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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1151447 |
審判番号 | 不服2004-20010 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-02-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-09-28 |
確定日 | 2007-02-08 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第190771号「デジタルカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月13日出願公開、特開平10- 42187〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成8年7月19日の出願であって、平成16年8月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年9月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において、平成18年8月21日付けで拒絶理由(最後)が通知され、これに対し、平成18年10月19日付けで手続補正書が提出されたものである。 第2.補正の却下の決定 平成18年10月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について、以下のとおり決定する。 [結論] 平成18年10月19日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、 「複数の画像圧縮レベルが自在に切り替えられる第一の撮影モードと、画像圧縮レベルが固定された第二の撮影モードと、前記第一の撮影モードにおいて切り替えられた画像圧縮レベルを表示する画像圧縮レベル表示器とを有するデジタルカメラであって、前記第二の撮影モードに設定されたときに、前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する制御手段を備えたことを特徴とするデジタルカメラ。」(以下、「補正前請求項1」という。)を、 「複数の画像圧縮レベルが自在に切り替えられる第一の撮影モードと、画像圧縮レベルが固定された第二の撮影モードと、前記第一の撮影モードにおいて切り替えられた画像圧縮レベルを表示する画像圧縮レベル表示器とを有するデジタルカメラであって、前記第二の撮影モードに設定されたときに、モード切換え後の一定時間の間は画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示を行った後、前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する制御手段を備えたことを特徴とするデジタルカメラ。」(以下、「補正後請求項1」という。)と補正するものである。 2 補正内容の整理 本件補正は、制御手段について、補正前請求項1の「前記第二の撮影モードに設定されたときに、前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する制御手段」を、補正後請求項1の「前記第二の撮影モードに設定されたときに、モード切換え後の一定時間の間は画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示を行った後、前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する制御手段」と補正するもの(補正事項)である。 3 本件補正についての検討 (1)新規事項の追加について (1-1)本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、以下のような記載がある。 ア 「【0029】 1-2 CUSTOMモード モードダイヤル202をCUSTOMに合わせた時は、CUSTOMマーク404が点灯するとともにモードダイヤル202をCUSTOMに合わせた後3秒間設定されたカスタム名を表示(図5b)し、その後残量表示(図5a)になる。」 イ 「【0035】 CRW : CCD-Raw ファイル記録。CCDセンサからのRaw(生)データをそのまま独自ファイルとして記録する。」 ウ 「【0042】 (中略) また、CUSTOMモードでCRWを選択した場合、上述の通りRawデータとして記録するので圧縮は行われない。この場合、クオリティボタン206のクリックによって画像圧縮レベル変更を行えないことをユーザに知らせるために、図5cに示すようにクオリティアイコンを消灯している。」 エ 「【0043】 このように、画像圧縮レベルを変更できないモードに設定されたときに、現在の画像圧縮レベルを示す表示を行わないようにしたことによって、 1.ユーザに明確に知らせる。誤操作する可能性が減少する 2.変更できないことを示す表示手段を新たに必要としない という効果がある。」 