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審決分類 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61N
管理番号 1151337
審判番号 不服2002-9930  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-09-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-04 
確定日 2007-01-11 
事件の表示 平成 3年特許願第503227号「可変負荷サイクル筋肉刺激器」拒絶査定不服審判事件〔平成 3年 6月13日国際公開、WO91/08006、平成 5年 9月22日国内公表、特表平 5-506372号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成2年12月4日(パリ条約による優先権主張:1989年12月6日、米国)の出願であって、平成14年3月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年6月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成17年11月4日付けで当審による拒絶理由通知がなされ、これに対して平成18年5月15日に手続補正書が提出されたものである。

II.当審の拒絶理由
当審の上記拒絶理由Aの概要は、「この出願は、明細書及び図面の記載が下記a,bの点で、特許法第36条第4項又は第5項に規定する要件を満たしていない。」というものであり、特許請求の範囲の記載に関して指摘をした事項aのうち、1)のロ)、ニ)、及び2)のイ)は、次のとおりである。

1)特許請求の範囲に記載された「心臓援助システム」は、装置としての構成が明らかでない。
ロ)構成b.について、心臓のデマンドを感知するために骨格筋に連結する感知手段に対応する構成を、発明の詳細な説明中に見いだせない。なお、構成d.に係る第2の電極は、骨格筋に連結してはいるが、感知手段としての機能を有するものとは認められない。さらに、感知手段と刺激手段の連結関係及び信号入出力関係も不明であって、感知手段が、刺激手段と骨格筋とに連結することによって、どのようにして心臓のデマンドを感知するのかという構成が不明である。また、構成c.を考慮すると、感知手段は直接刺激手段に連結していないと思われる。・・・以下略。
ニ)構成e.について、「生理的パラメータを感知するために筋肉に連結したセンサ」は、発明の詳細な説明に記載されていない。なお、「筋肉」は、先行記載された「骨格筋」を指すのか明らかでない。

2)特許請求の範囲に用いられた次の用語の意味が明らかでない。
イ)「心臓のデマンド」の意味内容と、その概念の範囲が明りょうでない。明細書記載のいわゆる「デマンド型のペースメーカ」における「デマンド」とは、異なる意味で用いられているかと推測するが、その意味が不明である。明細書【0005】段落では、「心臓のデマンド(換言すれば、心臓に対するペーシングの要求)」と記載されているが、これは、所定のインターバル期間で自律的な心臓のパルスが検知されないとき、ペースメーカが心臓に対してペーシングのためのパルス刺激を与えるという「デマンド型のペースメーカ」における「デマンド」の意味ではないかと思われ、特許請求の範囲で用いられた「デマンド」の意味を正しく言い直したものとは考えられない。

III.本件明細書
平成18年5月15日の手続補正書により全文補正された明細書の、特許請求の範囲に係る記載(以下「補正後の記載」という)は、次のとおりである。
「【請求項1】
心臓の自己調律心拍を援助するための心臓援助システムであって、機械的に心臓に連結させた外科的に用意される骨格筋の刺激による動力供給型の以下の要件からなることを特徴とする心臓援助システム。
a.上記心臓及び上記骨格筋に連結し、上記骨格筋を、負荷サイクル、パルス振幅、バースト刺激という複数の刺激パラメータに従って刺激して上記心臓の少なくとも一つの心拍に同期させて収縮させる、自己調律する心臓の収縮を感知する第1の電極と、該第1の電極による心臓収縮の感知に対応して刺激信号を発生するため上記第1の電極に電気的に接続するパルス発生器とからなる刺激手段;
b.上記心臓のデマンドを感知するために、上記刺激手段と上記骨格筋に連結する感知手段;
c.上記刺激手段が、
c-1.上記複数の刺激のパラメータに従って心臓の少なくとも1つの心室と同期する筋肉収縮を引き起こすために、上記骨格筋に上記刺激信号を供給するために、電気的に上記パルス発生器及び上記骨格筋に連結した第2の電極;
c-2.上記骨格筋の収縮と連係する心臓の活動を感知するために上記骨格筋に連結した体動センサを有し、
c-3.上記骨格筋を刺激する上記複数の刺激パラメータの少なくとも一つを変更可能とし、
d.心臓に対するペーシングのためのパルスを供給するための要求であるデマンドが予め決定された範囲にある間は、上記刺激手段による上記刺激のレートを上記心臓デマンドに追従させ、上記心臓デマンドが上記予め決定された範囲外であるときは、上記刺激のレートを、上記心臓デマンドに追従するレートより低いレートとする心臓援助システム。
・・・請求項2,3省略 」

IV.判断
1.拒絶理由に対応する明細書の記載部分
上記当審拒絶理由Aの1)のロ)で指摘された構成bに対応する補正後の記載は、構成b「上記心臓のデマンドを感知するために、上記刺激手段と上記骨格筋に連結する感知手段;」である。
また、同じく1)のニ)で指摘された構成eに対応する補正後の記載は、構成c-2「上記骨格筋の収縮と連係する心臓の活動を感知するために上記骨格筋に連結した体動センサを有し、」である。
さらに、同じく2)のイ)で指摘された「心臓のデマンド」という用語は、補正後の記載においても用いられている。

