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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1151123
審判番号 不服2002-17820  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-08-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-17 
確定日 2007-01-22 
事件の表示 特願2001-393400「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月13日出願公開、特開2002-224363〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年4月22日に特許出願した特願平11-114567号の一部を新たな特許出願としたものであって、平成14年8月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その請求項1及び2に係る発明は、平成14年6月6日付けの手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「遊技盤面上に発射された遊技球が特定の入賞口に入賞又は特定の通過口を通過するタイミングに起因して抽出される乱数値に従って遊技者に有利なゲーム内容とするか否かを決定する主制御基板と、
賞球を払い出す賞球払出装置を制御する賞球制御基板と、
該賞球払出装置から排出される賞球を検出すると賞球検出信号を出力する賞球検出手段と、
遊技盤面上の各入賞口への入賞球を検出すると入賞検出信号を出力する入賞検出手段と、
を含み構成された弾球遊技機であって、
前記主制御基板から前記賞球制御基板にのみ送信できる一方向通信回路とし、
前記賞球制御基板は、前記入賞検出手段が出力する入賞検出信号を直接入力し、入賞により加算され賞球により減算される払出未了データを停電時に消去しないようバックアップされ、
前記賞球制御基板は、前記賞球払出装置へ賞球の払出しを指示しても所定時間以上賞球の払出しが前記賞球検出手段により検出されない場合、及び前記払出未了データの値が零であるにも係わらず前記賞球検出手段により賞球の払出しが検出された場合、にはそれぞれ異常と判断し、
前記払出未了データの値が零であるにも係わらず前記賞球検出手段により賞球の払出しが検出されて異常と判断した場合には、前記賞球払出装置の駆動を強制的に停止する、
よう構成されたことを特徴とする弾球遊技機。」

