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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1151572
審判番号 不服2006-15009  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-13 
確定日 2007-02-08 
事件の表示 特願2003- 91267「自分確率管理装置、遊技場システム、自分確率管理方法及び自分確率管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月28日出願公開、特開2004-298214〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成15年3月28日の出願であって、平成17年8月2日付で拒絶理由通知がなされ、平成17年10月5日付で意見書の提出及び手続補正がなされ、同年12月20日付で拒絶理由通知がなされ、平成18年2月24日付で意見書の提出及び手続補正がなされ、同年6月5日付で平成18年2月24日付の手続補正について補正却下の決定がなされるとともに、同日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月13日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年8月11日付で手続補正がなされたものである。

2 平成18年8月11日付の手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成18年8月11日付の手続補正を却下する。

〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。
「【請求項1】 一又は二以上の遊技台から収集した遊技データにもとづいて、所定の情報を算出し管理する自分確率管理装置であって、
各前記遊技台から前記遊技データを受信する遊技データ受信部と、
各遊技者と遊技台との遊技実績を示す自分確率として、当該遊技者の当日又は前日以前の所定期間における、前記遊技台の機種ごとの、特定遊技の発生確率を、前記遊技データにもとづいて求める演算部と、
前記自分確率を記憶するとともに、メーカにより発表された、前記遊技台の機種ごとの前記特定遊技の発生確率を、メーカ発表確率として記憶する記憶部と、
前記自分確率を含む所定情報を表示する表示部と、を備え、
前記表示部が、各遊技者ごとに、機種ごとの自分確率と、当該自分確率に係る機種名と、当該機種の前記メーカ発表確率とを、自分確率が示す確率順に表示することを特徴とする自分確率管理装置。」
上記補正は、平成17年10月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項5に記載された発明を特定するために必要な事項である「演算部」「記憶部」及び「表示部」についてそれぞれ限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
本願出願日の前である平成11年7月27日に頒布された特開平11-197334号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】 遊技媒体を使用した遊技に応じて遊技媒体の払出動作を行うと共に、消費遊技媒体及び払出遊技媒体などに関するデータ管理用信号を出力するように構成された遊技機が多数台設置され、前記データ管理用信号に基づいて各遊技機での遊技結果などを示す遊技機データを算出可能に構成された遊技場用のデータ管理システムにおいて、
前記遊技機と対応した位置に設けられ、対応する遊技機についての前記遊技機データを順次蓄積するように構成されたデータ管理端末と、
このデータ管理端末に接続可能で、接続開始されてから接続解除されるまでに行われた遊技に関する前記遊技機データを前記データ管理端末からダウンロード可能に設けられ、そのダウンロードした遊技機データに基づいて、遊技客個人の遊技成績を含む個人成績データを算出すると共に、その個人成績データを表示するように構成された携帯型データ表示機とを備えたことを特徴とする遊技場用のデータ管理システム。」
