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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1151394
審判番号 不服2003-6956  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-08-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-24 
確定日 2007-02-08 
事件の表示 特願2001-375781「化粧品販売サーバ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 9日出願公開、特開2002-222337〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年12月10日の出願であって、特願2000-241758号(平成12年8月9日出願)の分割出願として出願されたものであり、平成14年10月30日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対して、平成14年12月13日付けで手続補正がなされたが、平成15年3月17日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年4月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願の請求項に係る発明
平成14年12月13日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲は以下のとおりである。
「【請求項1】 クライアントにネットワークを通じて接続され、
販売経路の一つとして訪問販売により販売される販売対象の化粧品の情報を前記クライアントに送信する化粧品情報提供手段と、
前記化粧品の情報に基づき化粧品の購入を前記クライアントのユーザが希望する場合に、前記ユーザが希望する購入方法として、訪問販売による購入と店舗販売による購入との一方を前記ユーザに選択させるための購入方法選択情報を前記クライアントに送信し、訪問販売員から化粧品を購入する方法が前記ユーザによって選択された場合に、前記ユーザが希望する訪問販売員としてのビューティーカウンセラーを複数のビューティーカウンセラーの中から選択するための訪問販売員選択情報を前記クライアントに送信する購入方法提案手段とを備えたことを特徴とする化粧品販売サーバ。
【請求項2】 前記複数のビューティーカウンセラーのデータを保持した訪問販売員データベースをさらに備え、
前記購入方法提案手段は、前記ユーザが希望するビューティーカウンセラーの年齢又は年代に関する質問を前記クライアントに送信し、この質問の回答として前記クライアントから受信した年齢又は年代に合致するビューティーカウンセラーのデータを前記訪問販売員データベースから検出し、検出したビューティーカウンセラーのデータを前記訪問販売員選択情報として前記クライアントに送信することを特徴とする請求項1記載の化粧品販売サーバ。
【請求項3】 前記購入方法提案手段は、前記ユーザがビューティーカウンセラーの訪問を希望する住所を前記クライアントから取得し、取得した住所と前記年齢又は年代とに合致するビューティーカウンセラーのデータを前記訪問販売員データベースから検出することを特徴とする請求項2記載の化粧品販売サーバ。
【請求項4】 前記購入方法提案手段は、化粧品の販売所へ赴いて化粧品を購入する方法が前記ユーザによって選択された場合に、前記ユーザが希望する販売所を複数の販売所の中から選択するための販売所のプロフィールを含む販売所選択情報を前記クライアントに送信することを特徴とする請求項1記載の化粧品販売サーバ。
【請求項5】 前記複数の販売所のデータを保持した販売所データベースをさらに備え、
前記購入方法提案手段は、前記ユーザが赴くことを希望する住所を前記クライアントから取得し、取得した住所に合致する販売所のデータを前記販売所データベースから検出し、検出した販売所のデータを前記販売所選択情報として前記クライアントに送信することを特徴とする請求項4記載の化粧品販売サーバ。
【請求項6】 前記購入方法提案手段は、前記ユーザによって選択された購入方法による化粧品の受け取り希望日を前記ユーザが指定するための希望日指定情報を前記クライアントに送信することを特徴とする請求項1?5の何れかに記載の化粧品販売サーバ。」

