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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1152427
審判番号 不服2003-17358  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-05 
確定日 2007-02-14 
事件の表示 平成 7年特許願第 84867号「共押出しバインダー組成物と、この組成物を接着層として用いた共押出し多層複合材料」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年11月 7日出願公開、特開平 7-292204〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年3月16日(パリ条約による優先権主張1994年3月16日、フランス共和国)の出願であって、平成15年5月14日付けで手続補正がなされたところ、同年7月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ、さらに同年9月25日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年9月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年9月5日付けの手続補正を却下する。
[理由]
本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成15年5月14日付けの手続補正書に記載された、特許請求の範囲の請求項1)
「【請求項1】 下記の(1)と(2)とから成ることを特徴とする共押出し用バインダー組成物:
(1) エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸とそれに対応する酸無水物およびこれらの酸および酸無水物の誘導体の中から選択される少なくとも1種のグラフトモノマーを耐衝撃性または結晶性のスチレンのホモポリマー(a)にグラフトさせて得られるグラフトポリマー(A1):10?30重量%、
(2) 下記(B1)および(B2)の中から選択されるポリマー(B):70?90重量%:
(B1) 少なくとも1種の上記定義のグラフトモノマーをエチレン-酢酸ビニルコポリマーまたはエチレン-アルキル(メタ)アクリレートコポリマー(c)にグラフトさせて得られるグラフトポリマー、
(B2) エチレンと、α-オレフィンまたは酢酸ビニルまたはアルキル(メタ)アクリレートと、上記定義のグラフトモノマーとのターポリマー。」は、
「【請求項1】 下記の(1)と(2)とから成ることを特徴とする共押出し用バインダー組成物:
(1) エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸とそれに対応する酸無水物およびこれらの酸および酸無水物の誘導体の中から選択される少なくとも1種のグラフトモノマーを耐衝撃性または結晶性のスチレンのホモポリマー(a)にグラフトさせて得られるグラフトポリマー(A1):10?30重量%、
(2) 下記(B1)および(B2)の中から選択されるポリマー(B):70?90重量%:
(B1) 少なくとも1種の上記定義のグラフトモノマーをエチレン-酢酸ビニルコポリマーまたはエチレン-アルキル(メタ)アクリレートコポリマー(c)にグラフトさせて得られるグラフトポリマー、
(B2) エチレンと、α-オレフィンまたは酢酸ビニルまたはアルキル(メタ)アクリレートと、上記定義のグラフトモノマーとのターポリマー。
(ただし、各グラフトポリマー(A1)、(B1)および(B2)は共グラフトされていてはならず、各々個別にグラフトされる)」と補正された。

