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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1152754
審判番号 不服2004-15328  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-22 
確定日 2007-02-22 
事件の表示 平成11年特許願第 88716号「位置測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月13日出願公開、特開2000-283751〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成11年3月30日の出願であって、平成16年6月17日付け(発送日;同月22日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月4日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年8月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年8月4日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】お互いの焦点位置の異なる複数の画像を撮影する複数の画像撮影手段と、
前記複数の撮影手段によって撮影された画像を保持する複数の画像保持手段と、
前記複数の画像保持手段を小領域に分割し小領域毎のアドレスを発生する小領域アドレス計算手段と、
前記小領域アドレス計算手段によって計算された小領域毎の周波数成分を比較する比較手段と、
前記比較手段によって比較された前記複数の画像保持手段の小領域のうち、小領域の周波数成分が最も高い小領域のみ記録する位置格納手段と、
前記位置格納手段に格納された前記小領域の位置情報のうち特定の位置に指定された画像を格納する特定位置画像格納手段とを備えた位置測定装置。
【請求項2】前記特定位置画像格納手段に格納された小領域の画像を転送する画像転送手段を備えた請求項1記載の位置測定装置。
【請求項3】前記特定位置画像格納手段に格納された小領域の画像を圧縮する画像圧縮手段と、
前記画像圧縮手段によって圧縮された画像を保持する圧縮画像保持手段を備えた請求項1記載の位置測定装置。」
を、
「【請求項1】お互いの焦点位置の異なる3枚の画像を撮影する画像撮影手段と、
前記複数の撮影手段によって撮影された画像を保持する複数の画像保持手段と、
前記複数の画像保持手段を小領域に分割し小領域毎のアドレスを発生する小領域アドレス計算手段と、
前記小領域アドレス計算手段によって計算された小領域毎の周波数成分を比較する比較手段と、
前記比較手段によって比較された前記複数の画像保持手段の小領域のうち、小領域の周波数成分が最も高い小領域のみを記録する位置格納手段と、
前記位置格納手段に格納された前記小領域の位置情報のうち、中間の焦点位置に指定された画像を格納する特定位置画像格納手段とを備えた位置測定装置。
【請求項2】前記特定位置画像格納手段に格納された小領域の画像を転送する画像転送手段を備えた請求項1記載の位置測定装置。
【請求項3】前記特定位置画像格納手段に格納された小領域の画像を圧縮する画像圧縮手段と、
前記画像圧縮手段によって圧縮された画像を保持する圧縮画像保持手段を備えた請求項1記載の位置測定装置。」
と補正する補正事項を含むものである。
なお、アンダーラインは補正箇所を示すために請求人が付したものである。

(2)補正の目的の適合性
前記手続補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である焦点位置の異なる「画像」の数について、「3枚」との限定を付加し、また、「特定位置画像格納手段」に格納される画像を「中間の焦点位置に指定された画像」との限定を付加したものである。
「画像撮影手段」の数については、補正前の「お互いの焦点位置の異なる複数の画像を撮影する複数の画像撮影手段」が、補正後には「お互いの焦点位置の異なる3枚の画像を撮影する画像撮影手段」となって、画像撮影手段から「複数の」との限定が省かれたものとなっているが、「画像保持手段」に関しては、「前記複数の撮影手段によって撮影された画像を保持する複数の画像保持手段」と記載されており、画像保持手段に関する記載を生かして「複数の撮影手段」が存在するものと解すれば、前記手続補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
