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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1152407
審判番号 不服2001-1802  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-09 
確定日 2007-02-16 
事件の表示 特願2000- 28066「ゲーム装置及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月28日出願公開、特開2000-325528〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯
本願は、平成12年2月04日(優先権主張平成11年3月18日)の出願であって、平成12年9月19日付拒絶理由に応答して同年12年11月27日付で補正されたものの同年12月26日付で拒絶査定され、平成13年2月9日に拒絶査定不服審判請求がなされると共に同年2月19日付で手続き補正がなされ、当審において平成13年2月19日付補正が補正却下され、さらに当審において平成18年9月8日付で拒絶理由通知がなされたものである。

第2.「本願発明」
本願の特許請求の範囲各項に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項各項に記載されたとおりの、次のものである。

「【請求項1】 プレイヤーと対戦相手とが、それぞれ定められた能力を備えたカードを画面上に出し合って競技するカードゲームを実行する携帯用ゲーム装置に使用され、コンピュータで読取可能なカードゲームプログラムを格納した記録媒体において、選択されたカードの絵柄、能力指数を含む選択されたカードに関連する情報を表向きに表示する中央領域と、当該中央領域を挟んで設けられ、前記プレイヤー及び対戦相手に割り当てられた表示領域を表示し、且つ、 前記プレイヤー及び対戦相手に割り当てられた表示領域を手札となるカードを並べる特定ゾーンと、攻撃、防御の対象となるカードを配置する場とに分けて表示すると共に、前記特定ゾーン及び場に配置されるカードを裏返しにして、対戦状態を表示する手段として、前記コンピュータを機能させる携帯用ゲーム装置用カードゲームプログラムを格納していることを特徴とする記録媒体。
【請求項2】 請求項1において、前記対戦状態を表示するゲ前記各表示領域に、前記プレイヤー及び対戦相手のライフポイントを表示する領域を表示すると共に、トラップカードを裏返しで表示するトラップカードゾーンを表示する手段として、前記コンピュータを機能させる携帯用ゲーム装置用カードゲームプログラムを格納していることを特徴と
する記録媒体。
【請求項3】 請求項1又は2において、前記場に配置されたカードの攻撃及び防御を縦及び横向きに配置された裏返しのカードによって区別できるように表示する手段として、前記コンピュータを機能させる携帯用ゲーム装置用カードゲームプログラムを格納していることを特徴とする記録媒体。
【請求項4】 請求項1?3のいずれかにおいて、前記プレイヤーの場内でカードを選択するカーソルを表示し、当該カーソルによって選択されたカードを前記中央領域に表向きに表示する手段として、前記コンピュータを機能させる携帯用ゲーム装置用カードゲームプログラムを格納していることを特徴とする記録媒体。
【請求項5】 請求項1?4のいずれかにおいて、前記プレイヤー及び前記対戦相手の場内に配置されたカードのうち、攻撃及び防御が決定したカードを攻撃及び防御が決定していないカードに比較して明るく表示する手段として、前記コンピュータを機能させる携帯用ゲーム装置用カードゲームプログラムを格納していることを特徴とする記録媒体。
【請求項6】 請求項1?5のいずれかにおいて、予め定められたコードが前記入力手段を介してパスワードとして外部から与えられた場合に、選択可能となる特定キャラクタを格納しておく特定キャラクタ格納領域を備え、前記予め定められたコードが入力されると、前記特定キャラクタ格納領域をアクセスして、前記ゲームを実行し、前記対戦相手となるコンピュータ上のキャラクタを増加させる手段として、前記コンピュータを機能させる携帯用ゲーム装置用カードゲームプログラムを格納していることを特徴とする記録媒体。
【請求項7】 請求項1?6のいずれかに記載された記録媒体に格納されたカードゲームプログラムを実行できる携帯用ゲーム装置。」