3.引用例
特開2000-105789号公報(以下、「引用例1」という。)には、下記(a)の事項が記載されている。
(a)「電子商取引システム100において、チケットの売買時のシステム動作を示したフローチャートである。
【0045】先ず、上記図4に示すように、顧客側110において、その顧客Cは、顧客Cが所有するコンピュータ111で所定の操作を行うことで、インターネット部120を介して販売側130のチケット販売コンピュータ131にアクセスする(ステップS101)。これにより、顧客Cが所有するコンピュータ111の画面上には、販売側130で販売されている種々のチケット情報(販売されているチケット情報)が表示される。顧客Cは、コンピュータ111本体に接続されているマウスやキーボード(図示せず)を用いて、画面表示された種々のチケット情報の中から所望するチケット情報を選択する(ステップS102)。
【0046】ステップS102での入力情報は、インターネット部120を介して販売側130のチケット販売コンピュータ131に送られ、これにより、チケット販売コンピュータ131は、インターネット部120を介して、チケットを販売するにあたって必要な情報、例えば、顧客Cの識別情報、クレジットカードの情報、及びチケットの購入方法を顧客Cに要求する(ステップS103)。このときのチケットの購入方法についての要求は、購入希望のチケットを郵送等で送るか(以下、「発送」と言う)、顧客側110でプリント出力するか(以下、「発券」と言う)の何れかが選択可能なようになされている。これは、本システムの特徴とする構成でもある。
【0047】ステップS103により、顧客側110のコンピュータ111には、顧客Cの識別情報、クレジットカードの情報、及びチケットの購入方法(発送又は発券の選択)の入力を促す画面が表示される。顧客Cは、この画面上にて、上述のマウスやキーボードを用いて、販売側130から要求された必要な情報を入力する(ステップS104)。」(段落【0044】-【0047】)

上記摘記事項(a)から、引用例1のチケット販売コンピュータは、顧客がインターネットを介して接続し、顧客が所有するコンピュータの画面上に、販売側で販売されているチケット情報を表示しているのであるから、引用例1には、顧客が所有するコンピュータにネットワークを介して接続され、販売対象のチケットの情報を前記顧客が所有するコンピュータに送信するチケット情報提供手段を備えたチケット販売コンピュータが記載されているということができる。
また、上記摘記事項(a)から、引用例1のチケット販売コンピュータは、顧客が所有するコンピュータ上で所望するチケットを選択すると、チケットを販売するにあたってチケットの購入方法の選択を顧客の所有するコンピュータに要求し、顧客が要求された購入方法を選択しているわけであるから、引用例1には、チケットの情報に基づきチケットの購入を顧客の所有するコンピュータの顧客が希望する場合に、顧客が希望する購入方法を顧客に選択させるための購入方法選択情報を前記顧客の所有するコンピュータに送信し、購入する方法が顧客によって選択されたことを受信する購入方法提案手段を備えたチケット販売コンピュータが記載されているということができる。

そうすると、上記摘記事項(a)によれば、引用例1には、
「顧客の所有するコンピュータにネットワークを通じて接続され、
販売対象のチケットの情報を前記顧客の所有するコンピュータに送信するチケット情報提供手段と、
前記チケットの情報に基づきチケットの購入を前記顧客の所有するコンピュータの顧客が希望する場合に、前記顧客が希望する購入方法を前記顧客に選択させるための購入方法選択情報を前記顧客の所有するコンピュータに送信し、購入する方法が顧客によって選択されたことを受信する購入方法提案手段とを備えたチケット販売コンピュータ。」の発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

4.対比
本願請求項1に記載の発明(以下、「本願発明」という。)と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「顧客が所有するコンピュータ」、「顧客」、「販売コンピュータ」は、本願発明の「クライアント」、「ユーザ」、「販売サーバ」に相当する。
また、引用例1における「チケット」は、本願発明の「化粧品」と、「商品」という概念で共通する。
さらに、引用例1における「購入する方法が顧客によって選択されたことを受信する」ことと、本願発明の「訪問販売員から化粧品を購入する方法が前記ユーザによって選択された」こととは、購入する方法がユーザによって選択されたことを受信するという概念で共通するといえる。
してみれば、本願発明と引用例1発明とは、以下の点で一致し、[相違点1]、[相違点2]、[相違点3]の点で相違する。

[一致点]
「クライアントにネットワークを通じて接続され、
販売対象の商品の情報を前記クライアントに送信する商品情報提供手段と、
前記商品の情報に基づき商品の購入を前記クライアントのユーザが希望する場合に、前記ユーザが希望する購入方法をユーザに選択させるための購入方法選択情報を前記クライアントに送信し、購入する方法がユーザによって選択されたことを受信する購入方法提案手段とを備えた商品販売サーバ。」

