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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B62D |
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管理番号 | 1152537 |
審判番号 | 不服2003-12642 |
総通号数 | 88 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-03 |
確定日 | 2007-02-15 |
事件の表示 | 平成9年特許願第317357号「電動パワーステアリング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年6月2日出願公開、特開平11-147479〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本願は、平成9年11月18日の出願であって、原審において、平成14年8月23日付で拒絶理由が通知され、これに対して、請求人(出願人)は平成14年10月28日に意見書及び手続補正書を提出したが、平成15年5月27日付で拒絶査定を受け、この査定を不服として、平成15年7月3日に本件審判請求をすると共に、平成15年8月4日付で手続補正(前置補正)がなされたものである。 【2】平成15年8月4日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年8月4日付の手続補正を却下する。 [理 由] 1.補正後の本願発明 平成15年8月4日付の手続補正(以下、「本件補正」という)により、 特許請求の範囲の請求項7は、 「【請求項7】 少なくとも運転者の操舵力検出値に基づいて演算される第1のモータ目標電流と、少なくともモータの逆起電圧に基づいて演算される第2のモータ目標電流とから、運転者の操舵力を補助するためのモータに通流する第3のモータ目標電流を演算すると共に、モータの端子電圧を検出するモータ端子電圧検出回路の検出電圧が所定の電圧範囲から逸脱した場合に故障と判定することを特徴とする電動パワーステアリング装置。」 と補正された。 上記補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項7に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2.引用例及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-175404号公報(以下、「引用例」という)には、次の技術事項が記載されている。 (イ)「電動パワーステアリング装置は、操舵系に連結されたモータと、このモータをPWM駆動制御するPWM制御手段と、遮断周波数がPWM搬送波周波数よりも低い低域通過特性を有し、検出した前記モータの印加電圧を所定電圧レベルに変換して出力するモータ印加電圧検出手段と、検出されたモータ印加電圧に基づいて前記モータの角速度を推定する角速度推定手段と、角速度推定結果に基づいて前記モータの電流値を演算する電流値演算手段とを備えたものである。」(【0034】) (ロ)「5はモータ1を駆動するPWM搬送波周波数よりも低い所定の低域通過特性を有し、モータ1の端子間の電圧を所定の電圧レベルに変換して後述のA/D変換器8fに入力するためのモータ印加電圧検出回路であって抵抗器5a?5g、コンデンサ5h?5i、OPアンプ5jより構成されている。」(【0070】) (ハ)「9は操舵トルクを静的に補助するためのモータ電流を演算する操舵力補助電流演算手段であり、トルクセンサ2により検出された操舵トルクVtと、車速センサ3により検出された車速Vsが入力され、操舵力補助電流目標値Isが出力されている。」(【0072】) (ニ)「10はモータに通流する電流を制御するモータ電流制御手段であり、モータ目標電流Ia*と、モータ電流検出手段4により検出されたモータ電流検出値Iasnsが入力され、モータを駆動するモータ駆動信号が出力されている。11はモータの角速度推定値ωを演算するモータ角速度演算手段であり、モータ印加電圧検出回路5により検出されたモータ印加電圧検出値Vasnsと、モータ電流検出手段4により検出されたモータ電流検出値Iasnsが入力され、モータ角速度推定値ωが出力されている。」(【0073】) (ホ)「12はモータ角加速度演算手段であり、モータ角速度演算手段11により演算されたモータ角速度推定値ωが入力され、これを微分処理したモータ角加速度推定値dω/dtが出力されている。13はステアリング系のクーロン摩擦を補償するためのモータ電流を演算するクーロン摩擦補償電流演算手段であり、モータ角速度推定値ωと、車速センサ3により検出された車速Vsが入力され、クーロン摩擦補償電流目標値Icが出力されている。」(【0074】) (ヘ)「14はステアリング系の粘性摩擦を補償するためのモータ電流を演算する粘性摩擦補償電流演算手段であり、モータ角速度推定値ωと、車速センサ3により検出された車速Vsが入力され、粘性摩擦補償電流目標値Idが出力されている。15はステアリング系の慣性モーメントを補償するためのモータ電流を演算する慣性補償電流演算手段であり、モータ角加速度推定値dω/dtが入力され、慣性補償電流目標値Ijが出力されている。」(【0075】) (ト)「このようにして求められたクーロン摩擦補償電流目標値Icと、粘性摩擦補償電流目標値Idと、慣性補償電流目標値Ijと、操舵トルクを静的に補助するための操舵力補助電流目標値Isとを加え、モータ目標電流Ia*とし、これがモータ電流検出値Iasnsと一致するように電流制御手段10によってフィードバック制御し、モータ1を駆動する。」(【0116】) ところで、「モータ角速度推定値ω」は、モータ印加電圧検出回路5にて検出されるモータ印加電圧検出値Vasnsを基に得られる以上、モータの逆起電圧に基づいて得られるものということができるから、このモータ角速度推定値ωを基に演算されるクーロン摩擦補償電流目標値Ic、粘性摩擦補償電流目標値Id、慣性補償電流目標値Ijも、モータの逆起電圧に基づいて演算される補償電流目標値ということができるものである。 