オ 「【0055】 図6はモードダイヤル202がCUSTOMに切り替えられたとき、図7はモードダイヤルがAに切り替えられたときの撮影前設定項目と表示に関する処理フローを示すフローチャートである。この処理はシステムコントローラ108のCPUによって行われる。他のフローチャートにおいても同様である。 【0056】 以下図6について説明する。モードダイヤル202がカスタムモードにセットされたとき、モードダイヤル202を回す前の位置を調べ(S601)、それがAモードでなければ(ERASEモードならば)カスタムマーク及びカスタム名をディスプレイパネル203に表示し(S605、カスタム名は3秒間だけ表示)、つづいて残量表示に切り替えて(S606)処理を終了する。S601においてモードダイヤル202を回す前のダイヤル位置がAモードであった場合、モードダイヤル202を回す前の撮影前設定をAモードの撮影前設定として保存する(S602)。次に内蔵フラッシュメモリ117にあるカスタムモードの撮影前設定を現在の撮影前設定とする(S603)。次に現在の撮影前設定をもとにクオリティアイコン、フラッシュOFFマーク、マクロアイコン、EXPマークを必要に応じて点灯させる(S604)。次にカスタムマーク及びカスタム名をディスプレイパネルに表示し(S605、カスタム名は3秒間だけ表示)、つづいて残量表示に切り替えて(S606)処理を終了する。 【0057】 モードダイヤル202がAモードにセットされたときの処理フローを図7をもとに説明する。まず現在の撮影前設定をカスタムモードの撮影前設定として保存する(S701)。次に内蔵フラッシュメモリ117にあるAモードの撮影前設定を現在の撮影前設定とする(S702)。次に現在の撮影前設定をもとにクオリティアイコン、フラッシュOFFマーク、マクロアイコン、EXPマークを必要に応じて点灯させる(S703)。次に残量表示を行い(S704)処理を終了する。 【0058】 なお、モードダイヤル202が回された後にユーザによって撮影前設定に変更が加えられた時は、現在の撮影前設定が編集される。」 (1-2) 次に、「モード切換え後の一定時間の間は画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示を行った後」が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるか否かについて検討する。 a.「モード切換え後」について 「モード切換え後」の「モード」は、補正後請求項1の記載によれば、「前記第二の撮影モードに設定されたとき」のモードであり、その「第二の撮影モード」は、補正後請求項1の記載によれば、画像圧縮レベルが固定された撮影モードである。 一方、画像圧縮レベルが固定された撮影モードは、圧縮が行われない非圧縮モードに限らず、圧縮率が1以下の固定の圧縮モードも含まれるものの、圧縮率が1以下の固定の圧縮モードは、当初明細書等に記載されていないので、画像圧縮レベルが固定された撮影モードは、上記イに記載された、「CRW」と表示される、圧縮が行われない非圧縮モードであると解釈する。 以上より、「モード切換え後」は、「CRW」と表示される、圧縮が行われない非圧縮モードに切換え後と解釈する。 b.「一定時間の間」について 上記アに、「CUSTOMに合わせた後3秒間設定されたカスタム名を表示(図5b)し」と記載されているところ、「一定時間の間」は、例えば、3秒間である。 c.「画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示」について 上記アの記載によれば、モード切換え後の一定時間の間に表示されるカスタム名であり、そのカスタム名とは、圧縮が行われない非圧縮モードである「CRW」である。一方、上記エには、「画像圧縮レベルを変更できないモードに設定されたときに、現在の画像圧縮レベルを示す表示を行わないようにした」と記載されている。 「画像圧縮レベルを変更できないモード」は、画像の圧縮率が固定のモードと一般に解釈されるため、上記a.のとおり、技術的に非圧縮モードとは同義ではないが、明細書中では、上記エの記載のみを見れば、「画像圧縮レベルを変更できないモード」を非圧縮モードの意味で使用していることが見て取れる。 しかしながら、以下のとおり、「画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示」が、「CRW」の表示と同然ということはできない。 (c1)上記ウないしオによれば、「画像圧縮レベル変更を行えないことをユーザに知らせる」ための表示手法は、カスタム名を一定時間の間、表示すること(図6 S605)ではなく、図5cに示すようなクオリティアイコンを消灯すること(図6 S604)にあるから、「画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示」が、「CRW」の表示と同然ということはできない。 (c2)「画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示」とは、例えば、「画像圧縮レベルの変更が行えないモードです」との文言を、明示的に表示手段に表示する態様も含まれるが、そのような技術事項は、当初明細書等には記載されていないし、当初明細書等に接した当業者にとって、記載されているのと同然であると理解できる事項とはいえないから、補正事項は、新たな態様を含むように拡張していることになる。 