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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B43L 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B43L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B43L 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B43L |
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管理番号 | 1151436 |
審判番号 | 不服2004-12800 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-04-15 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-06-22 |
確定日 | 2007-02-08 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第322163号「プロッタの用紙検出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 4月15日出願公開、特開平 9- 99696〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成7年11月16日の出願(優先権主張 平成7年8月1日)であって、平成16年5月27日付けで拒絶の査定がされたため、同年6月22日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がされたものである。 当審においてこれを審理した結果、平成16年6月22日付けの手続補正を却下するとともに、これを前提として拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成18年10月10日付けで意見書及び手続補正書(以下、この補正を「第3補正」という。)を提出し、さらに同月25日付けで再び意見書及び手続補正書(以下、この補正を「第4補正」という。)を提出した。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成18年10月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.第3補正の採否 当審で通知した拒絶理由は最後の拒絶理由であるから、第3補正及び第4補正が補正要件を満たすかどうか検討する。 第3補正前後の特許請求の範囲(補正前とは、平成15年9月8日付け手続補正後のことである。)を比較すると、請求項数が4から2に減少しており、第3補正後の請求項1は補正前請求項1に補正前請求項3の限定事項を加えたものであり、同じく第3補正後の請求項2は補正前請求項2に補正前請求項3の限定事項を加えたものである。そして、補正前請求項3は請求項1又は2を択一的に引用しているから、結局のところ、第3補正後の請求項1は補正前請求項3において請求項1を引用する部分と同一であり、同じく第3補正後の請求項2は補正前請求項3において請求項2を引用する部分と同一である。 すなわち、特許請求の範囲の補正は、補正前請求項1,2及び4を削除するとともに、請求項1,2の削除に伴い、補正前請求項3を独立形式に改め2つの請求項に展開するものであるから、請求項削除(特許法17条の2第4項1号該当であり、独立特許要件の判断対象外)を目的とするものと認める。残余の補正事項は、特許請求の範囲の補正に伴う段落【0004】の補正及び【図12】の補正であり、前者は請求項削除を目的とした結果であり、後者は誤記の訂正(特許法17条の2第4項3号該当)を目的とするものと認める。 また、第3補正が新規事項を追加するものでないことも認める。 したがって、第3補正を却下することはできない。 2.第4補正の補正事項 第4補正は補正前(すなわち第3補正後)請求項1,2の「最初に用紙エッジを検出した後に、前記センサを逆方向に移動して該用紙エッジを再確認するとともに該再確認後に、用紙エッジを挟んで前記センサのサンプリング周期と走査範囲を狭めていき、より正確な用紙エッジを特定するステップとから成り、前記2つの反射量から判定レベルを設定するステップ」との記載を「最初に用紙エッジを検出した後に、前記センサを逆方向に移動してセンサを用紙エッジを越えた用紙エッジの近傍に移動して、該用紙エッジを再確認するステップと、前記再確認のとき用紙エッジの再確認ができないときはエラー表示を行うステップと、前記再確認によってエラーがないことを確認したときは、該再確認後に、用紙エッジを挟んで前記センサのサンプリング周期と走査範囲を狭めていき、より正確な用紙エッジを特定するステップ」と補正するものである。 