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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1152767
審判番号 不服2004-249  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-05 
確定日 2007-02-19 
事件の表示 特願2001- 78240「電子商取引の方法及び電子商取引システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月27日出願公開、特開2002-279270〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年3月19日の出願であって、平成15年12月2日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成16年1月30日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年1月30日付の手続補正について
(1)補正の内容
平成16年1月30日付の手続補正(以下「本件補正」という。)により、請求項1は、
「商品の販売に際し所定の割引率を適用する商品販売者側に設置される販売者コンピュータと、該販売者コンピュータと通信回線を介して接続され、上記商品の購入申込み者側に設置される複数の申込者コンピュータとにより行う電子商取引の方法において、
上記販売者コンピュータが、上記商品の割引率で100を除し、その計算値が整数でないときは整数化することによって、単位商品群として扱う上記商品の個数を算出するステップと、
上記販売者コンピュータが、上記単位商品群1つ当たり商品1個が無料で他の商品は割引前の値段で販売するという条件を上記通信回線を介して上記申込者コンピュータに送信するステップと、
上記販売者コンピュータが上記通信回線を介して上記申込者コンピュータから上記商品の購入申込みを受け付けるステップと、
受け付けた申込み数を上記販売者コンピュータがカウントするステップと、
上記申込みの数が単位商品群を構成する商品の数に達したときに上記販売者コンピュータが申込み者の中から購入代金が無料となる者を抽選するステップと、
上記販売者コンピュータが上記通信回線を介して、抽選に当たった者の申込み者コンピュータに抽選に当たったことを通知し、抽選に外れた者の申込み者コンピュータに抽選に外れたことを通知するステップと
を備えたことを特徴とする電子商取引の方法。」
と補正された。
また、本件補正により、請求項2は、
「商品の販売に際し所定の割引率を適用する商品販売者側に設置される販売者コンピュータと、該販売者コンピュータと通信回線を介して接続され、上記商品の購入申込み者側に設置される複数の申込者コンピュータと、上記販売者コンピュータと通信回線を介して接続され、カード決済会社に設置されるカード決済コンピュータとにより行う電子商取引の方法において、
上記販売者コンピュータが、上記商品の割引率で100を除し、その計算値が整数でないときは整数化することによって、単位商品群として扱う上記商品の個数を算出するステップと、
上記販売者コンピュータが、上記単位商品群1つ当たり商品1個が無料で他の商品は割引前の値段で販売するという条件を上記通信回線を介して上記申込者コンピュータに送信するステップと、
上記販売者コンピュータが上記商品の購入申込みを上記通信回線を介して上記申込者コンピュータから受け付けるステップと、
上記販売者コンピュータが、上記申込者コンピュータからの申込み者の情報に基づき上記カード決済コンピュータに上記通信回線を介して与信照会をするステップと、
上記販売者コンピュータが、上記通信回線を介して上記カード決済コンピュータから与信承認された特定申込み者の受付けを受理するステップと、
上記販売者コンピュータが上記特定申込み者の中から購入代金が無料となる者を抽選するステップと、
上記販売者コンピュータが上記カード決済コンピュータに上記通信回線を介して、抽選に外れた特定申込み者の決済を指示するステップと、
上記販売者コンピュータが上記通信回線を介して、抽選に当たった者の申込み者コンピュータに抽選に当たったことを通知し、抽選に外れた者の申込み者コンピュータに抽選に外れたことを通知するステップと
を備えたことを特徴とする電子商取引の方法。」
と補正された。
また、本件補正により、請求項3は、
