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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1152692
審判番号 不服2003-3397  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-03 
確定日 2007-02-22 
事件の表示 特願2001-213753「ゲーム装置、ゲーム制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月28日出願公開、特開2003- 24638〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.出願の経緯
本願は、平成13年7月13日の出願であって、平成15年1月10日付で手続補正がなされた後、同年1月30日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月2日付で手続補正がなされたものである。

第2.平成15年4月2日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年4月2日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】ゲームコントローラを備え、プレイヤが該ゲームコントローラでゲーム操作入力をしてプレイヤゲームキャラクタを操作し、該プレイヤゲームキャラクタのパラメータを管理するゲーム装置において、
情報の読み取りが可能な情報記憶媒体から、外的にゲームアイテム又はゲームキャラクタをゲームに登場させるため、該ゲームアイテム又はゲームキャラクタを識別する識別情報を読み出す識別情報読み出し手段と、
プレイヤの操作対象である前記プレイヤゲームキャラクタのパラメータを現在ゲーム状況として取得する現在ゲーム状況取得手段と、
識別情報に対応づけて効果発動条件を記憶する効果発動条件記憶手段と、
前記現在ゲーム状況取得手段によって取得される現在ゲーム状況が、前記識別情報読み出し手段によって読み出される識別情報に対応づけて前記効果発動条件記憶手段に記憶される効果発動条件を満足するか、を判断する条件判断手段と、
該条件判断手段による判断結果に基づいて、前記識別情報読み出し手段によって読み出される識別情報によって識別されるゲームアイテム又はゲームキャラクタの効果発動を制御する効果発動制御手段と、
を含むことを特徴とするゲーム装置。」
と補正された。

上記補正は、平成15年1月10日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ゲーム装置」を「ゲームコントローラを備え、プレイヤが該ゲームコントローラでゲーム操作入力をしてプレイヤゲームキャラクタを操作し、該プレイヤゲームキャラクタのパラメータを管理するゲーム装置」に限定することを含むものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するかについて以下に検討する。

2.独立特許要件(特許法第29条第2項)の検討
(1)文献に記載された発明
当審において新たに発見され、本願の出願の日前に頒布された特開平8-332281号公報(以下、「文献A」という。)には、以下の事項が記載されている。

・記載事項A-1(【0047】段落)
「図1には、ICカードが装填可能なゲーム装置のブロック図の一例が示される。本体装置100は、CPU102、操作部104、画像処理部106、音声処理部108、RAM110、通信制御部111、コントロール部112、カードスロット部116を含む。・・・操作部104は、プレーヤの操作信号を入力するためのものである。」

・記載事項A-2(【0048】段落)
「カードスロット部116は、第1の情報記憶媒体113であるICカードと本体装置との間のインターフェース部、第1の情報記憶媒体113のコントロール部となるものであり、本実施例では、2枚のICカード、即ち第1、第2のICカード120、122がカードスロット部116に装填される。第1、第2のICカード120、122は、各々、第1、第2のプレーヤに割り当てられ、第1、第2のプレーヤに関するデータを記憶する。・・・第1、第2のICカード120、122に記憶される第1、第2のデータは、カードスロット部116を介してCPU102により読み出される。CPU102は、読み出された第1、第2のデータに基づいてゲーム演算処理を行い、その結果を、画像処理部106、音声処理部108を介して外部に出力等する。またCPU102は、読み出された第1、第2データに基づき第1、第2のデータの更新処理を行い、更新されたデータを、カードスロット部116を介して第1、第2のICカード120、122へ書き込む。更に、本体装置100内の装置(例えばコントロール部112等)からのデータを、第1、第2のICカード120、122に書き込むことも可能である。」

・記載事項A-3(【0063】段落)
「第1、第2のデータに各プレーヤが獲得したポイントデータを含ませ、相手プレーヤとの対戦結果に基づいて上記ポイントデータの更新処理を行う場合について図6、図7を用いて説明する。」