しかしながら、補正後の「画像撮影手段」の記載を生かして、画像保持手段の記載中「前記複数の撮影手段によって撮影された画像」から、「複数の」との記載を省くべきものと解すれば、前記手続補正は、この点において、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないこととなり、また、明りょうでない記載の釈明、誤記の訂正を目的とするものにも該当しないことは明らかであるから、特許法第17条の2第4項に規定する何れの目的にも該当しない不適法なものとなる。

(3)独立特許要件
そこで、一応、前記手続補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした上で、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について、それが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)を検討する。

(3-1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された出願前に頒布された刊行物である特開平9-145318号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a.「【請求項1】 外部から焦点が設定される光学系を有し、かつ既知の位置からその光学系を介して立体を2次元の像としてとらえてその像を示す画像情報を生成するカメラ11と、
前記焦点を可変して設定しつつ前記カメラ11によって生成された画像情報を取り込み、その画像情報の形式の下で前記像を示す個々の画素について、隣接する隣接画素とのコントラストが極大となる焦点を求める可変合焦手段13と、
前記個々の画素について、前記可変合焦手段13によって求められた焦点の下で前記光学系がその画素に位置する像点に対して有する物点の位置を求める物点位置算出手段15とを備えたことを特徴とする三次元計測装置。」(【特許請求の範囲】)
b.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、物体を光学的にとらえてその物体の三次元における形状や位置を計測する三次元計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】測量、工業その他にかかわる自動化および監視の分野では、地形や立体の形状あるいは位置をこれらに物理的に触れることなく精度よく計測することが要求される。図16は、従来の三次元計測装置の構成例を示す図である。
【0003】図において、三次元計測装置は、縦続接続された電子カメラ180とパーソナルコンピュータ190とから構成される。電子カメラ180では、レンズ181の光軸の上にそのレンズに対向して撮像素子182が配置され、その光軸の中間には板状の主ミラー183がファインダ184の開口に対して傾斜し、かつそのファインダの一端を軸として回動可能に軸止される。主ミラー183の面の内、撮像素子182の撮像面に対向する面には副ミラー185が立設され、レンズ181の光軸に対してその副ミラー185が形成する反射路の上にはリニアセンサ186が配置される。レンズ181にはそのレンズの位置を光軸に沿って可変するピント移動機構187が備えられ、そのピント移動機構の制御入力には制御部188の第一の出力が接続される。撮像素子182、リニアセンサ186の出力は制御部188の対応する入力に接続され、その制御部のバス端子はメモリ189のバス端子に接続される。制御部188の第二の出力は、パーソナルコンピュータ190の外部端子に接続される。
【0004】このような構成の三次元計測装置では、計測の対象となる立体(ここでは、簡単のため「三角錐」とする。)の光学像については、そのエネルギーの大部分がレンズ181および主ミラー183の反射面を介してファインダ184に到達し、その他のエネルギーがその主ミラー183を透過し、かつ副ミラー185の反射面を介してリニアセンサ186に到達する。リニアセンサ186は、図17に示すように撮像素子182の撮像面の中央部に光学的に対応するスリット状の形状の受光面を有し、その中央部の光量を画素単位に検出する。