よって、図1、2を参酌すると共に、記載事項(イ)?(ト)によれば、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認められる。 「トルクセンサ2により検出された操舵トルクVtと、車速センサ3により検出された車速Vsに基づいて演算される操舵力補助電流目標値Isと、モータの逆起電圧に基づいて演算されるクーロン摩擦補償電流目標値Ic、粘性摩擦補償電流目標値Id、慣性補償電流目標値Ijとから、運転者の操舵力を補助するためのモータに通流するモータ目標電流Ia*を演算すると共に、モータの端子電圧を検出するモータ印加電圧検出回路を有する電動パワーステアリング装置。」 3.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、 引用発明の「トルクセンサ2により検出された操舵トルクVtと、車速センサ3により検出された車速Vsに基づいて演算される操舵力補助電流目標値Is」、「モータの逆起電圧に基づいて演算されるクーロン摩擦補償電流目標値Ic、粘性摩擦補償電流目標値Id、慣性補償電流目標値Ij」、「モータに通流するモータ目標電流Ia*」及び「モータ印加電圧検出回路」は、それぞれ、本願補正発明の「少なくとも運転者の操舵力検出値に基づいて演算される第1のモータ目標電流」、「少なくともモータの逆起電圧に基づいて演算される第2のモータ目標電流」、「モータに通流する第3のモータ目標電流」及び「モータ端子電圧検出回路」に相当するから、両者は、 「少なくとも運転者の操舵力検出値に基づいて演算される第1のモータ目標電流と、少なくともモータの逆起電圧に基づいて演算される第2のモータ目標電流とから、運転者の操舵力を補助するためのモータに通流する第3のモータ目標電流を演算すると共に、モータの端子電圧を検出するモータ端子電圧検出回路を有する電動パワーステアリング装置。」 の点で一致し、次の点で相違しているものと認められる。 <相違点> 本願補正発明では、モータの端子電圧を検出するモータ端子電圧検出回路の検出電圧が所定の電圧範囲から逸脱した場合に故障と判定する構成としたのに対し、引用発明では、モータの端子電圧を検出するモータ端子電圧検出回路を有してはいるものの、モータ端子電圧検出回路の検出電圧が所定の電圧範囲から逸脱した場合に故障と判定する構成にはなっていない点。 4.当審の判断 電動パワーステアリング装置のようなモータの制御装置において、モータの端子電圧を検出するモータ端子電圧検出回路の検出電圧が所定の電圧範囲から逸脱した場合に故障と捉えて安全性を確保する技術は、従来周知の技術的事項(参考例;特開平5-185937号公報、特開平8-80080号公報、特開平8-175415号公報、特開平3-182875号公報、特開平7-274573号公報、特開平4-29589号公報)であり、しかも、この技術的事項を、引用発明に採用することに特段の阻害要因が有るとはいえないから、引用発明にこの技術的事項を適用して前記相違点でいう本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到することができたものというべきである。 そして、本願補正発明の効果も、引用発明及び前記の従来周知の技術的事項から当業者であれば予測できる程度のものであり、格別なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、前記の従来周知の技術的事項を考慮することにより引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 【3】本願発明について 1.本願発明 平成15年8月4日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成14年10月28日付の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項によって特定されるものと認められるが、そのうち、請求項7に係る発明は、次のとおりである。 「【請求項7】 少なくとも運転者の操舵力検出値に基づいて演算される第1のモータ目標電流と、少なくともモータの逆起電圧に基づいて演算される第2のモータ目標電流とから、運転者の操舵力を補助するためのモータに通流する第3のモータ目標電流を演算すると共に、モータの端子電圧が所定の電圧範囲から逸脱した場合に故障と判定することを特徴とする電動パワーステアリング装置。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、前記の【2】2.に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願の請求項7に係る発明の構成を全て含むと共に、当該発明の構成に加えて、更に前記【2】1.に記載した本願補正発明の下線を付した構成を限定付加している本願補正発明が、前記【2】3.以下に記載したとおり、従来周知の技術的事項を考慮することにより、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願の請求項7に係る発明も、本願補正発明と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 【4】むすび 以上のとおり、本願の請求項7に係る発明は、前記の従来周知の技術的事項を考慮することにより引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-07 |
結審通知日 | 2006-12-12 |
審決日 | 2006-12-26 |
出願番号 | 特願平9-317357 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B62D)
P 1 8・ 575- Z (B62D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大谷 謙仁 |
特許庁審判長 |
藤井 俊明 |
特許庁審判官 |
ぬで島 慎二 山内 康明 |
発明の名称 | 電動パワーステアリング装置 |
代理人 | 梶並 順 |
代理人 | 鈴木 憲七 |
代理人 | 曾我 道治 |
代理人 | 古川 秀利 |
代理人 | 曾我 道照 |