2.引用発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-295584号公報(以下、「引用文献」という。)には、弾球遊技機において、以下の記載がある。
a.「打玉が打込まれる遊技領域と、該遊技領域内に打込まれた打込玉に基づいて、所定個数の景品玉を払出すように予め定められた所定遊技状態になったことを判定する所定遊技状態判定手段」(第1頁左下欄第5-9行)
b.「遊技領域15内には、各種入賞口21,30a,30b,31a,31bや始動入賞口29a,29b,29cが配設されている。・・・前記始動入賞口29a,29b,29cのいずれかにパチンコ玉が入賞することにより、・・・識別情報表示部17a,17b,17cが可変表示を開始する。・・・そして停止したときの表示結果が予め定める識別情報・・・になれば、特定遊技状態となり・・・」(第3頁右上欄第9行-左下欄第8行)
c.「遊技領域15・・・内に打込まれたパチンコ玉が始動入賞口29a,29b,29c・・・に入賞すれば、それぞれに対応して設けられている始動入賞玉検出器43a,43b,43cにより検出されるように構成されており、それぞれの検出出力が・・・マイクロコンピュータ100・・・に入力され・・・図示前方側の入賞玉集合樋B(51b)に導かれ、入賞玉検出器B(52b)により検出された後に機外に放出される。」(第4頁右下欄第7-20行)
d.「打込玉が入賞口21,30a,30bに入賞すれば・・・入賞玉集合樋A(51a)にまで誘導される。次に、可変入賞球装置22内に入賞したパチンコ玉は、入賞個数検出器42により検出された後・・・入賞玉集合樋A(51a)にまで導かれ、入賞口31a,31bに入賞したパチンコ玉は、・・・入賞玉集合樋A(51a)にまで導かれる。そして後方側の入賞玉集合樋A(51a)にまで導かれてきたパチンコ玉は入賞玉検出器A(52a)により検出された後に機外に放出される。・・・これら入賞玉検出器A(52a),B(52b)からの検出出力は・・・マイクロコンピュータ100・・・に入力されて制御に用いられる。」(第5頁左上欄第1行-右上欄第2行)
e.「打込玉が各種入賞口に入賞すれば、前記景品玉払出装置59が作動して所定個数(たとえば7個または13個)の景品玉が払出される。・・・その払出されるパチンコ玉が1つずつ払出景品玉検出器61により検出される。そしてこの払出景品玉検出器61による検出信号が・・・マイクロコンピュータ100・・・に与えられて制御に用いられる。」(第5頁右上欄第17行-左下欄第16行)
f.「中継端子板39はゲーム制御に関する電気的装置と制御基板との接続を中継しており、・・・また中継端子板71は景品玉払出制御に関する電気的装置と制御基板との接続を中継して・・・いる。」(第6頁左上欄第10-16行)
g.「払出景品玉検出器61・・・により、前記景品玉払出手段によって払出される景品玉数に関連する情報を検出する払出景品玉数関連情報検出手段が構成されている。」(第7頁左下欄第7-11行)
h.「マイクロコンピュータ100は以下に述べるようなパチンコ遊技機1全体の動作を制御する機能を有する。このために、マイクロコンピュータ100は・・・制御動作を所定の手順で実行することのできるMPU101と、MPU101の動作プログラムデータを格納するROM102と、必要なデータの書込みおよび読出しができるRAM103とを含む。このRAM103は、電源を切ったりまたは停電時等により電源が供給されない場合においても、コンデンサからの電力により所定時間(たとえば24時間)記憶データが保存されるように構成されている。」(第7頁左下欄第13行-右下欄第6行)
i.「マイクロコンピュータ100には、入力信号として、次のような信号が与えられる。まず、パチンコ玉の始動入賞に伴う始動入賞玉検出器43a,43b,43cがONしたことに応答して、始動入賞玉検出回路111から始動入賞玉検出信号がマイクロコンピュータ100に与えられる。パチンコ玉が特定入賞口25・・・内に入賞し特定入賞玉検出器41がONしたことに応答して、検出回路112から検出信号がマイクロコンピュータ100に与えられる。・・・入賞玉検出器A(52a),B(52b)からのそれぞれの入賞玉検出信号が検出回路115を介してマイクロコンピュータ100に与えられる。この入賞玉検出器A(52a),B(52b)、検出回路115ならびにマイクロコンピュータ100により、遊技領域内に打込まれた打込玉に基づいて所定個数の景品玉を払出すように予め定められた所定遊技状態になったことを判定する所定遊技状態判定手段が構成されている。次に、景品玉払出装置59からパチンコ玉が1つずつ排出通路83・・・内に排出される毎に、払出景品玉検出器61から払出景品玉検出信号が出力され、その出力が検出回路116を介してマイクロコンピュータ100に与えられる。」(第8頁左上欄第19行-左下欄第12行)
j.「また、マイクロコンピュータ100は、以下の回路および装置に制御信号を与える。モータ駆動回路119を介して景品玉払出モータ60にモータ駆動信号を与える。セグメントLED駆動回路120を介して払出未処理玉数表示器37・・・に表示制御信号を与える。」(第8頁右下欄第1-6行)
k.「前記入賞玉検出器A(52a),B(52b),払出景品玉検出器61,・・・景品玉払出モータ60,払出未処理玉数表示器37・・・を制御する景品玉払出制御用の制御基板をゲーム制御用の制御基板に対し別体に設け・・・てもよい。」(第9頁左上欄第9-18行)
l.「第6A図ないし第6H図は、・・・制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。・・・第6A図は、メインルーチンを示し、・・・ステップS3に進み、ゲーム制御処理を行ない、次にステップS4に進み、景品玉払出制御処理を行ない、・・・リセット待ちとなる。」(第9頁左上欄第19行-右上欄第12行)
m.「第6B図は、前記ステップS4により定義された景品玉払出制御処理のプログラムを示したものである。・・・ステップS7により、払出未処理数表示器のコントロール処理が行なわれ、ステップS8により、景品玉払出モータのコントロール処理が行なわれ、ステップS9により、払出景品玉検出器チェック処理が行なわれ、ステップS10により、入賞玉検出器Aチェック処理が行なわれ、ステップS11により、入賞玉検出器Bチェック処理が行なわれてサブルーチンプログラムが終了する。」(第9頁右上欄第16行-左下欄第7行)
n.「第6D図は、前記ステップS7により定義されたサブルーチンプログラムを示す図である。アラームフラグA?Eのすべてがセットされていない場合には・・・払出未処理玉カウンタA,Bの合計値を払出未処理玉数表示器37・・・により表示させてサブルーチンプログラムが終了する。この払出未処理玉カウンタAは、・・・ステップS71により加算されステップS59により減算されるものであり、払出未処理玉カウンタBは、・・・ステップS79により加算されステップS61により減算されるものである。そしてこれら払出未処理玉カウンタA,Bの合計値は、現時点でパチンコ遊技機が払出さなければならない景品玉の個数を表わしており、その値が払出未処理玉数表示器37・・・により表示される。(以上、第10頁左上欄第16行-右上欄第11行)
・・・
(以下、第10頁右下欄第2行より)玉重量感知レバー57と玉載置部86・・・との間でパチンコ玉が詰まった場合等には、・・・アラームフラグDがセットされ、・・・「E-04」が払出未処理玉数表示器により表示され・・・る。また、景品玉の不正排出が行われた場合には・・・アラームフラグEがセットされ、・・・「E-05」が払出未処理玉数表示器により表示されてサブルーチンプログラムが終了する。」(第10頁左上欄第16行-右下欄第14行)
o.「第6E図は前記ステップS8により定義された景品玉払出モータのコントロール処理のサブルーチンプログラムを示す図である。(以上、第10頁右下欄第15-17行)
・・・
(以下、第11頁左上欄第20行より)遊技者が遊技をしている最中に、パチンコ玉が13個払出用の入賞口に入賞すれば、・・・ステップS71により払出未処理玉カウンタAに「13」が加算され・・・また、パチンコ玉が7個払出用の入賞口に入賞した場合には・・・ステップS79により、払出未処理玉カウンタBに「7」が加算され・・・景品玉払出モータ60・・・をONにしてサブルーチンプログラムが終了する。そしてこの景品玉払出モータがONになることにより、・・・パチンコ玉が1つずつ払出されるのであり、パチンコ玉が1つずつ払出されるごとに・・・ステップS59およびステップS61により払出未処理玉カウンタA,Bが1つずつ減算され・・・る。・・・払出未処理玉カウンタAが0であるか否かの判断がなされる。そして未だに13個払出用の払出未処理玉が残存する場合には・・・玉詰まりチェックタイマをセットした後に・・・景品玉払出モータのON制御がなされて景品玉が払出される。前記・・・玉詰まりチェックタイマのセットは、玉重量感知レバー57から玉載置部86までの間の景品玉の詰まりあるいは景品玉払出モータの故障を判定するためのものであり、この玉詰まりチェックタイマが終了するまで払出景品玉検出器61・・・がONにならなければ玉詰まりあるいは景品玉払出モータの故障が生じた旨の判断がなされる。そして前記・・・払出未処理玉カウンタAが「0」でないと判断された場合には一定の条件下・・・により景品玉払出モータが駆動制御され、パチンコ玉が1つずつ払出されるごとに・・・ステップS59により払出未処理玉カウンタAから1ずつ減算される。そして払出未処理玉カウンタAが減算され続けた結果、払出未処理玉カウンタAが「0」となれば・・・払出未処理玉カウンタBが「0」であるか否かの判断がなされる。その段階で・・・7個払出用の払出未処理玉が残存する場合には・・・払出未処理玉カウンタBの値に基づき7個払出制御が行なわれて払出未処理玉カウンタBから減算される。・・・後述する払出未処理数計数手段により計数された払出未処理数が残存している間前記景品玉払出手段の払出制御を行ない・・・前記払出未処理数がなくなったことに基づいて前記景品玉払出手段の払出動作を停止させる景品玉払出制御手段が構成されている。」(第10頁右下欄第15行-第12頁左下欄第2行)
p.「第6F図は前記ステップS9により定義された払出景品玉検出器チェック処理のプログラムを示す図である。(以上、第12頁左下欄第3-5行)
・・・
景品玉払出モータがONになった後一定時間が経過しているにもかかわらず払出景品玉検出器がONにならなかった場合には・・・アラームフラグDがセットされるのである。(以上、第12頁右下欄第6-12行)
・・・
アラームフラグEは・・・景品玉の不正排出を報知するためのものであり、払出景品玉カウンタAおよびBが「0」であるにもかかわらず払出検出玉検出器がONになりかつステップS52によりYESの判断がなされている場合、すなわち、払出すべき払出未処理玉が残存していないにもかかわらず景品玉が払出されている場合にこのアラームフラグEがセットされるのである。(以上、第14頁左上欄第9-17行)
・・・
(以下、第14頁左下欄第7行より)払出景品玉検出器61に関し異常が発生した場合や不正排出玉が検出された場合に、景品玉排出流路を切換えて、景品玉が遊技者に払出されないように制御してもよい。」(第12頁左下欄第3行-第14頁左下欄第10行)
q.「第6G図は、前記ステップS10により定義された入賞玉検出器Aチェック処理のサブルーチンプログラムを示す図である。(以上、第14頁左下欄第11-13行)
・・・
(以下、第14頁右下欄第19行より)ステップS71では、払出未処理玉カウンタAを「13」加算する処理がなされてサブルーチンプログラムが終了する。」(第14頁左下欄第11-第15頁左上欄第1行)
r.「第6H図は、前記ステップS11により定義された入賞玉検出器Bチェック処理のサブルーチンプログラムを示す図である。この入賞玉検出器Bのチェック処理は、前記第6G図に示した入賞玉検出器Aのチェック処理とほとんど同じであり、相違点と言えばステップS79により、払出未処理玉カウンタBに加算する数値が「7」となっているところのみである。・・・前記ステップS71とステップS59およびステップS79とステップS61とにより、前記所定遊技状態判定手段の判定出力が導出される毎に所定数を累積加算して、前記払出景品玉数関連情報検出手段の検出出力が導出される毎に払出された景品玉数に対応した数を順次減算して払出未処理玉数を計数する払出未処理数計数手段が構成されている。」(第15頁右上欄第2-17行)
s.「なお、前記入賞玉検出器A(52a),B(52b)に関し異常が発生した場合に、各入賞玉検出器A,Bで集合される入賞玉を貯留できるようにしてもよい。」(第15頁右上欄第18-左下欄第1行)
t.「景品玉払出制御に関し異常が発生した場合に、ゲーム制御を中断し、そのときの遊技状態を記憶するようにし、前記異常が解消した後その記憶されている遊技状態に復帰し得るように構成してもよい。」(第15頁左下欄第13-17行)
u.「本発明によれば、払出未処理数計数手段により、所定個数の景品玉を払出すように予め定められた所定遊技状態の発生毎に加算され景品玉の払出毎に減算されて現時点での払出未処理数が計数され、その現時点での払出未処理数がなくなるまで景品玉が払出される」(第15頁左下欄第19行-右下欄第4行)