・記載事項A-4(【0069】段落)
「星マーク数(ポイントデータ)の演算手法も上記に説明したものに限らず、種々のものを考えることができる。・・・また例えば星マークの数により「大関」「横綱」等のランク分けをしてもよい。この場合には、「大関」に勝利すれば星マーク数を所定数(例えば5個)獲得できる等の星マーク数の演算手法も考えられる。」

・記載事項A-5(【0070】?【0072】段落)
「第1、第2のデータにアイテムデータを含ませ、相手プレーヤとの対戦結果に基づき第1、第2のデータ間でアイテムデータの取り込み処理を行い、上記アイテムデータの更新処理を行う場合について図9を用いて説明する。
図9では、第1、第2のプレーヤが操作するロボットである「MECH A」、「MECH C」が対戦する。「MECH A」は「V4ENGINE」、「MACHINE GUN」、「BEAM SWORD」等のアイテム(機体、装備、武器等)を所持する。一方、「MECH C」は「HEAT AXE」、「M.LAUNCHER」等のアイテムを所持する。そしてこの場合、第1のプレーヤが勝利したので、「MECH C」の武器である「M.LAUNCHER」が「MECH A」に取り込まれる。これにより「MECH A」は更に強力になり、プレーヤは自身の操作するロボットの成長を楽しむことができる。
なお上記の説明では、取り込まれた「M.LAUNCHER」は「MECHC」に残らないとしたが、これを残すようにしてもよい。また更新されるアイテムデータも、機体、装備、武器等に限らず、ゲームに一般的に使用される各種アイテムを考えることができる(例えばロールプレイングゲームにおける各種アイテム)。」

・記載事項A-6(【0075】段落)
「以上のようにしてプレーヤのアイテムデータ、能力データ等を変化させた後、これらのアイテムデータ、能力データの内容をその後の対戦ゲームに反映させることで、ゲームの面白味を格段に向上できる。この時、例えば、プレーヤ間の対戦はこれらのアイテムデータ、能力データ等のみに基づいて自動的に行ってもよい。またこれらのアイテムデータ、能力データ等に基づいて、プレーヤが操作部等を操作して対戦を行ってもよい。いずれにしても、対戦後にアイテムデータ、能力データ等の内容が更新されるため、プレーヤは自身の成長等を楽しみながらゲームを行うことができ、これによりゲームの面白味を格段に向上できる。」

上記記載事項によれば、文献Aには、以下の発明が記載されているものと認められる。

「CPU102、カードスロット部116、および、操作部104を含み、プレーヤが操作部を操作してロボットの対戦を行うゲーム装置において、
カードスロット部116は、第1、第2のプレーヤに関するデータを記憶する第1、第2のICカード120、122から、第1、第2のデータを読み出すものであり、
第1、第2のデータには、各プレーヤが獲得したポイントデータ、および、アイテムデータが含まれており、
ポイントデータは、対戦結果に基づいて更新処理を行い、その数により「大関」「横綱」等のランク分けをするものであり、
前記アイテムデータは、相手プレーヤとの対戦結果に基づき第1、第2のデータ間でアイテムデータの取り込み処理を行いアイテムデータの更新処理を行うものであって、アイテムデータの内容をその後の対戦ゲームに反映させるものであるゲーム装置。」(以下、「引用発明」という。)

(2)本願補正発明と引用発明との対比
・対応関係A-1
引用発明における「操作部104」は本願補正発明における「ゲームコントローラ」に相当し、以下同様に「プレーヤ」は「プレイヤ」に、「ロボット」は「プレイヤゲームキャラクタ」に、「ポイントデータ」及び「ランク」は「プレイヤゲームキャラクタのパラメータ」に、「第1、第2のICカード120、122」は「情報記憶媒体」にそれぞれ相当する。

・対応関係A-2
引用発明において、ポイントデータは、対戦結果に基づいて更新処理が行われるものであり、ゲーム装置に管理されているものであるといえる。
ここで、上記対応関係A-1を考慮すれば、引用発明における「ポイントデータは、対戦結果に基づいて更新処理を行い」という処理は、本願補正発明にいう「プレイヤゲームキャラクタのパラメータを管理する」ことに相当するものであり、引用発明の「ゲーム装置」は、本願補正発明の「ゲームコントローラを備え、プレイヤが該ゲームコントローラでゲーム操作入力をしてプレイヤゲームキャラクタを操作し、該プレイヤゲームキャラクタのパラメータを管理するゲーム装置」に相当するものである。