【0005】制御部188は、ピント移動機構187を介してレンズ181の位置を被写体に最も近い位置に設定し、かつ上述したようにリニアセンサ186を介して画素単位に検出された光量に基づいてこれらの画素のコントラストを検出しながら、そのピント移動機構を介してレンズ181の位置を順次ファインダ184に近い位置に可変する。このようにして検出されるコントラストは、一般に、図18に示すように、レンズ181の位置(ピント)に応じて変化するので、制御部188は、そのコントラストが極大となる合焦点にレンズ181が到達したときに、ピント移動機構187を介してそのレンズの移動を制止する。
【0006】さらに、制御部188は図示されない可動機構を介して主ミラー183をファインダ184の方向に跳ね上げ、上述した光学像は、図19に示すように、撮像素子182の撮像面に結像する。制御部188は、このようにして結像した光学像を示す画素値の列を撮像素子182から取得してメモリ189に保持し、かつ主ミラー183を元の位置に戻すと共に、その保持された画素値の列を所定の形式の画像情報に変換してパーソナルコンピュータ190に与える。パーソナルコンピュータ190は、その画像情報をディスプレイの画面に画像として表示する。」
c.「【0034】電子カメラ70では、制御部71は、計測の開始が要求されるとピント移動機構187を介してレンズ181の焦点位置を被写体に最も近い位置(ここでは、簡単のため、図12に示すように、撮像素子182の撮像面に対する相対距離D1で与えられるものとする。)に設定し(図6<1>)(当審注;公報中においては、丸付き数字の「1」が使用されているが、以下においては、<1>で置き換えることとする。他の数字についても同様。)、かつ撮像素子182によって得られた被写体の光学像を示す画素値(ここでは、簡単のため輝度のみを示すものとする。)の列をその相対距離D1に対応付けてメモリ189に格納する(図6<2>)。さらに、制御部71は、このようにしてメモリ189に格納された画素値の列および相対距離を読み出してパーソナルコンピュータ72に向けて送出する(図6<3>)。
【0035】また、制御部71は、このような送出を完了すると、予め決められた距離(ここでは、簡単のため、レンズ181の被写界深度に等しいものとする。)に渡って撮像素子182の撮像面に近い方向に、レンズ181の焦点位置をピント移動機構187を介して可変することにより、そのレンズの焦点位置を図12に示す相対距離D2で与えられる位置に更新する(図6<4>)。さらに、制御部71は、撮像素子182によって得られた画素値の列を同様にして相対距離D2に対応付けてメモリ189に格納した後に、その画素値の列および相対距離を読み出してパーソナルコンピュータ72に向けて送出し、以下、同様にして相対距離を図11に示すD3?D6に順次設定して同様の処理を反復する。なお、以下では、上述した画素値の列は、個々の画素について画素値と撮像素子182の撮像面における位置を示す座標(ここでは、簡単のため直交座標とする。)とが対応づけられてなるものとする。
【0036】一方、パーソナルコンピュータ72では、電子カメラ70から送出された画素値の列および相対距離を順次取り込み、その画素値の列については個々の相対距離に対応付けて複数画面メモリ811 に格納する(図7<1>)と共に、これらの相対距離については距離メモリ911 に同様にして格納する(図7<2>)。ところで、このようにして複数画面メモリ811 に格納された画素値の列で示される像については、これらの相対距離D1?D6において、それぞれ図12(a)?(f) に示すように、実線で描かれた合焦部分以外の領域は斜線で示すように低いコントラストで得られる。
【0037】パーソナルコンピュータ72は、相対距離D1?D6に対応した画素値の列について上述した複数画面メモリ811 および距離メモリ911 に対する格納の処理が完了すると、その複数画面メモリに格納された画素の内、撮像素子182の撮像面における絶対位置が同じである個々の画素について、図13(a)?(c)に示すように、その撮像面の上で隣接する画素(ここでは、簡単のため8個の画素とする。)との画素値の差分を相対距離D1?D6に対応付けて順次算出する(図7<3>)。さらに、パーソナルコンピュータ72は、その差分の個々について、相対距離D1?D6の内、値が最大となる相対距離を求める(図7<4>)。また、パーソナルコンピュータ72は、このような相対距離と該当する画素の座標とに併せて、これらに対応して複数画面メモリ811 に格納された画素値とを相互に対応付けて合焦メモリ101に格納する(図7<5>)。
