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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1151176
審判番号 不服2005-3124  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-08-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-23 
確定日 2007-01-23 
事件の表示 特願2000-372232「半径方向に挿入されたケーブル巻線を有する高電圧発電機固定子及びその組立て方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月 3日出願公開、特開2001-211591〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年12月7日(パリ条約による優先権主張1999年12月9日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成16年11月16日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年2月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月24日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年3月24日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年3月24日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「回転電気機械(10)の固定子(12)において、
回転子用開口部(15)から半径方向に外側へ延在し、側壁(36)に複数のキー部分(40)を有し、円形状の列に配置された固定子歯部(20)と、
前記側壁(36)の間に規定される複数の固定子溝穴(30)と、
前記固定子の軸方向から前記側壁のキー部分に摺動させられて前記固定子溝穴内に配置され、前記固定子溝穴の1つの中に複数個積み重ねられている分離バー(24、25)と、
前記分離バーの間に形成され、前記固定子の軸と平行な軸を有する冷却液導管(26)と、
半径方向に挿入され、前記固定子溝穴内の隣り合う分離バーの間に保持されているケーブル巻線(22)と、
を具備している固定子。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「固定子溝穴内に配置されて、側壁のキー部分と係合し・・・ている分離バー」について「固定子の軸方向から側壁のキー部分に摺動させられて固定子溝穴内に配置され・・・ている分離バー」と限定し、同じく「ケーブル巻線」について「半径方向に挿入され」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-219672号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0002】
【従来の技術】超電導発電機などの回転電機では、機械寸法の縮少、高出力密度化を図るために、回転子と固定子との空隙部に巻線を配置する、いわゆる空隙巻線方式が採用されている。
【0003】図4はこのような巻線支持方式を採用した回転電機の一部断面が示されている。同図に示されているように固定子鉄心1は、薄鉄板を軸方向に積層して構成され、固定子鉄心1の内周には固定子巻線を構成する固定子コイル2が配置されている。固定子鉄心1の内周上に配置された固定子コイル2は、非磁性の材料で作られた支持部材3により支持されている。支持部材3は固定子鉄心1に設けられた固定子鉄心溝4の中に挿入され、押え板5によって堅固に支持固定されている。固定子コイル絶縁6が施された固定子コイル2は固定子鉄心1の内周面に所定の間隔で配置され、上側調整板7、中間調整板8、下側調整板9を介して楔10によって支持固定されている。楔10は、支持部材3に設けられた楔固定溝11に挿入されて一体に固定されている。このような構造を有する回転電機は米国特許第3405297号公報、あるいは特公平3-24139号公報などに示されている。」

また、図4には、回転子用開口部から半径方向に外側へ延在し、側壁に楔固定溝11を有し、円形状の列に配置された支持部材3、及び、支持部材3の側壁の間に規定される複数の固定子溝穴が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、従来技術に対応するものとして、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「回転電機の固定子において、
回転子用開口部から半径方向に外側へ延在し、側壁に楔固定溝11を有し、円形状の列に配置された支持部材3と、
前記支持部材3の側壁の間に規定される複数の固定子溝穴と、
前記側壁の楔固定溝11に挿入される楔10と、前記固定子溝穴内に配置され、前記固定子溝穴の1つの中に設けられた上側調整板7、中間調整板8、下側調整板9と、
前記固定子溝穴内の隣り合う調整板の間に支持されている固定子コイル2と、
を具備している固定子。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その作用・機能からみて、後者における「回転電機」が前者における「回転電気機械」に相当し、以下同様に、「楔固定溝」が「キー部分」に、「支持部材」が「固定子歯部」に、「固定子溝穴の1つの中に設けられた上側調整板、中間調整板、下側調整板」が「固定子溝穴の1つの中に複数個積み重ねられている分離バー」に、「調整板」が「分離バー」に、「支持」が「保持」に、「固定子コイル」が「ケーブル巻線」に、それぞれ相当している。
したがって、両者は、
「回転電気機械の固定子において、
回転子用開口部から半径方向に外側へ延在し、側壁にキー部分を有し、円形状の列に配置された固定子歯部と、
前記側壁の間に規定される複数の固定子溝穴と、
前記固定子溝穴内に配置され、前記固定子溝穴の1つの中に複数個積み重ねられている分離バーと、
前記固定子溝穴内の隣り合う分離バーの間に保持されているケーブル巻線と、
を具備している固定子。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
側壁に有するキー部分に関し、本願補正発明は、「複数」設けられているのに対し、引用発明は、楔用に1個だけ設けられている点。
[相違点2]
分離バーの固定子溝穴内への配置に関し、本願補正発明は、「固定子の軸方向から側壁のキー部分に摺動させられて」いるのに対し、引用発明は、かかる限定が付されていない点。
[相違点3]
本願補正発明は、「分離バーの間に形成され、固定子の軸と平行な軸を有する冷却液導管」を有するのに対し、引用発明は、かかる構成を備えていない点。
[相違点4]
固定子溝穴内に保持されるケーブル巻線に関し、本願補正発明は、「半径方向に挿入され」るとしているのに対し、引用発明は、挿入方向が明確にされていない点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。