・対応関係A-3
上記記載事項A-5をみれば、文献Aにおいて、「アイテムデータ」とは、プレーヤが操作するロボットに対応付けられた複数のアイテム(例えば、「V4ENGINE」、「MACHINE GUN」、「BEAM SWORD」)、および、プレーヤが勝利したことにより獲得できる特定のアイテム(例えば、「M.LAUNCHER」)の両方を意味しているところ、引用発明の「取り込み処理」において処理される「アイテムデータ」が、プレーヤが勝利したことにより獲得できる特定のアイテムを意味することは、当業者に明らかなことである。
してみれば、引用発明の「取り込み処理」において処理される「アイテムデータ」は、特定のアイテムを識別するためのものであって、本願補正発明における「ゲームアイテムを識別する識別情報」に相当するものである。
また、上記のとおり、「取り込み処理」において処理される「アイテムデータ」は、特定のアイテムを識別するためのものであって、アイテム単位で処理される対象となるので、引用発明における複数のアイテムを意味する「アイテムデータ」は、特定のアイテムを識別するデータの集合であり、これも本願補正発明における「ゲームアイテムを識別する識別情報」に相当するものである。

・対応関係A-4
引用発明は、カードスロット部116からICカードに記憶されたアイテムデータを読み出して対戦ゲームに反映させるものであって、当該ICカードが、カードスロット部116を含むゲーム装置に装填可能な構成であることを考えれば、ICカードに記憶されたアイテムデータは、ゲーム装置に対して外的なものなので、引用発明は、外的にゲームアイテムをゲームに登場させるものといえるものである。
ここで、上記対応関係A-1およびA-3を考慮すれば、引用発明の「カードスロット部116」は、本願補正発明の「識別情報読み出し手段」と、情報の読み取りが可能な情報記憶媒体から、外的にゲームアイテムをゲームに登場させるため、該ゲームアイテムを識別する識別情報を読み出す識別情報読み出し手段である点において共通するものである。

・対応関係A-5
上記記載事項A-4の記載によれば、引用発明において、対戦結果に基づくポイントデータの更新にあたって、ポイントデータは、対戦相手のランクに応じて決められるものである。
してみれば、引用発明において、ゲーム装置は、プレーヤのポイントデータの更新を行う際には、プレーヤと対戦した者のランクを把握し、プレーヤと対戦した者のポイントデータの更新を行う際には、プレーヤのランクを把握しておく必要があり、引用発明のゲーム装置が、プレーヤのランクを取得する手段を有していることは、当業者にとって自明のことである。
ここで、上記対応関係A-1を考慮すれば、引用発明は、本願補正発明にいう「プレイヤの操作対象である前記プレイヤゲームキャラクタのパラメータを現在ゲーム状況として取得する現在ゲーム状況取得手段」を含んでいるといえる。

・対応関係A-6
引用発明は、ICカードに記憶されたアイテムデータを対戦ゲームに反映させるものであって、引用発明のゲーム装置は、対戦ゲームにおいて、アイテムの効果を発動する処理を行っているといえるものである。
そして、CPUにより行われる処理は、当該処理を制御する手段があると当業者に認識されるものである。
ここで、上記対応関係A-1を考慮すれば、引用発明において、ゲーム装置が、ICカードに記憶されたアイテムデータを対戦ゲームに反映させることと、本願補正発明において、ゲーム装置が「効果発動制御手段」を含むことは、ゲーム装置が、識別情報読み出し手段によって読み出される識別情報によって識別されるゲームアイテムの効果発動を制御する効果発動制御手段を含むものである点において共通する。