このうち、請求項1に係る発明を、以下「本願発明」という。

第3.引用文献
これに対して、平成18年9月8日付当審拒絶理由において引用した各引用文献には、次の事項が開示されている。

引用文献1:漫画「遊戯王」、第1?12巻、発行株式会社集英社、が記載する「マジック&ウイザーズ」
このうち、特に
引用文献1-1:漫画「遊戯王」第2巻
引用文献1-2:漫画「遊戯王」第5巻
引用文献1-3:漫画「遊戯王」第6巻
引用文献1-4:漫画「遊戯王」第8巻
引用文献1-5:漫画「遊戯王」第9巻
引用文献2:「マジックザギャザリング」のゲームソフトを格納したCD-ROM、株式会社メディアクエスト社1997年9月26日発売。
引用文献3:「マジックザギャザリング」のゲームソフトに付属の操作マニュアル
引用文献4:「マジックザギャザリング」のゲームソフトに付属のビギナー用操作マニュアル
引用文献5:雑誌「じゅげむ」1997年11月号第192ページ。平成9年11月1日、株式会社リクルート発行。
引用文献6:「TheOfficialMagicTheGathering公式戦略ガイド」BethMoursund著、吉川典秀訳、朱鷺田祐介日本語監修、1997年9月26日(株)毎日コミュニケーションズ発行
引用文献7:特開平7-204355号公報(実際のカードゲームを電子ゲーム化する周知例)
引用文献8:特開平5-49755(実際のカードゲームを電子ゲーム化する周知例)
引用文献9:特開平7-51467(実際のカードゲームを電子ゲーム化する周知例)
引用文献10:特開平3-170185(通信ゲーム周知例)
引用文献11:特開平4-176235(通信ゲーム周知例)
引用文献12:実開平6-3393(パスワードでキャラクタを変化させる)

引用文献1-1記載事項:
(記載1):「ホホ・・・これがアメリカですごいブームになったカードゲーム…」、「マジック&ウイザーズじゃ!」 (第2巻第31頁第1、2コマ)

(記載2):「何千もの種類のモンスターや魔法のカードがあるんじゃ!」、「これはトレーディングゲームっていう…つまりカードの交換ゲームなんだ!」、「二人でプレイするんだけど お互い一枚のカードを賭け合って負けると相手に取られちゃうんだよ!」、「ルールはね プレイヤーは お互い魔法使いっていう設定で手持ちのカードの魔法の力やモンスターをうまく利用して戦うんだ!」、「カードにはそれぞれ攻撃力や守備力なんかがあって先に相手のライフポイントを無くした方の勝ちさ!」「キャラクター名称:魔法のランプ レベル:★★ イメージイラスト:省略 攻撃力・守備力(プリズムで正面からのみ見える):攻撃力400 守備力300」(第2巻第32頁第1、4、5コマ。第32頁第5コマ内のカード内容)

(記載3):「『マジック&ウイザーズ バトル・システム』
●カードには「モンスターカード」と「魔法カード」の二種類がある 『モンスターカードのバトル』●「モンスターカード」にはそれぞれ攻撃力・守備力のポイントが決められており、カードを引いた時に「攻撃」か「守備」のどちらかを選択する。
マル1「攻撃」VS「攻撃」
●攻撃力ポイントの高い方が勝ち。負けた側のカードは消え、-(マイナス)ポイントが負けた側のライフポイントに加算される。
マル2「攻撃」VS「守備」
●攻撃側のポイントが上回っている場合、守備側のカードは消えるのみ。プレイヤーのライフポイントはそのまま。
●守備側がポイントが上回っている場合その-(マイナス)ポイント分が攻撃側のライフポイントに加算される。カードはそのまま。
●「魔法カード」はそれだけでは攻撃することはできないが、自分か相手のカードになんらかの付加価値をもたらす。」(第2巻第57頁第1コマ内の文字枠)

引用文献1-2記載事項:
(記載3a):「「マジック&ウイザーズのカードは通常一枚にモンスターが一体として独立している…」「しかしこの世界にはたった一体…五枚のカードが揃って初めて召喚できるモンスターが存在すると……」「未だかってその五枚のカードを揃えた者はおらんのじゃよ…」「つまり ワシを含めその幻の召喚神「エクゾディア」を見た者は おらんということじゃな!」(第5巻第106頁第3、4コマ)

引用文献1-3記載事項:
(記載4):「このゲームは相手の札の属性に打ち勝つ属性を持つ「龍」を揃えた者が勝つ!「火」は「金」を打ち負かす!「金」は「木」を「木」は「土」をそして「水」は「火」を消す! また属性によっては力を与えてしまう関係もある!「木」は「火」に力を与え「火」は「土」に「土」は「金」に「金」は「水」に「水」は「木」に力を与える!!このゲームは相手の手札の読み合いなのだ!」(第6巻第82頁第1コマ)

