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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1151363
審判番号 不服2004-944  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-10-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-14 
確定日 2007-01-31 
事件の表示 平成 8年特許願第 34716号「マイクロファイル」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月11日出願公開、特開平 8-263978〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年2月22日(パリ条約による優先権主張1995年3月16日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成15年1月23日付け拒絶理由通知に対して、同年4月24日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月10日付けで拒絶すべき旨の査定がなされ、これに対し、平成16年1月14日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 平成16年1月14日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成16年1月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

〔理 由〕
1.本件補正前及び本件補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲についてするもので、本件補正前に、
「【請求項1】
回転可能に支持されたデータ格納用ディスク装置と、
マイクロモータと、
選択的に移動可能であり、前記ディスク上の前記データを選択的にアドレスするアクセス・ヘッドと
を含むマイクロファイルであって、前記マイクロモータは、
ワン・ピース・アセンブリとして前記ディスクと一体化され、前記ディスクの周囲から径方向に外側に伸び、互いに円周方向に離隔した複数のロータ磁極を持つロータと、
前記ロータ回りの円周上に互いに離隔した複数のステータ磁極を持ち、前記ロータ磁極それぞれと順次に連係して、前記ロータを回転させて前記ディスクを回転させるステータとを有する、
マイクロファイル。
【請求項2】
前記ステータ極はそれぞれ、導電コイルが一体型に巻かれて、磁気コアの励起時に前記磁気コアを通して磁束を発生させる前記磁気コアを含む、請求項1記載のマイクロファイル。
【請求項3】
前記ステータ極は、前記ロータの対向面上で連係する対として配置され、連続的なステータ極の対は、異なる位相で電気的に励起されて、前記ロータとディスクの回転が維持される、請求項2記載のマイクロファイル。
【請求項4】
前記ステータ極のコイルは前記ステータ極のコア回りに螺旋状に巻かれた、請求項3記載のマイクロファイル。
【請求項5】
前記ステータ極のコア及びコイルは、基板上に一体化され、それぞれ電気メッキされた磁性材料と電気メッキされた導電材料、及びその間の誘電体を含む、請求項4記載のマイクロファイル。
【請求項6】
前記ロータは前記ディスクと実質的に同一平面上にあり、前記ディスクを一体型に取り囲んだ、請求項4記載のマイクロファイル。
【請求項7】
前記ステータ・コアはそれぞれ、実質的にU字型であり、前記ロータと実質的に同一平面上に配置され、円周上に隣接したステータ極の対を画成する、請求項6記載のマイクロファイル。
【請求項8】
前記ロータは、前記ロータ極に一体型に接合され、直径上に向き合った前記ロータ極間で磁束を伝える磁気リングを含む、請求項7記載のマイクロファイル。
【請求項9】
前記ディスクは、中に支持シャフトを受け入れて、前記ディスクが前記支持シャフト上で回転できるようにする中央穴を含む、請求項6記載のマイクロファイル。
【請求項10】
回転可能に支持されてデータを格納するディスク装置と、
マイクロモータと、
