確定は、図14(C)に示すように、往復回転した後に中図柄を1周回転させることで行われる。……」

上記記載事項及び図面によると、第1引用例には、
「遊技領域3に特別図柄の可変表示を可能にする特別可変表示装置30が配置され、特別可変表示装置30が変動を開始し、一定時間が経過すると、特別図柄が確定され、その確定された図柄の組み合せが所定の大当り組合せとなったときに特定遊技状態となるパチンコ遊技機において、
各リーチ予告1?3毎に5匹、3匹、1匹のおばけを画面表示することによりリーチを予告的に報知する3種類のリーチ予告を行い、
表示画面の右端にハンマー53を持ったキャラクタ52を重畳表示してキャラクタ52がハンマー53で中図柄を叩くことにより中図柄を左方向へ順次コマ送りしていき中図柄のリーチ変動を行うキャラクタリーチと、現在表示の中図柄の中心部を回転中心として境界線54を時計回りの方向に回転させ、その境界線54の回転領域に次位の中図柄を表示するリーチ変動を行うレーダーリーチと、現在表示の中図柄の中心部を回転中心として中図柄を所定範囲内で往復回転させ、その往復回転中に次位の中図柄に切り換えて中図柄のリーチ変動を行う図柄回転リーチ等からなる各種リーチを行い、
リーチ以外となる図柄変動とリーチとなる図柄変動とを行い、
各リーチ予告は、リーチ予告の種類毎にランダム数C_RND_Kの抽出値を振り分け、これを確変図柄及び通常図柄毎に、その種類に応じて確変図柄の出現率を異なって設定され、
各種リーチは、リーチ種類を決定するための各条件1?5とランダム数C_RND_RCHの抽出値を振り分け、ハズレ時及び大当り時毎に設定されてなるパチンコ遊技機。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-127877号公報(平成10年5月19日出願公開、以下、「第2引用例」という。)の記載事項
「【0041】……大当りの場合、図9(a)に示すように、リーチパターン決定用乱数が0?9であればリーチA、リーチパターン決定用乱数が10?49であればリーチB、リーチパターン決定用乱数が50?99であればリーチCに振り分けるようになっている。なお、リーチAは通常のリーチ、リーチBはおやじリーチ、リーチCは背景変化リーチである。さらにリーチCの場合、リーチパターン決定用乱数が50?54であれば春リーチ、リーチパターン決定用乱数が55?64であれば夏リーチ、リーチパターン決定用乱数が65?79であれば秋リーチ、リーチパターン決定用乱数が80?99であれば冬リーチに振り分けるようになっている。春リーチ?冬リーチの詳しい内容は後述する。
【0042】一方、……外れの場合には図9(b)に示すように、リーチパターン決定用乱数が0?49であればリーチA、リーチパターン決定用乱数が50?79であればリーチB、リーチパターン決定用乱数が80?99であればリーチCに振り分けるようになっている。したがって、リーチ振り分けパターン1は大当り信頼度がA<B<Cの順に高くなり、さらにリーチCの場合には春リーチ<夏リーチ<秋リーチ<冬リーチの順に高くなるようなリーチ態様の演出が行われる。」

「【0047】……大当り時のリーチ種類として、リーチA?リーチCの3つのパターンがあり、……リーチパターン決定用乱数が0?9であればステップS58に分岐してリーチAにする。したがって、リーチAへの振り分け率は10%となる(図9参照、以下同様)。
【0048】リーチパターン決定用乱数が10?49であればステップS60に分岐してリーチBにする。したがって、リーチBへの振り分け率は40%となる。また、リーチパターン決定用乱数が50?99であればステップS62に分岐してリーチCにする。したがって、リーチCへの振り分け率は50%となる。この振り分け処理により、例えばリーチ振り分けパターン1が選択されていれば、大当り発生時のリーチの態様は、高い確率でリーチCに、やや高い確率でリーチBに、低い確率でリーチAにそれぞれ振り分けられる。……」

「【0053】……リーチ予告は、リーチが発生することを予告する情報(例えば、特定のキャラクタが現れると必ずリーチが発生することを示唆する情報)であり、例えばリフレッシュレジスタを使用して大当り発生時には1/3の振り分け処理を行って、リーチ予告=1/3の割り合いで発生(例えば、このときリーチ予告コマンドが発生)するようにする。……」