上記の記載より、引用文献には次の弾球遊技機が記載されていると認められる。
「遊技領域15内には、各種入賞口21,30a,30b,31a,31bや始動入賞口29a,29b,29cが配設されており、遊技領域15内に打込まれたパチンコ玉が前記始動入賞口29a,29b,29cのいずれかに入賞すれば、識別情報表示部17a,17b,17cが可変表示を開始し、停止したときの表示結果が予め定める識別情報になれば特定遊技状態となり、始動入賞口29a,29b,29cに入賞したパチンコ玉は、それぞれに対応して設けられている始動入賞玉検出器43a,43b,43cにより検出され、それぞれの検出出力がマイクロコンピュータ100に入力され、入賞玉は入賞玉集合樋B(51b)に導かれて入賞玉検出器B(52b)により検出された後に機外に放出され、また、入賞口21,30a,30bに入賞すれば、入賞玉集合樋A(51a)にまで誘導され、可変入賞球装置22内に入賞したパチンコ玉は、入賞個数検出器42により検出された後、入賞玉集合樋A(51a)にまで導かれ、入賞口31a,31bに入賞したパチンコ玉は、入賞玉集合樋A(51a)にまで導かれるものであり、上記入賞玉集合樋A(51a)にまで導かれてきたパチンコ玉は入賞玉検出器A(52a)により検出された後に機外に放出されるようになっており、これら入賞玉検出器A(52a),B(52b)からの検出出力はマイクロコンピュータ100に入力されて制御に用いられるものであり、打込玉が各種入賞口に入賞すれば、前記景品玉払出装置59が作動して所定個数(たとえば7個または13個)の景品玉が払出され、その払出されるパチンコ玉が1つずつ払出景品玉検出器61により検出され、その検出信号がマイクロコンピュータ100に与えられて制御に用いられるものであり、マイクロコンピュータ100はパチンコ遊技機1全体の動作を制御する機能を有しており、MPU101と、ROM102と、RAM103とを含み、このRAM103は、電源を切ったりまたは停電時等により電源が供給されない場合においても、コンデンサからの電力により所定時間(たとえば24時間)記憶データが保存されるように構成されており、該マイクロコンピュータ100には、入力信号として、パチンコ玉の始動入賞により、始動入賞玉検出器43a,43b,43cがONしたことに伴う始動入賞玉検出信号、特定入賞口25への入賞により、特定入賞玉検出器41がONしたことに伴う検出信号、入賞玉検出器A(52a),B(52b)からの入賞玉検出信号、景品玉払出装置59からパチンコ玉が1つずつ排出通路83内に排出される毎に、払出景品玉検出器61から出力される払出景品玉検出信号が入力されるもので、該払出景品玉検出器61により、景品玉払出手段によって払出される景品玉数に関連する情報を検出する払出景品玉数関連情報検出手段が構成されており、また、上記マイクロコンピュータ100は、景品玉払出モータ60にモータ駆動信号を、払出未処理玉数表示器37に表示制御信号を与えるものであり、ゲーム制御に関する電気的装置は中継端子板39を介して、また景品玉払出制御に関する電気的装置は中継端子板71を介して、それぞれ制御基板と接続されているものであるが、前記入賞玉検出器A(52a),B(52b),払出景品玉検出器61、景品玉払出モータ60、払出未処理玉数表示器37を制御する景品玉払出制御用の制御基板をゲーム制御用の制御基板に対し別体に設けてもよく、本発明によれば、払出未処理数計数手段により、所定個数の景品玉を払出すように予め定められた所定遊技状態の発生毎に加算され景品玉の払出毎に減算されて現時点での払出未処理数が計数され、その現時点での払出未処理数がなくなるまで景品玉が払出されるものであり、景品玉払出制御に関し異常が発生した場合に、ゲーム制御を中断し、そのときの遊技状態を記憶するようにし、前記異常が解消した後その記憶されている遊技状態に復帰し得るように構成してもよい弾球遊技機であって、
制御回路の動作を説明するためのフローチャートを第6A図ないし第6H図により示すと、
第6A図は、メインルーチンを示し、ステップS3でゲーム制御処理を行ない、次にステップS4に進み、景品玉払出制御処理を行ない、リセット待ちとなるもので、
第6B図は、前記ステップS4により定義された景品玉払出制御処理のプログラムを示したものであり、ステップS7により、払出未処理数表示器のコントロール処理が行なわれ、ステップS8により、景品玉払出モータのコントロール処理が行なわれ、ステップS9により、払出景品玉検出器チェック処理が行なわれ、ステップS10により、入賞玉検出器Aチェック処理が行なわれ、ステップS11により、入賞玉検出器Bチェック処理が行なわれてサブルーチンプログラムが終了するようになっており、
第6D図は、前記ステップS7により定義された払出未処理数表示器のコントロール処理のサブルーチンプログラムを示す図であり、アラームフラグA?Eのすべてがセットされていない場合には、払出未処理玉カウンタA,Bの合計値を払出未処理玉数表示器37により表示させてサブルーチンプログラムが終了するようになっており、この払出未処理玉カウンタAは、ステップS71により加算されステップS59により減算され、払出未処理玉カウンタBは、ステップS79により加算されステップS61により減算されるものであり、これら払出未処理玉カウンタA,Bの合計値は、現時点でパチンコ遊技機が払出さなければならない景品玉の個数を表わしており、その値が払出未処理玉数表示器37により表示されるものであり、一方、上記のアラームフラグに関し、玉重量感知レバー57と玉載置部86との間でパチンコ玉が詰まった場合等には、アラームフラグDがセットされ、「E-04」が払出未処理玉数表示器により表示され、また、景品玉の不正排出が行われた場合にはアラームフラグEがセットされ、「E-05」が払出未処理玉数表示器により表示されてサブルーチンプログラムが終了するようになっており、
第6E図は前記ステップS8により定義された景品玉払出モータのコントロール処理のサブルーチンプログラムを示す図であり、遊技者が遊技をしている最中に、パチンコ玉が13個払出用の入賞口に入賞すれば、ステップS71により払出未処理玉カウンタAに「13」が加算され、また、パチンコ玉が7個払出用の入賞口に入賞した場合には、ステップS79により、払出未処理玉カウンタBに「7」が加算され、景品玉払出モータ60をONにしてサブルーチンプログラムが終了するようになっており、この景品玉払出モータがONになることにより、パチンコ玉が1つずつ払出され、パチンコ玉が1つずつ払出されるごとにステップS59およびステップS61により払出未処理玉カウンタA,Bが1つずつ減算されるものであり、払出未処理玉カウンタAが0であるか否かの判断がなされて未だに13個払出用の払出未処理玉が残存する場合には、玉詰まりチェックタイマをセットした後に景品玉払出モータのON制御がなされて景品玉が払出されるが、前記玉詰まりチェックタイマのセットは、玉重量感知レバー57から玉載置部86までの間の景品玉の詰まりあるいは景品玉払出モータの故障を判定するためのものであり、この玉詰まりチェックタイマが終了するまで払出景品玉検出器61がONにならなければ玉詰まりあるいは景品玉払出モータの故障が生じた旨の判断がなされるようになっており、そして前記払出未処理玉カウンタAが「0」でないと判断された場合には一定の条件下により景品玉払出モータが駆動制御され、パチンコ玉が1つずつ払出されるごとにステップS59により払出未処理玉カウンタAから1ずつ減算され、払出未処理玉カウンタAが減算され続けた結果、払出未処理玉カウンタAが「0」となれば、払出未処理玉カウンタBが「0」であるか否かの判断がなされ、その段階で7個払出用の払出未処理玉が残存する場合には、払出未処理玉カウンタBの値に基づき7個払出制御が行なわれて払出未処理玉カウンタBから減算され、後述する払出未処理数計数手段により計数された払出未処理数が残存している間前記景品玉払出手段の払出制御を行ない、前記払出未処理数がなくなったことに基づいて前記景品玉払出手段の払出動作を停止させる景品玉払出制御手段が構成されており、
第6F図は前記ステップS9により定義された払出景品玉検出器チェック処理のプログラムを示す図であり、景品玉払出モータがONになった後一定時間が経過しているにもかかわらず払出景品玉検出器がONにならなかった場合にはアラームフラグDがセットされるのであり、またアラームフラグEは景品玉の不正排出を報知するためのものであり、払出景品玉カウンタAおよびBが「0」であるにもかかわらず払出検出玉検出器がONになりかつステップS52によりYESの判断がなされている場合、すなわち、払出すべき払出未処理玉が残存していないにもかかわらず景品玉が払出されている場合にこのアラームフラグEがセットされるものであり、払出景品玉検出器61に関し異常が発生した場合や不正排出玉が検出された場合に、景品玉排出流路を切換えて、景品玉が遊技者に払出されないように制御してもよいものであり、
第6G図は、前記ステップS10により定義された入賞玉検出器Aチェック処理のサブルーチンプログラムを示す図であり、ステップS71では、払出未処理玉カウンタAを「13」加算する処理がなされてサブルーチンプログラムが終了するものであり、
第6H図は、前記ステップS11により定義された入賞玉検出器Bチェック処理のサブルーチンプログラムを示す図であり、この入賞玉検出器Bのチェック処理は、前記第6G図に示した入賞玉検出器Aのチェック処理とほとんど同じであり、相違点と言えばステップS79により、払出未処理玉カウンタBに加算する数値が「7」となっているところのみであり、前記ステップS71とステップS59およびステップS79とステップS61とにより、前記所定遊技状態判定手段の判定出力が導出される毎に所定数を累積加算して、前記払出景品玉数関連情報検出手段の検出出力が導出される毎に払出された景品玉数に対応した数を順次減算して払出未処理玉数を計数する払出未処理数計数手段が構成されている、弾球遊技機。」