選択的に移動可能であり、前記ディスク上の前記データを選択的にアドレスするアクセス・ヘッドと、をそれぞれ含む、横方向に隣接した実質的に同一平面上のマイクロファイル対と
隣接した前記マイクロファイル間に配置されて、前記アクセス・ヘッドを同時に支持し、選択的に移動させて、前記ディスク上の前記データをアドレスする共通アクチュエータと、を含むマイクロカードであって、
前記マイクロモータは、
ワン・ピース・アセンブリとして前記ディスクと一体化され、前記ディスクの周囲から径方向に外側に伸び、前記ディスク回りで円周上に離隔した複数のロータ磁極を持つロータと、
前記ロータ回りで円周上に互いに離隔した複数のステータ磁極を持ち、前記ロータ極それぞれと順次に連係して前記ロータを回転させて前記ディスクを回転させるステータと
を含む、マイクロカード。
【請求項11】
前記共通アクチュエータは、
固定ベースと、
基部にて前記ベースに接合固定され、平行に離隔したカンチレバー・スプリング対と、
前記スプリングの末端に接合固定され、前記ベースに平行なクロスバーと、
前記クロスバーから反対方向に伸びて、前記クロスバーと同軸であり、それぞれが前記隣接したマイクロファイルの前記アクセス・ヘッドそれぞれを支持する、支持アーム対と、
前記クロスバーに動作可能に接合されて前記クロスバーを並進させ、前記スプリングをフレキシブルに曲げて、前記ディスクそれぞれの前記アクセス・ヘッドを選択的に位置づけて前記ヘッド上の前記データをアドレスする、ボイス・コイル・モータと、
を含む、請求項10記載のマイクロカード。
【請求項12】
前記支持アームは、前記ディスクと実質的に径方向に整列し、前記アクセス・ヘッドを前記ディスクに沿って径方向に並進させて前記データをアドレスする、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項13】
前記ボイス・コイル・モータは、
前記クロスバーと接合固定されて前記クロスバーと共に移動する導電コイルと、
前記コイルの対向面に配置されて、前記コイルが励起された際に前記コイルを磁気的に移動させる固定永久磁石の対と、
を含む、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項14】
複数の前記マイクロファイル対を含み、各対は独立した前記共通アクチュエータの1つを持つ、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項15】
標準5.0cmディスク・フォーム・ファクタの約36.5平方センチメートルに配置され、PCMCIA規格に沿って構成された複数のマイクロファイル対を含む、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項16】
前記マイクロファイル対を4つ含む、請求項15記載のマイクロカード。
【請求項17】
標準5.0cmディスク・フォーム・ファクタの1/4の約9平方センチメートルに配置された複数の前記マイクロファイル対を含む、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項18】
前記マイクロファイル対を2つ含む、請求項17記載のマイクロカード。
【請求項19】
標準5.0cmディスク・フォーム・ファクタの1/8の約4.5平方センチメートルに配置された複数の前記マイクロファイル対を含む、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項20】
前記マイクロファイルを一対含む、請求項19記載のマイクロカード。
【請求項21】
前記ステータ極はそれぞれ、導電コイルが一体型に巻かれて、磁気コアの励起時に前記コアを通して磁束を発生させる前記コアを含み、前記ステータ極は、前記ロータの対向面上に連係する対として配置され、連続的なステータ極の対が異なる位相で電気的に励起されて、前記ロータ及びディスクの回転が維持される、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項22】
前記ステータ極のコイルは、前記ステータ極のコア回りに螺旋状に巻かれ、基板上に一体化され、それぞれ電気メッキされた磁性材料と電気メッキされた導電材料、及びその間の誘電体を含む、請求項21記載のマイクロカード。
【請求項23】
前記ロータは前記ディスクと実質的に同一平面上にあり前記ディスクを一体型に取り囲んだ、請求項21記載のマイクロカード。」