上記補正は、請求項1に、「(ただし、各グラフトポリマー(A1)、(B1)および(B2)は共グラフトされていてはならず、各々個別にグラフトされる)」という構成要件を追加するものである。
ところで、願書に最初に添付した明細書には、段落0017に、「特に有利であることが分かっている本発明組成物」として「a) 下記で構成される組成物:1) 少なくとも1種の耐衝撃性または結晶性グラフトポリスチレンよりなるポリスチレン・・・5?70重量%と、2) グラフト化されたエチレン-酢酸ビニルコポリマーまたはグラフト化されたエチレン-アルキル(メタ)アクリレートコポリマーまたはエチレン-酢酸ビニルまたはアルキル(メタ)アクリレート-無水マレイン酸ターポリマー(グラフトは無水マレイン酸のグラフト) 30?95重量%。」と、1)と2)が個別にグラフト化されたものが記載され、次いで段落0018に「b) 下記混合物:1) 少なくとも1種の耐衝撃性または結晶性ポリスチレン5?70重量%と、2) (A3)に定義の条件を満たすエチレン-酢酸ビニルコポリマーおよび/またはエチレン-アルキル(メタ)アクリレートコポリマー30?95重量%または、必要に応じて耐衝撃性または結晶性ポリスチレンおよび/またはエチレン-酢酸ビニルコポリマーおよび/またはエチレン-アルキル(メタ)アクリレートコポリマーをさらに混合した混合物に、無水マレイン酸を共グラフトさせて得られる生成物。」と、共グラフト化されたものが記載されている。
このように、願書に最初に添付した明細書には、個別にグラフト化されたものと共グラフト化されたものとが、並んで記載されてはいるが、「各グラフトポリマー(A1)、(B1)および(B2)は共グラフトされていてはならない」ことは明示的には記載されておらず、しかも自明な事項でもない。
そうしてみると、上記構成要件を追加する補正は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではないので、上記補正は特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に適合しない。
また、グラフトのし方については、補正前の請求項1には構成要件として記載がされていなかったのであるから、上記補正は、その補正前発明の構成に欠くことができない事項を限定するものには該当せず、特許法第17条の2第3項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。かつ、この補正は、請求項の削除を目的とするものでも、誤記の訂正を目的とするものでも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもないから、特許法第17条の2第3項に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項及び同法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.平成15年9月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年9月25日付けの手続補正を却下する。
[理由]
上記したように、平成15年9月5日付けの手続補正は却下されたので、本件補正の適否を判断するうえで基となる「補正前の特許請求の範囲の請求項1」とは、平成15年5月14日付けの手続補正書に記載された、特許請求の範囲の請求項1であるところ(上記2.参照。)、本件補正により該請求項1は、
「【請求項1】 下記の(1)と(2)とから成ることを特徴とする共押出し用バインダー組成物:
(1) エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸とそれに対応する酸無水物およびこれらの酸および酸無水物の誘導体の中から選択される少なくとも1種のグラフトモノマーを耐衝撃性または結晶性のスチレンのホモポリマー(a)にグラフトさせて得られるグラフトポリマー(A1):10?30重量%、
(2) 下記(B1)および(B2)の中から選択されるポリマー(B):70?90重量%:
(B1) 少なくとも1種の上記定義のグラフトモノマーをエチレン-酢酸ビニルコポリマーまたはエチレン-アルキル(メタ)アクリレートコポリマー(c)にグラフトさせて得られるグラフトポリマー、
(B2) エチレンと、α-オレフィンまたは酢酸ビニルまたはアルキル(メタ)アクリレートと、上記定義のグラフトモノマーとのターポリマー。
(ただし、各グラフトポリマー(A1)および(B1)は共グラフトされていてはならず、各々個別にグラフトされる)」と補正された。

上記補正は、請求項1に、「(ただし、各グラフトポリマー(A1)および(B1)は共グラフトされていてはならず、各々個別にグラフトされる)」という構成要件を追加するものであるところ、上記2.で判断したのと同様の理由により、本件補正は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、かつ、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでも、請求項の削除を目的とするものでも、誤記の訂正を目的とするものでも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項及び同法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

4.本願発明について
(1)本願発明
平成15年9月5日付け及び同年9月25日付けの手続補正がともに却下されたので、本願発明は、平成15年5月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は上記2.にも示したように、次のとおりである。
「【請求項1】 下記の(1)と(2)とから成ることを特徴とする共押出し用バインダー組成物:
(1) エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸とそれに対応する酸無水物およびこれらの酸および酸無水物の誘導体の中から選択される少なくとも1種のグラフトモノマーを耐衝撃性または結晶性のスチレンのホモポリマー(a)にグラフトさせて得られるグラフトポリマー(A1):10?30重量%、
(2) 下記(B1)および(B2)の中から選択されるポリマー(B):70?90重量%:
(B1) 少なくとも1種の上記定義のグラフトモノマーをエチレン-酢酸ビニルコポリマーまたはエチレン-アルキル(メタ)アクリレートコポリマー(c)にグラフトさせて得られるグラフトポリマー、
(B2) エチレンと、α-オレフィンまたは酢酸ビニルまたはアルキル(メタ)アクリレートと、上記定義のグラフトモノマーとのターポリマー。」