「【請求項5】 前記携帯型データ表示機は、前記データ管理端末からダウンロードした遊技機データを基礎データとして記憶保持すると共に、その基礎データに基づいて前記個人成績データの算出を行うように構成されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の遊技場用のデータ管理システム。」
「【請求項8】 前記個人成績データには、該当個人の通算成績を含む個人生涯成績データ、該当個人の所定期間での成績を含む個人期間成績データ、該当個人の遊技履歴を示す遊技履歴データ、遊技機の機種別の個人成績を示す機種別成績データの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の遊技場用のデータ管理システム。」
「【0004】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、遊技客個人の遊技成績を携帯型データ表示機に表示できるようになり、以て遊技客側の利便性を大幅に向上させ得るなどの効果を奏する遊技場用のデータ管理システムを提供することにある。」
「【0011】以下、本発明をパチンコホール用のデータ管理システムに適用した一実施例について図面を参照しながら説明する。図1において、パチンコホール内に多数台設置されたパチンコ遊技機1に隣接した位置には、本発明でいうデータ管理端末としての機能を備えた台間玉貸機2が設けられている。この場合、パチンコ遊技機1は、遊技媒体であるパチンコ玉を使用した遊技に応じて当たり状態(入賞状態)となったときにパチンコ玉の払出動作を行うと共に、その遊技に応じて、それぞれ周知のアウト玉数信号、セーフ玉信号、特賞信号、スタート信号、確率変動信号、ドアオープン信号などのデータ管理用信号SDを出力する構成となっており、そのデータ管理用信号SDは、台間玉貸機2を介して集中管理用のホストコンピュータ3へリアルタイムで送信される構成となっている。」
「【0013】さらに、台間玉貸機2は、携帯型データ表示機(以下単にデータ表示機と称する)4がワイヤード接続される構成となっている。具体的には、台間玉貸機2は、データ表示機4が有する接続ケーブル5aのプラグ5bを挿抜可能なジャック2dを備えており、それらのジャック2dにプラグ5bが接続された状態で、当該データ表示機4に対して後述する表示用データを出力してホストコンピュータ3に与える機能を有する。」
「【0014】上記データ表示機4は、所謂モバイルコンピュータとして構成されたもので、図2に示すように、前記接続ケーブル5a及びプラグ5bの他に、液晶を使用した表示パネル5、それぞれモーメンタリタイプのスイッチより成るメニュー選択スイッチ6、メニュー確定スイッチ7及びメニューキャンセルスイッチ8、オルタネータタイプのスイッチより成るデータ収集スイッチ9、ポインティングデバイスとして設けられたタッチペン10、上記液晶パネル5の表面に設けられたタッチペン10用の入力装置(図示せず)、電源スイッチ(図示せず)などを有し、内部にはCPUなどを含んで構成された制御回路(図示せず)を有する。」
「【0021】つまり、台間玉貸機2は、パチンコ遊技機1から出力されるデータ管理用信号SDをホストコンピュータ3へ送信する機能の他に、通常の貸出機能による貸出高を示す売上信号、貯玉貸出機能による貸出高を示す貯玉払出信号、会員カードから読み取った会員データなどを含む売上データ信号をホストコンピュータ3へ送信する機能を有し、また、ホストコンピュータ3からの送信データを受信して記憶する機能も有する。さらに、台間玉貸機2は、データ管理端末として機能するために、パチンコ遊技機1からのデータ管理用信号SD並びに自身が出力する売上信号及び貯玉払出信号などに基づいて、それぞれ現在時点での累計スタート回数、特賞発生回数、確率変動状態発生回数、アウト玉数、セーフ玉数、売上金額、貯玉貸出数、特賞発生確率などを演算して表示用データとして蓄積する。そして、データ表示機4が接続されている状態では、上記のような表示用データのデータ蓄積動作を行う毎に、当該最新の表示用データをデータ表示機4へ逐次送信する機能を有するものである。この場合、上記表示用データには、対応するパチンコ遊技機1の機種名を示すデータや、他のパチンコ遊技機1についての同様のデータも含まれる。」