とあったものを、

「【請求項1】
回転可能に支持され、保磁力を有する磁性体でコーティングされた基板を含むデータ格納用ディスクと、
マイクロモータと、
選択的に移動可能であり、前記ディスク上の前記データを選択的にアドレスするアクセス・ヘッドと
を含むマイクロファイルであって、前記マイクロモータは、
前記ディスクと、ワン・ピース・アセンブリとして前記ディスクと一体化され、前記ディスクの周囲から径方向に外側に伸び、互いに円周方向に離隔し、かつ軟磁性材料から形成された複数のロータ磁極とから形成されるロータと、
前記ロータ回りの円周上に互いに離隔した複数のステータ磁極を持ち、前記ロータ磁極それぞれと順次に連係して、前記ロータを回転させて前記ディスクを回転させるステータとを有する、
マイクロファイル。
【請求項2】
前記ステータ極はそれぞれ、導電コイルが一体型に巻かれて、磁気コアの励起時に前記磁気コアを通して磁束を発生させる前記磁気コアを含む、請求項1記載のマイクロファイル。
【請求項3】
前記ステータ極は、前記ロータの対向面上で連係する対として配置され、連続的なステータ極の対は、異なる位相で電気的に励起されて、前記ロータとディスクの回転が維持される、請求項2記載のマイクロファイル。
【請求項4】
前記ステータ極のコイルは前記ステータ極のコア回りに螺旋状に巻かれた、請求項3記載のマイクロファイル。
【請求項5】
前記ステータ極のコア及びコイルは、基板上に一体化され、それぞれ電気メッキされた磁性材料と電気メッキされた導電材料、及びその間の誘電体を含む、請求項4記載のマイクロファイル。
【請求項6】
前記ロータは前記ディスクと実質的に同一平面上にあり、前記ディスクを一体型に取り囲んだ、請求項4記載のマイクロファイル。
【請求項7】
前記ステータ・コアはそれぞれ、実質的にU字型であり、前記ロータと実質的に同一平面上に配置され、円周上に隣接したステータ極の対を画成する、請求項6記載のマイクロファイル。
【請求項8】
前記ロータは、前記ロータ極に一体型に接合され、直径上に向き合った前記ロータ極間で磁束を伝える磁気リングを含む、請求項7記載のマイクロファイル。
【請求項9】
前記ディスクは、中に支持シャフトを受け入れて、前記ディスクが前記支持シャフト上で回転できるようにする中央穴を含む、請求項6記載のマイクロファイル。
【請求項10】
回転可能に支持され、保磁力を有する磁性体でコーティングされた基板を含むデータ格納用ディスクと、
マイクロモータと、
選択的に移動可能であり、前記ディスク上の前記データを選択的にアドレスするアクセス・ヘッドと、をそれぞれ含む、横方向に隣接した実質的に同一平面上のマイクロファイル対と
隣接した前記マイクロファイル間に配置されて、前記アクセス・ヘッドを同時に支持し、選択的に移動させて、前記ディスク上の前記データをアドレスする共通アクチュエータと、を含むマイクロカードであって、
前記マイクロモータは、
前記ディスクと、ワン・ピース・アセンブリとして前記ディスクと一体化され、前記ディスクの周囲から径方向に外側に伸び、互いに円周方向に離隔し、かつ軟磁性材料から形成された複数のロータ磁極とから形成されるロータと、
前記ロータ回りで円周上に互いに離隔した複数のステータ磁極を持ち、前記ロータ極それぞれと順次に連係して前記ロータを回転させて前記ディスクを回転させるステータと
を含む、マイクロカード。
【請求項11】
前記共通アクチュエータは、
固定ベースと、
基部にて前記ベースに接合固定され、平行に離隔したカンチレバー・スプリング対と、
前記スプリングの末端に接合固定され、前記ベースに平行なクロスバーと、
前記クロスバーから反対方向に伸びて、前記クロスバーと同軸であり、それぞれが前記隣接したマイクロファイルの前記アクセス・ヘッドそれぞれを支持する、支持アーム対と、
前記クロスバーに動作可能に接合されて前記クロスバーを並進させ、前記スプリングをフレキシブルに曲げて、前記ディスクそれぞれの前記アクセス・ヘッドを選択的に位置づけて前記ヘッド上の前記データをアドレスする、ボイス・コイル・モータと、
を含む、請求項10記載のマイクロカード。
【請求項12】
前記支持アームは、前記ディスクと実質的に径方向に整列し、前記アクセス・ヘッドを前記ディスクに沿って径方向に並進させて前記データをアドレスする、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項13】
前記ボイス・コイル・モータは、
前記クロスバーと接合固定されて前記クロスバーと共に移動する導電コイルと、
前記コイルの対向面に配置されて、前記コイルが励起された際に前記コイルを磁気的に移動させる固定永久磁石の対と、
を含む、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項14】
複数の前記マイクロファイル対を含み、各対は独立した前記共通アクチュエータの1つを持つ、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項15】
標準5.0cmディスク・フォーム・ファクタの36.5平方センチメートルに配置され、PCMCIA規格に沿って構成された複数のマイクロファイル対を含む、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項16】
前記マイクロファイル対を4つ含む、請求項15記載のマイクロカード。
【請求項17】
標準5.0cmディスク・フォーム・ファクタの1/4の9平方センチメートルに配置された複数の前記マイクロファイル対を含む、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項18】
前記マイクロファイル対を2つ含む、請求項17記載のマイクロカード。
【請求項19】
標準5.0cmディスク・フォーム・ファクタの1/8の4.5平方センチメートルに配置された複数の前記マイクロファイル対を含む、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項20】
前記マイクロファイルを一対含む、請求項19記載のマイクロカード。
【請求項21】
前記ステータ極はそれぞれ、導電コイルが一体型に巻かれて、磁気コアの励起時に前記コアを通して磁束を発生させる前記コアを含み、前記ステータ極は、前記ロータの対向面上に連係する対として配置され、連続的なステータ極の対が異なる位相で電気的に励起されて、前記ロータ及びディスクの回転が維持される、請求項11記載のマイクロカード。
【請求項22】
前記ステータ極のコイルは、前記ステータ極のコア回りに螺旋状に巻かれ、基板上に一体化され、それぞれ電気メッキされた磁性材料と電気メッキされた導電材料、及びその間の誘電体を含む、請求項21記載のマイクロカード。
【請求項23】
前記ロータは前記ディスクと実質的に同一平面上にあり前記ディスクを一体型に取り囲んだ、請求項21記載のマイクロカード。」

