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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1152439 |
審判番号 | 不服2004-15750 |
総通号数 | 88 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-29 |
確定日 | 2007-02-14 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 96573号「磁気ヘッド及び磁気記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月31日出願公開、特開平 9-282616〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯、本願発明 本願は、平成8年4月18日の出願であって、平成16年6月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年7月29日に審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 平成16年7月29日付け手続補正は、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項3を請求項1とするとともに、補正前の請求項2、4乃至6を、請求項1を引用する請求項2乃至5として項番号を繰り上げるものであるので、特許法第17条の2第4項第1号に規定する特許請求の範囲の請求項の削除を目的とするものに該当している。 本願の請求項1乃至5に係る発明は、平成16年7月29日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、それぞれ本願特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 シールド層に挟まれて配置され、磁気記録媒体に記録された磁気情報を読み出す磁気ヘッドにおいて、 軟磁性材料からなり、前記磁気記録媒体の磁場に応じて磁化の方向が変化する第1の磁性層と、 前記第1の磁性層の初期状態における磁化方向に対し直交する方向の磁化を有する第2の磁性層と、 前記第1及び第2の磁性層の間に介在し両者をトンネル接合する絶縁層と、 前記第2の磁性層の少なくとも前記磁気記録媒体側の端部を被覆する被覆層と、 前記第2の磁性層に隣接して配置された反強磁性層とを有し、 ヘッド先端側の面に露出する前記第1の磁性層と前記シールドの電位が同電位であり、且つ、前記第2の磁性層の磁化方向は前記反強磁性層との交換結合により決定されていることを特徴とする磁気ヘッド。」 2 引用例 (1) 原査定の拒絶の理由で引用された特開平4-103014号公報(以下「引用例1」という。)には、「強磁性トンネル効果膜およびこれを用いた磁気抵抗効果素子」に関して次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) (ア) 「1、磁性層に他の組成の中間層を挿入して多層構造とした強磁性トンネル素子において、少なくとも一層の磁性層に反強磁性体からのバイアス磁界が印加されていることを特徴とする強磁性トンネル効果膜。 2、特許請求の範囲第1項に記載の強磁性トンネル効果膜を用いた磁気抵抗効果素子。 3、特許請求の範囲第2項に記載の磁気抵抗効果素子の少なくとも一部が非磁性金属上に形成されていることを特徴とする磁気抵抗効果素子。」(公報1頁左下欄、特許請求の範囲の請求項1乃至3) (イ) 「本発明は高い磁気抵抗効果を有する強磁性トンネル効果膜に関し、特に磁気ディスク装置などに用いる再生用磁気ヘッドに適した磁気抵抗効果素子に関する。」(公報1頁左下欄18行?右下欄1行、[産業上の利用分野]の項) (ウ) 「高密度磁気記録における再生用磁気ヘッドとして、磁気抵抗効果を用いた磁気ヘッドの研究が進められている。現在、磁気抵抗効果材料としては、Ni-20at%Fe合金薄膜が用いられている。