上記のとおり、引用文献には、「パチンコ遊技機1全体の動作を制御」する「マイクロコンピュータ100」(摘示h.)により制御される弾球遊技機が記載されており、「ゲーム制御に関する電気的装置は中継端子板39を介して、また景品玉払出制御に関する電気的装置は中継端子板71を介して、それぞれ制御基板と接続され」(摘示f.)ているものであるが、上記弾球遊技機において、「入賞玉検出器A(52a),B(52b),払出景品玉検出器61、景品玉払出モータ60、払出未処理玉数表示器37を制御する景品玉払出制御用の制御基板をゲーム制御用の制御基板に対し別体に設けてもよ」(摘示k.)いものである。
すなわち、同引用文献は、「景品玉払出制御用の制御基板をゲーム制御用の制御基板に対し別体に設け」た「弾球遊技機」をも開示しており、以下、これを「引用発明」という。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、両者はともに弾球遊技機であり、引用発明における「遊技領域15内に打込まれた打込玉」は本願発明における「遊技盤面上に発射された遊技球」に、同様に「景品玉を払出す景品玉払出装置59」は「賞球を払い出す賞球払出装置」に、それぞれ対応しており、さらに引用発明について次のことがいえる。
(i) 引用発明は、「遊技領域15内に打込まれたパチンコ玉が前記始動入賞口29a,29b,29cのいずれかに入賞すれば、識別情報表示部17a,17b,17cが可変表示を開始し、停止したときの表示結果が予め定める識別情報になれば特定遊技状態」(摘示b.)となるものであり、引用発明における「特定遊技状態」は、本願発明における「遊技者に有利なゲーム内容」に対応するものであり、また同引用発明において、「停止したときの表示結果」を「予め定める識別情報」とするか否かは、「パチンコ玉」が「始動入賞口29a,29b,29cのいずれか」に「入賞」するタイミングに起因して抽出される乱数値に従って決定されるものであることは当業者にとって自明である(必要あれば、例えば下記の参考例があげられる。)とともに、上記した「決定」は、「景品玉払出制御用の制御基板をゲーム制御用の制御基板に対し別体に設け」た引用発明において、「ゲーム制御用の制御基板」で行われるものであることもまた、当業者にとって自明であり、該「ゲーム制御用の制御基板」は、本願発明を特定する、「主制御基板」に対応するものである。
そうすると、同引用発明は、本願発明を特定する「遊技盤面上に発射された遊技球が特定の入賞口に入賞又は特定の通過口を通過するタイミングに起因して抽出される乱数値に従って遊技者に有利なゲーム内容とするか否かを決定する主制御基板」の事項に対応する構成を実質上備えているということができる。
(ii) 「景品玉払出制御用の制御基板をゲーム制御用の制御基板に対し別体に設け」た引用発明において、上記「景品玉払出制御用の制御基板」は、本願発明を特定する「賞球を払い出す賞球払出装置を制御する賞球制御基板」に対応するものである。
(iii) 引用発明は、「景品玉払出装置59からパチンコ玉が1つずつ排出通路83内に排出される毎に、払出景品玉検出器61から払出景品玉検出信号が出力される」(摘示i.)ものであり、上記「払出景品玉検出信号」は本願発明を特定する「賞球検出信号」に対応している。そして引用発明における上記構成は、「排出」される「景品玉」を検出するための「景品玉検出手段」であり、本願発明における「賞球検出手段」に対応するものであるといえる。
そうすると、同引用発明は、本願発明を特定する「賞球払出装置から排出される賞球を検出すると賞球検出信号を出力する賞球検出手段」の事項に対応する構成を備えているといえる。
(iv) 引用発明は、「遊技領域15内には、各種入賞口21,30a,30b,31a,31bや始動入賞口29a,29b,29cが配設されて」(摘示b.)おり、「遊技領域15内に打込まれたパチンコ玉が始動入賞口29a,29b,29cに入賞すれば、入賞玉は入賞玉集合樋B(51b)に導かれて入賞玉検出器B(52b)により検出され」(摘示c.)、また「入賞口21,30a,30bに入賞すれば、入賞玉集合樋A(51a)にまで誘導され、可変入賞球装置22内に入賞したパチンコ玉は、入賞玉集合樋A(51a)にまで導かれ、入賞口31a,31bに入賞したパチンコ玉は、入賞玉集合樋A(51a)にまで導かれるものであり、上記入賞玉集合樋A(51a)にまで導かれてきたパチンコ玉は入賞玉検出器A(52a)により検出され」(摘示d.)るもので、「これら入賞玉検出器A(52a),B(52b)からの検出出力」(摘示d.)は、「入賞玉検出信号」(摘示i.)として出力されるもので、上記「入賞玉検出信号」は本願発明における「入賞検出信号」に対応しており、また、上記「入賞玉検出器A(52a),B(52b)」により「入賞玉」を「検出」する検出手段が構成されていて、これらは本願発明における「入賞検出手段」に対応するものである。
一方、本願発明は「遊技盤面上の各入賞口への入賞球を検出すると入賞検出信号を出力する入賞検出手段」(下線付加)を備えるものであるから、両者は、「遊技盤面上の入賞口への入賞球を検出すると入賞検出信号を出力する入賞検出手段」を備えている点で共通している。
(v) 上記(iv)に記載したように、引用発明において、「入賞玉検出器A(52a),B(52b)」(本願発明における「入賞検出手段」に対応する。)は「入賞玉検出信号」(本願発明における「入賞検出信号」に対応する。)を出力するものであり、また、同引用発明において、「景品玉払出制御用の制御基板」(本願発明を特定する「賞球制御基板」に対応する。)は、「入賞玉検出器A(52a),B(52b)」(「入賞検出手段」)を「制御」(摘示k.)するものである。
そうすると、引用発明における「入賞玉検出器A(52a),B(52b)」(「入賞検出手段」)が出力する「入賞玉検出信号」(「入賞検出信号」)は、該「入賞玉検出器A(52a),B(52b)」(「入賞検出手段」)を制御する「景品玉払出制御用の制御基板」(「賞球制御基板」)に直接入力されるものであるということができ、同引用発明は、本願発明を特定する「賞球制御基板は、前記入賞検出手段が出力する入賞検出信号を直接入力し」の事項に対応する構成を備えているといえる。
(vi) 引用発明は、「払出未処理玉カウンタA」と「払出未処理玉カウンタB」とを備え、「払出未処理玉カウンタAは、ステップS71により加算されステップS59により減算され、払出未処理玉カウンタBは、ステップS79により加算されステップS61により減算されるものであり、これら払出未処理玉カウンタA,Bの合計値は、現時点でパチンコ遊技機が払出さなければならない景品玉の個数を表わして」(摘示n.)いるもので、「ステップS71とステップS59およびステップS79とステップS61とにより、前記所定遊技状態判定手段の判定出力が導出される毎に所定数を累積加算して、前記払出景品玉数関連情報検出手段の検出出力が導出される毎に払出された景品玉数に対応した数を順次減算して払出未処理玉数を計数する払出未処理数計数手段が構成されている」(摘示r.)ものである。
引用発明において、上記「所定遊技状態判定手段の判定出力が導出される」こととは、「遊技領域内に打込まれた打込玉に基づいて、所定個数の景品玉を払出すように予め定められた所定遊技状態になったこと」が「判定」(摘示a.)され、その「判定出力が導出され」ることであって、「導出される毎に所定数を累積加算」するものであり、引用発明は本願発明における「入賞により加算され」に対応する構成を備えている。また、上記「払出景品玉数関連情報検出手段の検出出力が導出される」こととは、「景品玉払出手段によって払出される景品玉数に関連する情報」が「払出景品玉検出器61」により「検出」(摘示g.)され、その「検出出力が導出され」ることであって、「導出される毎に払出された景品玉数に対応した数を順次減算」するものであり、引用発明は本願発明における「賞球により減算され」に対応する構成を備えている。そして上記した「加算」及び「減算」により「払出未処理玉数」が「計数」されるのであり、上記「払出未処理玉数」は、本願発明における「払出未了データ」に対応するものである。
ここで、引用発明における「払出未処理玉カウンタA」を加算する上記した「ステップS71」は、「入賞玉検出器Aチェック処理」(摘示q.)における処理であり、同じく「払出未処理玉カウンタB」を加算する上記した「ステップS79」は、「入賞玉検出器Bチェック処理」(摘示r.)における処理であり、同引用発明において、「景品玉払出制御用の制御基板」が「入賞玉検出器A(52a),B(52b)」を「制御」(摘示k.)するものであるから、上記「入賞玉検出器Aチェック処理」及び「入賞玉検出器Bチェック処理」は「景品玉払出制御用の制御基板」において行われるものであり、「ステップS71」及び「ステップS79」による「入賞玉」を「加算する」処理も「景品玉払出制御用の制御基板」において行われるものであるということができる。同様に、引用発明における「払出未処理玉カウンタA」から「1つずつ減算」する上記した「ステップS59」、及び、「払出未処理玉カウンタB」から「1つずつ減算」する上記した「ステップS61」は、「景品玉払出モータのコントロール処理」(摘示o.)における処理であり、同引用発明において、「景品玉払出制御用の制御基板」が「景品玉払出モータ60」を「制御」(摘示k.)するものであるから、上記「景品玉払出モータのコントロール処理」は「景品玉払出制御用の制御基板」において行われるものであり、「ステップS59」及び「ステップS61」による「景品玉」を「1つずつ減算」する処理も「景品玉払出制御用の制御基板」において行われるものであるということができる。
また引用発明は、「景品玉払出制御に関し異常が発生した場合に、ゲーム制御を中断し、そのときの遊技状態を記憶するようにし、前記異常が解消した後その記憶されている遊技状態に復帰し得るように構成してもよい」(摘示t.)ことから、上記「払出未処理玉数」(本願発明における「払出未了データ」に対応する。)は「景品玉払出制御用の制御基板」に「記憶」されているものである。
一方、本願発明は「(賞球制御基板は、)入賞により加算され賞球により減算される払出未了データを停電時に消去しないようバックアップされ」ていることから、「払出未了データ」は「賞球制御基板」に「記憶」されているものであり、本願発明と引用発明とは、「(賞球制御基板は)入賞により加算(引用発明における「入賞玉を加算」が対応する。)され賞球により減算(引用発明における「景品玉を1つずつ減算」が対応する。)される払出未了データ(引用発明における「払出未処理玉」が対応する。)を記憶」している点で共通しているといえる。
(vii) 引用発明は、「景品玉払出モータがONになった後一定時間が経過しているにもかかわらず払出景品玉検出器がONにならなかった場合にはアラームフラグDがセットされる」(摘示p.)ものであり、上記「景品玉払出モータがONになった後一定時間が経過しているにもかかわらず払出景品玉検出器がONにならなかった場合」とは、本願発明を特定する、「賞球払出装置へ賞球の払出しを指示しても所定時間以上賞球の払出しが前記賞球検出手段により検出されない場合」に対応するとともに、上記「アラームフラグDがセットされる」ことは、本願発明を特定する「異常と判断し」に対応するものである。そして引用発明において、上記「景品玉払出制御用の制御基板」は、「景品玉払出モータ60」及び「払出景品玉検出器61」を「制御する」(摘示k.)ものであることから、「アラームフラグD」を「セット」(本願発明における「異常と判断」に対応する。)するのは、「景品玉払出制御用の制御基板」において行うものであるといえる。
そうすると、同引用発明は、本願発明を特定する「前記賞球制御基板は、前記賞球払出装置へ賞球の払出しを指示しても所定時間以上賞球の払出しが前記賞球検出手段により検出されない場合」、「異常と判断し」の事項に対応する構成を備えているといえる。
(viii) 引用発明は、「払出すべき払出未処理玉が残存していないにもかかわらず景品玉が払出されている場合にこのアラームフラグEがセットされる」(摘示p.)ものであり、上記「払出すべき払出未処理玉が残存していないにもかかわらず景品玉が払出されている場合」とは、本願発明を特定する、「払出未了データの値が零であるにも係わらず前記賞球検出手段により賞球の払出しが検出された場合」に対応するとともに、上記「アラームフラグEがセットされる」ことは、本願発明を特定する「異常と判断し」に対応するものである。そして上記(vii)に記載した理由と同様の理由により、引用発明において、「アラームフラグE」を「セット」(本願発明における「異常と判断」に対応する。)するのは、「景品玉払出制御用の制御基板」において行うものであるといえる。
そうすると、同引用発明は、本願発明を特定する「(前記賞球制御基板は、)前記払出未了データの値が零であるにも係わらず前記賞球検出手段により賞球の払出しが検出された場合」、「異常と判断し」の事項に対応する構成を備えているといえる。
(ix) 引用発明は、「払出景品玉検出器61に関し異常が発生した場合や不正排出玉が検出された場合に、景品玉排出流路を切換えて、景品玉が遊技者に払出されないように制御してもよい」(摘示p.)ものであり、上記(viii)に記載した、「払出すべき払出未処理玉が残存していないにもかかわらず景品玉が払出されている場合」(本願発明における、「払出未了データの値が零であるにも係わらず前記賞球検出手段により賞球の払出しが検出された場合」に対応する。)には、「景品玉排出流路を切換えて、景品玉が遊技者に払出されないように制御してもよい」ものである。
一方、本願発明は「賞球の払出しが検出されて異常と判断した場合には、前記賞球払出装置の駆動を強制的に停止する」ことをその発明特定事項とするものであり、「賞球払出装置の駆動を強制的に停止する」ことにより「賞球」(引用発明における「景品玉」が対応する。)が遊技者に払出されないようにするものであるといえるから、本願発明と引用発明とは「賞球の払出しが検出されて異常と判断した場合には、賞球(引用発明における「景品玉」が対応する。)が遊技者に払出されないようにする」点で共通しているということができる。