さらに、「画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示」のためには、当然そのための表示手段が必要となるから、上記エの 「2.変更できないことを示す表示手段を新たに必要としない」という効果とも矛盾することになる。 (c3)上記イの記載によれば、「CRW」は、「CCD-Raw」の略称であり、「CCDセンサからのRaw(生)データをそのまま独自ファイルとして記録する」ことを意味するものと解釈するのが、ユーザの通常の認識であり、CRWの表示を見ただけで、「画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示」を意味するものとユーザが認識することは、通常、困難であり、常識的に考えて、「CRW」の表示を、「画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示」と同然ということはできない。 d.「画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示を行った後、前記画像圧縮レベル表示器を消灯する」について 上記c.のとおり、「画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示」が、「CRW」の表示と同然ということはできないが、仮に、「画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示」が、「CRW」の表示と同然であるとして、以下検討する。 (d1) 上記アには、「CUSTOMに合わせた後3秒間設定されたカスタム名を表示(図5b)し、その後残量表示(図5a)になる。」と記載されているところ、カスタム名の表示の後に行われるのは、(内蔵フラッシュメモリ117の)残量の表示であり(図6 S606)、「前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する」ことではない。 (d2) さらに、上記オには、「次に現在の撮影前設定をもとにクオリティアイコン (中略) を必要に応じて点灯させる(S604)。次にカスタムマーク及びカスタム名をディスプレイパネルに表示し(S605、カスタム名は3秒間だけ表示)、つづいて残量表示に切り替えて(S606)処理を終了する。」、上記ウには、「この場合、クオリティボタン206のクリックによって画像圧縮レベル変更を行えないことをユーザに知らせるために、図5cに示すようにクオリティアイコンを消灯している。」と記載されていることから、現在の撮影前設定が「CRW」であれば、クオリティアイコンを消灯し、その後、3秒間の「CRW」の表示をし、つづいて、残量表示をしているものと認められる。 そうすると、「前記画像圧縮レベル表示器を消灯する」(すなわち、クオリティアイコンの消灯)のタイミングは、一定時間の間の「画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示」(すなわち、「CRW」の表示)より時間的に「後」であるとはいえないから、当初明細書等の記載と矛盾していることになる。 したがって、上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではない。 よって、補正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものでもないので、特許法第17条の2第3項に規定された要件を満たさず、本件補正は、その余については検討するまでもなく、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 なお、以下では、仮に、本件補正が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、且つ、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、独立特許要件について検討する。 (2)独立特許要件について ア 本願補正発明 本件の請求項1に記載される発明は、平成18年10月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願補正発明」という。) 「複数の画像圧縮レベルが自在に切り替えられる第一の撮影モードと、画像圧縮レベルが固定された第二の撮影モードと、前記第一の撮影モードにおいて切り替えられた画像圧縮レベルを表示する画像圧縮レベル表示器とを有するデジタルカメラであって、前記第二の撮影モードに設定されたときに、モード切換え後の一定時間の間は画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示を行った後、前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する制御手段を備えたことを特徴とするデジタルカメラ。」 イ 引用発明 当審の拒絶の理由に引用された特開平7-135631号公報(平成7年5月23日出願公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに、次のとおりの記載がある。 