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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1151408 |
審判番号 | 不服2004-1066 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-03-15 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-01-15 |
確定日 | 2007-02-08 |
事件の表示 | 特願2000-255876「磁気記録媒体の磁化パターン形成方法及び製造方法、磁気記録媒体、磁気記録装置並びに磁化パターン形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月15日出願公開、特開2002- 74603〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年8月25日の出願であって、平成15年8月25日付けで手続補正がなされ、その後平成15年12月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月15日に審判が請求されるとともに、平成16年2月9日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成16年2月9日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)について [補正却下の決定の結論] 平成16年2月9日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前の、 (a) 「【請求項1】基板上に磁性薄膜を有してなる磁気記録媒体に対し、エネルギー線を照射して磁性薄膜を局所的に加熱する工程と、磁性薄膜に外部磁界を印加する工程とを含む磁化パターン形成方法であって、強度分布が15%以内のエネルギー線を照射することを特徴とする磁気記録媒体の磁化パターン形成方法。」を、 (b) 「【請求項1】基板上に磁性薄膜を有してなる磁気記録媒体に対し、エネルギー線を照射して磁性薄膜を局所的に加熱する工程と、磁性薄膜に外部磁界を印加する工程とを含む磁化パターン形成方法であって、 前記エネルギー線のビームスポット内の強度分布が15%以内のエネルギー線を照射することを特徴とする磁気記録媒体の磁化パターン形成方法。」 と補正するものである。 本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明の「エネルギー線」の「強度分布」について、「前記エネルギー線のビームスポット内の強度分布」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「補正後の発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 2.引用例 (1) 原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-34744号公報(以下「引用例1」という。)には、「光磁気または磁気ディスクの製造方法」に関し、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与したものである。) (ア)「記録層に垂直方向に第1の外部磁場を印加することにより上記記録層の磁化の方向を上記第1の外部磁場の方向にそろえた後、上記記録層に上記第1の外部磁場と逆方向の第2の外部磁場を印加した状態で記録すべき信号に対応した開口が形成されたマスクを用いて上記記録層にレーザ光を選択的に照射してこの照射部の上記記録層の磁化を反転させることにより信号を記録するようにした光磁気または磁気ディスクの製造方法。」(特許請求の範囲の項) (イ)「第1図A?Dは本発明の一実施例による光磁気または磁気ディスクの製造方法を工程順に示す断面図であり、第2図A?Dはそれぞれ第1図A?Dに対応する平面図である。 第1図A及び第2図Aに示すように、まず基板1上に垂直磁化膜から成る記録層2が形成された光磁気または磁気ディスクに垂直方向に初期化用の外部磁場Hiを印加する。この場合、記録層2の保磁力をHcとすると、Hi>Hcである。ただし、この初期化時に後述のようにレーザ光5を照射することにより熱アシストを行う場合には、Hi<Hcでもよい。なお、記録層2中の矢印は磁化を示す(以下同様)。 次に、第1図B及び第2図Bに示すように、記録すべき信号に対応した多数の開口3aが形成されたマスク3(第3図参照)を記録層2上に載せる。ここで、このマスク3は、後述のレーザ光5が透過しない材料により形成され、例えばこのレーザ光5が透過しない材料の膜をリソグラフィー及びエッチング技術を用いてパターニングすることにより形成される。 次に、第1図C及び第2図Cに示すように、例えば半導体レーザチップ(図示せず)を複数個ライン状に並べた半導体レーザアレイ4によりディスク径よりも幅の大きいライン状のレーザ光5を形成し、記録層2上にマスク3が載せられた上述の光磁気または磁気ディスクをこの半導体レーザアレイ4の下側を例えばレーザ光5の長手方向に垂直方向に移動させることにより、マスク3の全面にレーザ光5を照射する。ここで、このレーザ光5の照射は、外部磁場Hiと逆方向の外部磁場Hwを記録層2に印加した状態で行う。この場合には、レーザ光5の照射により熱アシストが行われることから、Hw≪Hcでよい。このようにしてマスク3の全面にレーザ光5を照射することにより、このマスク3の開口3aを通過したレーザ光5により照射された部分の記録層2が選択的に加熱されてこの部分の温度が上昇する。そして、外部磁場Hiと逆方向に印加された外部磁場Hwにより、この温度が上昇した部分の記録層2の磁化が反転し、これによって信号が記録される(第4図参照)。 このようにして、第1図D及び第2図Dに示すように、信号が記録された光磁気または磁気ディスクが製造される。」(公報2頁左下欄下から5行?3頁左上欄末行、[実施例]の項) (ウ)「以上、本発明の実施例につき具体的に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。 例えば、上述の実施例においては、半導体レーザアレイ4を用いてライン状のレーザ光5を形成しているが、このライン状のレーザ光5は必ずしも半導体レーザアレイ4を用いて形成する必要はなく、他の方法により形成することも可能である。また、このレーザ光5としては、GaAs/AlGaAs半導体レーザ以外の半導体レーザで発生されたものを用いることも可能であり、さらには半導体レーザ以外のレーザにより発生させたものを用いることも可能である。例えば、このレーザ光5として、XeClエキシマーレーザー(波長308nm)、KrFエキシマーレーザー(波長248nm)、XeFエキシマーレーザー(波長308nm)などの希ガスハライドエキシマーレーザーにより発生されたものを用いることも可能である。」(公報3頁左下欄3行?