(記載5):「ボクの「龍」はレベル五だけど「火」の属性!!「水」の属性には勝てない!」(第6巻第84頁第2コマ」

引用文献1-4記載事項:
(記載6):「ダメじゃ!遊戯の「クレート・ホワイト」は水属性!「エレキッズ」の雷属性の前では 攻撃力は半減し 歯がたたない!! これも完全に読まれとる!!」(第8巻第15頁第4コマ)

(記載7):「マジック&ウィザーズのカード・バトルは攻撃力数値だけが勝敗の基準となるワケではない!」「プレイヤーが召喚する「魔族」や「モンスター」にそれぞれ属性があり敵によって相性があるのじゃ!!」「ってことは攻撃力数値が高くても相性によって負けちゃうこともあるわけ!」「フム!ゆえにこのゲームは深い戦略性が必要となってくるのじゃ!!」及び「召喚魔族相関図」(第8巻第33頁第5、6コマ)

(記載8):「ヒョヒョヒョ…遊技…なぜオレが決闘(デュエル)の場所に「森」を選んだのかわかってないね??!」「テーブル上のディスプレイに地形(フィールド)表示されている!!」「ズバリ!「森」のフィールドはオレの「昆虫カード」の生息環境に適しているよなぁ!」 「その結果 昆虫カードは「環境適応力」により攻撃力・守備力 そのすべてがパワーアップされるのさ!」(第8巻第106頁第3、6コマ。第107頁第2コマ)

(記載9):「だが このデュエル・テーブルのフィールド・ディスプレイを見てその疑問は解けたぜ!」「バトルを行うフィールドによってカードのモンスターに「環境適応力」が加わりカードをより強力にすることができる!!」「モンスターカードのフィールド適応性
森:属性→木 ●昆虫族 ●獣族 ●???
荒野:属性→土 ●恐竜族 ●不死族 ●???
海・湖:属性→水 ●魚人獣族 ●海竜族 ●???
草原:属性→火 ●野獣族 ●戦士・騎士族 ●???
山:属性→雷 ●鳥獣族 ●ドラゴン族 ●鳥人族・???」」(第8巻第111頁第1、3、4コマ)

(記載10):「「ヘラクレス・ビートル」レベル5!」「??当然「森」の「環境適応力」により攻撃力が30パーセントUP!」「攻撃力1500→1950」(第113頁第1、2コマ)

(記載11):「この秘密のカードを場にふせておこうっと!」「これは遊技が「攻撃」の言葉を発した瞬間 奴のモンスターを全滅させる罠(トラップ)カードだ!!」「このターンはオレも場にカードをふせてしのぐしかないぜ!」「ヒョヒョ…苦しまぎれに魔法カードをふせたようだが…」(第119頁第3、5、7、8コマ)

(記載12):「相手の「攻撃」の言葉がスイッチとなり発動する罠カード!!」「聖なるバリア ?ミラーフォース? 罠(トラップ)カード 相手が「攻撃」を宣言した時 聖なるバリアが敵を全滅させる」(第126頁第1コマ。第126頁第1?4コマ間のカード内容)

引用文献1-5記載事項:
(記載12a):「グレムリンの電気ショックが「海」を襲う!!」「海月」が電撃をすべて吸収してしまう!!」「海月」を場に出すことで「水」属性モンスターの弱点である電撃攻撃をすべて無効にすることができるんじゃあー!!」(第9巻第54頁第1、4、5コマ)

(記載13):「遊戯の場には伏せカード二枚と「しもべ」が三体・・・「青眼の白龍」を引いてどれか一体を葬れば奴のライフポイントは0になる!」(第9巻第144頁第2コマ)

(記載14):「ホーリーエルフへの攻撃!!」(第9巻第146頁第3コマ)

