• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1151549
審判番号 不服2005-696  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-03-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-12 
確定日 2007-02-08 
事件の表示 特願2002-240277「反射器付きモノポールアンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月11日出願公開、特開2004- 80589〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年8月21日の出願であって、平成16年12月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年1月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付け及び同年2月1日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年2月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成17年1月12日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「半径が0.2λ?0.26λ(λは使用周波数帯の波長)の円形反射板の中央に長さが約0.25λのモノポールアンテナが垂直に配置され、上記円形反射板を上底とし、この上底と対向し半径が0.66λ?0.8λの円形を下底とし、上底及び下底の垂直方向の間隔を0.23λ?0.3λとした台形反射板が構成されていることを特徴とする反射器付きモノポールアンテナ。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、審判請求に伴う補正ができる期間内に、更に
「半径が0.2λ?0.26λ(λは使用周波数帯の波長)の円形反射板の中央に長さが約0.25λのモノポールアンテナが垂直に配置され、上記円形反射板を上底とし、この上底と対向し半径が0.66λ?0.8λの円形を下底とし、上底及び下底の垂直方向の間隔を0.25λ?0.3λとした台形反射板が構成されていることを特徴とする反射器付きモノポールアンテナ。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「上底及び下底の垂直方向の間隔を0.23λ?0.3λとした台形反射板」の構成を、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、「上底及び下底の垂直方向の間隔を0.25λ?0.3λとした台形反射板」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

[引用発明及び周知技術]
A.原審の拒絶理由に引用された特開2000-174540号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【請求項3】 放射素子と、所定の面積を有する接地導体板より構成されるモノポールアンテナにおいて、
前記接地導体板を湾曲させてドーム型にしたことを特徴とするモノポールアンテナ。」(2頁1欄、請求項3)
ロ.「【0016】図3(a),(b)は、本発明のモノポールアンテナの他の実施の形態の構成を示した図であり、同図(a)はその斜視図、同図(b)は、同図(a)に示した破線B-B’を矢示方向から見た断面図である。これら図3(a),(b)に示すモノポールアンテナ11も放射素子10と地板12により構成されている。
【0017】この場合、地板12は図5に示した従来の地板52と対比すると明らかなように、放射素子10と反対の方向にカーブ(湾曲)させたようなドーム型、例えば略半球状とされている。このように地板12にカーブを持たせるようにしても、特に図示していないが上記図1で説明したモノポールアンテナ1と同様にその指向性を広角にすることができる。
【0018】なお、地板12をカーブさせてドーム型にする際には、地板12を一定の曲率で行う必要はなく、カーブを持たせて角状の部分を無くすようにすれば良い。また、地板12の形状は方形状に限定されるものではなく、例えばドーム型の時は円形状にしたほうが容易に形成できるので好適である。」(3頁3欄、段落16?18)

上記引用例1の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「モノポールアンテナ」は「放射素子」を「ドーム型円形反射板」の中央に垂直に設置した、いわゆる「反射器付きモノポールアンテナ」であり、該「放射素子」はそれだけでも一般に「モノポールアンテナ」と呼称されるものである。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
(引用発明)
「ドーム型の円形反射板の中央にモノポールアンテナが垂直に配置されている反射器付きモノポールアンテナ。」

B.例えば原審の拒絶理由に引用された特開2002-100928号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項イ、ロが記載されている。
イ.「【0017】
【発明の実施の形態】本発明の複合アンテナは、図14に示すように衛星放送として円偏波が用いられ、地上放送として直線偏波が用いられる衛星デジタル音声放送システムにおける移動体82に搭載されるアンテナ82aに適用することのできるアンテナであり、実施の形態の第1の構成を示す平面図を図1に、その正面図を図2に示す。図1および図2に示す本発明の第1の実施の形態にかかる複合アンテナ1は、略直交配置された2つのダイポールアンテナからなるクロスダイポールアンテナ10と、ホイップアンテナ20と、反射板6とから構成されている。反射板6は、略円形とされておりその直径Dは、使用周波数帯域における中心周波数の波長をλとした際に、約λ/2?λとされている。(・・・以下省略・・・)」(4頁6欄、段落17)
ロ.「【0032】ところで、以上説明した本発明の第1の実施の形態にかかる複合アンテナ1ないし第3の実施の形態に係る複合アンテナ50における反射板6は、平板状に限らず図11に示す形状としてもよい。平面図が図11(a)に示す形状とされ、正面図が図11(b)に示す形状とされた反射板6aは、球体を切り取った形状の反射板6aとされている。また、平面図が図11(c)に示す形状とされ、正面図が図11(d)に示す形状とされた反射板6bは、2段階に傾斜が変化する円錐状の反射板6bとされている。さらに、正面図が図11(e)に示す形状とされた反射板6cは、円錐状の頂部が平面状とされた台形形状の反射板6cとされている。また、図示していないが反射板を円錐状としてもよい。このような反射板のいずれの形状としても、低仰角においてゲインを向上することができると共に円偏波の軸比特性を改善することができる。
【0033】また、前述したが本発明の第1の実施の形態にかかる複合アンテナ1ないし第3の実施の形態に係る複合アンテナ50におけるホイップアンテナ20(30)は、図12(a)に示すλ/4ホイップアンテナに限るものではなく、図12(b)に示すようなλ/2ホイップアンテナとしたり、図12(c)に示すような5λ/8ホイップアンテナとしたり、図12(d)に示すような3λ/4ホイップアンテナとしてもよい。さらに、ホイップアンテナ20(30)を図12(c)に示すようなヘリカルアンテナとしたり、図12(e)に示すようなスリーブアンテナとしてもよい。」(7頁11欄、段落32?33)