以上の事項より、本願発明と引用発明とは以下の点で一致し、また、相違していると認められる。
一致点;
遊技盤面上に発射された遊技球が特定の入賞口に入賞又は特定の通過口を通過するタイミングに起因して抽出される乱数値に従って遊技者に有利なゲーム内容とするか否かを決定する主制御基板と、賞球を払い出す賞球払出装置を制御する賞球制御基板と、該賞球払出装置から排出される賞球を検出すると賞球検出信号を出力する賞球検出手段と、遊技盤面上の入賞口への入賞球を検出すると入賞検出信号を出力する入賞検出手段と、を含み構成された弾球遊技機であって、前記賞球制御基板は、前記入賞検出手段が出力する入賞検出信号を直接入力し、入賞により加算され賞球により減算される払出未了データを記憶し、前記賞球制御基板は、前記賞球払出装置へ賞球の払出しを指示しても所定時間以上賞球の払出しが前記賞球検出手段により検出されない場合、及び前記払出未了データの値が零であるにも係わらず前記賞球検出手段により賞球の払出しが検出された場合、にはそれぞれ異常と判断し、前記払出未了データの値が零であるにも係わらず前記賞球検出手段により賞球の払出しが検出されて異常と判断した場合には、賞球が遊技者に払出されない、よう構成された弾球遊技機、である点。
相違点;
(イ)入賞検出手段による遊技盤面上の入賞球の検出が、本願発明は、各入賞口への入賞球の検出であるのに対して、引用発明は、「入賞玉検出器A(52a),B(52b)」により検出するものであり、各入賞口に検出手段が設けられているものではない点。
(ロ)主制御基板と賞球制御基板との接続を、本願発明は主制御基板から賞球制御基板にのみ送信できる一方向通信回路としたのに対して、引用発明はゲーム制御用の制御基板(主制御基板)から景品玉払出制御用の制御基板(賞球制御基板)にのみ送信できる一方向通信回路としたものではない点。
(ハ)賞球制御基板に記憶された払出未了データが、本願発明においては、停電時に消去しないようバックアップされているのに対して、引用発明においては、停電時に消去しないようバックアップされているか明らかでない点。
(ニ)払出未了データの値が零であるにも係わらず賞球検出手段により賞球の払出しが検出されて異常と判断した場合には、賞球が遊技者に払出されないようにするのが、本願発明では、賞球払出装置の駆動を強制的に停止することによるものであるのに対して、引用発明では、景品玉排出流路を切換えることによるものである点。