右下欄1行) (2)対比 補正後の発明と引用例1に記載された発明とを対比する。 上記(1)で摘示した記載事項、特に(ア)(イ)(下線部参照)によれば、引用例1には、 「記録層に垂直方向に第1の外部磁場を印加することにより上記記録層の磁化の方向を上記第1の外部磁場の方向にそろえた後、上記記録層に上記第1の外部磁場と逆方向の第2の外部磁場を印加した状態で記録すべき信号に対応した開口が形成されたマスクを用いて上記記録層にレーザ光を選択的に照射してこの照射部の上記記録層の磁化を反転させることにより信号を記録するようにした磁気ディスクの製造方法であって、 磁気ディスクは、基板上に垂直磁化膜から成る記録層が形成されたものであり、 レーザ光により照射された部分の記録層が選択的に加熱されてこの部分の温度が上昇し、第2の外部磁場により、この温度が上昇した部分の記録層の磁化を反転させるものである、方法。」 の発明が記載されている。 引用例1に記載された発明の「記録層」「磁気ディスク」「レーザ光」は、それぞれ補正後の発明の「磁性薄膜」「磁気記録媒体」「エネルギー線」に相当している。 引用例1に記載された発明は、マスクを用いて記録層にレーザ光を選択的に照射してこの照射部の上記記録層の磁化を反転させることにより信号を記録するのであるから、引用例1に記載された発明の「磁気ディスクの製造方法」は、補正後の発明の「磁気記録媒体の磁化パターン形成方法」に実質的に相当している。 引用例1に記載された発明は、「レーザ光により照射された部分の記録層が選択的に加熱されてこの部分の温度が上昇」するので、補正後の発明の「基板上に磁性薄膜を有してなる磁気記録媒体に対し、エネルギー線を照射して磁性薄膜を局所的に加熱する工程」に相当する構成を備えている。 よって、補正後の発明と引用例1に記載された発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「基板上に磁性薄膜を有してなる磁気記録媒体に対し、エネルギー線を照射して磁性薄膜を局所的に加熱する工程と、磁性薄膜に外部磁界を印加する工程とを含む、磁気記録媒体の磁化パターン形成方法。」 (相違点1) エネルギー線を照射することについて、補正後の発明は、「エネルギー線のビームスポット内の強度分布が15%以内のエネルギー線を照射する」と特定しているのに対して、引用例1に記載された発明は、そのように特定していない点。 (3)相違点1についての判断 引用例1においては、レーザ光を、照射対象に均一に照射することが望まれていることは明らかなことである。すなわち、レーザ光等のエネルギー線を照射して、露光や微細加工を行う技術において、エネルギー線の強度分布を均一になるようにして照射することが、要求され普通に行われている。例えば、原審で引用された特開平7-73509号公報(段落34等)、特開平8-45114号公報(段落2、14、図2、5図(a)等)、特開平8-161750号公報を参照されたい。また、拒絶査定で例示された特開平1-112214号公報や特開昭64-42620号公報、並びに特開平1-283510号公報(従来の技術の記載等参照)、特開平8-37139号公報(従来の技術、段落10等参照)、特開平11-97340号公報(従来の技術等(段落1?13)の記載、図2?4等参照)に、光照射技術において照射光の強度分布を均一にすることが示されている。 してみれば、引用例1に記載された発明において、エネルギー線の照射光の強度分布を均一にすること、即ち、より0%に近いことが望ましいことが明らかであるから、エネルギー線のビームスポット内の強度分布の程度として、0%近傍の数値を選定することは当業者が適宜なしうることであり、補正後の発明のように「15%以内」とすることに格別困難性を要したとはいえない。 なお、請求人は、「15%」という値について、従来エキシマレーザ等のパルスレーザを用いると、通常ビームスポット内の強度分布が30%程度であったが、これを半分の15%以内にしたと主張し、本願の明細書の記載によれば、プリズムアレイを配置してビームを分割した後重ね合わせることにより10%としたホモジナイザを用いる実施例が例示され、またシリンドリカルレンズやコンデンサレンズやスリット等の遮蔽材を用いてもよいと例示されている。しかしながら、ホモジナイザ等の手段を用いてエネルギー線の強度分布を均一化する技術は、先に示したとおり周知の技術であって、エネルギー線のビームスポット内の強度分布が15%以内のエネルギー線を照射することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。 よって、補正後の発明の効果は、引用例1に記載された発明から当業者であれば予測される範囲内であるので、上記相違点1は、当業者が容易に想到し得たものである。 4.むすび 以上のとおり、補正後の発明は、本願出願前に頒布された引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 平成16年2月9日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至16に係る発明は、平成15年8月25日付け手続補正書によって補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】上記「第2の1の(a)」のとおり。」 1.引用例 原審の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、上記「第2の2(1)」に記載されたとおりである。 2.対比判断 本願発明は、上記「第2の2」で検討した補正後の発明から、「エネルギー線」の「強度分布」についての限定事項である、「前記エネルギー線のビームスポット内の」という構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後の発明が、上記「第2の2(2)、(3)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.むすび 以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-04 |
結審通知日 | 2006-12-05 |
審決日 | 2006-12-19 |
出願番号 | 特願2000-255876(P2000-255876) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
P 1 8・ 572- Z (G11B) P 1 8・ 575- Z (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩井 健二 |
特許庁審判長 |
小林 秀美 |
特許庁審判官 |
小松 正 川上 美秀 |
発明の名称 | 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法及び製造方法、磁気記録媒体、磁気記録装置並びに磁化パターン形成装置 |
代理人 | 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ |