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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B43L
管理番号 1151159
審判番号 不服2004-12799  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-22 
確定日 2007-01-22 
事件の表示 平成 7年特許願第322164号「プロッタの用紙検出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月27日出願公開、特開平 9-136498〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成7年11月16日の出願であって、平成16年5月25日付けで拒絶の査定がされたため、同年6月22日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成16年6月22日付けの手続補正を却下するとともに、これを前提として拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成18年10月10日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
したがって、特許請求の範囲は、平成18年10月10日付け手続補正書に記載のとおり、単一請求項からなるものであり、【請求項1】の記載は次のとおりであり、同請求項に記載された事項によって特定される発明を「本願発明」という。
「画線ヘッドに設けた光反射型のセンサによって用紙支持面上の用紙のエッジを走査し、該エッジの近傍位置を検出するニアエッジ検出ステップと、前記ニアエッジ検出ステップで検出したエッジの近傍位置の用紙面と用紙支持面の反射光量を検出し該反射光量に基づいて用紙レベルと用紙支持面レベルを設定する基準レベル設定ステップと、前記用紙レベルと用紙支持面レベルに基づいてしきい値を設定するしきい値設定ステップと、前記ニアエッジ検出ステップで検出したエッジをセンサによって再度所定の細かいサンプリング周期で走査し該センサの検出値が前記しきい値を越えた位置を用紙エッジとして認識する高精度エッジ検出ステップとを備え、前記基準レベル設定ステップにおいて、前記用紙面の反射光量に基づく用紙レベルが、用紙上での光の反射量の複数のサンプリング値の平均値であり、前記用紙支持面の反射光量に基づく用紙支持面レベルが、用紙の無い部分での光の反射量の複数のサンプリング値の平均値であることを特徴とするプロツタの用紙検出方法。」

第2 当審の判断
1.当審で通知した拒絶理由
当審で通知した拒絶理由は、次の『』内のとおりである。
『請求項1には「用紙レベルと用紙支持面レベルに基づいてしきい値を設定するしきい値設定ステップ」及び「センサの検出値が前記しきい値を越えた位置を用紙エッジとして認識する高精度エッジ検出ステップ」との記載があり、請求項2には「前記しきい値を前記用紙支持面レベルと用紙レベルの差のほぼ2/5とした」との限定がある。
したがって、「しきい値」とは、用紙レベル(用紙からの反射光量)と用紙支持面レベル(用紙支持面からの反射光量)の差のみで定まる量と解さなければならない。
センサがエッジにさしかかれば、前回サンプリング値との差分が大きくなり、その差分を上記の意味での「しきい値」と比較するというのならば理解できるが、実際にしきい値と比較しているのは差分ではなく「センサの検出値」そのものである。そして、【図6】のグラフによれば、【請求項2】のしきい値は同図に「変化量」として示される値の2/5であり、図版レベルの反射量がしきい値を上回ることが明らかであるから、正確なエッジを検出できない。
あるいは、用紙レベルと用紙支持面レベルを2:3又は3:2に内分するレベルと「センサの検出値」そのものを比較する場合も十分理解できるが、しきい値はそのように定義されていない。
さらに、用紙レベル又は用紙支持面レベルの何れかを0とみなせるのであれば、上記の意味でのしきい値と「センサの検出値」そのものを比較することは理解できるものの、レベルを0とみなせるのであれば、「用紙レベルと用紙支持面レベルを設定する基準レベル設定ステップ」の必要性を理解できない。
以上のことから、請求項1,2に係る発明の技術的意義を理解することができず、明細書の記載は平成14年改正前特許法36条4項に規定する要件を満たしていない。』