上記の相違点について検討する。
(イ)の相違点について
遊技盤面上に複数の入賞口を設けた弾球遊技機において、複数の入賞口のそれぞれに入賞球の検出手段を設けることは、下記の周知例1及び2に例示されるように周知技術であり、該周知技術を参酌し、引用発明が備える入賞口のそれぞれに入賞球の検出手段を設けて、各入賞口への入賞球の検出を行うことは当業者が適宜になし得る事項である。
(ロ)の相違点について
主制御基板と賞球制御基板とを別体に設けた弾球遊技機において、主制御基板と賞球制御基板との接続を、上記主制御基板から上記賞球制御基板にのみ送信できる一方向通信回路とすることは下記の周知例3ないし5に例示されるように周知技術である。そして、上記した周知技術を参酌し、引用発明において、「ゲーム制御用の制御基板」(本願発明における「主制御基板」に対応する。)と「景品玉払出制御用の制御基板」(本願発明における「賞球制御基板」に対応する。)との接続を、「ゲーム制御用の制御基板」(「主制御基板」)から「景品玉払出制御用の制御基板」(「賞球制御基板」)にのみ送信できる一方向通信回路とすることは当業者が容易になし得ることである。
(ハ)の相違点について
引用文献には「パチンコ遊技機1全体の動作を制御する機能を有するマイクロコンピュータ100」を備えた弾球遊技機が併せて記載されており、該「マイクロコンピュータ100」の「RAM103は、電源を切ったりまたは停電時等により電源が供給されない場合においても、コンデンサからの電力により所定時間(たとえば24時間)記憶データが保存されるように構成され」(摘示h.)ている。引用文献の上記摘示を勘案すると、「景品玉払出制御用の制御基板をゲーム制御用の制御基板に対し別体に設け」た引用発明においても、「景品玉払出制御用の制御基板」(本願発明における「賞球制御基板」に対応する。)に記憶された、「加算」及び「減算」により「計数」される「払出未処理玉数」(本願発明における「入賞により加算され賞球により減算される払出未了データ」に対応する。)もまた、「所定時間(たとえば24時間)保存されるように構成され」るものであることを、同引用文献は示唆しているといえるが、さらに当該技術分野における技術レベルを参照すると、ゲーム制御用の主制御基板と賞球制御基板とを備えた弾球遊技機において、賞球制御基板に記憶された払出未了データ(払出未処理玉数)を停電時に消去しないようバックアップすることは周知(例えば、下記の周知例3及び4があげられる。)の技術である。
そうすると、上記周知技術を参酌して、引用発明における「景品玉払出制御用の制御基板」(「賞球制御基板」)に記憶された「払出未処理玉数」(「払出未了データ」)を停電時に消去しないようバックアップすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
(ニ)の相違点について
払出未了データの値が零であるにも係わらず賞球検出手段により賞球の払出しが検出されて異常と判断した場合には、賞球払出装置の駆動を強制的に停止することで賞球が遊技者に払出されないようにすることは周知(例えば、下記の周知例6及び7があげられる。)の技術であり、該周知の技術を参酌して、引用発明において、「払出未処理玉数」(「払出未了データ」)の値が零であるにも係わらず「払出景品玉検出器61」(「賞球検出手段」)により「景品玉」(「賞球」)の払出しが検出されて異常と判断した場合に「景品玉排出流路」を切換えて「景品玉」(「賞球」)が遊技者に払出されないようにすることに代えて、「景品玉払出装置59」(「賞球払出装置})の駆動を強制的に停止するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