しかし、Ni-20at%Fe合金薄膜を用いた磁気抵抗効果素子は、バルクハウゼンノイズなどのノイズを示すことが多く、他の磁気抵抗効果材料の研究も進められている。」(公報1頁右下欄3行?10行、[従来の技術]の項) (エ) 「本発明者等は、強磁性トンネル効果を示す多層膜について鋭意研究を重ねた結果、磁性膜を軟磁性材料とし、一方の磁性層に反強磁性体からのバイアス磁界を印加し、磁性層の磁化の方向を制御することができることを明らかにし、本発明を完成するに至った。」(公報2頁右上欄19行?左下欄4行、[課題を解決するための手段]の項) (オ) 「上述のように、強磁性トンネル効果膜の2層の磁性層の保磁力が大きく異ならなくても(2層の材料が同じであっても)、一方の磁性層に反強磁性体からのバイアス磁界を印加すると、両層の磁化の向きが変化する磁界を変えることができる。このため、ある磁界の範囲内では、両層の磁化の向きは反平行、その範囲以外では、両層の磁化の向きは平行となり、磁気抵抗効果を示すようになる。 また、上記強磁性トンネル効果膜の少なくとも一部を非磁性金属上に形成することにより、磁気記録媒体に対向する磁性層の面積を小さくすることができ、狭い領域の磁界を検出することが可能となる。」(公報2頁左下欄19行?右下欄12行、[作用]の項) (カ) 「同図に示すように、下部磁性層12および上部磁性層14の保磁力は、ともに、7Oeである。しかし、上部磁性層14には反強磁性層15からのバイアス磁界が印加されており、磁化の向きが変化する磁界の大きさが、高磁界側にシフトしている。(略) そこで、上記強磁性トンネル効果膜の電気抵抗の変化を調べるために、第3図のような素子を作製した。上記素子の作製プロセスを以下に述へる。まず、非磁性基板上に幅10μm、厚さ100nmのCu電極31をイオンビームスパッタリング法およびイオンミリング法で形成する。次に、Cu電極31の上に、10μm×10μm×膜厚100nmのFe-1.0at%C合金からなる下部磁性層32、10μm×10μm×膜厚10nmのAl2O3からなる中間層33、10μm×10μm×膜厚100nmのFe-1.0at%C合金からなる上部磁性層34、10μm×10μm×膜厚50nmのCrからなる反強磁性層35を順に形成する。次に、段差を樹脂で平坦化し、反強磁性層35に接触するように、Cu電極36を形成する。 ヘルムホルツコイルを用いて、Cu電極の長手方向と直角の面内方向に磁界を印加し、電気抵抗の変化を調べた。」(公報3頁左上欄16行?左下欄13行、[実施例1]の項) (キ) 「[実施例3] 実施例1と同様の方法で、磁気抵抗効果素子を作製した。磁性層として、Fe-1.0at%C合金層、中間層として、Al2O3層を用いた。反強磁性層としては、Fe-50at%Mn合金を用いた。」(公報4頁右上欄20行?左下欄5行) (2) 同じく引用された特開平7-307012号公報(以下「引用例2」という。)には、「磁気抵抗効果型ヘッドおよび録再分離型磁気ヘッド」に関して次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) (サ) 「【0055】次に、本発明の第5の実施例について、図12および図13を参照して説明する。 【0056】図12は、この実施例のMRヘッドの構造を部分的に示す斜視図であり、図13は媒体対向面から見た正面図である。基板41上には、前述した各実施例と同様に、下側シールド層42と下側再生磁気ギャップ層43とが順に形成されている。下側再生磁気ギャップ層43上には、MR膜44として、第1の磁性膜(例えばCo90Fe10膜)45/非磁性膜(例えばCu膜)46/第2の磁性膜(例えばCo90Fe10膜)47の3層積層構造を有するスピンバルブ膜が形成されている。 【0057】なお、上側の第2の磁性膜47は、図示を省略したFeMn膜や NiO膜等からなる反強磁性膜やCoPt膜等からなる硬質強磁性膜等により磁化固着されており、下側の第1の磁性膜45のみが外部磁界(信号磁界)により磁化方向が変化する。