「【0025】図3及び図4において、制御回路は、電源が投入されたとき(ステップA1で「YES」)には、表示パネル5に対して図7に示すような通常画面を表示する(ステップA2)。具体的には、この通常画面には、メニュー選択を促すメッセージa1の他に、メニューの内容を示す「通常データ」、「遊技履歴」、「個人データ」、「得意機種分析」の各文字a2?a5を表示する。」
「【0026】このように通常画面を表示した状態では、タッチペン10によって「通常データ」、「遊技履歴」、「個人データ」、「得意機種分析」のいずれかが選択されるまで、若しくはメニュー選択スイッチ6及びメニュー確定スイッチ7が同時押しされるまで待機する(ステップA3?A7)。」
「【0044】図3に翻って、前記通常画面(図7参照)の表示状態で「得意機種分析」が選択されたとき(ステップA6で「YES」)には、表示パネル5に対して図16に示すような分析対象検索画面を表示する(ステップA28)。具体的には、この分析対象検索画面には、当該検索画面であることを示すタイトルi1及び分析対象項目の選択を促すメッセージi2の他に、分析対象項目を示す「差玉数」、「特賞確率」、「獲得率」、「獲得玉数」、「特賞回数」、「店内順位」の各文字i3?i8を表示する。」
「【0046】この表示ルーチンA31の画面表示の一例が図17に示されている。この図17は、分析対象項目として「差玉数」が選択された場合の表示例を示すもので、具体的には、得意機種分析画面であることを示すタイトルj1及び分析対象項目の種類を示すタイトルj2の他に、パチンコ遊技機1の各機種名とそれら各機種毎の差玉数を示すデータj3群を表示する。尚、上記機種名の表示は、差玉数の多い順に行われる。また、他の分析対象項目についてのデータ表示も、各機種毎に同様に行われる。」
「【0063】以上要するに、上記した本実施例の構成によれば、データ表示機4を携帯した遊技客は、自身の個人成績データを知りたい場合には、パチンコ遊技機1での遊技期間中において、データ表示機4のプラグ5bを台間玉貸機2のジャック2aに接続した状態とする。すると、当該台間玉貸機2からは、対応するパチンコ遊技機1についての遊技機データが自動的に出力されて、その遊技機データがデータ表示機4側にダウンロードされるようになり、データ表示機4は、そのダウンロード期間における遊技機データを基礎データとして記憶保持すると共に、その基礎データを自身で加工することによって遊技客個人の遊技成績を含む個人成績データを算出し、その算出個人成績データを表示するようになる。従って、従来不可能であった遊技客個人の遊技成績の表示を、データ表示機4で行い得るようになり、これにより遊技客側の利便性を大幅に向上させ得るようになる。この場合、データ表示機4を台間玉貸機2に対しワイヤード接続した期間中において、遊技機データのダウンロードが自動的に行われることになるから、遊技客側で余分な操作を行う必要がなくなって利便性がさらに向上すると共に、誤操作の恐れがなくなるという利点が出てくる。」

以上の記載事項及び図1乃至21を参酌すると、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。

「遊技機と対応した位置に設けられ、対応する遊技機についての遊技機データを順次蓄積するように構成されたデータ管理端末と、このデータ管理端末に接続可能で、接続開始されてから接続解除されるまでに行われた遊技に関する遊技機データをデータ管理端末からダウンロード可能に設けられ、そのダウンロードした遊技機データに基づいて、遊技客個人の遊技成績を含む個人成績データを算出すると共に、その個人成績データを表示するように構成された携帯型データ表示機とを備え、携帯型データ表示機は、データ管理端末からダウンロードした遊技機データを基礎データとして記憶保持すると共に、その基礎データに基づいて個人成績データの算出を行うように構成され、個人成績データには、遊技機の機種別の個人成績を示す機種別成績データを含み、「得意機種分析」が選択されたときには、分析対象項目を示す「差玉数」、「特賞確率」、「獲得率」、「獲得玉数」、「特賞回数」、「店内順位」の各文字が表示され、分析対象項目として「差玉数」が選択された場合、遊技機の各機種名とそれら各機種毎の差玉数を示すデータを表示し、機種名の表示は、差玉数の多い順に行われ、他の分析対象項目についてのデータ表示も、各機種毎に同様に行われる遊技場用のデータ管理システム。」