(2)刊行物及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物1には以下の事項が記載されている。

刊行物1:特開平5-125133号公報(原査定における引用文献5)
(1-1)「【請求項1】 (a)アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを25?45重量%含むエチレン-アクリル酸エステル共重合体またはエチレン-メタクリル酸エステル共重合体40?95重量%、(b)ポリスチレン系樹脂5?30重量%、(c)ポリオレフィン系樹脂0?30重量%からなる混合物100重量部に対して不飽和カルボン酸またはその誘導体を0.01?5重量部グラフトしてなることを特徴とする接着性樹脂組成物」(特許請求の範囲の請求項1)
(1-2)「【請求項4】 (a)ポリスチレン系樹脂からなる層(b)アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを25?45重量%含むエチレン-アクリル酸エステル共重合体またはエチレン-メタクリル酸エステル共重合体40?95重量%、ポリスチレン系樹脂5?30重量%、ポリオレフィン系樹脂0?30重量%からなる混合物100重量部に対して不飽和カルボン酸またはその誘導体を0.01?5重量部グラフトしてなる樹脂からなる接着樹脂層(c)ポリオレフィン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリエステルから選ばれた少なくとも一つの樹脂層からなる積層体」(特許請求の範囲の請求項4)
(1-3)「上記樹脂層(a),(b)で用いるポリスチレン系樹脂とは、スチレンのホモポリマー又は共重合体、あるいは、耐衝撃性ポリスチレンなどのゴム成分を含むものである。」(段落0011)
(1-4)「グラフト量は、希釈した場合には希釈後のグラフト量が上記範囲内であればよい。ここで、不飽和カルボン酸またはその誘導体とは、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、マレイン酸ハライド、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸ハライド、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等であり、望ましくは、無水マレイン酸、マレイン酸などである。」(段落0019)
(1-5)「該不飽和カルボン酸またはその誘導体を上記樹脂組成物にグラフトとする方法としては、従来公知の種々の方法を採用することが出来る。例えば、上記樹脂組成物を溶融させ、該不飽和カルボン酸またはその誘導体を添加してグラフト共重合させる方法あるいは、溶媒に溶解させて該不飽和カルボン酸またはその誘導体を添加してグラフト共重合する方法がある。」(段落0020)
(1-6)「これらの積層体は、共押出あるいは共押出ラミネーション、熱接着などの種々の成形法により成形される。たとえば、PS/Ad/EVOH,PS/Ad/PA,PS/Ad/PET,PS/Ad/PO等の三層構成の他にPS/Ad/EVOH/Ad/PS,PS/Ad/EVOH/Ad/PO,PS/Ad/EVOH/Ad/PET等の5層構成、さらにPS/Ad/EVOH/PA/Ad/PS等の5層以上の組み合わせや、PS/Adの2層フィルムや三層以上のフィルムをラミネート用原反として用いる事も可能である。」(段落0024)
(1-7)「実施例3 エチレン-アクリル酸エチル共重合体(アクリル酸エチル含量40重量%)70重量%、耐衝撃性ポリスチレン30重量%の混合物100重量部に無水マレイン酸0.3重量部と有機過酸化物(商品名パーブチルP)0.05重量%を押出機で210℃にて溶融混練し、グラフト反応を行なった。上記接着樹脂を用いて実施例1と同様にして評価し、結果を表-1に示した。」(段落0030)
(1-8)「【発明の効果】本発明の接着性樹脂組成物及び該組成物を用いたポリスチレン積層体は接着力が極めて優れており、成形後の層剥離等を起すようなことがなく、食品容器等として大変有用である。」(段落0050)

(3)対比・判断
刊行物1には、(1-1)に摘記した発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているところ、本願発明と引用発明を対比すると次のようになる。

(ア)本願発明の「スチレンのホモポリマー」はポリスチレンであるから、引用発明の「ポリスチレン系樹脂」に相当する(以下、どちらも「ポリスチレン」という。)。
(イ)本願発明の「エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸とそれに対応する酸無水物およびこれらの酸および酸無水物の誘導体の中から選択される少なくとも1種のグラフトモノマー」は、具体的にはその請求項3に記載されるように「(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸または置換基を有する無水マレイン酸、エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸の塩、アミド、イミドおよびエステル」であり、かつその請求項2に記載されるように「組成物中に 0.005?5重量%含む」ものであって、一方引用発明の「不飽和カルボン酸またはその誘導体」は(1-1)及び(1-4)に摘記したように「例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、マレイン酸ハライド、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸ハライド、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等であって混合物100重量部に対して0.01?5重量部含む」ものであるから、これらは互いに重複する(以下、どちらも「グラフトモノマー」という。)。
(ウ)本願発明の「エチレン-アルキル(メタ)アクリレートコポリマー」と引用発明の「エチレン-アクリル酸エステル共重合体またはエチレン-メタクリル酸エステル共重合体」とは、同じである(以下、どちらも「共重合体」という。)。
(エ)本願発明においても引用発明においても、「グラフト化ポリスチレン」と「グラフト化共重合体」とを含有しているところ、引用発明においては、グラフト化前の重量割合で「共重合体40?95重量%、ポリスチレン5?30重量%」とされ、この重量割合はグラフト化されても基本的に変動しないと認められるから、本願発明の「(A1)で表されるグラフト化ポリスチレン10?30重量%、(B1)で表されるグラフト化共重合体70?90重量%」と互いに重複する。
(オ)本願発明の「バインダー組成物」と引用発明の「接着性樹脂組成物」とは同じものである。