引用文献1-1?1-5の記載から見て、引用文献1には「マジック&ウィザーズ」と称する次の発明(以下「「引用発明1」という)が記載されている。
「引用発明1」
「プレイヤーと対戦相手とが、それぞれ定められた能力を備えたカードを、デュエル・テーブル上の所定の場に出し合って競技するカードゲームにおいて、前記プレイヤーと対戦相手は、それぞれ自己が把持する複数の手札カードについて、そのカードの表面に示された攻撃力ポイント及び守備力ポイントを含む能力を自己のみが確認できる段階と、互いに異なる複数種類の競技環境(森、荒野、海・湖、草原、山の5種)から所定の競技環境をプレイヤーがデュエル・テーブル上に表示設定する段階と、前記設定された競技環境に応じて前記カードに示された本来の攻撃力ポイント及び守備力ポイントを所定の比率でパワーアップし、当該得られた攻撃力ポイント及び守備力ポイントに基づいて前記カードゲームを実行する段階とを有し、カードには互いに優劣関係を有する「水属性」、「雷属性」等の「属性」や、「黒魔族」、「幻想魔族」等の「族」が設定されており、相性により勝敗が決することもあり、前記プレイヤーにおいて使用される各カードは、攻撃側或いは防御側のいずれかを指定可能とし、前記指定は、プレイヤーが「攻撃」表示としてカードを縦置きするか、又は、「守備」表示としてカードを横置きすることにより攻撃又は防御を視覚的に区別して判別、認識できるようにデュエル・テーブル上に表示させる段階を有し、前記攻撃側で使用される場合と前記防御側で使用される場合とで前記各カードの攻撃力ポイント及び守備力ポイントが異なるように設定されており、前記プレイヤーは、前記カードのうち、「エクゾディアの封印カード」を5枚揃えることによって、当該各カードとは異なる新たな「エクゾディア」カードを生成でき、前記攻撃側において、相手側のどのカードを攻撃するかを選択でき、前記各プレイヤーの各ターンで複数枚のカード(例えば、「青眼の白竜」カードを2枚、あるいは、昆虫人間」カードと「レーザー砲機甲鎧」カードとの組み合わせ)をデュエル・テーブル上の所定の場に出すことを許容し、プレイヤーと対戦相手の間において、戦闘の際、攻撃対防御や攻撃対攻撃を選択、指定することができ、指定された攻撃/防御の組み合わせに応じてマジック&ウイザーズのルールにしたがってカードの勝ち負け及びダメージを判定するように構成されるカードゲーム。」

引用文献2?6記載事項:
引用文献2?6には、次の発明(以下「マジックザギャザリング発明」という)が記載されている。
「マジックザギャザリング発明」
「プレイヤーと対戦相手のコンピュータとが、それぞれ定められた能力を備えたカードを、コンピュータの画面上に出し合って競技するカードゲームに使用するプログラムを格納し、コンピュータにより読み取り可能なCD-ROMにおいて、前記プログラムは、単一の画面上において、対戦相手の手札となる複数のカードについては、そのタイトルバーだけが表示され、手札の枚数のみが確認できるのに対して、プレイヤーの手札となる複数のカードについては、ずらして重ねられた複数のカードについて適宜ループ移動することで一番手前にきたカードの内容を当該プレイヤーのみが画面上で確認できるようにする段階と、前記カードのうち、土地カード(平地、島、沼、山、森の5種類)を使用して互いに異なる複数種類の競技環境から1の競技環境を設定する段階と、少なくともクリ-チャーカードを含む呪文カード(インスタント、インタラプト、ソーサリー、エンチャント、アーティファクト、クリ-チャー(召喚)、マナ・ソースの7つのタイプ)を使用して、前記クリ-チャーカードに示された本来のパワー(攻撃力)とタフネス(耐久力)、あるいは、前記クリ-チャーカードについて他の呪文カードに応じて増減したパワー(攻撃力)とタフネス(耐久力)に基づいて前記カードゲームを実行する段階とを有し、前記プレイヤーにおいて使用される各カードは、攻撃側或いは防御側のいずれかとして使用され、前記プログラムは、攻撃側或いは防御側のいずれであるかを判別認識して、攻撃側であることを示す攻撃側マークと防御側であることを示す防御側マークを画面上に表示させる段階と、場に出したカードの向きを横に表示する(タップする)ことでその能力を使うとともに、タップされたカードを縦に表示する(アンタップする)ことで再びその能力を使うことができるようにする段階とを有し、前記攻撃側で使用される場合と前記防御側で使用される場合とで、前記各カードに示された本来のパワー(攻撃力)とタフネス(耐久力)が異なるように設定されており、前記カードのうち、予め定められたカードとして、《巨大化》というインスタント呪文のカード、及び《邪悪なる力》というエンチャント呪文のカードには、召喚呪文のクリ-チャーカードが有する本来のパワー(攻撃力)とタフネス(耐久力)を増加させる作用、《対抗呪文》というインタラプト呪文のカードには、《センギアの吸血鬼》という召喚呪文のクリ-チャーカードが召喚されるのを防ぐことができる作用や対戦相手の《対抗呪文》を打ち消す作用を与えておき、当該予め定められたカードが出現の際、前記予め定められた作用を実行し、前記各プレイヤーの各ターンで複数枚のカード(例えば、土地カードと複数のクリ-チャーカードを含む呪文カードとの組み合わせ)を所定の場に出すことを許容しプレイヤーと対戦相手の間において、その攻撃側及び防御側についてマジック:ザ・ギャザリングのダメージ応酬ステップにしたがってカードの勝ち負け及びダメージを判定し、これによって、前記カードゲームを前記画面上で競技できるようにした電子ゲーム。」