【0038】さらに、パーソナルコンピュータ72は、撮像素子182の撮像面を構成する全ての画素について上述した演算手順に基づいて合焦メモリ101に対する記録を完了すると、その合焦メモリに相対距離および座標に対応付けられて記録された個々の画素値について、その相対距離および座標に位置する像点に対する物点の位置をそのレンズ181に予め与えられた光学的パラメータに基づいて算出する(図7<6>)。
【0039】このように本実施形態によれば、複数の焦点位置の下で個別に得られた像に基づいて、画素単位にコントラストが極大となる焦点位置と光学系の既知の構成とに基づいて立体の位置や形状が非接触で確実に得られる。・・・」

(3-2)対比・判断
引用刊行物の上記「(3-1)」「a.」?「c.」の記載から、以下のことが読み取れる。
・三次元計測装置において、電子カメラ70のレンズ181の焦点位置が変更可能となっており、撮像データを得る際のレンズ181の各焦点位置が、電子カメラ70の撮像素子182の撮像面に対する相対距離D1?D6で与えられること。
・個々の画素について、撮像素子182の撮像面における画素の座標と画素値(例えば、輝度)とが対応付けられており、画素値の列が、各相対距離D1?D6毎に複数画面メモリ811に格納されること。
・複数画面メモリ811に格納されている各画素値の列における、撮像素子182の撮像面における座標が同じである各画素について、パーソナルコンピュータ72により、各相対距離D1?D6毎に、撮像面において隣接する画素とのコントラストを算出し、撮像面における各画素についてコントラストが最大となる相対距離D1?D6を求めること。また、コントラストが最大となる相対距離とは、【従来の技術】に関する段落【0005】の「リニアセンサ186を介して画素単位に検出された光量に基づいてこれらの画素のコントラストを検出しながら、そのピント移動機構を介してレンズ181の位置を順次ファインダ184に近い位置に可変する。このようにして検出されるコントラストは、一般に、図18に示すように、レンズ181の位置(ピント)に応じて変化するので、制御部188は、そのコントラストが極大となる合焦点にレンズ181が到達したときに、ピント移動機構187を介してそのレンズの移動を制止する。」との記載からみて、相対距離D1?D6の中で合焦の程度が最も高いものを意味すると解されること。
・撮像素子182の撮像面における全ての画素について、画素の座標毎に、その画素のコントラストが最大となる(即ち、合焦の程度が最も高い)相対距離D1?D6、及びその画素の画素値が合焦メモリ101に格納されること。
したがって、上記引用刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「撮像素子182の撮像面に対する各相対距離D1?D6に対応する複数の焦点位置において画像を撮像する電子カメラ70と、
電子カメラ70によって撮像された画像を、撮像素子182の撮像面における画素の座標と対応付けられた輝度等の画素値の列として各相対距離D1?D6毎に格納する複数画面メモリ811と、
複数画面メモリ811に格納されている各画素値の列における、撮像素子182の撮像面における座標が同じである各画素について、各相対距離D1?D6毎に、撮像面において隣接する画素とのコントラストを算出し、撮像面における各画素について合焦の程度が最も高いコントラストが最大となる相対距離D1?D6を求めるパーソナルコンピュータ72と、
撮像素子182の撮像面における全ての画素について、画素の座標毎に、その画素の合焦の程度が最も高いコントラストが最大となる相対距離D1?D6、及びその画素の画素値を格納する合焦メモリ101とを備えた三次元計測装置。」

本願補正発明(前者)と上記引用発明(後者)とを対比する。
・後者の「撮像素子182の撮像面に対する各相対距離D1?D6に対応する複数の焦点位置において画像を撮像する電子カメラ70」は、前者の「お互いの焦点位置の異なる3枚の画像を撮影する画像撮影手段」と、「お互いの焦点位置の異なる複数の画像を撮影する画像撮影手段」である点で共通する。
・後者の「電子カメラ70によって撮像された画像を、撮像素子182の撮像面における画素の座標と対応付けられた輝度等の画素値の列として各相対距離D1?D6毎に格納する複数画面メモリ811」は、前者の「前記複数の撮影手段によって撮影された画像を保持する複数の画像保持手段」と、前記対応関係も勘案すれば、「前記撮影手段によって撮影された画像を保持する複数の画像保持手段」である点で共通する。