また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日の前である平成9年11月18日に頒布された特開平9-294858号公報(以下、「引用例2」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0078】また、本実施形態による遊技機の管理装置では、ローカル・コンピュータ27は、予め設定入力された遊技機の特賞確率の基本値と、営業した結果得られたこの特賞確率の営業値とを比較表示する。」
「【0079】例えば、図6に示す「売上/機種別全店データ表」のように表示する。同集計表では、アウト球数(アウト平均),差球数(差平均),出玉率といった各種データのその日の1台当たり平均値が、ローカル・コンピュータ27によって各機種毎に表示されている。また、これら各データについて、パチンコ機A?H全体についてのその日の平均値,パチスロJ,K全体についてのその日の平均値といった値も表示されている。さらに、特賞確率の基本値,特賞確率の営業値およびこれらの差が、パチンコ機およびパチスロの各機種毎に表示されている。例えば、パチンコ機の機種Aの特賞確率の欄を見ると、基本値が250,営業値が225,差が-25と比較表示されている。これら各値はパチスロについても同表に示すように比較表示されている。」
「【0080】特賞確率の基本値は、遊技機の製造メーカから各機種毎に発表されている設計値であり、長時間の遊技を行った場合に特賞の発生する確率が統計的に収束する値である。従って、遊技機の一日の遊技時間が短かった場合などには、特賞確率は必ずしも基本値に収束しない。よって、本実施形態のように、特賞確率の基本値をローカル・コンピュータ27に機種毎に予め入力しておき、特賞確率の基本値と営業値とを比較表示することにより、特賞確率の営業値のその基本値に対する位置付けが明確化される。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1記載の発明を比較すると、
(ア)引用例1記載の発明の「遊技機」及び「遊技機データ」は、本願補正発明の「遊技台」及び「遊技データ」にそれぞれ相当し、「対応する遊技機についての遊技機データを順次蓄積するように構成されたデータ管理端末」は、本願補正発明の「遊技台から遊技データを受信する遊技データ受信部」に対応する。
(イ)引用例1記載の発明の「特賞確率」は、本願補正発明の「特定遊技の発生確率」に相当する。そして、引用例1記載の発明において、遊技機の機種別の個人成績を示す機種別成績データを算出するにあたり、「得意機種分析」を選択して「特賞確率」を分析対象項目として算出する構成は、本願補正発明において、「遊技者と遊技台との遊技実績を示す自分確率」として、「遊技台の機種ごとの、特定遊技の発生確率を、前記遊技データにもとづいて求める演算部」に対応する。なお、引用例1記載の発明の「特賞確率」が当日又は前日以前の所定期間における遊技機データにもとづいて求められることは自明である。
(ウ)引用例1記載の発明における「携帯型データ表示機」が「個人成績データを表示するように構成された」点は、本願補正発明の「自分確率を含む所定情報を表示する表示部」に対応する。
(エ)引用例1記載の発明における「携帯型データ表示機」は、「遊技機データを基礎データとして記憶保持」し、当該基礎データに基づいて個人成績データを算出して表示するものである以上、算出された個人成績データを記憶する記憶部を備えていることは自明であるから、本願補正発明の「自分確率を記憶する記憶部」に相当する構成を実質的に備えている。
(オ)引用例1記載の発明の「分析対象項目として「差玉数」が選択された場合、遊技機の各機種名とそれら各機種毎の差玉数を示すデータを表示し、機種名の表示は、差玉数の多い順に行われ、他の分析対象項目についてのデータ表示も、各機種毎に同様に行われる」構成において、「差玉数」の代わりに「特賞確率」を選択した場合には、本願補正発明の「各遊技者ごとに、機種ごとの自分確率と、当該自分確率に係る機種名とを、自分確率が示す確率順に表示する」構成に対応する。
(カ)引用例1記載の発明の「データ管理システム」は、本願補正発明の「自分確率」に相当する情報も管理するものであるから、本願補正発明の「自分確率管理装置」に相当する。