・一致点
よって、本願補正発明及び引用発明は、
「ゲームコントローラを備え、プレイヤが該ゲームコントローラでゲーム操作入力をしてプレイヤゲームキャラクタを操作し、該プレイヤゲームキャラクタのパラメータを管理するゲーム装置において、
情報の読み取りが可能な情報記憶媒体から、外的にゲームアイテムをゲームに登場させるため、該ゲームアイテムを識別する識別情報を読み出す識別情報読み出し手段と、
プレイヤの操作対象である前記プレイヤゲームキャラクタのパラメータを現在ゲーム状況として取得する現在ゲーム状況取得手段と、
前記識別情報読み出し手段によって読み出される識別情報によって識別されるゲームアイテムの効果発動を制御する効果発動制御手段と、
を含むゲーム装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点A
識別情報によって、本願補正発明は、ゲームアイテム又はゲームキャラクタをゲームに登場させているのに対して、引用発明は、ゲームアイテムをゲームに登場させているもののゲームキャラクタをゲームに登場させるものではない点。(以下、「相違点A」という。)

・相違点B
本願補正発明は、識別情報に対応づけて効果発動条件を記憶する効果発動条件記憶手段と、現在ゲーム状況取得手段によって取得される現在ゲーム状況が、識別情報読み出し手段によって読み出される識別情報に対応づけて前記効果発動条件記憶手段に記憶される効果発動条件を満足するか、を判断する条件判断手段とを含み、効果発動制御手段が、該条件判断手段による判断結果に基づいて、ゲームアイテムの効果発動を制御しているのに対して、引用発明は、ゲームアイテムの効果発動を制御するにあたって、本願補正発明のような判断を行っていない点。(以下、「相違点B」という。)

(3)相違点についての検討
・相違点Aについて
対戦処理を行うゲームにおいて、対戦の際にプレーヤキャラクタがアイテムを使用するのと同様に、対戦における効果を発動するゲームキャラクタが登場するゲームは、例えば、株式会社スクウェア(現、株式会社スクウェア・エニックス)が、本願出願前に発売していた「ファイナルファンタジーIII」の「召喚獣」に代表されるように周知のものである。
よって、引用発明において、識別情報によってゲームに登場させる対象をゲームアイテムのみではなく、ゲームキャラクタにまで広げることは、当業者が容易に想到し得ることであり、上記相違点Aに係る本願補正発明の構成のようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

・相違点Bについて
対戦処理を行うゲームにおいて、アイテムに対応付けて、その効果を発動するためのアイテム使用時のゲーム状況の条件が設定されているゲームは、下記周知文献B及びCに記載されているように周知であり、また、上記「ファイナルファンタジーIII」の「召喚獣」においても、その効果を発動するためには、その時点でのゲーム状況、すなわち、マジックポイントの存在が条件として設定されている。
よって、引用発明において、現在のゲーム状況によって、ゲームアイテム及びゲームキャラクタの効果を発動するための条件を設定することは、当業者が容易に想到し得ることであり、上記相違点Bに係る本願補正発明の構成のようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

【周知文献B】「プレイステーション必勝法スペシャル
ゲッターロボ大決戦!」、初版、1999年10月10日発行、
株式会社剄文社、第12ページ「追加武装」欄

【周知文献C】「ASCII」、第23巻 第1号、
1999年1月1日発行、株式会社アスキー、
第334ページ中欄第19?21行

・効果について
本願補正発明の効果は、引用発明の効果、及び、周知事項の効果の総和以上に格別なものとは認められない。

・むすび
以上のように、本願補正発明は、文献Aに記載された発明、及び、周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願に際、独立して特許を受けることができない。