「 【0016】この電子カメラは、被写体の撮影像を取り込む撮影レンズ101を有し、その撮影レンズ101の光軸に沿って、絞り及びシャッタ等の光量制御部材102と、被写体からの反射光を電気信号に変換する撮像素子103とが順次配置されている。 【0017】さらに、撮像素子103の出力側には、前置処理回路104、及びA/D変換器105が順次接続されている。ここで、前置処理回路104は、撮像素子103の出力ノイズを除去するためのCDS回路やA/D変換前に行う非線形増幅回路を備えた回路である。そして、前記光量制御部材102には絞り及びシャッタ等を駆動するメカ系駆動回路106が、また撮像素子103には該撮像素子103を動作させるために必要なタイミング信号を発生するタイミング信号発生回路107がそれぞれ接続されている。 」 「 【0022】この圧縮ユニットは、撮影した画像データを任意のファイルサイズに圧縮したり、圧縮した画像データを伸長するための処理を行う拡張ユニットである。この圧縮ユニットには、複数の圧縮モードが備わっている。 【0023】図中100はカメラ本体であり、このカメラ本体100に圧縮ユニット200が取り付けられている。また、カメラ本体100には、レリーズスイッチ117、ズーム倍率変更用スイッチ118,119、及び撮影モード切替えスイッチ120の各スイッチのほか、ビューファインダ121が設けられている。なお、これら各スイッチは、図1に示した操作部112に含まれ、また、図中111に示すものは、カメラの動作状態を表示する図1に示した操作表示部111である。 【0024】この圧縮ユニット200がカメラ本体に取り付けられると、システム制御用CPU110は拡張ユニットの種類を判別し、拡張ユニットが圧縮ユニットであることを認識したときには、カメラ本体100の役割を圧縮ユニットの機能に応じて変更する。例えば、拡張ユニットが接続されていない通常時には、ズーム倍率変更用のスイッチとして使用されている2つのスイッチ118,119が、圧縮ユニット200が取り付けられると、圧縮モード設定スイッチとして機能するようになり、スイッチ118,119を同時に押すと圧縮モードが変るようになる。 」 「 【0028】図3は、カメラ本体100の表示部111と拡張ユニット用モードスイッチ122a、122b、122c、122dを示した図である。 【0029】前述の圧縮ユニットを例にして説明する。圧縮ユニット200がカメラ本体100に取り付けられると、システム制御用CPU110は拡張ユニットの種類を判別し、拡張ユニットが圧縮ユニットであることを認識したときには、表示部111に圧縮モードの表示をする。拡張ユニット用モードスイッチ122a,122b,122c,122dは圧縮モード切替え用のスイッチとして機能するようになる。モードスイッチ122aは圧縮のオン/オフの切替え、モードスイッチ122bは1/2圧縮モード、122cは1/4圧縮モード、122dは1/8圧縮モードの設定用スイッチになる。 【0030】ここで、例えば1/4圧縮モードに設定する場合は、モードスイッチ122cを押すと図4のように表示部111に“COMP”、“1/4”と表示され、圧縮モードが1/4になる。圧縮せずに記録する場合は、モードスイッチ122aを押すと“COMP”、“1/4”などの表示は消え、非圧縮モードになる。」 ウ 対比 本願補正発明と引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比する。 (ア) 引用例の段落【0029】には、「モードスイッチ122bは1/2圧縮モード、122cは1/4圧縮モード、122dは1/8圧縮モードの設定用スイッチになる。」と記載されているから、「複数の画像圧縮レベルが自在に切り替えられる第一の撮影モード」の存在が認められる。 (イ) 引用例の段落【0030】には、「圧縮せずに記録する場合は、モードスイッチ122aを押すと“COMP”、“1/4”などの表示は消え、非圧縮モードになる。」と記載されているから、「画像圧縮レベルが固定された第二の撮影モード」の存在が認められる。 (ウ) 引用例の段落【0029】には、「表示部111に圧縮モードの表示をする。(中略)モードスイッチ122bは1/2圧縮モード、122cは1/4圧縮モード、122dは1/8圧縮モードの設定用スイッチになる。」と記載されており、段落【0030】には、「ここで、例えば1/4圧縮モードに設定する場合は、モードスイッチ122cを押すと図4のように表示部111に“COMP”、“1/4”と表示され、圧縮モードが1/4になる。」と記載されているから、「前記第一の撮影モードにおいて切り替えられた画像圧縮レベルを表示する画像圧縮レベル表示器」の存在が認められる。 (エ) もっとも、引用例の段落【0030】には、「圧縮せずに記録する場合は、モードスイッチ122aを押すと“COMP”、“1/4”などの表示は消え、非圧縮モードになる。」と記載されているから、「前記第二の撮影モードに設定されたときに、前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する制御手段」の存在が認められるものの、「前記第二の撮影モードに設定されたときに、モード切換え後の一定時間の間は画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示を行った後、前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する制御手段」を備えていない。 (オ) 引用例は、被写体からの反射光を電気信号に変換する撮像素子103と、A/D変換器105と、圧縮ユニット200等を有する電子カメラであるものの、デジタルカメラであることが明記されていない。 そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、 両者は、 「複数の画像圧縮レベルが自在に切り替えられる第一の撮影モードと、画像圧縮レベルが固定された第二の撮影モードと、前記第一の撮影モードにおいて切り替えられた画像圧縮レベルを表示する画像圧縮レベル表示器とを有するカメラであって、前記第二の撮影モードに設定されたときに、前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する制御手段を備えたことを特徴とするカメラ。」 で一致し、 次の2点で相違する。 [相違点1] 制御手段において、前記第二の撮影モードに設定されたときに、本願補正発明では、「モード切換え後の一定時間の間は画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示を行った後、前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する」のに対し、引用発明では、「前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する」のみであり、モード切換え後の一定時間の間は画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示を行っていない点。 [相違点2] 本願補正発明は、「デジタルカメラ」であるのに対し、引用発明では、被写体からの反射光を電気信号に変換する撮像素子103と、A/D変換器105と、圧縮ユニット200等を有する「電子カメラ」であるものの、デジタルカメラであることが明記されていない点で一応相違する。 エ 判断 上記各相違点について判断する。 [相違点1について] 「第2 3(1)新規事項の追加について」において検討したとおり、補正後請求項1の「モード切換え後の一定時間の間は画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示を行った後、前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する手段」は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものではないが、「モード切換え後の一定時間の間は画像圧縮レベルの変更が行えない旨の表示」を、「CRW」のような非圧縮モードである旨の表示であるとして、以下検討する。 画像圧縮モードでないと判定されると、非圧縮モードである旨を表示することは、周知技術(例えば、特開平7-245723号公報の段落【0054】、図12のS12参照)である。 カメラにおいて、選択されたモードを、カメラの表示部に表示させることは、慣用手段にすぎず、引用発明においても、非圧縮モードが選択された場合に、非圧縮モードであることを明示するために、操作表示部111において、「COMP」、「1/4」の表示を消すだけではなく、非圧縮モードである旨の表示を文字、記号等で行うようにすることは、当業者が容易になし得ることである。 また、これによる効果も上記引用例及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 [相違点2について] 引用例は、被写体からの反射光を電気信号に変換する撮像素子103を有し、A/D変換されたデジタル画像データを圧縮し、圧縮されたデジタル画像データを記録媒体に記録しているカメラであるから、デジタルカメラであることと技術的に等価であるといえる。 したがって、引用例に記載された、圧縮ユニット200を有する電子カメラを、デジタルカメラと特定することは、当業者にとって容易である。 また、これによる効果も上記引用例から当業者が予測できる範囲のものである。 以上判断したとおり、本願補正発明における上記相違点1ないし2に係る構成はいずれも当業者が容易に想到し得たものであり、また、各相違点を総合しても本願補正発明は当業者が想到することが困難なものとはいえない。 そして、本願補正発明の作用効果も、上記引用例及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 オ むすび 以上のとおり、仮に、本件補正が願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、且つ、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであったとしても、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 4. 