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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1151548
審判番号 不服2005-301  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-10-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-06 
確定日 2007-02-08 
事件の表示 平成 9年特許願第 80978号「アンテナユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月13日出願公開、特開平10-276027〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成9年3月31日の出願であって、平成16年11月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年1月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月4日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年2月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成16年11月8日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「衛星からの電波を受信面で受信するアンテナ素子と、該アンテナ素子を内封するケースとにより構成され、車室内に配設されるアンテナユニットにおいて、
前記電波の車室内への進入方向に対応させ、前記アンテナ素子の一方の受信可能限が低仰角にある衛星から送信された電波を受信しうるよう、かつ前記アンテナ素子の他方の受信可能限がルーフから外れた部位に位置するよう、前記アンテナ素子の前記受信面の仰角を設定する角度設定機構を設けたことを特徴とするアンテナユニット。」
という発明を、
「電波を受信面で受信するアンテナ素子と、該アンテナ素子を内封するケースとにより構成され、車室内のダッシュボード上に配設されるアンテナユニットにおいて、
前記ケースを略三角形状とすると共に、
前記電波の車室内への進入方向に対応させ、前記アンテナ素子の一方の受信可能限が低仰角の方向へ送信されてくる電波を受信しうるよう、かつ前記アンテナ素子の他方の受信可能限がルーフから外れた部位に位置するよう、前記アンテナ素子の前記受信面の仰角を設定する角度設定機構を有し、前記アンテナ素子を前記角度設定機構により受信面を前記仰角に設定された状態で内封したことを特徴とするアンテナユニット。」
という発明に変更することを含むものである。

2.補正の適否
上記補正のうち、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「衛星からの電波」という構成を「電波」という構成に変更する補正と「低仰角にある衛星から送信された電波」という構成を「低仰角の方向へ送信されてくる電波」に変更する補正は、それぞれの構成から「衛星からの」または「衛星から」という限定を削除するものであるから、これらの補正は、特許請求の範囲の減縮には該当せず、また請求項の削除や誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明でないことも明らかである。
したがって、上記補正のうち、「衛星からの」または「衛星から」という限定を削除する補正は、特許法第17条の2第4項(補正の目的)のいずれの規定にも適合していない。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項(補正の目的)のいずれの規定にも適合していないから、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成17年2月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成16年11月8日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
(本願発明)
「衛星からの電波を受信面で受信するアンテナ素子と、該アンテナ素子を内封するケースとにより構成され、車室内に配設されるアンテナユニットにおいて、
前記電波の車室内への進入方向に対応させ、前記アンテナ素子の一方の受信可能限が低仰角にある衛星から送信された電波を受信しうるよう、かつ前記アンテナ素子の他方の受信可能限がルーフから外れた部位に位置するよう、前記アンテナ素子の前記受信面の仰角を設定する角度設定機構を設けたことを特徴とするアンテナユニット。」

2.引用発明及び周知技術
(1)原審の拒絶理由に引用された特開平7-154118号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【請求項1】 自動車位置の検出手段と、地図データ記憶手段と、該地図データ記憶手段に記憶された地図データに基づいて上記検出手段が検出した位置の近傍の地図を表示させる表示手段とを有し、
上記表示手段により表示された地図上に上記検出手段が検出した自動車位置を表示させるナビゲーション装置において、
上記検出手段に接続され、人工衛星よりの信号を受信するアンテナを自動車の車室内に、窓ガラスに対し所要間隔を置いて、取付手段により方向変換可能に取付けるようにしたことを特徴とするナビゲーション装置におけるアンテナ装置。」(2頁1欄、請求項1)
ロ.「【0033】以上の両実施例はGPSアンテナ本体11を車体13の車室13a内においてバックミラー14とフロントガラス13bとの間に設置するように構成したものであるが、GPSアンテナ本体11は前述した取付用ブラケット15又は31により車室13a内の他の部位にも取付けることができるものである。
【0034】この場合、取付用ブラケット15においては、支持部材に応じて上下側の取付プレート17,18の形状を変えることになり、また、取付用ブラケット31においてはベースプレート33を取付面に応じて形状を変え、固定方法も両面接着シート等による接着、ねじ止め等を選択する。」(4頁5?6欄、段落33?34)
ハ.「【0039】しかも、GPSアンテナを受信状況に応じて向きを可変調整できるので常に良好な状態で人工衛星よりの信号を受信できて現在位置をナビゲーション装置により正確に確認することができ、特にバックミラーとフロントガラスの間に位置して設置することにより運転者の視界の妨げにならず受信も一層良好に行える。」(4頁6欄、段落39)

上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「取付手段」は「取付手段により方向変換可能に取付けるようにした」ものであり、「GPSアンテナを受信状況に応じて向きを可変調整できる」ためのものであるから、当該「取付手段」はいわゆる「角度設定機構」でもある。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
(引用発明)
「衛星からの電波を受信するアンテナ本体と、該アンテナ本体を方向変換可能に取付ける取付手段とにより構成され、車室内に配設されるアンテナ装置において、
常に良好な状態で衛星よりの信号を受信できるよう、前記アンテナ本体の前記方向を設定する角度設定機構を有するアンテナユニット。」