「【0058】……外れリーチ時のリーチ種類として、リーチA?リーチCの3つのパターンがあり、……リーチパターン決定用乱数が0?49であればステップS98に分岐してリーチAにする。したがって、リーチAへの振り分け率は50%となる(図9参照、以下同様)。
【0059】リーチパターン決定用乱数が50?79であればステップS100に分岐してリーチBにする。したがって、リーチBへの振り分け率は30%となる。また、リーチパターン決定用乱数が80?99であればステップS102に分岐してリーチCにする。したがって、リーチCへの振り分け率は20%となる。この振り分け処理により、例えばリーチ振り分けパターン1が選択されていれば、外れリーチ時におけるリーチの態様は、高い確率でリーチAに、やや高い確率でリーチBに、低い確率でリーチCにそれぞれ振り分けられる。……」

「【0062】……リーチ予告を発生させるか否かを判別する。これは、例えばリフレッシュレジスタを使用して外れリーチ発生のうち1/10の振り分け処理を行って、リーチ予告=1/10の割り合いで発生するようにする。……
【0063】このように、大当りの乱数を抽出した場合には、……リーチA?リーチC(春?冬リーチを含む)のどの態様でリーチを発生させるかを決定するとともに、1/3の割り合いでリーチ予告を行う……。一方、外れの乱数を抽出した場合には、リーチA?リーチC(春?冬リーチを含む)のどの態様で発生させるかを決定するとともに、1/10の割り合いでリーチ予告を行う。……」

「【0075】(b)予告リーチ動作
図15(b)?(d)は特別図柄表示装置4における予告リーチ動作の表示画像を示す図である。予告リーチ動作では、図15(b)に示すように左図柄の停止スロースクロール時(中図柄および右図柄は速く変動中で左図柄の停止直前のスクロール時)に、予告リーチコマンドがセットされることによりリーチを予告するキャラクター(ここでは女性キャラクター)が当該左図柄(例えば、「7」)にくっつく画像が表示される。これにより、遊技者はリーチ発生の予告により、リーチへの期待感が高められる。……」

上記記載事項及び図面によると、第2引用例には、
「大当たりの場合には、50%の振り分け率で背景変化リーチであるリーチCに振り分けるとともに1/3の割り合いでリーチを予告する女性キャラクターの画像を表示し、外れリーチの場合には、20%の振り分け率で背景変化リーチであるリーチCに振り分けるとともに1/10の割り合いでリーチ予告する女性キャラクターの画像を表示する」
という技術事項が記載されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「特別可変表示装置30」は本願発明の「図柄表示装置」に、以下同様に、「一定時間が経過すると、特別図柄が確定」は「変動図柄が変動後所定の態様で停止」に、「特定遊技状態」は「遊技者に有利な遊技状態」に、「パチンコ遊技機」は「パチンコ機」に相当する。

また、引用発明は、各リーチ予告1?3毎に5匹、3匹、1匹のおばけを画面表示することによる3種類のリーチ予告を行うものであるから、引用発明の「各リーチ予告1?3毎に画面表示される5匹、3匹、1匹のおばけ」が、本願発明の「複数種類のリーチ予告映像データ」に相当し、明示はされていないものの、技術常識からみて、それらが格納されるリーチ予告映像記憶手段を備えるものといえる。

さらに、引用発明は、表示画面の右端にハンマー53を持ったキャラクタ52を重畳表示してキャラクタ52がハンマー53で中図柄を叩くことにより中図柄を左方向へ順次コマ送りしていき中図柄のリーチ変動を行うキャラクタリーチと、現在表示の中図柄の中心部を回転中心として境界線54を時計回りの方向に回転させ、その境界線54の回転領域に次位の中図柄を表示するリーチ変動を行うレーダーリーチと、現在表示の中図柄の中心部を回転中心として中図柄を所定範囲内で往復回転させ、その往復回転中に次位の中図柄に切り換えて中図柄のリーチ変動を行う図柄回転リーチ等からなる各種リーチを行うものであるから、引用発明のキャラクタリーチ、レーダーリーチ、図柄回転リーチで表示される映像データが、本願発明の「複数種類のリーチ映像データ」に相当し、明示はされていないものの、技術常識からみて、それらが格納されるリーチ映像記憶手段を備えるものといえる。