3.第4補正の補正目的 第4補正前の「より正確な用紙エッジを特定するステップ」には「用紙エッジを再確認する」ステップが含まれていたが、第4補正後の同ステップは「再確認するステップ」後のステップである。このように、用語の意味を変更する補正は特許法17条の2第4項1?4号の何れの補正目的にも該当しない。すなわち、第4補正は特許法17条の2愛4項の規定に違反している。 次に、再確認に当たり、「再確認するステップ」及び「エラー表示を行うステップ」が存する旨補正されているが、補正前にも「再確認する」とある以上、再確認できない場合があることは当然想定されている。そうすると、「再確認のとき用紙エッジの再確認ができないときはエラー表示を行うステップ」は、再確認できない場合の措置を具体化したものということができ、これは特許請求の範囲の減縮に当たる。 そこで、第4補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。 4.第4補正後の請求項1の記載 第4補正後の請求項1の記載は次のとおりであり、補正発明はここに記載された事項によって特定されるものである。 「画線ヘッドに設けた光反射型のセンサによって用紙支持面上の用紙のエッジを走査し、該エッジの位置を検出するプロツタの用紙検出方法において、用紙のエッジの検出に先立って前記センサによって前記用紙支持面の用紙の無い部分の光の反射量と前記用紙支持面上の用紙上における光の反射量とを検出し前記2つの反射量から判定レベルを設定するステップと、前記用紙支持面上の用紙の内側と外側との間で前記センサを移動させて該センサで前記用紙のエッジを走査し該センサが受光する反射量の値が前記判定レベルの値とほぼ等しくなったときの前記センサの位置を前記用紙のエッジの位置と認識するステップと、最初に用紙エッジを検出した後に、前記センサを逆方向に移動してセンサを用紙エッジを越えた用紙エッジの近傍に移動して、該用紙エッジを再確認するステップと、前記再確認のとき用紙エッジの再確認ができないときはエラー表示を行うステップと、前記再確認によってエラーがないことを確認したときは、該再確認後に、用紙エッジを挟んで前記センサのサンプリング周期と走査範囲を狭めていき、より正確な用紙エッジを特定するステップとから成り、前記2つの反射量から判定レベルを設定するステップにおいて、前記用紙支持面の用紙の無い部分の光の反射量が、前記用紙の無い部分での光の反射量の複数のサンプリング値の平均値であり、前記用紙上における光の反射量が、用紙上での光の反射量の複数のサンプリング値の平均値であることを特徴とするプロッタの用紙検出方法。」 5.当審で通知した拒絶理由 当審で通知した拒絶理由は次の『』内のとおりである。 『請求項3には「最初に用紙エッジを検出した後に、前記センサを逆方向に移動して該用紙エッジを再確認し、該再確認の後に、該用紙エッジを挟んで前記センサのサンプリング周期と走査範囲を狭めていき、より正確な用紙エッジを特定するようにした」とあり、「再確認」と「サンプリング周期と走査範囲を狭め」ることが区別され、この順に実行される旨記載されている。 本願の【図12】には4本のライン32?35(審決注;拒絶理由では「上から2番目のラインに符番「32」が付されているが、これは「33」の誤記と認める。」との注釈を付したが、第3補正により【図12】が補正され、上から2番目のラインの符番が「33」に補正された。)が図示され、ライン33が「再確認」に、ライン34,35が「サンプリング周期と走査範囲を狭め」るに該当するものと認める。ライン33の走査範囲は明らかにライン32よりも狭い。「再確認」において、補正後請求項1には「サンプリング周期と走査範囲」を狭めるとも狭めないとも記載されていないが、走査範囲を狭める可能性が高い以上、サンプリング周期を狭める可能性もあるといわなければならない。 そうである以上、「再確認」において、「サンプリング周期と走査範囲」を狭めるのかどうか不明確である。 狭めるとした場合、再確認工程と「サンプリング周期と走査範囲を狭め」る工程の区別ができない。 狭めないとした場合、再確認により「最初に用紙エッジを検出」したことが誤りとされる蓋然性は相当程度低いと解されるだけでなく、再確認工程がなくともサンプリング周期と走査範囲を狭め」る工程により再確認ができるのだから、再確認工程がなぜ必要なのか理解しがたい。ところで、【図12】では、用紙エッジからの行き過ぎ量につき、ライン33におけるそれがライン32におけるそれよりも小さく描かれており、ライン32については「センサ8がライン32移動中、用紙エッジ34を認識してから画線ヘッド4が完全に停止するには、若干の距離(約10mm)が必要である。」(段落【0021】)との説明がある。