以上のとおり、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成18年10月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年9月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。 「複数の画像圧縮レベルが自在に切り替えられる第一の撮影モードと、画像圧縮レベルが固定された第二の撮影モードと、前記第一の撮影モードにおいて切り替えられた画像圧縮レベルを表示する画像圧縮レベル表示器とを有するデジタルカメラであって、前記第二の撮影モードに設定されたときに、前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する制御手段を備えたことを特徴とするデジタルカメラ。」 2 引用例 当審の拒絶の理由に引用された特開平7-135631号公報(平成7年5月23日出願公開、以下「引用例」という。)の記載事項は、上記「第2 3(2)イ」に記載したとおりである。 3 対比 本願発明と引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比する。 (ア) 引用例の段落【0029】には、「モードスイッチ122bは1/2圧縮モード、122cは1/4圧縮モード、122dは1/8圧縮モードの設定用スイッチになる。」と記載されているから、「複数の画像圧縮レベルが自在に切り替えられる第一の撮影モード」の存在が認められる。 (イ) 引用例の段落【0030】には、「圧縮せずに記録する場合は、モードスイッチ122aを押すと“COMP”、“1/4”などの表示は消え、非圧縮モードになる。」と記載されているから、「画像圧縮レベルが固定された第二の撮影モード」の存在が認められる。 (ウ) 引用例の段落【0029】には、「表示部111に圧縮モードの表示をする。 (中略) モードスイッチ122bは1/2圧縮モード、122cは1/4圧縮モード、122dは1/8圧縮モードの設定用スイッチになる。」と記載されており、段落【0030】には、「ここで、例えば1/4圧縮モードに設定する場合は、モードスイッチ122cを押すと図4のように表示部111に“COMP”、“1/4”と表示され、圧縮モードが1/4になる。」と記載されているから、「前記第一の撮影モードにおいて切り替えられた画像圧縮レベルを表示する画像圧縮レベル表示器」の存在が認められる。 (エ) 引用例の段落【0030】には、「圧縮せずに記録する場合は、モードスイッチ122aを押すと“COMP”、“1/4”などの表示は消え、非圧縮モードになる。」と記載されているから、「前記第二の撮影モードに設定されたときに、前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する制御手段」の存在が認められる。 (オ) もっとも、引用例は、被写体からの反射光を電気信号に変換する撮像素子103と、A/D変換器105と、圧縮ユニット200等を有する電子カメラであるものの、デジタルカメラであることが明記されていない。 そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、 両者は、 「複数の画像圧縮レベルが自在に切り替えられる第一の撮影モードと、画像圧縮レベルが固定された第二の撮影モードと、前記第一の撮影モードにおいて切り替えられた画像圧縮レベルを表示する画像圧縮レベル表示器とを有するカメラであって、前記第二の撮影モードに設定されたときに、前記画像圧縮レベル表示器を消灯するように制御する制御手段を備えたことを特徴とするカメラ。」 で一致し、 次の点で相違する。 本願発明は、「デジタルカメラ」であるのに対し、引用発明では、被写体からの反射光を電気信号に変換する撮像素子103と、A/D変換器105と、圧縮ユニット200等を有する「電子カメラ」であるものの、デジタルカメラであることが明記されていない点で一応相違する。 4 判断 上記の相違点について判断する。 引用例は、被写体からの反射光を電気信号に変換する撮像素子103を有し、A/D変換されたデジタル画像データを圧縮し、圧縮されたデジタル画像データを記録媒体に記録しているカメラであるから、デジタルカメラであることと技術的に等価であるといえる。 したがって、引用例に記載された、圧縮ユニット200を有する電子カメラを、デジタルカメラと特定することは、当業者にとって容易である。 また、これによる効果も上記引用例から当業者が予測できる範囲のものである。 第4 むすび 以上のとおり、請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-05 |
結審通知日 | 2006-12-05 |
審決日 | 2006-12-19 |
出願番号 | 特願平8-190771 |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N) P 1 8・ 575- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 章裕、益戸 宏 |
特許庁審判長 |
新宮 佳典 |
特許庁審判官 |
北岡 浩 松永 隆志 |
発明の名称 | デジタルカメラ |
代理人 | 野口 忠夫 |
代理人 | 丹羽 宏之 |