と補正しようとするものである。

すると、本件補正は、各請求項において、データ格納用ディスクが保磁力を有する磁性体でコーティングされた基板を含むものであること、ロータがディスクとロータ磁極とから形成されるものであること、ロータ磁極が軟磁性材料から形成されたものであることを限定し、請求項15、請求項17及び請求項19において、「約」を削除して数値を具体的に限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である米国特許第5251082号明細書(クラス360)(以下、「引用例」という。)には、Miniaturized disk file pluggable into a card terminal((仮訳)カードターミナルにプラグ接続が可能な小型化されたディスクファイル)に関し、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(a)
「Turning now to a discussion of the drawings, FIG. 1 shows in perspective a file/card assembly 10 of this invention. FIG. 2 shows an exploded view of the file/card assembly of FIG. 1.
FIGS. 1 and 2, shows a housing comprising a box 50 with a lid 52. The lid is removed from the box in FIG. 1 to show the positioning of the disks, stator assembly, head assembly support arm, etc., all mounted in the box. There is shown two disks 12 with a permanent magnet array ring 14 secured to the rim of each disk.
A stator includes a stack 16 0.120 inches overall thickness and comprising eight laminations. The stator has a comb-like configuration positioned parallel to the disks with the ends of the "teeth" of the comb forming an arc adjacent to the ring of rotor magnets on the rim of the disks. 」(第8欄第61行?第9欄第8行)

((仮訳)今、図面の議論に移って、図1は、全体像の中でこの発明のファイル/カード・アセンブリー10を示します。図2は、図1のファイル/カードアセンブリーの分解組立図を示します。
図1および2は、蓋52を備えた箱50を含むハウジングを示します。ディスク、ステータアセンブリ、ヘッドアセンブリ支持アームなど、箱内に取り付けられたすべてのもののポジショニングを示すために、蓋は、図1の中の箱から取り除かれます。各ディスクの縁に固定された永久磁石アレイリング14を備えた2枚のディスク12が示されます。
ステータは、全体の厚さが0.120インチで8つの薄層からなるスタック16を含んでいます。スタータは、ディスクに平行になるように位置決めされた櫛型形状を有し、その櫛の歯のエンド部分は、ディスクの縁に接するロータ磁石リングに隣接する弧を形成しています。)

(b)
「Referring to FIGS. 1 and 2, recording is performed on two disk surfaces facing each other with a head device 28 on each surface. 」(第9欄第61行?同欄第63行)

((仮訳)図1および2を参照して、録音は、各表面上でヘッドデバイス28と対面する2つのディスク表面上で行なわれます。)

(c)
「In one embodiment, the disk comprises a molded polycarbonate substrate whose surface is coated by a magnetic film that may be deposited, e.g., by sputtering. Alternatively, the disk is comprises a metal substrate coated with the magnetic film. The molded substrate surface contains a substantially circumferential pattern of indentations. These indentations provide a permanent magnetic flux pattern that is readable by either a read/write head device or a magnetoresistive head device.」(第13欄第40行?同欄第48行)

((仮訳)ある実施例では、ディスクは、例えばスパッタリングにより堆積する磁気フィルムによって、表面が覆われた成型されたポリカーボネート基板を含みます。あるいは、ディスクは、磁気フィルムで覆われた金属基板を含みます。成型された基板表面は本質的に周辺のパターンの刻み付けを含んでいます。これらの刻み付けは、読み取り/書き込みヘッドデバイスあるいは磁気抵抗ヘッドデバイスによって判読可能な永久の磁束パターンを提供します。)

上記引用例記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、結局、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「磁気フィルムで覆われた基板を含むディスク(12)と、
ヘッドデバイス(28)と、
ディスクの縁に接するロータ磁石リング(永久磁石アレイリング)(14)と、
ローター磁石リングに隣接する弧を形成している櫛型形状のステータ(16)と、
を有するファイルアセンブリ(10)。」

なお、同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である米国特許第5257151号明細書(クラス360)にも、引用発明と同様の発明が記載されている。