[相違点1]
本願発明の販売対象が「販売経路の一つとして訪問販売により販売される」商品であって、当該商品が「化粧品」であるのに対し、引用例1発明は訪問販売によらない「チケット」である点。

[相違点2]
本願発明の購入方法の選択肢が、「訪問販売による購入と店舗販売による購入との一方」であるのに対し、引用例1発明の商品は購入方法の選択肢が相違している点。

[相違点3]
本願発明の購入方法提案手段が、「訪問販売員から化粧品を購入する方法が前記ユーザによって選択された場合に、前記ユーザが希望する訪問販売員としてのビューティーカウンセラーを複数のビューティーカウンセラーの中から選択するための訪問販売員選択情報を前記クライアントに送信」しているのに対し、引用例1発明の購入方法提案手段においては、係る段階が記載されていない点。

5.当審の判断
(5.1)[相違点1]について
引用例1発明の販売サーバは、チケットに限らず様々な商品の販売を対象として用い得るものであることが明らかであって、様々な商品の販売を手がける者がその導入を検討し得るものであり、しかも、訪問販売というのは本願出願前から化粧品販売の分野では販売経路の一つとして社会的に定着した販売形態であることから、引用例1発明の販売サーバの販売対象となる商品を、販売経路の一つとして訪問販売により販売される化粧品とすることは、当業者が容易に想起し得ることである。
なお、請求人は審判請求書において、ビューティーカウンセラーによる訪問販売によって、『「適切な」アドバイスの存在する価値』や、『実際に面したユーザから五官を通して得られる様々な情報から汲み取ることができるニーズに基づいて行われる』点を格別な効果と主張しているが、当該効果は、販売形態である訪問販売そのものが専ら奏する効果であることが明らかであって、そうした販売形態は、発明に係る販売サーバの情報提供の仕組みとは関係なく、商品販売のためにシステムを利用する者が、商品固有の事情、販売戦略、営業方針、経験などに基づいて、任意に取り決め選定し得る非技術的な事項であるので、請求人が主張する当該効果は、そもそもが本願発明に係る技術上の効果とは認めらない。
よって、引用例1に記載された事項、ならびに慣用の販売形態に基づいて、相違点1に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。

(5.2)[相違点2]について
この[相違点2]は、購入方法の選択肢の内容に関する相違であって、本願発明の販売サーバの情報提供の仕組みとは関係なく、商品販売のためにシステムを利用する者が、商品固有の事情、販売戦略、営業方針、経験などに基づいて、任意に取り決めて販売サーバに選択肢の内容として設定し得る非技術的な事項であるので、本来的には判断することを必要としない事項であるが、一応検討しておく。
本願発明の購入方法の選択肢の内容であるところの、訪問販売による購入と店舗販売による購入とは、いずれも、本願出願前から化粧品販売の分野では社会的に定着した購入形態であることが、当審において明らかである。そして、引用例1発明の販売サーバが様々な商品の販売を対象として用い得るものであることは、前項「[相違点1]について」で検討したとおりであるところ、引用例1発明の商品販売サーバにおける購入方法の選択肢の内容として、これら訪問販売による購入と店舗販売による購入を設定することは、当業者が、商品固有の事情、販売戦略、営業方針などに基づいて、任意に取り決めて設定し得る事項である。
念のため、引用例1発明のような販売情報を提供するためのシステムにおいて、担当者の訪問を選択肢として設定した例をあげておくと、「関信浩 他,”インターネット・ビジネス最前線動き出した日本の大企業”,日経コンピュータ,日経BP社,1999年10月11日,第480号,p.119-121」の第119頁右欄第12-15行に、商談形式として、担当者の訪問を希望することを選択することが開示されており、特開平10-207964号公報の段落【0038】に、情報の受け取り方法の欄として、企業が直接訪問することを選択することが開示されている。
よって、引用例1に記載された事項、ならびに社会常識に基づいて、相違点2に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。