(4)まとめ
したがって、平成15年4月2日付の手続補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明に関する検討
1.本願発明
平成15年4月2日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年1月10日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】外的にゲームアイテム又はゲームキャラクタをゲームに登場させるため、該ゲームアイテム又はゲームキャラクタを識別する識別情報を入力する識別情報入力手段と、
プレイヤの操作対象であるプレイヤゲームキャラクタのパラメータを現在ゲーム状況として取得する現在ゲーム状況取得手段と、
識別情報に対応づけて効果発動条件を記憶する効果発動条件記憶手段と、
前記現在ゲーム状況取得手段によって取得される現在ゲーム状況が、前記識別情報入力手段によって入力される識別情報に対応づけて前記効果発動条件記憶手段に記憶される効果発動条件を満足するか、を判断する条件判断手段と、
該条件判断手段による判断結果に基づいて、前記識別情報入力手段によって入力される識別情報によって識別されるゲームアイテム又はゲームキャラクタの効果発動を制御する効果発動制御手段と、
を含むことを特徴とするゲーム装置。」

2.先願明細書に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された特願2000-355693号(特開2002-156896号)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。

・記載事項1(【特許請求の範囲】段落)
「【請求項1】模型駒識別子及び種別を含む模型駒データを記憶する記憶部と、外部とデータを送受して該記憶部のデータを読取り及び書込み可能とするインターフェイスとを含む送受記憶部を有する模型駒と、
複数の領域に区画され、各区画に前記模型駒が搭載されたことを検出する検出部をそれぞれ有し、前記模型駒を搭載するための搭載ボードと、
前記搭載ボードの検出部により前記模型駒の搭載が検出されたとき、前記搭載ボード上に搭載された前記模型駒の位置データを識別し、前記模型駒の送受記憶部に記憶された模型駒データを読取るデータ入出力装置と、
前記データ入出力装置から位置データ及び模型駒データを記憶する模型駒配置テーブルと、
位置データ及び模型駒データに含まれる各データのいずれか又は複数のデータに対応して画像データを記憶した画像ファイルと、
前記模型駒配置テーブルに記憶された位置データ及び模型駒データに含まれる各データに基づき、前記画像ファイルを検索して前記模型駒に関する画像を作成し、作成された画像を背景画像又は他の作成された画像と合成して合成画像を作成する処理部と、
前記処理部により出力された合成画像を前記投影ボード及び/又は前記模型駒に向けて投影する投影機とを備えた思考支援システム。
:
【請求項4】前記データ入出力装置は、前記模型駒の送受記憶部内のデータを書換えるための手段をさらに備え、
前記画像ファイルは、模型駒の種別及び模型駒の変化に関する個別条件に対応した個別画像データを記憶した第2個別画像ファイルを含み、
前記処理部は、
前記模型駒が置かれた又は移動された際、前記第2個別画像ファイルを参照し、そこに記憶された種別及び個別条件に該当する場合、対応する個別画像を検索して、前記模型駒の位置データに基づき、検索された画像を模型駒の位置に投影する画像を作成する画像作成部と、
変化したデータを前記模型駒配置テーブルに記憶し、前記模型駒の送受記憶部を書替える読取り/書込み制御部とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の思考支援システム。」

・記載事項2(【0010】段落)
「本発明は、複数の利用者が投影された環境において、協調作業、学習、ゲームなどの各種シミュレーションを行うことで、模型駒の配置という直観的な操作を通して、コンピュータシミュレーションの結果を極めて容易に把握することを目的とする。」

・記載事項3(【0023】段落)
「図5に、模型駒の送受記憶部(記憶部)に記憶されるデータのファイル構成図の一例を示す。このデータは、模型駒識別子(ID)101、種別102、パワー103、予備エリア104を含む。模型駒識別子(ID)101は、予め模型駒12ごとに設定された番号又は符号が記憶される。模型駒ID101は予め固定された値で読取専用あるが、その他の種別102、パワー103、予備エリア104等は、適宜書き替え可能とすることができる。種別102は、例えば、以下の通りである。
・チェス、将棋、囲碁等のゲームの場合は、「キング」・「クイーン」等、「歩」・「金」・「王将」等、又は、「黒石」・「白石」等が記憶される。」