・相違点1及び2について
例えば、原査定の拒絶の理由に周知例として引用された実公昭49-4642号公報(第1図参照)、特開昭48-15002号公報にも見られるように、分離バー(楔あるいは中間楔)を固定子鉄心の巻線溝の側壁に設けたキー部分(切込み)に打ち込んで固定することは、回転電気機械の分野における周知技術といえるものである。
また、上記の分離バーを打ち込んで固定する際には、分離バーが固定子の軸方向から側壁のキー部分に摺動させられることになるのは自明のことである。
そして、引用発明において、複数の分離バー(調整板)を固定するための手段は、当業者が必要に応じて適宜選択し得るところであるから、該分離バーの固定に上記周知技術を適用することにより、上記相違点1及び2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。

・相違点3について
例えば、原査定時に周知例として提示した特開昭60-2050号公報(第4?7図参照)にも見られるように、コイルの発熱を除去するために、分離バー(スペーサ)の間に形成され、固定子の軸と平行な軸を有する冷却液導管(冷却流体通路)を設けることは、回転電気機械の分野における周知技術といえるものである。
また、コイルの発熱除去は、回転電気機械に共通する課題である。
そうすると、引用発明において、かかる課題の下に、上記周知技術を適用し、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

・相違点4について
例えば、実願昭54-183809号(実開昭56-101184号)のマイクロフィルム(第1,2図参照)にも見られるように、スロット内に保持されるコイルを半径方向に挿入することは、回転電気機械の分野における周知技術といえるものである。
したがって、引用発明において、上記周知技術を適用し、相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願発明について
平成17年3月24日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年6月23日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「回転電気機械(10)の固定子(12)において、
回転子用開口部(15)から半径方向に外側へ延在し、側壁(36)に複数のキー部分(40)を有し、円形状の列に配置された固定子歯部(20)と、
前記側壁(36)の間に規定される複数の固定子溝穴(30)と、
前記固定子溝穴内に配置されて、前記側壁のキー部分と係合し、前記固定子溝穴の1つの中に複数個積み重ねられている分離バー(24、25)と、
前記分離バーの間に形成され、固定子の軸と平行な軸を有する冷却液導管(26)と、
前記固定子溝穴内の隣り合う分離バーの間に保持されているケーブル巻線(22)と、
を具備している固定子。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から「固定子溝穴内に配置されて、側壁のキー部分と係合し・・・ている分離バー」につき「固定子の軸方向から側壁のキー部分に摺動させられて固定子溝穴内に配置され・・・ている分離バー」との限定を省き、「ケーブル巻線」の限定事項である「半径方向に挿入され」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-24 
結審通知日 2006-08-29 
審決日 2006-09-11 
出願番号 特願2000-372232(P2000-372232)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02K)
P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山村 和人牧 初  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 高木 進
渋谷 善弘
発明の名称 半径方向に挿入されたケーブル巻線を有する高電圧発電機固定子及びその組立て方法  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  
代理人 松本 研一  
代理人 伊藤 信和  

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