引用文献7?9には、実際のカードや牌を使用するゲームを電子ゲーム化することが記載されている。

引用文献7、10、11には通信ゲームが記載されている。

引用文献12には、ゲームに登場するキャラクターの能力を、入力されるコードで変更できることが記載されている。

第4.対比
「本願発明」と、「引用発明1」とを比較する。
「本願発明」はカードを画面上に出し合って競技するゲーム装置用カードゲームプログラムを格納している「記録媒体」であるのに対し、「引用発明1」は、プレイヤーがデュエル・テーブルに出される現実のカードを用いて実際にカードゲームを行うものであるから、「引用発明1」における「カード」及び「デュエル・テーブル」は、「本願発明」における「カード」及び「画面」と対比して、いずれも「カード」及び「競技フィールド」であることで共通する。
また、「引用発明1」における「攻撃力ポイント及び守備力ポイント」は、カードの能力を示す数値として、「本願発明」における「能力指数」に相当する。
また、「引用発明1」における「攻撃側において、相手側のどのカードを攻撃するかを選択でき」及び「プレイヤーが「攻撃」表示としてカードを縦置きするか、又は、「守備」表示としてカードを横置きすることにより攻撃又は防御を視覚的に区別して判別、認識できるようにデュエル・テーブル上に表示させる」は「本願発明」の「攻撃、防御の対象となるカードを表示する」に対応する。
また、「引用発明1」における「指定された攻撃/防御の組み合わせに応じてマジック&ウイザーズのルールにしたがってカードの勝ち負け及びダメージを判定する」ことは、「本願発明」における「対戦」に対応する。

よって、両者は
「プレイヤーと対戦相手とが、それぞれ定められた能力を備えたカードを競技フィールドに出し合って競技するカードゲームを実行するゲームにおいて、各カードに対して、能力をあらわす能力指数を設定し、カードゲームを競技フィールドに表示し、前記カードゲームに必要な指示をおこなって、前記カードゲームを実行するものであり、
前記実行は、前記各カードは攻撃、防御の対象となり、表示し、競技するゲーム。」
である点において一致し、

相違点1:
プレイヤーと対戦相手とが競技するカードゲームの実体が、「本願発明」は、画面上にカードを出し合って競技するカードゲームを実行する携帯用ゲーム装置に使用され、コンピュータで読取可能なカードゲームプログラムを格納した記録媒体におけるカードゲームであるから、「記録媒体」に格納されたゲームであるのに対して、
「引用発明1」は、デュエル・テーブルに現実のカードを出し合って競技するカードゲームそのものであるから、記録媒体ではなく、携帯用ゲーム装置に使用されるものでもない点。

相違点2:
「本願発明」は
「選択されたカードの絵柄、能力指数を含む選択されたカードに関連する情報を表向きに表示する中央領域と、当該中央領域を挟んで設けられ、前記プレイヤー及び対戦相手に割り当てられた表示領域を表示し、且つ、前記プレイヤー及び対戦相手に割り当てられた表示領域を手札となるカードを並べる特定ゾーンと、攻撃、防御の対象となるカードを配置する場とに分けて表示すると共に、前記特定ゾーン及び場に配置されるカードを裏返しにして、対戦状態を表示する手段として、前記コンピュータを機能させる」ものであるのに対し、
「引用発明1」は
実際のカードゲームであるから、ゲーム機による「表示」という要素は有さず、実際のカードゲームにおいて、「デュエル・テーブル上の所定の場に出し合って競技する」ものであり、「プレイヤーと対戦相手は、それぞれ自己が把持する複数の手札カードについて、そのカードの表面に示された攻撃力ポイント及び守備力ポイントを含む能力を自己のみが確認できる段階」を有し、「プレイヤーにおいて使用される各カードは、攻撃側或いは防御側のいずれかを指定可能とし、前記指定は、プレイヤーが「攻撃」表示としてカードを縦置きするか、又は、「守備」表示としてカードを横置きすることにより攻撃又は防御を視覚的に区別して判別、認識できるようにデュエル・テーブル上に表示させる」ものであり、「各プレイヤーの各ターンで複数枚のカード(例えば、「青眼の白竜」カードを2枚、あるいは、「昆虫人間」カードと「レーザー砲機甲鎧」カードとの組み合わせ)をデュエル・テーブル上の所定の場に出すことを許容」するものである点、