そのうえ、引用発明は、リーチ以外となる図柄変動とリーチとなる図柄変動を行うものであるから、明示はされていないものの、リーチ状態を発生させるか否かを決定するリーチ発生決定手段を備えるものといえる。

そして、引用発明のキャラクタリーチ、レーダーリーチ、図柄回転リーチで表示される映像データのうちの1つが、本願発明の第1リーチ映像データに相当し、各リーチ予告1?3毎に画面表示される5匹、3匹、1匹のおばけの映像データのうちの2つを第1リーチ予告映像データ及び第2リーチ予告映像データとすると、これらの組み合わせの遊技状態が生じることから、引用発明は、
「変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合に、リーチ映像記憶手段に記憶された第1リーチ映像データ、及び、リーチ予告映像データ記憶手段に記憶された前記第1リーチ予告映像データからなる第1組み合わせを選択する第1選択手段と、
変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合に、リーチ映像記憶手段に記憶された第1リーチ映像データ、及び、リーチ予告映像データ記憶手段に記憶された前記第2リーチ予告映像データからなる第2組み合わせを選択する第2選択手段と、
変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合に、前記第1組み合わせを選択する第3選択手段と、
変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合に、前記第2組み合わせを選択する第4選択手段と」
を備えるものといえる。

したがって、両者は
「遊技領域に設けられた変動図柄を表示する図柄表示装置を備え、前記変動図柄が変動後所定の態様で停止すると大当りとして遊技者に有利な遊技状態が発生するパチンコ機において、
前記変動図柄のリーチ状態の発生を予告する複数種類のリーチ予告映像データが格納されるリーチ予告映像記憶手段と、
前記変動図柄がリーチ状態の場合に表示されるリーチアクションの表示画像として複数種類のリーチ映像データが格納されるリーチ映像記憶手段と、
リーチ状態を発生させるか否かを決定するリーチ発生決定手段と、
前記変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合に、前記リーチ映像記憶手段に記憶された第1リーチ映像データ、及び、前記リーチ予告映像データ記憶手段に記憶された前記第1リーチ予告映像データからなる第1組み合わせを選択する第1選択手段と、
前記変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合に、前記リーチ映像記憶手段に記憶された第1リーチ映像データ、及び、前記リーチ予告映像データ記憶手段に記憶された前記第2リーチ予告映像データからなる第2組み合わせを選択する第2選択手段と、
前記変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合に、前記第1組み合わせを選択する第3選択手段と、
前記変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合に、前記第2組み合わせを選択する第4選択手段とを備えたパチンコ機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明は、「変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合」と、「変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合」とで、第1リーチ映像データと第1リーチ予告映像データの第1組み合わせ、または、第1リーチ映像データと第2リーチ予告映像データの第2組み合わせを選択する4通りのパターンにつき選択確率を設定して、その選択確率は、「変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合」の第1組み合わせの選択確率と第2組み合わせの選択確率を異なるようにし、「変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合」の第1組み合わせの選択確率と第2組み合わせの選択確率を異なるようにしたものであるのに対し、引用発明は、第1リーチ映像データは「変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合」(大当り時)と、「変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合」(ハズレ時)とで選択確率(各条件とランダム数)に基づき選択しているものといえるが、各リーチ予告は確変図柄及び通常図柄毎に振り分け設定されるものであり、「変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合」と、「変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合」とで選択確率に基づき選択しているものではないので、第1リーチ映像データと第1又は第2リーチ予告映像データの組み合わせとして選択確率に基づき選択するものではない点。