(2)例えば特開平9-64636号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項イが記載されており、また例えば特開平8-162843号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項ロが記載されている。
イ.「【0002】
【従来の技術】近年、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)等の衛星からの信号受信は、マイクロストリップアンテナの利用が考えられ、その一種として平面アンテナが利用されている。」(周知例1、2頁1欄、段落2)
ロ.「【0002】
【従来の技術】従来から、車両用のナビゲーション装置として、複数の人工衛星の送信電波を受信し、車両の現在位置を測位するGPSを利用した装置がよく知られている。この装置において、GPS衛星からの送信電波の受信するGPS用アンテナ装置には、テフロン(商品名)等の低誘電体損失の合成樹脂やセラミック等の誘電体基板表面に、放射電極を設けたマイクロストリップパッチアンテナ素子がよく用いられる。」(周知例2、2頁1欄、段落2)

例えば上記周知例1、2に記載されているように「GPS用のアンテナが平面アンテナであり、衛星からの電波を受信面で受信する」ものであることは周知である。

(3)例えば特開平7-128429号公報(以下、「周知例3」という。)には、図面とともに以下の事項イが記載されており、また例えば特開平7-106821号公報(以下、「周知例4」という。)には、図面とともに以下の事項ロが記載されている。
イ.「【0022】また、図4は受信再送アンテナの車室内への取付方法を示す。図3において、2は複数のGPS衛星からの信号を受信する右旋円偏波用送信アンテナ、22は増幅回路部、31は再送用の左旋円偏波用送信アンテナである。
【0023】右旋円偏波用受信アンテナ2で受信した複数の衛星からの信号を増幅回路部22で増幅した後、左旋円偏波用送信アンテナ31から図4に示すように車室内の天井に向けて送信し、反射させて受信機30に接続した右旋円偏波用受信アンテナ3で受信できるよう配置する。」(周知例3、3頁3欄?4欄、段落22?23)
ロ.「【0016】
【作用】本発明の円偏波マイクロストリップアンテナは、スペーサを介して自動車のルーフ端部に、かつルーフ端部外側の方向に所定角度傾斜して装着されることになって、円偏波マイクロストリップアンテナが装着されたルーフ端部とは反対側の高仰角方向において利得が減少し、その分、円偏波マイクロストリップアンテナが装着されたルーフ端部側の低仰角において利得が増大する。結果的に、低仰角では、円偏波マイクロストリップアンテナが装着されたルーフ端部側でのみ利得が上昇し、他の方角では、利得はほとんど変動しないので、円偏波アンテナとして性能がアップする。
【0017】本発明の円偏波マイクロストリップアンテナは、スペーサが中空であるため、スペーサ内にコネクタや受信増幅器などを挿入することもできる。
【0018】
【実施例】以下、本発明を実施例によって説明する図1および図2は本発明の一実施例の構成を示す斜視図であり、図2は自動車のルーフを正方形として示した斜視図である。
【0019】図1および図2に示すように、底面91と斜面92とのなす角度αが10°の断面三角形状のスペーサ9の底面91を適宜手段、例えば磁石によって、自動車11のルーフ12の端部に着脱自在に固着して、スペーサ9の斜面92に1点給電タイプの円偏波マイクロストリップアンテナ5を固着して、円偏波マイクロストリップアンテナ5をルーフ12の外側の方向に10°傾けて装着する。」(周知例4、3頁3欄、段落16?19)

例えば上記周知例3、4に記載されているように「GPS用のアンテナを断面略三角形のケースに内封し、所定の仰角を設定し得るようにすること」は周知である。

(4)例えば特開平4-225185号公報(以下、「周知例5」という。)には、図面とともに以下の事項イが記載されており、また例えば特開平7-325141号公報(以下、「周知例6」という。)には、図面とともに以下の事項ロが記載されている。
イ.「【0008】
【実施例】(・・・中略・・・)この図1において、アンテナA1、A2は、図2に示すように車両の室内のダッシュボード上とリアトレイ上にそれぞれ配置され、衛星S1、S2、S3等からの送信電波を受信する。(・・・以下略・・・)」(周知例5、3頁3欄、段落8)
ロ.「【0013】図1には車両14におけるアンテナ10の配置構成が概略的に示されている。(・・・中略・・・)このアンテナ10は前記車両部分12によって部分的に遮蔽されているため、リアウインドウ又はフロントウインドウ13を通して制約された可視領域Bが生じる。この領域Bに続く領域A,Cからの信号はアンテナ10によって受信することはできない。なぜなら車両部分12によって信号がさえぎられるからである。それにより可視領域BにあるGPS衛星の信号が受信される。(・・・以下略・・・)」(周知例6、3頁4欄、段落13)