ここで、本願の明細書には、本願発明の効果として、
(A)「・・・賞球制御基板31が、・・・検出信号を直接取得し、取得した検出信号に基づき払い出すべき賞球データとして払出未了データDP(DP1?DP3)を演算し記憶保持することができる。従って、従来のように主制御基板30が・・・入賞球に対応した賞球データを演算し、演算した賞球データを賞球制御基板31に送信する処理を省くことができ主制御基板30の処理の負担を一層軽減化することができるという優れた効果を有する。」(段落【0045】)
(B)「・・・更新記憶される払出未了データDP(DP1?DP3)は、記憶保持することができるので、賞球があるまで入賞球を保持する必要はなく入賞球を検出した直後にこの入賞球を機外に排出することができるという優れた効果も有する。この結果、従来のように入賞球を全て一旦保持するためのセーフ球タンク、セーフ球タンクから賞球がある毎に入賞球を1個づつ排出する装置等をなくすことができ弾球遊技機の構成を一層簡略化することができるという優れた効果も奏する。」(段落【0046】)
(C)「更に、本実施例においては、払出未了データDPを各入賞口の賞球個数に対応させて・・・分離して入賞があればインクリメントし、賞球の払い出しがあればデクリメントする構成なのでRAMの使用領域を少なくすることができるという効果も有している。
また、・・・1チップマイコンのRAMは電源回路SPによりバッテリバックアップする構成を採用しているので、停電が発生しても停電前のゲーム状態から停電復旧後にゲームを再開することができ遊技者に不測の不利益を与えるといった不具合を未然に解決している。」(段落【0047】)
(D)「更に、本実施例においては、・・・賞球制御基板31は賞球に係る一切の検出信号を直接入力することができるという極めて優れた効果を奏する。」(段落【0048】)などの点が記載されている。
そこで、本願発明が奏する上記(A)ないし(D)の効果について検討すると、
(A)及び(D)の点については、引用発明においても、上記(v)及び(vi)に記載したように、「景品玉払出制御用の制御基板」が入賞に係る検出信号を直接取得し、取得した検出信号に基づき払い出すべき賞球データとして「払出未処理玉数」(本願発明における「払出未了データ」)を演算するものであり、演算した賞球データを「ゲーム制御用の制御基板」から「景品玉払出制御用の制御基板」に送信するものではなく、(A)及び(D)の点は本願発明に特有な効果とはいえない。
(B)の点については、引用発明においても、「入賞玉」は「入賞玉検出器A(52a)」または「入賞玉検出器B(52b)」によりそれぞれ「検出された後に機外に放出され」るようになっており(引用文献の摘示c.d.)、入賞球を一旦保持するものではなく、さらに、引用文献の摘示s.の「なお、前記入賞玉検出器A(52a),B(52b)に関し異常が発生した場合に、各入賞玉検出器A,Bで集合される入賞玉を貯留できるようにしてもよい。」の記載をみても、引用発明は、本質的に、いわゆる非貯留玉方式のものであることは明らかであり、(B)の点は本願発明に特有な効果とはいえない。(下線付加)
(C)の点については、引用発明においても、上記(vi)に記載したように、「払出未処理玉数」(本願発明における「払出未了データ」)は賞球個数に対応させて「払出未処理玉カウンタA」と「払出未処理玉カウンタB」に分離して記憶されており、入賞があれば加算され、景品玉の払い出しがあれば1つずつ減算するものであり、さらにRAMに記憶したデータをバックアップすることも(ハ)の相違点についての検討において記載したとおりであり、(C)の点は格別な効果とはいえない。
以上のとおり、本願発明が奏する効果も引用発明及び周知技術が奏する効果から予測しうる範囲内のものであって、格別なものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