ライン33において、サンプリング周期がライン32と同一であるにもかかわらず、用紙エッジからの行き過ぎ量が小さくなる理由がどこにあるのか全く理解できない。1回目の走査と2回目(再確認)以降の走査速度等が異なり、画線ヘッドが完全に停止するまでの移動量が異なるのかもしれないが、そのようなことは明細書(含図面)に記載されていないし、それを前提とするならば、同前提の発明だけが発明の詳細な説明に記載されており、同前提を欠く発明は記載されていないことになる。さらに、再確認工程についての技術的意義を理解することもできない。 したがって、明細書の記載は、特許法36条4項並びに6項1号及び2号に規定する要件を満たさない。』 6.補正発明の特徴的構成 (1)公知刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-338392号公報(以下「引用例」という。)には、次のア?オの記載が図示とともにある。 ア.「図6は、用紙端検出装置を備えたX-Yプロッタの一部を示す斜視図であって、図において、1はペンキャリッジ、2は記録紙、3はYバー、4はセンサ取り付け具、5はセンサである。・・・ペンキャリッジ1に固定されているセンサ5は、盤面上任意の位置に移動可能であり、またその盤面上の座標位置は常時監視されている。」(段落【0002】) イ.「5はセンサとして使用されるホトインタラプタ」(段落【0003】) ウ.「図8は、図7の装置を動作させる場合のフローチャートを示し、S71?S75は各プログラムステップである。センサ5を盤面に対向する位置から順次記録紙の方向へ移動させる。センサ5が盤面に対向する位置では出力8の論理はLであるが、S71,S72(S72でNOの場合)を繰り返しているうちにセンサ5は漸次記録紙2へ近接し、出力8の論理がHになる。出力論理がHになると、ステップS73に移り、センサ5を逆方向へ少量ずつ移動させる。出力8の論理がHからLに戻る点を用紙端と判定する。」(段落【0004】) エ.「この発明に係わるプロッタの用紙端検出装置は、センサが吸着板に対向しているときの出力をKVとし、センサが記録紙に対向しているときの出力をPVとする場合の基準電圧を、KV+(PV-KV)/2=(KV+PV)/2としたことを特徴とする。また、センサ位置の単位移動による出力の増分が急激に変化する点を検出することを特徴とする。」(段落【0007】) オ.「ステップS1ではセンサ5を吸着板10上に位置させ(すなわち、センサ5の視野には吸着板10の面だけが入る位置に置き)、ADC11の出力をセレクタ12を経てKVレジスタ13に書き込む。次にステップS2でセンサ5の視野には記録紙2の平面だけが入る位置におき、ADC11の出力をPVレジスタに書き込む。このようにしておいて、加算器15の出力を2進で1桁下げて出力すれば、(KV+PV)/2の基準値が得られる。・・・KVレジスタ13とPVレジスタ14の書き込みが終了した後の動作は、図8について説明した図7の装置の動作と同様であるので、重複した説明は省略する。」(段落【0010】) (2)引用例記載の発明と補正発明との対比 引用例記載の「センサ」は「ホトインタラプタ」であり、【図6】を参酌すれば「光反射型」であることは明らかである。また、「ペンキャリッジ1に固定」(引用例)と「画線ヘッドに設けた」(補正発明)に格別の相違はない。 引用例記載の「吸着板」、「記録紙」及び「用紙端」は、補正発明の「用紙支持面」、「用紙」及び「用紙のエッジ」に相当し、引用例からは「エッジの位置を検出するプロツタの用紙検出方法」の発明も把握でき、その発明は「画線ヘッドに設けた光反射型のセンサによって用紙支持面上の用紙のエッジを走査し、該エッジの位置を検出するプロツタの用紙検出方法」ということができる(以下、引用例に記載された「検出方法」としての発明を「引用発明」という。)。 引用例記載の「センサが吸着板に対向しているときの出力」及び「センサが記録紙に対向しているときの出力」は、補正発明の「用紙支持面の用紙の無い部分の光の反射量」及び「紙支持面上の用紙上における光の反射量」にそれぞれ相当し、それゆえ引用例記載の「基準電圧」(=(KV+PV)/2)と補正発明の「判定レベル」にも相違はなく、引用例【図2】記載のS1?S3と補正発明の「用紙のエッジの検出に先立って前記センサによって前記用紙支持面の用紙の無い部分の光の反射量と前記用紙支持面上の用紙上における光の反射量とを検出し前記2つの反射量から判定レベルを設定するステップ」に相違はない。 引用例【図2】において、S6及びS7で「YES」と判断されるまでのステップ、又はS10及びS11で「YES」と判断されるまでのステップは、補正発明の「前記用紙支持面上の用紙の内側と外側との間で前記センサを移動させて該センサで前記用紙のエッジを走査し該センサが受光する反射量の値が前記判定レベルの値とほぼ等しくなったときの前記センサの位置を前記用紙のエッジの位置と認識するステップ」と異ならない。 