したがって、両者は、
「一又は二以上の遊技台から収集した遊技データにもとづいて、所定の情報を算出し管理する自分確率管理装置であって、
各前記遊技台から前記遊技データを受信する受信部と、
各遊技者と遊技台との遊技実績を示す自分確率として、当該遊技者の当日又は前日以前の所定期間における、前記遊技台の機種ごとの、特定遊技の発生確率を、前記遊技データにもとづいて求める演算部と、
前記自分確率を記憶する記憶部と、
前記自分確率を含む所定情報を表示する表示部と、を備え、
前記表示部が、各遊技者ごとに、機種ごとの自分確率と、当該自分確率に係る機種名とを、自分確率が示す確率順に表示することを特徴とする自分確率管理装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明は、メーカにより発表された、遊技台の機種ごとの特定遊技の発生確率を、メーカ発表確率として記憶部が記憶し、表示部が表示するのに対して、引用例1記載の発明では、メーカ発表確率に関する構成を備えていない点。

(4)判断
(相違点)について
引用例2における「特賞確率の基本値」は、「特賞確率の基本値は、遊技機の製造メーカから各機種毎に発表されている設計値であり、…」との記載から、本願補正発明の「メーカにより発表された、遊技台の機種ごとの特定遊技の発生確率」である「メーカ発表確率」に相当する。よって、引用例2には、メーカにより発表された、遊技台の機種ごとの特定遊技機の発生確率を、メーカ発表確率として記憶部が記憶し、表示部が表示する技術が記載されている。
そして、引用例1記載の発明と引用例2記載の技術は、遊技台の管理装置に関するものである点で共通し、さらに、表示部において機種名、及び、機種ごとの遊技実績を一覧表示する点でも共通するから、引用例1記載の発明に引用例2記載の技術を適用することは、当業者であれば容易になしえる。
よって、相違点に係る本願補正発明の構成は、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
平成18年8月11日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という)は、平成17年10月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 一又は二以上の遊技台から収集した遊技データにもとづいて、所定の情報を算出し管理する自分確率管理装置であって、
各前記遊技台から前記遊技データを受信する遊技データ受信部と、
特定遊技に関する発生確率を、前記各遊技台に対応した、各前記遊技者ごとの自分確率として、前記遊技データにもとづいて求める演算部と、
前記自分確率を記憶する記憶部とを備え、
前記演算部が、前記自分確率を、遊技台の機種ごとに求めることを特徴とする自分確率管理装置。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日の前である平成10年5月26日に頒布された特開平10-137429号公報(以下、「引用例3」という)には、次の事項が記載されている。
「【0013】以上の課題を鑑み、本発明では、遊技者に会員カードを発行し、遊技時に会員カードを玉貸し装置などに挿入して遊技者を特定することにより、各遊技者毎の遊技データの記憶管理を可能にし、また、それに基づき遊技者に遊技データを表示したり、各遊技者の遊技状況を監視して所定の条件に達した場合には警告表示や遊技の不能化をおこなうようにし、その結果、遊技者が自分の遊技状況や収支結果を把握できるとともに、過度の投資を防止できるようにした。」
「【0044】会員管理装置60は、会員データの管理、貯玉データの管理、遊技者毎の遊技結果データの収集、及び精算玉数の精算処理(景品交換や貯玉データへの変換)等をおこなう装置である。また、他店の会員管理装置と通信を行うことにより、(会員である)遊技者の複数の加盟店におけるトータルの遊技データの管理を行うようにしてもよい。」