そうすると両者は、「(1)グラフト化ポリスチレン10?30重量%、(2)グラフト化共重合体70?90重量%とから成るバインダー組成物」である点で一致し、
(i)ポリスチレンが、本願発明においては「耐衝撃性または結晶性」であるのに対し、引用発明においては、そのような特定はなされていない点、
(ii)バインダー組成物が、本願発明においては「共押出し用」であるのに対し、引用発明においては、そのような特定はなされていない点、
(iii)「共重合体」が、引用発明においては、「アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを25?45重量%含むもの」であるのに対し、本願発明においては、そのような特定はなされていない点、
(iv)グラフト化された組成物が、本願発明においては「グラフト化されたポリスチレンとグラフト化された共重合体とから成るもの」であるのに対し、引用発明においては「ポリスチレンと共重合体との混合物をグラフト化したもの」である点、
で、一応相違する。

これらの相違点について検討する。
(i)について
引用発明においても、(1-3)に摘記したように、「ポリスチレン系樹脂」として「耐衝撃性ポリスチレンなどのゴム成分を含むもの」を包含するから、この点は実質的な相違点ではない。
(ii)について
引用発明においても、(1-2)に摘記したようにバインダー組成物を含む積層体を包含し、(1-6)に摘記したように共押出に用いるものであるから、この点は実質的な相違点ではない。
(iii)について
本願発明においても、本願明細書の段落0015に「エチレン-アルキル(メタ)アクリレートコポリマー、特にエチレンと(メタ)アクリレートの含有率が一般に5?60重量%、好ましくは7?40重量%のC1 ?C12アルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー。」と記載されており、この重量割合は引用発明における「アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを25?45重量%含むもの」と重複するので、この点は実質的な相違点ではない。
(iv)について
「グラフト化されたポリスチレンとグラフト化された共重合体とを混合してなるもの」も「ポリスチレンと共重合体との混合物をグラフト化したもの」も、その組成は基本的に同じと認められるところ、本願明細書においても、段落0011に「もう1つの解決法は例えばポリスチレンとエチレン-酢酸ビニルコポリマーに共グラフトする方法である。」と記載され、さらに段落0018にも(願書に最初に添付した明細書のものと同じ。上記2.参照。)共グラフト化されたものが記載されており、これはすなわち、グラフト化してから混合しても、混合してからグラフト化してもどちらでもよい旨、記載されているのである。一方、引用発明においても、従来公知の種々の方法でグラフト化できるものであり(摘記(1-5))、その効果も接着力に優れるものであって(摘記(1-7)、(1-8))、本願発明のものと実質的に差異がない。したがって、この点も実質的な相違点ではない。

よって、相違点(i)?(iv)はいずれも実質的な相違点ではなく、本願発明は引用発明と実質的に同一であり、本願発明は本願の優先権主張前に頒布された刊行物1に記載された発明である。

なお、請求人は、(ア)平成16年2月10日付け上申書において、比較実験例を近々提出する旨、述べ、(イ)平成16年2月23日付け上申書において、比較実験例を作ることができないので特許請求の範囲を減縮するとして、さらなる補正案が提示され、(ウ)平成18年7月12日付け上申書において、「特許請求の範囲をさらに減縮する、および/または、別の観点から本発明を定義する、等の対応を取る用意があるので面接の機会を頂きたい」旨を述べている。
しかしながら、本願においては上記2.及び3.に示すように、2回の補正はいずれも却下されるべきものであり、本願発明は原査定と同様の理由により特許を受けることができないものであるから、新たな拒絶理由を通知することはなく、したがって補正をすることもできないのであって、そうしてみると、新たな手続補正を希望する(イ)、(ウ)の上申内容は、受け入れようがない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物1に記載された発明であって特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-13 
結審通知日 2006-09-19 
審決日 2006-10-02 
出願番号 特願平7-84867
審決分類 P 1 8・ 572- Z (C08L)
P 1 8・ 113- Z (C08L)
P 1 8・ 561- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 井上 彌一
天野 宏樹
発明の名称 共押出しバインダー組成物と、この組成物を接着層として用いた共押出し多層複合材料  
代理人 越場 隆  

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