引用例【図2】において、S8及びS9又はS12及びS13で「YES」と判断されるまでのステップにあっては、先行するステップであるS6又はS10よりも短い移動量(S6及びS10では「数ステップ」であるのに対し、S12及びS13では「1ステップ」とされている。)毎に出力変化の判断(S9又はS13)をしているから、サンプリング周期は先行ステップよりも狭まり、当然「走査範囲」も狭まるはずである。すなわち、S8及びS9又はS12及びS13のステップは、補正発明の「用紙エッジを挟んで前記センサのサンプリング周期と走査範囲を狭めていき、より正確な用紙エッジを特定するステップ」と格別異ならない。 したがって、補正発明と引用発明とは、 「画線ヘッドに設けた光反射型のセンサによって用紙支持面上の用紙のエッジを走査し、該エッジの位置を検出するプロツタの用紙検出方法において、用紙のエッジの検出に先立って前記センサによって前記用紙支持面の用紙の無い部分の光の反射量と前記用紙支持面上の用紙上における光の反射量とを検出し前記2つの反射量から判定レベルを設定するステップと、前記用紙支持面上の用紙の内側と外側との間で前記センサを移動させて該センサで前記用紙のエッジを走査し該センサが受光する反射量の値が前記判定レベルの値とほぼ等しくなったときの前記センサの位置を前記用紙のエッジの位置と認識するステップと、用紙エッジを挟んで前記センサのサンプリング周期と走査範囲を狭めていき、より正確な用紙エッジを特定するステップとから成るプロッタの用紙検出方法。」である点で一致し、次の2点でのみ相違する。 〈相違点1〉「最初に用紙エッジを検出した後に、前記センサを逆方向に移動してセンサを用紙エッジを越えた用紙エッジの近傍に移動して、該用紙エッジを再確認するステップ」及び「前記再確認のとき用紙エッジの再確認ができないときはエラー表示を行うステップ」が、「前記用紙支持面上の用紙の内側と外側との間で前記センサを移動させて該センサで前記用紙のエッジを走査し該センサが受光する反射量の値が前記判定レベルの値とほぼ等しくなったときの前記センサの位置を前記用紙のエッジの位置と認識するステップ」と「用紙エッジを挟んで前記センサのサンプリング周期と走査範囲を狭めていき、より正確な用紙エッジを特定するステップ」の間に存し、「再確認によってエラーがないことを確認したとき」に「用紙エッジを挟んで前記センサのサンプリング周期と走査範囲を狭めていき、より正確な用紙エッジを特定するステップ」に移行するかどうかの点。 〈相違点2〉「2つの反射量から判定レベルを設定するステップにおいて、前記用紙支持面の用紙の無い部分の光の反射量が、前記用紙の無い部分での光の反射量の複数のサンプリング値の平均値であり、前記用紙上における光の反射量が、用紙上での光の反射量の複数のサンプリング値の平均値である」との限定の有無。 (3)相違点2の判断及び補正発明の特徴的構成 相違点2とは、要するに「用紙支持面の用紙の無い部分の光の反射量」及び「用紙上での光の反射量」を定めるに際し、「複数のサンプリング値の平均値」とするかどうかの相違である。 一般に、1回の測定値を採用するよりも、複数回測定を行いその平均値を採用する方が、より正確なデータを得るために有効であることは技術常識に属する。 引用発明においても、そのことは当てはまるから、【図2】S1及びS2の各ステップにおいて、複数回測定を行い(各回の測定値が「サンプリング値」である。)相違点2に係る補正発明の構成を採用することは設計事項というべきである。 相違点2が設計事項である以上、補正発明の進歩性を決するのは相違点1であり、相違点1に係る補正発明の構成こそ、補正発明の特徴的構成といわなければならない。 7.補正発明の独立特許要件の判断 相違点1に係る補正発明の構成、すなわち再確認に関係した構成が補正発明の特徴的構成であるから、構成の明確さはいうに及ばず、その技術的意義も本願明細書において明確にされていなければならない。 まず問題となるのは、「再確認ステップ」において、「サンプリング周期と走査範囲」を狭めるのかどうかである。再確認ステップにおいて、走査範囲は自然に狭まるはずだから、「サンプリング周期」を狭めるのであれば、再確認ステップに続く「用紙エッジを挟んで前記センサのサンプリング周期と走査範囲を狭めていき、より正確な用紙エッジを特定するステップ」と区別できないことになる。その場合、相違点1は実質的には、「用紙エッジを挟んで前記センサのサンプリング周期と走査範囲を狭めていき、より正確な用紙エッジを特定するステップ」が2段階以上あるかどうか、及び2段階目以降のステップを1段階目に当たる「再確認によってエラーがないことを確認したとき」と限定することに帰する。