上記引用例2の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「λ/4ホイップアンテナ」は上記「複合アンテナ」を構成する他方のアンテナである「クロスダイポールアンテナ」とは独立に動作する、いわゆる「長さが約0.25λのモノポールアンテナ」であり、上記「球体を切り取った形状の反射板」はいわゆる「ドーム型の円形反射板」である。したがって、上記引用例2には「直径約λ/2?λの略円形反射板に長さが約0.25λのモノポールアンテナが垂直に配置される反射板付アンテナにおいて、反射板の形状をドーム型又は円錐状の頂部が平面状とされた台形形状として低仰角ゲインを向上させる」技術手段が開示されている。

[対比・判断]
補正後の発明の「半径が0.2λ?0.26λ(λは使用周波数帯の波長)の円形反射板」と「上記円形反射板を上底とし、この上底と対向し半径が0.66λ?0.8λの円形を下底とし、上底及び下底の垂直方向の間隔を0.25λ?0.3λとした台形反射板」からなる構成と引用発明の「ドーム型の円形反射板」という構成はいずれも「所定形状の円形反射板」という構成の点で一致している。
したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。
(一致点)
「所定形状の円形反射板の中央にモノポールアンテナが垂直に配置されている反射器付きモノポールアンテナ。」

(相違点1)「所定形状の円形反射板」に関し、補正後の発明は「半径が0.2λ?0.26λ(λは使用周波数帯の波長)の円形反射板」と「上記円形反射板を上底とし、この上底と対向し半径が0.66λ?0.8λの円形を下底とし、上底及び下底の垂直方向の間隔を0.25λ?0.3λとした台形反射板」からなる構成であるのに対し、引用発明は「ドーム型の円形反射板」という構成である点。
(相違点2)「モノポールアンテナ」に関し、補正後の発明は「長さが約0.25λのモノポールアンテナ」であるのに対し、引用発明は単に「モノポールアンテナ」である点。

そこで、上記相違点1の「所定形状の円形反射板」について検討するに、例えば上記引用例2には「直径約λ/2?λの略円形反射板に長さが約0.25λのモノポールアンテナが垂直に配置される反射板付アンテナにおいて、反射板の形状をドーム型又は円錐状の頂部が平面状とされた台形形状として低仰角ゲインを向上させる」技術手段が開示されているところ、台形であるからには「上底」は「下底」よりも小さく、かつ適当な「上底及び下底の垂直方向の間隔」いわゆる「高さ」を有するものでなければならないことは当業者には自明のことであり、また、補正後の発明におけるこれらの大きさに関する数値限定は一例にすぎず当該数値限定が臨界的な作用効果上の根拠に基づくものであるとは認められないから、即ち、これらの具体的な数値は実際の建物の構造・材質、アンテナ及び端末のレイアウト等によって変化する実際の指向性に基づいてその所望する指向性が得られる範囲を適宜選定すれば足りるものであるから、上記引用発明の「ドーム型の円形反射板」を引用例2に記載された技術手段に基づいて「ドーム型」と等価な「台形形状」にするとともに、その大きさを所望の指向性が得られるように適宜設定し、補正後の発明のような「半径が0.2λ?0.26λ(λは使用周波数帯の波長)の円形反射板」と「上記円形反射板を上底とし、この上底と対向し半径が0.66λ?0.8λの円形を下底とし、上底及び下底の垂直方向の間隔を0.25λ?0.3λとした台形反射板」からなる構成を得る程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。
ついで、上記相違点2の「モノポールアンテナ」について検討するに、上記したように例えば引用例2には「長さが約0.25λのモノポールアンテナが垂直に配置される反射板付アンテナ」が例示されており、同様な構成を有する引用発明の「モノポールアンテナ」の長さをこのような値に設定する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明の「モノポールアンテナ」の長さを「約0.25λ」に設定して、補正後の発明のような「長さが約0.25λのモノポールアンテナ」という構成を得る程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。
なお、請求人は「引用例記載の発明は0°方向(即ち、高仰角方向)の利得を低下させる技術が開示されていない」旨主張しているが、引用発明の「指向性を広角にする」技術手段は上記引用例2に記載された発明の「低仰角ゲインを向上させる」技術手段と同じ意味であり、指向性を広角にしたり低仰角ゲインを向上させると、その分、高仰角(即ち、0°方向)ゲインが減少することは当業者であれば自明のことであるから、前記請求人の主張は採用できない。

以上のとおりであるから、補正後の発明は上記引用発明及び引用例2に記載された技術手段に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成17年2月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明及び周知技術
引用発明及び周知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「[引用発明及び周知技術]」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用発明及び引用例2に記載された技術手段に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び引用例2に記載された技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-28 
結審通知日 2006-12-05 
審決日 2006-12-21 
出願番号 特願2002-240277(P2002-240277)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新川 圭二  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 畑中 博幸
宮下 誠
発明の名称 反射器付きモノポールアンテナ  
代理人 中村 幸雄  
代理人 稲垣 稔  
代理人 草野 卓  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