「【0074】CRT(陰極線管)表示装置200は、CRT表示器により構成され、各種持ち玉データの表示(例えば、クレジット数、精算玉数、貯玉数、引き出し可能数など)、遊技結果データの表示(例えば、投資金額、差球数、収支金額など)、トータル遊技データの表示及び個人遊技データの表示(例えば、大当たり回数、総始動回数、大当たり確率、前回大当たりからの始動回数、リーチA信頼度、リーチB信頼度、リーチC信頼度等)、などの表示を行う。表示内容の詳細については、後述図11,12,13に記載。」
「【0100】遊技者は、カード挿入口215への会員カードの挿入後に、暗証番号入力部202から暗証番号を入力し、暗証番号が正常であれば、挿入された会員カードに対応するデータ(貯玉データ)及び当該遊技者の遊技結果データを会員管理装置60から取得する。取得されたデータはRAM20bに記憶され、CRT表示器200に表示される。また、貯玉引き出しスイッチ204の操作により、現金以外にも会員カードに記憶されている貯玉データから玉貸しが可能である。」
「【0113】図7、8、9、及び10は、玉貸し装置20(のCPU20a)が行う制御処理のフローチャートである。」
「【0126】ステップS11では、会員管理装置から当日の遊技結果データ(個人の投資額及び負け額に関するデータや個人の各種遊技データ)を受信し、RAM20bに記憶する。そして、ステップ12に移行する。」
「【0127】尚、当日のみだけではなく、玉貸し装置や管理装置で設定変更することにより、所定期間(例えば、3日間)での遊技結果データを、遊技状況の監視の基準として、受信するようにもできる。」
「【0140】ステップS24では、返却スイッチ206がオンされた場合或いは精算信号を受信した場合に、クレジットデータ及び貯玉データを、当該遊技者データとして会員管理装置60へ送信し、ステップS25に移行する。このとき、会員管理装置60で、クレジットデータは精算玉数データとして記憶される。」
「【0141】ステップS25では、遊技結果データを会員管理装置60へ送信して、ステップS26に移行する。」
「【0142】尚、遊技結果データを会員管理装置60へ送信することにより、遊技者が台を移動しても、移動した台の玉貸し装置へ遊技結果データを送信して、当日(或いは数日)の総遊技結果を把握可能にする。」
「【0144】ステップS27では、遊技機10からのデータ入力処理が行われ、ステップS28に移行する。このとき、入力されるデータとしては、スタート信号、大当たり信号、確変信号、始動入賞信号、などの信号や、打ち込み球情報として使用される打ち込み球(アウト球及びセーフ球)信号がある。」
「【0145】ステップS28では、当該遊技機の遊技データ(当該遊技機におけるトータルの遊技データ)の作成処理が行われ、ステップS29に移行する。」
「【0146】ステップS29では、遊技結果データ(個人の勝ち負けに関するデータ及び個人の遊技データ)の作成処理が行われ、ステップS30に移行する。」
「【0147】ステップS30では、当日(或いは数日)の遊技結果データの監視処理を行う。該当遊技者の投資金額情報、出玉情報、打ち込み球情報、クレジット引き出し情報、貯玉引き出し情報、等により、投資金額の上限の監視や収支金額の監視(詳細は後述図11(b)参照)等の遊技状況の監視を行い、ステップS31に移行する。尚、このとき、貯玉引き出し数の監視を行ってもよい。」
「【0180】図12(d)には、当該玉貸し装置20に付設されている遊技機10で遊技をしている遊技者の個人遊技データが表示されている。」
「【0181】大当たり回数は、本日の当該遊技者による大当たり発生回数のことで、この場合、本日の当該遊技者による大当たり発生回数は2回であったことを示している。」
「【0182】総始動回数は、本日の当該遊技者による始動回数のことで、862回の可変表示遊技があったことを示している。」
「【0183】、当該遊技者の遊技における大当たり確率は1/431(=2/862)である。」

以上の記載事項、及び、図1乃至図12を参酌すると、引用例3には次の発明が記載されているものと認められる。
「玉貸し装置が行う制御処理として、遊技機からスタート信号、大当たり信号、確変信号、始動入賞信号、などの信号や、打ち込み球情報として使用される打ち込み球(アウト球及びセーフ球)信号のデータ入力処理が行われ、遊技結果データ(個人の勝ち負けに関するデータ及び個人の遊技データ)の作成処理が行われ、玉貸し装置に付設されている遊技機で遊技をしている遊技者の個人遊技データが表示され、個人遊技データには、本日の当該遊技者の遊技における大当たり確率を含み、遊技結果データを会員管理装置へ送信することにより、遊技者が台を移動しても、移動した台の玉貸し装置へ遊技結果データを送信して、当日(或いは数日)の総遊技結果を把握可能にする遊技システム。」