しかし、一般に疎検出から精検出への移行を2段階以上とすることに困難性がないことは明らかであり、2段階目に移行するのは、その前段階で用紙エッジを検出したことが条件とされ(検出できない場合にエラー表示を行うことは設計事項)、用紙エッジを検出することは「エラーがないことを確認したとき」に該当するから、結局のところ相違点1に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって容易であり、再確認ステップにおいて「サンプリング周期」を狭める場合を包含するのであれば、補正発明は特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 他方、再確認ステップにおいて、「サンプリング周期」を狭めないのであれば、引用発明を出発点としてそのような再確認ステップを設ける合理的理由を見出すことは困難であり、翻って補正発明の進歩性を否定することも困難である。 このように、再確認ステップにおいて、「サンプリング周期」を狭める場合を包含するのかしないのかは、進歩性判断を左右する重要な事項であるところ、どちらであるのかは、第4補正によっても明確でないのだから、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。 さらに、再確認ステップにおいて、「サンプリング周期」を狭めないとした場合、次の問題がある。【図12】では、用紙エッジからの行き過ぎ量につき、ライン33におけるそれがライン32におけるそれよりも小さく描かれており、ライン32については「センサ8がライン32移動中、用紙エッジ34を認識してから画線ヘッド4が完全に停止するには、若干の距離(約10mm)が必要である。」(段落【0021】)との説明がある。すなわち、ライン32の行き過ぎ量は積極的に設けた行き過ぎ量ではなく、やむを得ず生じたオーバーラン量である。そして、オーバーラン量は走査速度によって概ね定まると解されるところ、再確認ステップの走査速度が先行ステップの走査速度よりも小さいのであれば、サンプリング周期を狭めても処理速度には影響しない。そればかりか、再確認により「最初に用紙エッジを検出」したことが誤りとされる蓋然性は相当程度低いと解されるだけでなく、再確認ステップがなくともサンプリング周期と走査範囲を狭め」る工程により再確認ができるのだから、サンプリング周期を狭めない再確認ステップの存在意義を理解できない。この点請求人は、「コントローラは、予め停止する位置がわかっていれば予め画線ヘッドのイナーシャを考慮し適正な速度を選択してその位置に正確に画線ヘッドを停止させることができる。しかしながら、停止位置が予めわかっていないときは、停止指令を出しても、画線ヘッドのイナーシャにより直ちに停止はできない。」(平成18年10月25日付け意見書1頁31?34行)及び「コントローラは、再確認できないときはエラー表示をする。このエラー表示はライン32の走査で行われるので、高精度エッジ検出の動作を行う前であり、迅速にエラーの検出が可能となる。このエラー検出をライン33やライン34で高精度エッジ検出の動作で行うとすれば、エラー検出に時間がかかってしまうという問題点が生じる。本件発明はこの問題点を解消している。」(同頁39?44行)と主張している。しかし、再確認ステップにおいて、コントローラが適正な速度を選択するのだとすると、その適正な速度は、最初のエッジ検出時の走査速度よりも小さいと解さなければならない。他方、走査に要する時間は走査範囲と走査速度で定まり(走査範囲は前回停止位置からエッジ位置検出までに決まっているから、実質的には走査速度のみで定まる。)、再確認ステップにおいて走査速度を小さくすれば、前示のとおりサンプリング周期を狭めても処理速度には影響しないのだから、請求人の上記主張は再確認ステップにおいてサンプリング周期を狭めない理由にはならない。 以上述べたとおり、再確認ステップについての第4補正後の請求項1の記載は明確でなく、再確認することの技術的意義が発明の詳細な説明において明らかにされていないから、明細書の記載は平成14年改正前特許法36条4項及び6項2号に規定する要件を満たしていない。 すなわち、補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができず、第4補正は特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反している。 [補正の却下の決定のむすび] 以上のとおり、第4補正は特許法17条の2第4項の規定及び同条5項で準用する同法126条5項の規定に違反しているから、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 1.特許請求の範囲の記載 第4補正が却下されたから、本願の特許請求の範囲の記載は第3補正により補正された次のとおりのものである。 