上記周知例5の図2には例えばアンテナA1の視野が、上記周知例6の図1にはアンテナ10の可視領域Bがそれぞれ開示されている。したがって、例えば上記周知例5、6に記載されているように「GPS用アンテナの指向性を、電波の車室内への進入方向に対応させ、前記アンテナの一方の受信可能限が低仰角にある衛星から送信された電波を受信しうるよう、かつ前記アンテナの他方の受信可能限がルーフから外れた部位に位置するように設定すること」は周知である。

3.対比・判断
本願発明の「衛星からの電波を受信面で受信するアンテナ素子」と引用発明の「衛星からの電波を受信するアンテナ本体」はいずれも「衛星からの電波を受信するアンテナ部」である点で一致しており、
本願発明の「該アンテナ素子を内封するケース」と引用発明の「該アンテナ本体を方向変換可能に取付ける取付手段」はいずれも「該アンテナ部の取付部」である点で一致している。
また、本願発明の「前記電波の車室内への進入方向に対応させ、前記アンテナ素子の一方の受信可能限が低仰角にある衛星から送信された電波を受信しうるよう、かつ前記アンテナ素子の他方の受信可能限がルーフから外れた部位に位置するよう、前記アンテナ素子の前記受信面の仰角を設定する角度設定機構を設け」る構成と引用発明の「常に良好な状態で衛星よりの信号を受信できるよう、前記アンテナ本体の前記方向を設定する角度設定機構を有する」構成はいずれも「前記アンテナ素子の前記角度を所定値に設定する角度設定機構を有する」という構成の点で一致している。
また、本願発明の「アンテナユニット」と引用発明の「アンテナ装置」との間に実質的な差異はない。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。
<一致点>
「衛星からの電波を受信するアンテナ部と、該アンテナ部の取付部とにより構成され、車室内に配設されるアンテナユニットにおいて、
前記アンテナ素子の前記角度を所定値に設定する角度設定機構を有するアンテナユニット。」

<相違点>
(1)「アンテナ部」に関し、本願発明は「衛星からの電波を受信面で受信するアンテナ素子」であるのに対し、引用発明は「衛星からの電波を受信するアンテナ本体」である点。
(2)「該アンテナ部の取付部」に関し、本願発明は「該アンテナ素子を内封するケース」であるのに対し、引用発明は「該アンテナ本体を方向変換可能に取付ける取付手段」である点。
(3)「前記アンテナ素子の前記角度を所定値に設定する角度設定機構を有する」構成に関し、本願発明は「前記電波の車室内への進入方向に対応させ、前記アンテナ素子の一方の受信可能限が低仰角にある衛星から送信された電波を受信しうるよう、かつ前記アンテナ素子の他方の受信可能限がルーフから外れた部位に位置するよう、前記アンテナ素子の前記受信面の仰角を設定する角度設定機構を設け」る構成であるのに対し、引用発明は「常に良好な状態で衛星よりの信号を受信できるよう、前記アンテナ本体の前記方向を設定する角度設定機構を有する」構成である点。

そこで、まず、上記相違点1の「アンテナ部」について検討するに、例えば上記周知例1、2に記載されているように「GPS用のアンテナが平面アンテナであり、衛星からの電波を受信面で受信する」ものであることは周知であり、引用発明の「アンテナ本体」と本願発明の「アンテナ素子」の間にも実質的な差異はないから、引用発明の「衛星からの電波を受信するアンテナ本体」の構成を本願発明のような「衛星からの電波を受信面で受信するアンテナ素子」とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。
ついで、上記相違点2の「該アンテナ部の取付部」について検討するに、例えば上記周知例3、4に記載されているように「GPS用のアンテナを断面略三角形のケースに内封し、被取付部と所定の角度を設定し得るようにすること」は周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明の「該アンテナ本体を方向変換可能に取付ける取付手段」として当該周知の構成を採用して本願発明のような「該アンテナ素子を内封するケース」とする程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。
ついで、上記相違点3の「前記アンテナ素子の前記角度を所定値に設定する角度設定機構を有する」構成について検討するに、例えば上記周知例5、6に記載されているように「GPS用アンテナの指向性を、電波の車室内への進入方向に対応させ、前記アンテナの一方の受信可能限が低仰角にある衛星から送信された電波を受信しうるよう、かつ前記アンテナの他方の受信可能限がルーフから外れた部位に位置するように設定すること」は周知であり、そのための角度調整がアンテナ素子の受信面の仰角であることは当業者であれば自明のことであるから、これらの技術手段に基づいて引用発明の「常に良好な状態で衛星よりの信号を受信できるよう、前記アンテナ本体の前記方向を設定する角度設定機構を有する」という構成を本願発明のような「前記電波の車室内への進入方向に対応させ、前記アンテナ素子の一方の受信可能限が低仰角にある衛星から送信された電波を受信しうるよう、かつ前記アンテナ素子の他方の受信可能限がルーフから外れた部位に位置するよう、前記アンテナ素子の前記受信面の仰角を設定する角度設定機構を設け」る構成に変更する程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-17 
結審通知日 2006-11-28 
審決日 2006-12-13 
出願番号 特願平9-80978
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新川 圭二  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 宮下 誠
畑中 博幸
発明の名称 アンテナユニット  
代理人 伊東 忠彦  

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