従って、非磁性膜46を挟んで配置された2つの磁性膜45、47の磁化方向の相対的な角度が変化して磁気抵抗効果が得られる。 【0058】MR膜(スピンバルブ膜)44における下側の第1の磁性膜45は、媒体対向面方向に突出形成された突出部45aを有し、この突出部45aを除いて媒体対向面からリセスしている。すなわち、突出部45aの先端面のみが媒体対向面を形成している。非磁性膜46と第2の磁性膜47は、第1の磁性層45の突出部45aを除く部分の上に積層形成されており、第1の磁性層45の突出部45aを除く部分と同様に、媒体対向面からリセスしている。 【0059】一対のリード48は、媒体対向面からリセスした第2の磁性膜47上にそれぞれ形成されており、これらによってMR素子49が構成されている。すなわち、MR素子49は、第1の磁性膜45の突出部45aを除いて、媒体対向面からリセスしているため、第1の磁性膜45の突出部45aのみが外部磁界(信号磁界)に応答する。よって、第1の磁性膜45の突出部45aが磁界応答部となり、磁界応答部の幅Trは突出部45aの幅となる。 【0060】MR素子49上には、上側再生磁気ギャップ層50と、リード48および上側シールド層52間の絶縁耐圧を確保する絶縁層51が形成されている。絶縁層51は、前述した各実施例と同様に、リード48上面を覆うように形成されている。上側シールド層52は、絶縁層51に形成されたトレンチ51a内にその一部が埋め込み形成されている。これらにより、再生ヘッドとして機能するシールド型MRヘッド53が構成されている。 【0061】(略) 【0062】(略)よって、絶縁層51を形成することでリード48と上側シールド層52間の絶縁耐圧を確保した上で、MR膜(スピンバルブ膜)44の磁界応答部では、MR膜(スピンバルブ膜)44と上側シールド層52間を薄い上側再生磁気ギャップ層50で絶縁することができる。このことは、例えば0.1μm 以下というような狭ギャップ化が達成できることを意味する。」 (シ) 「【0066】(略)さらに、耐食性に劣るリード48や第2の磁性膜47の磁化固着のための反強磁性膜等を媒体対向面からリセスさせることにより、耐食性の向上すなわち信頼性の向上を図ることができる。」 3 対比・判断 (1)対比 本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。 引用例1には、上記2(ア)(イ)(エ)(カ)(キ)に摘示した記載事項によれば、 「磁性層に他の組成の中間層を挿入して多層構造とした強磁性トンネル効果膜を用いた磁気抵抗効果素子を備えた、磁気ディスク装置などに用いる再生用磁気ヘッドであって、 上記強磁性トンネル効果膜は、一層の磁性層に反強磁性層からのバイアス磁界が印加され、 上記強磁性トンネル効果膜は、磁性層を軟磁性材料とし、FeC合金等からなる下部磁性層、Al2O3等からなる中間層、FeC合金等からなる上部磁性層、CrやFeMn合金等からなる反強磁性層が順に形成されてなる再生用磁気ヘッド。」 の発明が記載されている。 引用例1に記載された発明の「磁気ディスク装置などに用いる再生用磁気ヘッド」は、本願発明の「磁気記録媒体に記録された磁気情報を読み出す磁気ヘッド」に相当し、一般的に「磁気ディスク装置などに用いる再生用磁気ヘッド」は、磁気記録媒体対向面に露出するシールド層に挟まれるように磁気抵抗効果素子を配置するものであるから、引用例1に記載された発明の再生用磁気ヘッドも、本願発明の「シールド層に挟まれて配置され、磁気記録媒体に記録された磁気情報を読み出す磁気ヘッド」に相当する構成を備えている。 引用例1に記載された発明の「中間層」は、強磁性トンネル効果膜のトンネル電流が流れるAl2O3等からなる中間層のことであるから、本願発明の「第1及び第2の磁性層の間に介在し両者をトンネル接合する絶縁層」に相当している。 引用例1に記載された発明において、「強磁性トンネル効果膜」は、「FeC合金等からなる下部磁性層、Al2O3等からなる中間層、FeC合金等からなる上部磁性層、CrやFeMn合金等からなる反強磁性層が順に形成されてなる」ので、引用例1に記載された発明の「下部磁性層」「上部磁性層」は、それぞれ本願発明の「第1の磁性層」「第2の磁性層」に相当し、引用例1に記載された発明の「反強磁性層」は、本願発明の「第2の磁性層に隣接して配置された反強磁性層」の構成を備えている。