(3)対比
(ア)引用例3記載の発明の「スタート信号、大当たり信号、確変信号、始動入賞信号、などの信号や、打ち込み球情報として使用される打ち込み球(アウト球及びセーフ球)信号」は、本願発明の「遊技データ」に相当する。また、引用例3記載の発明において当該遊技データの入力処理が行われるからには、「遊技データ受信部」を備えていることは自明である。
(イ)引用例3記載の発明の「大当たり確率」は、本願発明の「特定遊技に関する発生確率」に相当し、引用例3記載の発明の「本日の当該遊技者の遊技における大当たり確率」は、「遊技者が台を移動しても、移動した台の玉貸し装置へ遊技結果データを送信して、当日(或いは数日)の総遊技結果を把握可能」にされていることから、各遊技台に対応していることは明らかであり、かつ、「当該遊技者の遊技における」とは「各遊技者ごと」を意味するから、本願発明の「前記各遊技台に対応した、各前記遊技者ごとの自分確率」に相当する。また、引用例3記載の発明において、上記「本日の当該遊技者の遊技における大当たり確率」を求めるからには、本願発明の「演算部」に相当する構成を備えていることは自明である。よって、引用例3記載の発明は、本願発明の「特定遊技に関する発生確率を、前記各遊技台に対応した、各前記遊技者ごとの自分確率として、前記遊技データにもとづいて求める演算部」に対応する構成を備えている。
(ウ)引用例3記載の発明において「遊技結果データを会員管理装置へ送信することにより、遊技者が台を移動しても、移動した台の玉貸し装置へ遊技結果データを送信して、当日(或いは数日)の総遊技結果を把握可能にする」ことから、遊技結果データを記憶する記憶部、すなわち本願発明の「自分確率を記憶する記憶部」に対応する構成を備えていることは自明である。
(エ)引用例3記載の発明の「遊技システム」は、本願補正発明の「自分確率」に相当する情報も管理するものであるから、本願補正発明の「自分確率管理装置」に相当する。

したがって、両者は、
「一又は二以上の遊技台から収集した遊技データにもとづいて、所定の情報を算出し管理する自分確率管理装置であって、
各前記遊技台から前記遊技データを受信する遊技データ受信部と、
特定遊技に関する発生確率を、前記各遊技台に対応した、各前記遊技者ごとの自分確率として、前記遊技データにもとづいて求める演算部と、
前記自分確率を記憶する記憶部とを備えた自分確率管理装置」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
演算部が自分確率を求めるにあたり、本願発明は、遊技台の機種ごとに求めるのに対して、引用例3記載の発明では、機種ごとには求めていない点。

(4)判断
上記相違点について検討すると、遊技台から収集した遊技データにもとづいて演算部が自分確率を求めるにあたり、これを遊技台の機種ごとに求めることは、従来周知の技術である(上記2(2)において引用例1として示した特開平11-197334号公報、及び、特開平10-5417号公報(段落【0065】乃至段落【0069】及び図16乃至図20)参照)。そして、遊技者が各自の機種ごとの遊技実績に関心があることは当業者の良く知るところであることから、引用例3記載の発明に上記周知技術を適用して、演算部が、自分確率を、遊技台の機種ごとに求めるようにすることは、当業者であれば容易になしえる。
よって、上記相違点に係る本願発明の構成は、引用例3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-04 
結審通知日 2006-12-05 
審決日 2006-12-21 
出願番号 特願2003-91267(P2003-91267)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 渡部 葉子
中槙 利明
発明の名称 自分確率管理装置、遊技場システム、自分確率管理方法及び自分確率管理プログラム  
代理人 渡辺 喜平  

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