(5.3)[相違点3]について
一般に、ユーザに選択肢を提示してユーザの希望を聞く場合、一度の選択肢の提示だけでユーザの希望を全て満たす回答が得られるとは限らず、一度目の選択肢についての回答によっては、さらに選択肢を提示してユーザの詳細な希望を聞く必要が生じる場合があることは、一つの社会常識といえる。
ところで、引用例1発明は、「ユーザが希望する購入方法をユーザに選択させるための購入方法選択情報を前記クライアントに送信し、購入する方法がユーザによって選択されたことを受信する手段」を備えたものであるが、一度目の購入方法選択情報の送信に対する回答だけでは、ユーザの希望を全て満たす購入方法にならない場合が、上記社会常識から想定することができるところである。そして、引用例1発明は、既にユーザに購入方法選択情報を送信して回答を受信する仕組みを備えているわけであるから、そのような場合には、さらに、詳細な購入方法選択情報を送信し、ユーザの回答を促すことができる機能を前記手段に付加することは、当業者であれば容易に想到することができる事項である。
ここで、さらに送信される前記詳細な購入方法選択情報の内容として、「ユーザが希望する訪問販売員としてのビューティーカウンセラーを複数のビューティーカウンセラーの中から選択するための訪問販売員選択情報」とすることは、前項「[相違点2]について」で検討したのと同様な理由で、商品販売のためにシステムを利用する者が、商品固有の事情、販売戦略、営業方針などに基づいて、任意に取り決めて販売サーバに設定し得る事項である。
念のため、引用例1発明のような情報を提供するためのシステムにおいて、ユーザが希望する担当者を複数の候補者の中から選択できる選択肢を選択情報の内容として設定した例をあげておくと、特開平9-135816号公報の段落【0051】-【0052】には、表示された複数の医師から患者側が選択することが開示されており、また、「久保田美樹,”米国に学ぶネットビジネス第5回”,日経ネットビジネス,日経BP社,2000年5月15日,第59号,p.188-192」の第189頁第8-18行には、カテゴリー毎に表示された相談員からユーザが相談員を選ぶことが開示されている。
なお、請求人の審判請求書における『化粧料では「アイカラーの付け方が下手なので、ポイントメークアップの使い方のうまいビューティーカウンセラーを選びたい」のように、ニーズが明瞭であり、購入者の選択権が効果的に発揮できる』という主張については、前項「[相違点1]について」で検討したのと同様に、当該効果が、化粧品という商品に応じて設定された訪問員の選択という選択情報の内容そのものが専ら奏する効果であることが明らかであって、そうした選択情報の内容は、本願発明の販売サーバの情報提供の仕組みとは関係なく、商品販売のためにシステムを利用する者が、商品固有の事情、販売戦略、営業方針、経験などに基づいて、任意に取り決めて販売サーバに設定し得る非技術的な事項であるので、請求人が主張する当該効果は、そもそもが本願発明に係る技術上の効果とは認めらない。
よって、引用例1に記載された事項、ならびに社会常識に基づいて、相違点3に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。

以上判断したとおり、本願発明における上記相違点1-3に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり、また、各相違点を総合しても本願発明は当業者が想到することが困難なものとはいえない。
そして、本願発明の作用効果も、引用例1に記載された発明ならびに社会常識から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明ならびに社会常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明ならびに社会常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、この出願の発明は、他の請求項の発明について検討するまでもなく、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-21 
結審通知日 2006-11-28 
審決日 2006-12-14 
出願番号 特願2001-375781(P2001-375781)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 佐藤 伸夫
特許庁審判官 齋藤 哲
岩間 直純
発明の名称 化粧品販売サーバ  
代理人 遠山 勉  
代理人 川口 嘉之  
代理人 松倉 秀実  

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