・後者の「複数画面メモリ811に格納されている各画素値の列における、撮像素子182の撮像面における座標が同じである各画素について、各相対距離D1?D6毎に、撮像面において隣接する画素とのコントラストを算出し、撮像面における各画素について合焦の程度が最も高いコントラストが最大となる相対距離D1?D6を求めるパーソナルコンピュータ72」は、複数画面メモリ811に格納されている各相対距離D1?D6毎の各画素値の列の各画素で撮像面において同一の座標値を有するものについて、各相対距離D1?D6の中から合焦の程度が最も高い相対距離に相当する焦点位置を求めるものであり、また、画素1つで構成される領域を小領域ということもできるから、前者の「複数の画像保持手段を小領域に分割し小領域毎のアドレスを発生する小領域アドレス計算手段」及び「小領域アドレス計算手段によって計算された小領域毎の周波数成分を比較する比較手段」と、前記対応関係も勘案すれば、「小領域に分割され各小領域にアドレスが付与された複数の画像保持手段に対して、小領域毎のアドレスを指定し、指定された小領域毎の合焦の程度を比較するアドレス指定・比較手段」である点で共通する。
・後者の「撮像素子182の撮像面における全ての画素について、画素の座標毎に、その画素の合焦の程度が最も高いコントラストが最大となる相対距離D1?D6、及びその画素の画素値を格納する合焦メモリ101」は、前者の「比較手段によって比較された複数の画像保持手段の小領域のうち、小領域の周波数成分が最も高い小領域のみを記録する位置格納手段」と、前記対応関係も勘案すれば、「アドレス指定・比較手段によって比較された複数の画像保持手段の小領域のうち、合焦の程度が最も高い小領域のみを記録する位置格納手段」である点で共通する。
・後者の「三次元計測装置」は、その計測により三次元空間の位置を得るものであるから、「位置測定装置」といえるものである。
以上より、両者は、
「お互いの焦点位置の異なる複数の画像を撮影する画像撮影手段と、
前記撮影手段によって撮影された画像を保持する複数の画像保持手段と、
小領域に分割され各小領域にアドレスが付与された複数の画像保持手段に対して、小領域毎のアドレスを指定し、指定された小領域毎の合焦の程度を比較するアドレス指定・比較手段と、
前記アドレス指定・比較手段によって比較された複数の画像保持手段の小領域のうち、合焦の程度が最も高い小領域のみを記録する位置格納手段とを備えた位置測定装置。」
の点の構成で一致し、以下の各点で相違する。
[相違点1]
前者が、お互いの焦点位置の異なる3枚の画像を撮影する複数の画像撮影手段を備えているのに対し、後者には、この点の記載がない点。
[相違点2]
前者が、複数の画像保持手段を小領域に分割し小領域毎のアドレスを発生する小領域アドレス計算手段と、前記小領域アドレス計算手段によって計算された小領域毎の周波数成分を比較する比較手段とを備え、また、小領域の周波数成分が最も高い小領域のみを記録する位置格納手段を備えているのに対し、後者は、アドレス計算手段を設けるとの記載がなく、合焦の程度の比較を、相対距離D1?D6の同一アドレスの画素についてそれぞれ隣接する画素とのコントラストを求めて行っており、また、合焦メモリ101は、コントラストが最大となる相対距離D1?D6の外に画素値を格納している点。
[相違点3]
前者が、中間の焦点位置に指定された画像を格納する特定位置画像格納手段を備えているのに対し、後者には、この点の記載がない点。

そこで、上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
焦点位置を、近距離、中距離、遠距離の3種とし、また、複数の撮影手段により撮影を行うことは、例えば、特開平4-10777号公報[5ページ左下欄11行?18行に「第13図の実施例では撮像素子41,撮像素子42,撮像素子43をレンズ40の光軸上に位相差を持たせて取り付けてある。各々の撮像素子にはハーフミラー44,45,46を用いて同一の被写体像を結像する。この時、撮像素子41は近景に最良焦点となる位置、撮像素子42は中景、撮像素子43は遠景に最良焦点となるように取り付ける。」と記載されている。)、特開平10-290389号公報[【特許請求の範囲】に「【請求項1】 画像撮影手段によって取得した画像に基づいてマルチフォーカス画像を作成するマルチフォーカス画像作成方法であって、異なる画像深度でフォーカスが合っている同一撮影範囲の画像を複数取得する画像取得ステップと、取得した各画像からフォーカスが合っている部分画像を抽出する抽出ステップと、抽出した部分画像を合成して前記撮影範囲を再合成しマルチフォーカス画像を作成する作成ステップと、を含むことを特徴とするマルチフォーカス画像作成方法。