そして、引用例1に記載された発明の「上部磁性層」は、反強磁性層に隣接し「反強磁性層からのバイアス磁界が印加されている」ので、上部磁性層は反強磁性層と交換結合していることによりバイアス磁界が印加されているといえ、本願発明の「第2の磁性層の磁化方向は反強磁性層との交換結合により決定されていること」に相当する構成を備えている。一方、引用例1に記載された発明の「下部磁性層」は、外部からの印加磁界に応じて、磁化の方向が変化する(上記(オ)(カ)参照)ものであるから、本願発明の「軟磁性材料からなり、磁気記録媒体の磁場に応じて磁化の方向が変化する第1の磁性層」に相当する構成を備えている。 してみると、本願発明と引用例1に記載された発明は、 「シールド層に挟まれて配置され、磁気記録媒体に記録された磁気情報を読み出す磁気ヘッドにおいて、 軟磁性材料からなり、磁気記録媒体の磁場に応じて磁化の方向が変化する第1の磁性層と、 第2の磁性層と、 第1及び第2の磁性層の間に介在し両者をトンネル接合する絶縁層と、 第2の磁性層に隣接して配置された反強磁性層とを有し、 第2の磁性層の磁化方向は反強磁性層との交換結合により決定されている磁気ヘッド。」 である点で一致しており、以下の点で相違している。 (相違点1) 「第2の磁性層」について、本願発明では、「第1の磁性層の初期状態における磁化方向に対し直交する方向の磁化を有する」と特定されているのに対し、引用例1に記載された発明では、そのように特定されていない点。 (相違点2) 本願発明では、「第2の磁性層の少なくとも磁気記録媒体側の端部を被覆する被覆層」を有し、「ヘッド先端側の面に露出する第1の磁性層とシールドの電位が同電位であり」と特定されているのに対し、引用例1に記載された発明では、そのように特定されていない点。 (2)相違点についての判断 (相違点1について) 磁気ヘッドに用いられる磁気抵抗効果素子において、反強磁性層との交換結合により磁化の方向が固定される磁性層の磁化の方向を、磁気記録媒体の磁場に応じて磁化の方向が変化する磁性層の、初期状態における磁化方向に対して、直交する方向に固定することが、従来よりスピンバルブ型磁気抵抗効果素子を用いる磁気ヘッドにおいて行われ、強磁性トンネル効果型の磁気抵抗効果素子を用いる磁気ヘッドにおいても同様に磁化の方向を設定することが、周知の事項である(必要とあれば、例えば、特開平4-42417号公報(公報3頁左下欄9行?右下欄6行等)、特開平5-347013号公報(段落16、39、40等)、特開平6-244477号公報参照。)。 (相違点2について) 上記(サ)(シ)によれば、引用例2には、再生ヘッドとして機能するシールド型の磁気抵抗効果型磁気ヘッドにおいて、(信号磁界により磁化方向が変化する第1の磁性膜)/(非磁性膜)/(反強磁性膜により磁化固着された第2の磁性膜)の、3層積層構造を有するスピンバルブ膜における反強磁性膜等の腐蝕を防止する目的で、反強磁性膜及びこれに隣接する磁化固着された第2の磁性膜を、媒体対向面から後退させて絶縁性の再生ギャップ層等により被覆し、磁化方向が変化する第1の磁性膜は媒体対向面に露出する構造とすることが、記載されている。 引用例2には、異方性磁気抵抗効果膜やスピンバルブ型磁気抵抗効果膜に関する記載があるものの、強磁性トンネル効果型の磁気抵抗効果素子に関する記載はない。しかしながら、強磁性トンネル効果型のものを磁気抵抗効果素子として用いる磁気ヘッドにおいて、磁気ヘッドとして共通する課題及び類似する構成について、スピンバルブ型磁気抵抗効果膜を磁気抵抗効果素子として用いる磁気ヘッドに関する技術を採用することは、当業者が必要に応じ適宜なし得るところである。 また、再生用磁気ヘッドにおけるシールド層や磁化方向が変化する磁性層については、記録媒体の対向面に露出させて、磁束を引き入れる機能を有効に果たさせるべきものであることは、引用例2においても示されているように、技術常識である。 