<相違点2>
本願発明は、「変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合に、第1組み合わせを選択する第1選択確率と第2組み合わせを選択する第2選択確率との間に存在する大小関係は、前記変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合に、第1組み合わせを選択する第3選択確率と第2組み合わせを選択する第4選択確率との間に存在する大小関係と逆転されている」ものであるのに対し、引用発明は、上記相違点1に示したように、各リーチ予告は確変図柄及び通常図柄毎に振り分け設定されるものであるため、「変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合」と、「変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合」とで第1リーチ映像データと第1又は第2リーチ予告映像データの組み合わせを選択確率に基づき選択するものではないので、そのような構成を備えていない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
本願発明と第2引用例記載の技術事項を対比すると、第2引用例の「背景変化リーチであるリーチC」は本願発明の「第1リーチ映像データ」に相当し、以下同様に、「大当たりの場合」は「変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合」に、「外れリーチの場合」は「変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合」に相当する。
また、第2引用例の「リーチ予告する女性キャラクター画像」は本願発明の「リーチ予告映像データ」に相当し、本願発明の複数種類のリーチ予告映像データには、請求項2、段落【0010】及び段落【0022】?【0023】を参照すると、リーチを予告しない映像データを含むと解されるから、第2引用例の「リーチ予告する女性キャラクター画像」を表示しない画像は「第2リーチ予告映像データ」に相当する。

したがって、第2引用例には
「変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合に、第1リーチ映像データ、及び、第1リーチ予告映像データからなる第1組み合わせを第1選択確率(50%×1/3)で選択し、変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合に、第1リーチ映像データ、及び、第2リーチ予告映像データを第1選択確率とは異なる第2選択確率(50%×2/3)で選択し、変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合に、前記第1組み合わせを第3選択確率(20%×1/10)で選択し、変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合に、前記第2組み合わせを第3選択確率とは異なる第4選択確率(20%×9/10)で選択する」
という技術事項が開示されているものといえる。

そして、第1リーチ映像データと、第1リーチ予告映像データまたは第2リーチ予告映像データの選択手段を、引用発明のものに代えて、第2引用例記載の技術事項を適用して、相違点1に関わる本願発明の構成に想到することは、リーチ予告及びリーチの選択という共通の技術事項に関するものであるから、当業者ならば容易に想到し得るものである。ここで、第1リーチ映像データの選択確率と第1又は第2リーチ予告映像データの選択確率を別個に設定するか、第1リーチ映像データと第1または第2リーチ予告映像データの組み合わせとして選択確率を設定するかは、当業者が適宜選択できる設計的事項にすぎない。

<相違点2について>
変動図柄が所定の態様で停止する大当たりの場合に、第1映像データを選択する第1選択確率と第2映像データを選択する第2選択確率との間に存在する大小関係が、変動図柄が所定の態様で停止しない場合で、且つ、前記リーチ発生決定手段によってリーチ状態を発生させることが決定された場合に、第1映像データを選択する第3選択確率と第2映像データを選択する第4選択確率との間に存在する大小関係と逆転されている構成は、大当たりの信頼度に関連づけて映像データを選択する場合の周知技術であり(例えば、第2引用例の図9における大当たりの場合のリーチBの発生率(選択確率40%)とリーチCの発生率(選択確率50%)の大小関係と、外れの場合のリーチBの発生率(選択確率30%)とリーチCの発生率(選択確率20%)の大小関係を参照。または、特開平9-28885号公報の図25における大当りの場合のショートスベリの発生率(選択確率0%)とロングスベリの発生率(選択確率3%)の大小関係と、ハズレの場合のショートスベリの発生率(選択確率46%)とロングスベリの発生率(選択確率0%)の大小関係を参照。)、この周知技術を、引用発明に第2引用例記載の技術事項を適用した第1リーチ映像データと第1または第2リーチ予告映像データの組み合わせの選択確率に適用して、相違点2に係る本願発明の構成に想到することは当業者が容易になし得るものである。

そして、本願発明の作用効果も、第1引用例に記載された発明(引用発明)及び第2引用例に記載された発明並びに周知技術から当業者が予測できる範囲のものであって、格別なものがあるとは認められないから、本願発明は、第1引用例及び第2引用例に記載された発明並びに周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、第1引用例及び第2引用例に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-28 
結審通知日 2006-10-24 
審決日 2006-11-15 
出願番号 特願平10-147517
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 川島 陵司
藤田 年彦
発明の名称 パチンコ機  
代理人 富澤 孝  
代理人 岡戸 昭佳  
代理人 山中 郁生  

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