において相違する。

第5.当審の判断
(相違点1)について:
相違点1については、まず、プレイヤーと対戦相手がテーブル上に現実のカードを出し合って実際に競技するカードゲームについて、これをコンピュータによる画面上で行えるように適合化することは、ゲームの技術分野に属する当業者が日常的に着想し、適宜に実施している技術常識である。

この点について、引用文献2?6には、「マジック:ザ・ギャザリング」というカードゲームについて、コンピュータの画面上に仮想カードを出し合って競技する仮想カードゲームを行えるようにしたゲームソフトが開示されており、そのうち、引用文献2には、該ゲームを実行するためのプログラムを格納した記録媒体であるCD-ROMが開示されているとともに、その具体的内容として、引用文献3?6には、「マジックザギャザリング発明」が開示されている。

また、引用文献7?9にも、現実にカードや牌を用いて人間がおこなうゲームを、電子ゲーム化したものが開示されており、現実にカード等でおこなうゲームを電子ゲーム化することは周知(以下「周知技術A」という)である。

そうすると、引用発明に示される、デュエル・テーブルに現実のカードを出し合って競技するカードゲームについて、前記技術常識あるいは引用文献2?6に記載の発明及び前記周知技術Aに基づいて、前記カードゲームをコンピュータ上に再現するための適合化の過程にしたがって、前記相違点1に係る「本願発明」のように、「コンピュータを機能させる携帯用ゲーム装置用カードゲームプログラムを格納していることを特徴とする記録媒体」として構成することは、当業者が容易に想到できるものである。

(相違点2)について:
ついで、相違点2については、上記(相違点1)についての判断のとおり、現実に人間がおこなうことを電子ゲーム化する場合、現実にテーブル上にカードを置いた状況を模した画面表示をゲーム装置においておこなうことは、当業者が容易に想到する事項である。

そして、その画面表示の具体的配置、レイアウト等は、発明を実施するに当たり当業者であれば適宜定めうるものである。さらにいえば、「本願発明」における、「能力指数」及び「カードに関連する情報を表向きに、中央領域に、表示」する点は、上記引用文献2?6に開示する「マジックザギャザリング」においても、実際に行われていた事項にすぎない。 即ち「マジックザギャザリング」においても特定の領域に「能力指数及びカードに関連する情報」が表示される。

また、手札を並べるゾーンと攻撃、防御の対象となるカードを配置する場とに分けて表示することも、「マジックザギャザリング」の「デュエルテーブル」(引用文献3の112,113ページ)と格別相違しない。

更に、ゲーム装置における表示においての「裏返し表示」は、上記「引用発明1」が、(記載11)「この秘密のカードを場にふせておこうっと!」、(記載13)「遊戯の場には伏せカード二枚と「しもべ」が三体・・・「青眼の白龍」を引いてどれか一体を葬れば奴のライフポイントは0になる!」なる記載からも解るように裏返し表示をおこなうのであるから、「引用発明1」から当業者であれば適宜構成しうる程度の事項であると判断される。

よって、相違点2に想到することに格別の困難性はない。

また、上記相違点1、2による効果も、格別のものではない。

以上のとおりであるから、「本願発明」は「引用発明1」及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおり、「本願発明」は、「引用発明1」及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-05 
結審通知日 2006-12-06 
審決日 2006-12-26 
出願番号 特願2000-28066(P2000-28066)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 塩崎 進
篠崎 正
発明の名称 ゲーム装置及び記録媒体  
代理人 福田 修一  
代理人 山本 格介  
代理人 池田 憲保  
代理人 佐々木 敬  

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