・記載事項4(【0032】段落)
「図11に、種別/パワー画像ファイル410の説明図を示す。種別/パワー画像ファイル410には、模型駒12の種別又はパワー601に対応して、模型駒12に向けて投影するための種別毎の画像602が記憶されている。例えば、模型駒配置テーブル500内に記憶された種別502又はパワー503に応じて、次のような画像データが記憶される。・・・複数のデータに対応して画像データを記憶して検索するようにしてもよい。
・チェス、将棋、囲碁等のゲームの場合は、「キング」・「クイーン」等、「歩」・「金」・「王将」等、又は、「黒石」・「白石」等に対応した画像が記憶される。」

・記載事項5(【0037】段落)
「模型駒の変化に応じて画像を変化させる画像作成処理を説明する。図13に、条件判定による画像作成処理のフロチャートを示す。また、図14に、模型駒の変化による第2個別画像テーブル440の説明図を示す。第2個別画像テーブル440では、種別/パワー801、個別条件802、個別画像803を含む。・・・模型駒の変化による個別条件802としては、例えば、所定のエリア内にそのエリア外から入った場合(「歩」が「金」に成る場合等)、・・・等である。所定のエリア内にそのエリア外から入った場合(「歩」が「金」に成る場合等)では、例えば、パソコン30の画像作成部120は、模型駒配置テーブル500内に記憶された模型駒ID501、種別502及び位置505に基づき、その模型駒12に移動・除去等の変化があることを判断すると、ある模型駒12が、所定の個別条件802を満たすか否か判断する(S301)。個別条件を満たす場合、画像作成部120は、対応する個別画像803を検索し、所定位置において画像を作成する(S302)。」

上記記載事項によれば、先願明細書には以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。

「模型駒識別子及び種別を含む模型駒データを記憶する記憶部と、外部とデータを送受して該記憶部のデータを読取り及び書込み可能とするインターフェイスとを含む送受記憶部を有する模型駒と、
複数の領域に区画され、各区画に前記模型駒が搭載されたことを検出する検出部をそれぞれ有し、前記模型駒を搭載するための搭載ボードと、
前記搭載ボードの検出部により前記模型駒の搭載が検出されたとき、前記搭載ボード上に搭載された前記模型駒の位置データを識別し、前記模型駒の送受記憶部に記憶された模型駒データを読取るデータ入出力装置と、
前記データ入出力装置から位置データ及び模型駒データを記憶する模型駒配置テーブルと、
位置データ及び模型駒データに含まれる各データのいずれか又は複数のデータに対応して画像データを記憶した画像ファイル、および、模型駒の種別及び模型駒の変化に関する個別条件に対応した個別画像データを記憶した第2個別画像ファイルと、
模型駒が置かれた又は移動された際、前記第2個別画像ファイルを参照し、そこに記憶された種別及び個別条件、例えば、模型駒が所定のエリア内にそのエリア外から入った場合等に該当する場合、対応する個別画像を検索して、前記模型駒の位置データに基づき、検索された画像を模型駒の位置に投影する画像を作成する処理部と、
前記処理部により出力された画像を前記模型駒に向けて投影する投影機とを備え将棋ゲームを行う思考支援システム。」

3.本願発明と先願発明との対比
・対応関係1
先願発明における「種別」は、本願発明における「ゲームアイテム又はゲームキャラクタを識別する識別情報」に相当し、以下同様に、「模型駒データを読取るデータ入出力装置」は「識別情報入力手段」に、「投影する画像」は「ゲームアイテム又はゲームキャラクタ」に、「模型駒」は「プレイヤゲームキャラクタ」に、「個別条件」は「効果発動条件」に、「第2個別画像ファイル」は「効果発動条件記憶手段」に、「位置データ」は「現在ゲーム状況」に、「模型駒配置テーブル」は「現在ゲーム状況取得手段」に、「投影する画像を作成する」は「効果発動」に、「将棋のゲームを行う思考支援システム」は「ゲーム装置」にそれぞれ相当する。

・対応関係2
先願発明は、データ入出力装置に模型駒を置くことによって模型駒に向けて投影する画像を作成するものであり、模型駒を置くことは、思考支援システムの外にいる使用者が行うことであって、外的なものといえる。
ここで、上記対応関係1を考慮すれば、先願発明における「データ入出力装置」は、本願発明にいう「外的にゲームアイテム又はゲームキャラクタをゲームに登場させるため、該ゲームアイテム又はゲームキャラクタを識別する識別情報を入力する識別情報入力手段」といえるものである。