してみれば、引用例1に記載された発明において、その反強磁性層の腐蝕防止のため、引用例2に記載された発明を採用して、反強磁性層及び隣接する磁性層を絶縁性被覆層により被覆して媒体対向面に露出しないようにし、磁気記録媒体の磁場に応じて磁化の方向が変化する磁性層は露出した状態とすることは、当業者が容易に想到しうることである。 また、ヘッド先端側に露出するシールド層や磁気抵抗効果膜の電極部の電位を等電位にすることにより、電位差による放電を防ぐことは、磁気抵抗効果素子を用いた磁気ヘッドにおける周知の事項であり(必要とあれば、特開昭61-77114号公報、原審の拒絶査定で引用された特開平6-111250号公報(以下「周知例1」という。)、特開平4-21916号公報(以下「周知例2」という。)参照。)、当業者が必要に応じ適宜なし得ることにすぎない。 そして、上記相違点1、2を総合的に検討しても、本願発明の効果は、引用例1乃至2に記載された発明及び周知の事項から当業者であれば予測される範囲内であるので、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものである。 なお、請求人は、請求の理由で、引用例2について、「磁気記録媒体側の面に第1の磁性層45(本願の第2の磁性層に対応)の一部である突起部45aが露出しています。従って、磁性層45に腐蝕が発生するおそれがあります。」と主張している。しかしながら、引用例2における第1の磁性層45は、反強磁性層に隣接しない、信号磁界により磁化方向が変化する磁性層であって、本願発明の第1の磁性層に相当するものといえるから、請求人の主張は採用できない。 また、請求人は、請求の理由で、原審の拒絶査定で示された上記周知例1及び2について、いずれも磁気抵抗効果素子層の面内方向に電流を印加する構造の素子であるので異なると主張している。しかしながら、本願発明の特許請求の範囲には電極や端子について何ら記載されていないが、本願発明の「第1の磁性層」は強磁性トンネル効果型磁気抵抗効果素子の一方の電極部といえ、本願発明のシールド層と「第1の磁性層」の電位が同電位である構成は、上記周知例1及び2と、シールド層と磁気抵抗効果素子の一方の電極部とを同電位としている点で、その課題も解決手段も共通しているものである。また、一方の電極部のみ露出し、他方が露出しないから確実に放電を防止できると主張しているが、同様の構成は周知例2にも記載されているとおりであって、強磁性トンネル効果型特有であるとの主張は、採用できない。 さらに、請求人は、請求の理由で、「審査官殿は、本願の被覆層は磁気ヘッドのABS面に形成される通常の保護膜(DLC等)を含むと指摘しています。しかし、ABS面に形成される通常の保護膜では、第1の磁性層及びシールド層が露出しないため、第1の磁性層とシールド層とを同電位にすることが難しくなり、放電を防止するという効果を得ることができません。」と主張している。しかしながら、同電位にするための具体的な構成は、本願発明において特定されていないうえ、明細書にも記載がないこと、また、同電位する手段は、シールド層と電極部とを電気接続する手段を、磁気ヘッド内部又は場合により媒体対向表面に設けて行われる(上記周知例1及び2参照)ものであることを勘案すると、第1の磁性層及びシールド層が露出することと同電位にすることとが、関連して効果を奏するような主張は、特許請求の範囲や明細書の記載に基づかない主張であって、採用することができない。 4 むすび したがって、本願発明は、本願出願前に頒布された引用例1乃至2に記載された発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-10-20 |
結審通知日 | 2006-11-14 |
審決日 | 2006-11-29 |
出願番号 | 特願平8-96573 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 豊 |
特許庁審判長 |
小林 秀美 |
特許庁審判官 |
中野 浩昌 吉村 伊佐雄 |
発明の名称 | 磁気ヘッド及び磁気記録装置 |
代理人 | 岡本 啓三 |