【請求項2】 請求項1記載の方法において、前記画像取得ステップは、画像撮影手段のレンズのフォーカス位置を順次移動して、異なる画像深度でフォーカスの合った画像を複数取得することを特徴とするマルチフォーカス画像作成方法。【請求項3】 請求項1記載の方法において、前記画像取得ステップは、さらに、画像撮影手段に入射した画像を分光手段によって複数方向に投射にする分離投射ステップと、分離投射された個々の画像を異なる光路距離に配置された画像取得手段上で結像させ異なる画像深度でフォーカスの合った画像を取得する取得ステップと、を含むことを特徴とするマルチフォーカス画像作成方法。」と記載され、また、明細書の段落【0015】に「ここで、前記分光手段は、例えばハーフミラーとプリズムを組み合わせたもので、例えば3方向に像を投射するもので、画像取得手段は近景、中景、遠景等それぞれの位置で部分的にフォーカスが合っている画像を取得する。なお、前記分光手段の分光数は任意であり、また分光手段と画像取得手段との距離も任意に調整可能である。」と記載されている。]に示されるように従来周知の事項と認められ、このような周知の事項を引用発明に適用して相違点1に係る構成とすることは、当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。
[相違点2]について
各焦点距離で撮像したそれぞれの画面について、その画像エリアを小領域に分割してそれぞれにアドレスを付与するとともに、同一のアドレスを有する小領域について合焦の度合いを比較し、合焦の程度が最も高い画面のコードを、各小領域毎に記憶手段に格納しておくことは、例えば、特開平1-160262号公報[4ページ右上欄1行?20行に「次に各面の512×512画素からなる画像エリアを例えば8×8画素単位の小エリアに分割したときの各小エリア内の微分値のピーク値を、数値データとして64×64アドレスからなるメモリマップ内に登録する。・・・次にn面の64×64アドレスの同一位置にある小エリアごとに、n面中最も大きい微分ピーク値を有する画面を比較検出する・・・そしてその画面コードを合焦エリアマツプメモリ26に各小エリアごとに登録する。このような操作を64×64アドレスのすべてについて行うことによつて、合焦エリアマツプが生成される・・・その後画像合成回路27において、合焦エリアマツプメモリ26によつて指定されるアドレスと画面コードによつて、登録された画面コードに対応する原画像メモリ23におけるフレームメモリからアドレスに応じた小エリアを抽出し、合成画像メモリ28に書き込む。」と記載されている。]に示されるように従来周知であり、また、各焦点位置における画像の合焦の程度を、各画像の同位置の領域の周波数の比較により判定することも、例えば、特開平3-80676号公報[特許請求の範囲に「撮影像を水平方向及び垂直方向のそれぞれについて適宜な数に区分し、分割されたそれぞれの領域における映像情報及び映像の高周波成分情報を抽出する撮影部と、上記撮影部が送出する一又は複数の撮影像におけるそれぞれの領域の映像情報及び高周波成分情報を一又は複数の撮影像毎に記憶する記憶部と、・・・撮影像が複数である場合には各撮影像における同位置に存在する上記領域における高周波成分情報を比較し、最も高周波成分情報の大きい映像情報をその位置の領域における映像情報とし、この動作を繰り返する(当審注;「繰り返す」の誤記と認められる。)ことで一画面を形成し、・・・特徴とする電子パンフォーカス装置。」と記載されている。]、特開平4-344415号公報[明細書に「【0008】つぎに、上記構成の動作について説明する。撮像装置1は、焦点距離調整回路2を介して、撮像対象である物体に対して各フレーム毎に焦点距離を変化させ、数?数十フレームの映像を撮像する。撮像された信号は高域周波数成分エネルギー検出回路3に入力されて、各フレーム毎に局所的に、あるいは小領域に分割されて高域周波数成分エネルギーが検出される。・・・【0010】一般に、レンズを用いた撮像装置1においては、焦点距離が合った状態で最も多くの高域周波数成分エネルギーが検出される。すなわち、各小領域において、最も多くの高域周波数成分エネルギーの検出されたフレームの焦点距離が、その小領域における物体までの距離を示すことになる。【0011】上記形状測定回路4は、上記焦点距離調整回路2を介して撮像装置1の焦点距離を変化させるとともに、高域周波数成分エネルギー検出回路3から小領域毎の高域周波数成分エネルギーを受け取ることにより、撮像対象物体の3次元形状の測定を実施することなる。例えば、図2の例では、ピラミッド状(四角錘状)の物体を上から見たような3次元形状が測定されたことになる。」と記載されている。]に示されるように従来周知の事項と認められるから、このような周知の事項を引用発明に適用して相違点2に係る構成とすることは、当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。