【周知例】
1.特開平6-71028号公報
遊技盤の遊技部内に設けた入賞領域へ入賞した入賞球の種別を検出する入賞種別検出手段と、上記入賞種別検出手段によって検出された入賞球の種別に応じた賞球排出数を個別に記憶する賞球排出数記憶手段と、上記賞球排出数記憶手段の記憶内容を保護する記憶保護手段と、上記賞球排出数記憶手段が記憶する賞球排出数に基づいて、遊技球排出装置より賞球を排出させる排出動作制御手段とを備えた遊技機において、補助変動入賞装置34の第1特図始動口38aへ入賞した球を検出する第1特図始動入賞球検出器41、第2特図始動口38bへ入賞した球を検出する第2特図始動入賞球検出器42、第3特図始動口38cへ入賞した球を検出する第3特図始動入賞球検出器43、変動入賞装置33内の継続入賞領域へ入賞した球を検出する継続入賞球検出器44、変動入賞装置33内へ入賞した大入賞口入賞球を一括して検出する大入賞口入賞球検出器45、第1普図始動ゲート36aへの通過入賞球を検出する第1普図始動ゲート通過球検出器46、第2普図始動ゲート36bへの通過入賞球を検出する第2普図始動ゲート通過球検出器47、第1一般入賞口11aへの入賞球を検出する第1一般入賞球検出器48、第2一般入賞口11bへの入賞球を検出する第2一般入賞球検出器49、第3一般入賞口11cへの入賞球を検出する第3一般入賞球検出器50、第4一般入賞口11dへの入賞球を検出する第4一般入賞球検出器51を設けた遊技機。(特許請求の範囲の請求項1、段落【0008】【0025】【0052】【0056】)

2.特開平10-337363号公報
遊技者の操作で発射された遊技球が遊技盤に設けられた複数の入賞口の何れかに入賞することにより、その入賞に対応する設定数の賞球を賞球払い出しユニットより自動的に払い出すパチンコ機の賞球払い出し装置において、6個の入賞口1h,1i,1j,1k,1m,1nについて、設定賞球払い出し数系列センサー5a,5b,5c,5d,5e,5fを各入賞口1h?1nに個別に配置した、パチンコ機の賞球払い出し装置。(特許請求の範囲の請求項1、段落【0019】、図2)

3.特開平10-43391号公報
遊技盤に設けられる電気的遊技装置を駆動制御する遊技制御回路基板と複数種類の景品玉数情報に基づいて景品玉払出装置を駆動制御する景品玉払出制御回路基板が設けられ、前記遊技制御回路基板と前記景品玉払出制御回路基板とは、遊技制御回路基板から景品玉払出制御回路基板へ向けての一方向通信で接続されており、遊技制御回路基板69から入賞玉検出器の種類に応じて異なる入賞玉検出信号AないしCを景品玉払出制御回路基板70の演算回路86に送り、景品玉払出制御回路基板70は、演算回路86で演算された演算結果を記憶する複数の記憶回路87?89を備え、該記憶回路87?89の記憶値のいずれかを選択し、選択された記憶値に基づいて景品玉の払出制御が行われるもので、前記記憶回路87?89には、電源回路100に接続されるバックアップ電源101からバックアップ電流が供給されることにより、停電時にその記憶値が消滅しないようになっている、弾球遊技機。(段落【0006】【0032】-【0036】)

4.特開平9-266981号公報
「特定入賞玉検出器38」、「入賞玉検出器39a,39b」、「始動入賞玉検出器46a」、「入賞玉検出器41a,41b,46b,46c」からの検出信号が、「遊技制御用マイクロコンピュータ202」から「払出制御用マイクロコンピュータ220」への一方向通信により送信され、入賞玉に応じた払出動作を行なうに際し、「払出制御用マイクロコンピュータ220」から「遊技制御用マイクロコンピュータ202」への情報の通信が行なわれないので、払出制御用マイクロコンピュータ220側からの入力を利用した不正なデータの入力による「遊技制御用マイクロコンピュータ202」の制御の不正改造を防ぐことができ、「入賞玉処理装置115」は、発生した入賞玉を一端停留し、所定の景品玉が払出される毎に1個ずつ入賞玉を処理するようにしたので、停電時等においては、発生した入賞玉が証拠玉として残留するので、遊技者との間でトラブルが生じることがなく、また、バックアップ機能がある場合には、このような「入賞玉処理装置115」を使用することなく、発生した入賞玉をすべて記憶して、記憶が終わった入賞玉を「弾球遊技機1」の外部に排出するようにしてもよい、弾球遊技機。(段落【0021】【0053】【0067】【0163】)

5.特開平5-23425号公報
「遊技盤の制御ユニット100」と「球排出装置の制御ユニット200」との間を一方向の通信手段で接続し、「球排出装置の制御ユニット200」では「遊技盤の制御ユニット100」から送信される賞球数データを読み取り、記憶部に記憶する、パチンコ機の球排出装置。(段落【0006】【0040】【0041】【0064】-【0076】)
6.特開平10-118288号公報
賞球個数情報が「遊技制御用マイクロコンピュータ202」から「払出制御用マイクロコンピュータ220」へ送信されてきていないにもかかわらず、玉の払出動作が検出されたとき、すなわち、玉払出条件が成立していないにもかかわらず、玉の払出動作が行なわれた時、S223a(図23)に進み、エラー表示を行なった後、S295(図26)に進み、払出停止を行なう、遊技用装置。(段落【0070】【0071】【0132】-【0133】)

7.特開平9-168652号公報
入賞球無しのときや排出開始条件確認処理にて、何らかの異常により賞品球が排出されてしまう場合、「排出不正監視カウンタ1,2の値が“3”以上になると、排出に不正(異常)ありと判定して、「排出機構42a,42b」の「ロックSol」をオフし、「ロックSol」より上流側の賞品球の流下を阻止し、賞品球の排出を直ちに停止する、遊技機の球排出装置。(段落【0131】-【0133】)

【参考例】
特開平10-99496号公報
遊技球の特定入賞口への入球又は通過に起因して主制御用のCPUにおいて乱数を取得し、特別遊技実行(大当り)の判定がなされる遊技機。(段落【0003】【0008】【0014】)

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願の他の請求項について論ずるまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-27 
結審通知日 2006-10-30 
審決日 2006-12-13 
出願番号 特願2001-393400(P2001-393400)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 渡部 葉子
小田倉 直人
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 尾崎 隆弘  

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