3.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「ファイルアセンブリ(10)」は、本願補正発明における「マイクロファイル」に相当する。
引用発明における「磁気フィルムで覆われた基板を含むディスク(12)」は、回転可能に支持されていること、当該磁気フィルムが保磁力を有する磁性体であることは、それぞれ明らかなことであるから、本願補正発明における「回転可能に支持され、保磁力を有する磁性体でコーティングされた基板を含むデータ格納用ディスク」に相当する。
引用発明における「ヘッドデバイス(28)」は、本願補正発明における「選択的に移動可能であり、前記ディスク上の前記データを選択的にアドレスするアクセス・ヘッド」に相当する。
引用発明における「ディスク(12)」及び「ロータ磁石リング(永久磁石アレイリング)(14)」は、あわせて本願補正発明における「ディスクと、から形成されるロータ」に相当する。
引用発明における「ステータ(16)」は、本願補正発明における「ロータを回転させてディスクを回転させるステータ」に相当する。
なお、引用発明における「ディスク(12)」、「ロータ磁石リング(永久磁石アレイリング)(14)」及び「ステータ(16)」は、あわせてマイクロモータを構成するものと言えるから、本願補正発明における「マイクロモータ」に相当する。
すると、本願補正発明と引用発明は、次の点で一致する。
<一致点>
「回転可能に支持され、保磁力を有する磁性体でコーティングされた基板を含むデータ格納用ディスクと、
マイクロモータと、
選択的に移動可能であり、前記ディスク上の前記データを選択的にアドレスするアクセス・ヘッドと
を含むマイクロファイルであって、前記マイクロモータは、
前記ディスクと、から形成されるロータと、
前記ロータを回転させて前記ディスクを回転させるステータとを有する、
マイクロファイル。」

一方、両者は次の点で相違する。
<相違点>
本願補正発明は、ロータを、ディスクと、ワン・ピース・アセンブリとしてディスクと一体化され、ディスクの周囲から径方向に外側に伸び、互いに円周方向に離隔し、かつ軟磁性材料から形成された複数のロータ磁極とから形成し、ステータを、ロータ回りの円周上に互いに離隔した複数のステータ磁極を持ち、ロータ磁極それぞれと順次に連係するものであるのに対し、引用発明は、ロータが、ロータ磁極を有しておらず、ステータが、複数のステータ磁極でロータ磁極それぞれと順次に連係するようなものでない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
回転軸を中心に有する中央部分と、中央部分から径方向に外側に伸び、互いに円周方向に離隔し、かつ軟磁性材料から形成された複数のロータ磁極とから形成されるロータと、ロータ回りの円周上に互いに離隔した複数のステータ磁極を持ち、ロータ磁極それぞれと順次に連係するステータとを有するモータは、例えば、特開平6-14508号公報、特開平6-46589号公報、特開平1-107647号公報、特開平7-15928号公報、特開平4-121095号公報、特開平1-103150号公報等に記載されているように本願出願前に当業者にとって周知であるから、引用発明において、ロータを、ディスクが中央部分に固定されるように上記周知のロータのようにして、ロータを、ディスクと、ディスクと一体化され、ディスクの周囲から径方向に外側に伸び、互いに円周方向に離隔し、かつ軟磁性材料から形成された複数のロータ磁極とから形成するようにし、ステータについても、上記周知のステータのように、ロータ回りの円周上に互いに離隔した複数のステータ磁極を持ち、ロータ磁極それぞれと順次に連係するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
また、一体化するディスクとロータ磁極とをワン・ピース・アセンブリとすることも当業者が適宜なし得る程度のことである。
なお、ディスクとロータ磁極の磁気特性が異なることが、それらを一体化乃至ワン・ピース・アセンブリとするに際しての妨げになることとは認められない。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成16年1月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年4月24日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、本願発明は、上記「第2〔理 由〕1.」に、本件補正前の請求項1として掲げたとおりのものである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 〔理由〕2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2 〔理由〕」で検討した本願補正発明から、データ格納用ディスクが保磁力を有する磁性体でコーティングされた基板を含むものであること、ロータがディスクとロータ磁極とから形成されるものであること、ロータ磁極が軟磁性材料から形成されたものであること、の限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 〔理由〕4.」に記載したとおり、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-01 
結審通知日 2006-09-05 
審決日 2006-09-19 
出願番号 特願平8-34716
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 達也  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 中村 豊
吉村 伊佐雄
発明の名称 マイクロファイル  
代理人 小川 勝男  

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