[相違点3]について
同一のシーンを焦点距離を変えて撮像した複数枚の画像から、各焦点位置の合焦画像を抽出することは、例えば、前記特開平4-10777号公報[3ページ右上欄2行?14行に「第2図を用いて本発明の概念を説明する。・・・画像1および画像2は同一のシーンをそれぞれ最良焦点位置を変えて撮像した2枚の画像を示している。・・・これら2枚の画像から各々最良焦点位置の画像を選択的に抽出し画像を合成することで、近景、遠景共に最良焦点の画像を得ることが出来る。」と記載されている。]、前記特開平10-290389号公報[前記【特許請求の範囲】の記載参照。]に示されるように従来周知であり、また、特定の合焦位置にある画像部分を抽出して目標とする画像を得ることも、例えば、特開平1-173179号公報[「特許請求の範囲」に「・・・情景画像中のピントが合つている部分とピントが外れている部分とを識別する識別装置と、前記識別装置による識別の結果、前記情景画像中で前記ピントが外れていると判定された部分の画像を除去し、前記ピントが合つていると判定された部分の画像のみを抽出する抽出装置を備え・・・目標画像抽出方式。」と記載されている。]に示されるように従来周知であり、抽出の対象を中間の焦点距離に指定された画像とする点にも、格別の特徴は認められない。さらに、指定された領域の画像を画像格納手段に格納することも、前記特開平1-160262号公報の「登録された画面コードに対応する原画像メモリ23におけるフレームメモリからアドレスに応じた小エリアを抽出し、合成画像メモリ28に書き込む。」との記載等からみて、従来から普通に行われている周知のことと認められる。
そうすると、上記のような従来周知の事項を勘案すれば、このような周知の事項を引用発明に適用して相違点3に係る構成とすることは、当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。

そして、本願補正発明による効果も、上記引用刊行物の記載及び周知事項から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、特許法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年8月4日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成16年5月13日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、前記「2.」の補正前の請求項1に記載のとおりのものである。

4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載事項は、前記「2.(3-1)」に記載したとおりのものである。

5.対比・判断
本願の請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3-2)」に記載したとおり、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明も、同様の理由により、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-18 
結審通知日 2006-12-19 
審決日 2007-01-09 
出願番号 特願平11-88716
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 卓弥大和田 有軌  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 小川 浩史
下中 義之
発明の名称 位置測定装置  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  
代理人 岩橋 文雄  

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