2.拒絶理由の判断
a)拒絶理由A1)ロ)について
本願明細書の発明の詳細な説明には、構成bの「上記心臓のデマンドを感知するために、上記刺激手段と上記骨格筋に連結する感知手段」に相当する具体的な部材は記載されていない。
すなわち、構成bにおける「上記骨格筋」は、先行する「機械的に心臓に連結させた外科的に用意される骨格筋」という記載にある特定の骨格筋を指すものと認められるところ、発明の詳細な説明及び図面より、このような「骨格筋22」に第2の電極32(又は刺激リード32)が連結していることは認められるものの、この第2の電極32は、構成c-1にあるように「上記複数の刺激のパラメータに従って心臓の少なくとも1つの心室と同期する筋肉収縮を引き起こすために、上記骨格筋に上記刺激信号を供給するため」の電極であると認められるので、これが心臓のデマンドを感知することのできる感知手段を構成するものであるとは認められない。
より具体的にいえば、明細書の【0020】段落、及び図4のブロック図にあるように、この第2の電極32(刺激リード32)は、もっぱら、条件発生器168の条件付けパルスと結合した刺激発生器166の刺激パルスを骨格筋に供給するために用いられるものである旨開示されているので、これがなんらかの意味での感知手段を構成するものと解することはできない。
さらに、発明の詳細な説明及び図面には、第2の電極32以外に、該骨格筋に連結する部材は、なんら記載されていない。
したがって、「上記心臓のデマンドを感知するために、上記刺激手段と上記骨格筋に連結する感知手段」は、その意味が明りょうでないとともに、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものでもない。

b)拒絶理由A1)ニ)について
本願明細書の発明の詳細な説明には、【0018】段落に、「心臓のデマンド」を予想する手段として、体動センサ104を設けることが記載されているが、この体動センサ104は、骨格筋22ではなくパルス発生器36のハウジングに取り付けられるものであり、又図4のブロック図に示されるように、刺激手段の一部を構成するパルス発生器36のみに連結するものである。又、【0018】段落に、この体動センサ104は、「このましくはピエゾ電気結晶体であり、皮下埋設可能なパルス発生器36のハウジングで受けた機械的エネルギーを電気的エネルギーへ変える」とあるように、体の動きに起因する機械的エネルギーを電気的エネルギーへ変え、体動を検出するものであって、「上記骨格筋の収縮と連係する心臓の活動を感知するため」のものとはいえない。
一方、心臓の活動は、構成aの「自己調律する心臓の収縮を感知する第1の電極」によって感知されるものであるが、第1の電極(ペーシングリード34)は、図1?3にも示されるように心臓に連結するものであって、骨格筋22に連結されるものではない。
したがって、「上記骨格筋の収縮と連係する心臓の活動を感知するために上記骨格筋に連結した体動センサ」は、その意味が明りょうでないとともに、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものでもない。

なお、発明の詳細な説明の【0007】段落の記載が補正され、請求項1の記載に対応させて、「すなわち本発明は、・・・心臓100のデマンドを感知するために、刺激手段と骨格筋22に連結する感知手段32とを有し、・・・骨格筋22の収縮と連係する心臓100の活動を感知するために骨格筋22に連結した体動センサ104を有し、・・・心臓援助システムである。」とされたが、この記載は、実質的に請求項1の記載を繰り返したにすぎないものであるとともに、その内容が明細書のその他の部分の記載内容と整合しないものでもあるので、これをもって請求項1に係る発明が本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであると言うことはできない。

c)拒絶理由A2)イ)について
補正後の構成dにおいて、心臓のデマンドは、「心臓に対するペーシングのためのパルスを供給するための要求であるデマンド」と定義されたが、「デマンド」の意味内容が依然として明りょうでない。
明細書【00012】段落には、「パルス発生器36は公知のデマンドペーシングを行うモードで動作するペーシング発生器154を含んでいる。基本的には患者の心臓の電気的活動は、ペーシングリード34を経てモニターされる。自然に生じている心臓の収縮がペーシングリード34を介して見付けられ、センスアンプ156がそれを感じ取ってペーシング発生器154に通知する。この自然に生じている収縮が割り当てられたある時間内で感知されるならば、ペーシング発生器154の出力は抑制される。しかしながら心臓の最後の収縮以降十分な時間が経過したとペーシングリード34を経たモニタリングでペーシング発生器154が判断して決定すると、所望の心臓の収縮を人工的に刺激するために、パルス発生器36はペーシングリード34を経て心臓へ伝えるパルスを作り出す。」と記載されているが、「自然に生じている収縮が割り当てられたある時間内で感知され」ないことが、ペーシングのためのパルス供給を要求する条件となるところ、これを「心臓に対するペーシングのためのパルスを供給するための要求であるデマンド」と表現したものであるとすると、「デマンド」を感知する手段は、発明の詳細な説明では心臓に連結されたペーシングリード34(第1の電極34)であり、一方、特許請求の範囲では構成bの「上記心臓のデマンドを感知するために、上記刺激手段と上記骨格筋に連結する感知手段」であるので、両者は一致しない。
また、心臓のデマンドを、上記のように、所定のインターバル期間で自律的な心臓のパルスが検知されないことによるペーシングのためのパルス供給の要求であると理解すると、構成dの「デマンドが予め決定された範囲にある」とは、何を意味するものであるか不明となり、したがって、「上記刺激手段による上記刺激のレートを上記心臓デマンドに追従させ」るとはどのようなことを意味するのかも不明となる。

したがって、本願は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであると認められず、又、本願の特許請求の範囲は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものであるとは認められない。

V.むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていないので、当審の拒絶理由によって拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-17 
結審通知日 2006-08-17 
審決日 2006-08-31 
出願番号 特願平3-503227
審決分類 P 1 8・ 534- WZ (A61N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水谷 万司稲積 義登阿部 寛  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 稲村 正義
増山 剛
発明の名称 可変負荷サイクル筋肉刺激器  
代理人 岡村 信一  
代理人 小林 十四雄  

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