【請求項1】 画線ヘッドに設けた光反射型のセンサによって用紙支持面上の用紙のエッジを走査し、該エッジの位置を検出するプロツタの用紙検出方法において、用紙のエッジの検出に先立って前記センサによって前記用紙支持面の用紙の無い部分の光の反射量と前記用紙支持面上の用紙上における光の反射量とを検出し前記2つの反射量から判定レベルを設定するステップと、前記用紙支持面上の用紙の内側と外側との間で前記センサを移動させて該センサで前記用紙のエッジを走査し該センサが受光する反射量の値が前記判定レベルの値とほぼ等しくなったときの前記センサの位置を前記用紙のエッジの位置と認識するステップと、最初に用紙エッジを検出した後に、前記センサを逆方向に移動して該用紙エッジを再確認するとともに該再確認後に、用紙エッジを挟んで前記センサのサンプリング周期と走査範囲を狭めていき、より正確な用紙エッジを特定するステップとから成り、前記2つの反射量から判定レベルを設定するステップにおいて、前記用紙支持面の用紙の無い部分の光の反射量が、前記用紙の無い部分での光の反射量の複数のサンプリング値の平均値であり、前記用紙上における光の反射量が、用紙上での光の反射量の複数のサンプリング値の平均値であることを特徴とするプロッタの用紙検出方法。 【請求項2】 画線ヘッドに設けた光反射型のセンサによって用紙支持面上の用紙のエッジを走査し、該エッジの位置を検出するプロツタの用紙検出方法において、用紙のエッジの検出に先立って前記センサによって前記用紙支持面の用紙の無い部分の光の反射量と前記用紙支持面上の用紙上における光の反射量とを検出し前記2つの反射量からこれら2つの反射量の変化量αを判定変化量として設定するステップと、前記用紙支持面上の用紙の内側と外側との間で前記センサを移動させて該センサで前記用紙のエッジを走査し該センサが受光する反射量の変化量が前記判定変化量の値とほば等しくなったときの前記センサの位置を前記用紙のエッジの位置と認識するステップと、最初に用紙エッジを検出した後に、前記センサを逆方向に移動して該用紙エッジを再確認するとともに該再確認後に、用紙エッジを挟んで前記センサのサンプリング周期と走査範囲を狭めていき、より正確な用紙エッジを特定するステップとから成り、前記2つの反射量からこれら2つの反射量の変化量αを判定変化量として設定するステップにおいて、前記用紙支持面の用紙の無い部分の光の反射量が、前記用紙の無い部分での光の反射量の複数のサンプリング値の平均値であり、前記用紙上における光の反射量が、用紙上での光の反射量の複数のサンプリング値の平均値であることを特徴とするプロッタの用紙検出方法。 2.記載不備の判断 当審で通知した拒絶理由は「第2[理由]5」で述べたとおりであり、拒絶理由では請求項3の記載についての記載不備を指摘したが、第3補正により第3補正前の請求項3は請求項1,2となったから、第3補正後の請求項1又は請求項2について検討すればよい。 「第2[理由]6」で述べたと同様の理由により、請求項1に係る発明と引用発明との主たる相違は「最初に用紙エッジを検出した後に、前記センサを逆方向に移動して該用紙エッジを再確認する」ステップが、「前記用紙支持面上の用紙の内側と外側との間で前記センサを移動させて該センサで前記用紙のエッジを走査し該センサが受光する反射量の値が前記判定レベルの値とほぼ等しくなったときの前記センサの位置を前記用紙のエッジの位置と認識するステップ」と「用紙エッジを挟んで前記センサのサンプリング周期と走査範囲を狭めていき、より正確な用紙エッジを特定するステップ」の間に存するかどうかの点である。 そして、「再確認」すること(そのようなステップを有する)についての第3補正後の請求項1の記載は明確でなく、再確認することの技術的意義が発明の詳細な説明において明らかにされていないことは、「第2[理由]7」で第4補正後の請求項1に対して述べたと同様である。すなわち、本願明細書の記載は平成14年改正前特許法36条4項及び6項2号に規定する要件を満たしていない。 第4 むすび 以上によれば、本願明細書の記載は平成14年改正前特許法36条4項及び6項2号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-06 |
結審通知日 | 2006-12-08 |
審決日 | 2006-12-19 |
出願番号 | 特願平7-322163 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(B43L)
P 1 8・ 537- WZ (B43L) P 1 8・ 536- WZ (B43L) P 1 8・ 57- WZ (B43L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 武田 悟 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
藤井 勲 長島 和子 |
発明の名称 | プロッタの用紙検出方法 |
代理人 | 西島 綾雄 |