2.拒絶理由妥当性の判断
平成18年10月10日付け手続補正により請求項2は削除されたが、請求項1は一切補正されておらず、請求項1に「用紙レベルと用紙支持面レベルに基づいてしきい値を設定するしきい値設定ステップ」及び「センサの検出値が前記しきい値を越えた位置を用紙エッジとして認識する高精度エッジ検出ステップ」との記載があるとの状況は変化していない。
請求項2は削除された(補正前請求項2には「前記しきい値を前記用紙支持面レベルと用紙レベルの差のほぼ2/5としたことを特徴とする請求項1に記載のプロツタの用紙検出方法。」と記載されていた。)けれども、発明の詳細な説明には、「反射量P,Zの値に基づいて、(P-Z)を演算し、この値を判断レベルとして記憶し、これに基づきしきい値を設定する。」(段落【0012】)、「コントローラは、前記判断レベルRの値とセンサ8の出力である光の反射量Sとを比較し、反射量Sと判断レベルRの値が近く(あるいはほぼ等しく)なったときの、画線線ヘッド6の位置(即ちセンサ8の位置)を用紙4のエッジの位置として認識する。」(段落【0013】)及び「用紙支持面レベルと用紙レベルの差を求め、その2/5の値に基づいて「しきい値」を決定し、メモリに記憶する。」(段落【0020】)との各記載があり、段落【0012】の「反射量P,Z」は「用紙レベルと用紙支持面レベル」にほかならないから、実施例として補正前請求項2に該当するものが記載されており、他の実施例は記載されていない。そうすると、「用紙レベルと用紙支持面レベルに基づいてしきい値を設定」とは、「用紙レベルと用紙支持面レベルの差に基づいてしきい値を設定」の意味に解釈する(少なくとも、そのような設定を包含する。)のが自然であり、拒絶理由で述べた「「しきい値」とは、用紙レベル(用紙からの反射光量)と用紙支持面レベル(用紙支持面からの反射光量)の差のみで定まる量と解さなければならない」との状況にも変化はない。
本願明細書には、発明が解決しようとする課題欄に、「図5に示すように、図板2上のA点で用紙4と、図板2の光の反射量即ちレベルを判定し、これに基づいて、固定的な判定レベルを設定してしまうと、上記図板2とレールの平行誤差等により、画線ヘッド6がB点に到達する前に画線ヘッド6に取り付けられたセンサ8の光量検出値が図6に示すように判定レベルを超えてしまい、正確な用紙エッジの検出ができなくなるという問題点が存した。」(段落【0003】)との記載があり、【図6】には横軸を「センサ移動」、縦軸を「反射量」とするグラフが描かれており、同グラフには、「図板レベル」及び「用紙レベル」においてほぼ直線状に増大するとともに、「図板レベル」と「用紙レベル」の間において、上記直線状よりも大勾配で直線状に増大する様子が描かれている。そして、「図板レベル」及び「用紙レベル」においてほぼ直線状に増大する原因が、段落【0003】の「図板2とレールの平行誤差等」にあることは明らかである。また、同図に「変化量」として示されているものが、「用紙レベルと用紙支持面レベルの差」に該当することも明らかであり(用紙レベル及び用紙支持面レベルは「ニアエッジ検出ステップで検出したエッジの近傍位置」で検出されるから)、同図ではこの変化量と、大勾配区間にさしかかる直前の反射量が概略同程度に描かれている。
もちろん、【図6】は従来技術及び課題説明のための図面であるが、「センサ移動」と「反射量」の関係自体は、本願発明においてもそのまま当てはまる。そして、本願発明の実施例では同図の「変化量」の2/5をしきい値とし、大勾配区間にさしかかる直前(当然、検出しているのは用紙支持面の反射量である)に既にしきい値(「変化量」の2/5)を超えるのだから、正確なエッジを検出できない。しきい値を「変化量」よりも大きく設定すれば上記の状況は回避されるかもしれないが、図板2とレールの平行誤差等が僅少である場合(【図6】でいうと、「図板レベル」及び「用紙レベル」の直線状部分が横軸とほぼ平行になる。)、用紙を検出する領域に入っても、反射量がしきい値に達しないおそれが十分あるから、正確なエッジを検出できないことに変わりはない。
拒絶理由で指摘したように、しきい値と比較する対象が前回サンプリング値との差分であったり、又はしきい値が用紙レベルと用紙支持面レベルの中間(例えば、2:3又は3:2に内分するレベル)であるのならば、上記の不合理はないけれども、本願明細書ではそれらのようには定義されていないばかりか、その旨指摘して補正の機会を与えたにもかかわらず補正していないのだから、そのように解釈することはできない。
さらに拒絶理由で指摘したように、用紙レベル又は用紙支持面レベルの何れかを0とみなせるのであれば、しきい値と「センサの検出値」そのものを比較することは理解できるものの、レベルを0とみなせるのであれば、「用紙レベルと用紙支持面レベルを設定する基準レベル設定ステップ」の必要性を理解できない。
以上のとおりであるから、当審で通知した拒絶理由は妥当であり、本願明細書は平成14年改正前特許法36条4項に規定する要件を満たしていない。

第3 むすび
本願明細書は平成14年改正前特許法36条4項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-29 
結審通知日 2006-11-29 
審決日 2006-12-12 
出願番号 特願平7-322164
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (B43L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤井 勲
長島 和子
発明の名称 プロッタの用紙検出方法  
代理人 西島 綾雄  

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