・対応関係3
先願発明において、模型駒は、使用者が操作するものであって、将棋ゲームを行うためのものなので、「プレイヤの操作対象である」といえるものである。
また、先願発明において、「位置データ」は、模型駒の位置であり、模型駒のパラメータといえるものである。
ここで、上記対応関係1を考慮すれば、先願発明における「模型駒配置テーブル」は、本願発明にいう「プレイヤの操作対象であるプレイヤゲームキャラクタのパラメータを現在ゲーム状況として取得する現在ゲーム状況取得手段」といえるものである。

・対応関係4
先願発明は、第2個別画像ファイルを参照し、そこに記憶された種別及び個別条件に該当する場合、対応する個別画像を検索して投影する画像を作成しているものであり、第2個別画像ファイルに種別と個別条件が対応付け記憶されていることは明らかである。
ここで、上記対応関係1を考慮すれば、先願発明における「第2個別画像ファイル」は、本願発明にいう「識別情報に対応づけて効果発動条件を記憶する効果発動条件記憶手段」といえるものである。

・対応関係5
先願発明は、模型駒が移動され、模型駒が所定のエリア内にそのエリア外から入った場合に模型駒に向けて投影する画像を作成するものであり、条件判断に係る処理を行っているものである。
そして、システムにおいて行われる処理は、当該処理を行う手段があると当業者に認識されるものである。
ここで、上記対応関係1乃至4を考慮すれば、先願発明において、記憶された種別及び個別条件に該当する場合を処理部が判断していることは、本願発明にいう「現在ゲーム状況取得手段によって取得される現在ゲーム状況が、識別情報入力手段によって入力される識別情報に対応づけて効果発動条件記憶手段に記憶される効果発動条件を満足するか、を判断する条件判断手段」といえるものである。

・対応関係6
先願発明は、模型駒が移動され、模型駒が所定のエリア内にそのエリア外から入った場合に模型駒に向けて投影する画像を作成するものであり、投影する画像が、模型駒に向けて投影されるという効果は、模型駒が所定のエリア内にそのエリア外から入ったという条件について判断された結果に基づいて発動されることとなる。
ここで、上記対応関係1乃至5を考慮すれば、先願発明において、記憶された種別及び個別条件に該当する場合に投影する画像を作成することは、本願発明にいう「条件判断手段による判断結果に基づいて、識別情報入力手段によって入力される識別情報によって識別されるゲームアイテム又はゲームキャラクタの効果発動を制御する効果発動制御手段」といえるものである。

・一致点
よって、本願発明及び先願発明は、
「外的にゲームアイテム又はゲームキャラクタをゲームに登場させるため、該ゲームアイテム又はゲームキャラクタを識別する識別情報を入力する識別情報入力手段と、
プレイヤの操作対象であるプレイヤゲームキャラクタのパラメータを現在ゲーム状況として取得する現在ゲーム状況取得手段と、
識別情報に対応づけて効果発動条件を記憶する効果発動条件記憶手段と、
前記現在ゲーム状況取得手段によって取得される現在ゲーム状況が、前記識別情報入力手段によって入力される識別情報に対応づけて前記効果発動条件記憶手段に記憶される効果発動条件を満足するか、を判断する条件判断手段と、
該条件判断手段による判断結果に基づいて、前記識別情報入力手段によって入力される識別情報によって識別されるゲームアイテム又はゲームキャラクタの効果発動を制御する効果発動制御手段と、
を含むゲーム装置。」
である点で一致し、相違するところはない。

第4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願明細書に記載された発明者と同一であるとも、この出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-13 
結審通知日 2006-12-19 
審決日 2007-01-05 
出願番号 特願2001-213753(P2001-213753)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 161- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 植野 孝郎
宮本 昭彦
発明の名称 ゲーム装置、ゲーム制御方法及びプログラム  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  

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