「商品の販売に際し所定の割引率を適用する商品販売者側に設置される販売者コンピュータと、該販売者コンピュータと通信回線を介して接続され、上記商品の購入申込み者側に設置される複数の申込者コンピュータと、上記販売者コンピュータと通信回線を介して接続され、カード決済会社に設置されるカード決済コンピュータとにより行う電子商取引の方法において、
上記販売者コンピュータが、上記商品の割引率で100を除し、その計算値が整数でないときは整数化することによって、単位商品群として扱う上記商品の個数を算出するステップと、
上記販売者コンピュータが、上記単位商品群1つ当たり商品1個が無料で他の商品は割引前の値段で販売するという条件を上記通信回線を介して上記申込者コンピュータに送信するステップと、
上記販売者コンピュータが上記商品の購入申込みを上記通信回線を介して上記申込者コンピュータから受け付けるステップと、
上記販売者コンピュータが、上記申込者コンピュータからの申込み者の情報に基づき上記カード決済コンピュータに上記通信回線を介して与信照会をするステップと、
上記販売者コンピュータが、上記通信回線を介して上記カード決済コンピュータから与信承認された特定申込み者の受付けを受理するステップと、
上記販売者コンピュータが上記カード決済コンピュータに上記通信回線を介して上記特定申込み者の決済を指示するステップと、
上記販売者コンピュータが上記特定申込み者の中から購入代金が無料となる者を抽選するステップと、
上記販売者コンピュータが、抽選に当たった決済済みの特定申込み者に対する決済代金の返金を上記通信回線を介して上記カード決済コンピュータに指示するステップと
を備えたことを特徴とする電子商取引の方法。」
と補正された。
さらに、本件補正により、請求項4は、
「商品の販売に際し所定の割引率を適用する商品販売者側に設置される販売者コンピュータと、該販売者コンピュータと通信回線を介して接続され、上記商品の購入申込み者側に設置される複数の申込者コンピュータと、上記販売者コンピュータと通信回線を介して接続され、カード決済会社に設置されるカード決済コンピュータとを備えた電子商取引システムにおいて、
上記販売者コンピュータは、上記商品の割引率で100を除し、その計算値が整数でないときは整数化することによって、単位商品群として扱う上記商品の個数を算出する手段と、
上記単位商品群1つ当たり商品1個が無料で他の商品は割引前の値段で販売するという条件を上記通信回線を介して上記申込者コンピュータに送信する手段と、
上記申込者コンピュータから上記通信回線を介して上記商品の購入申込みを所定の期間内に受け付ける手段と、
上記申込者コンピュータからの申込み者の情報に基づき上記カード決済コンピュータに上記通信回線を介して与信照会を行う手段と、
上記カード決済コンピュータに与信承認された特定申込み者の中から購入代金が無料となる者を抽選する手段と、抽選に外れた特定申込み者の決済を上記カード決済コンピュータに上記通信回線を介して行う手段と、
各特定申込み者の申込者コンピュータに上記通信回線を介してその抽選結果を通知する手段と
を有することを特徴とする電子商取引システム。」
と補正された。

(2)補正の目的について
本件補正は、「申込者コンピュータ」の事項に「複数の」の記載を付加する補正(以下「補正事項a」という。)と、「条件で上記通信回線を介して上記商品の購入希望を募集する」との事項を「条件を上記通信回線を介して上記申込者コンピュータに送信する」に変更する補正(以下「補正事項b」という。)を含む。
補正事項aを検討すると、補正前の請求項1-3の「上記販売者コンピュータが上記通信回線を介して、抽選に当たった者の申込み者コンピュータに抽選に当たったことを通知し、抽選に外れた者の申込み者コンピュータに抽選に外れたことを通知する」や請求項4の「上記カード決済コンピュータに与信承認された特定申込み者の中から購入代金が無料となる者を抽選する手段と、抽選に外れた特定申込み者の決済を上記カード決済コンピュータに上記通信回線を介して行う手段」などの記載からみて、補正前の請求項1-4に係る発明においても、複数の申込者コンピュータが通信回線に接続されていることは自明な事項であると認められるので、補正事項aは、自明な事項を単に明記したものにすぎず、補正前の請求項1に記載された事項の内容を実質的に補正するものとは認められない。
次に、補正事項bを検討すると、補正事項bは、原査定の拒絶の理由2で指摘した補正前の請求項1-4の明りょうでない記載を補正することを目的とするものであるので、特許法第17条の2第4項第4号に掲げられた明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(3)まとめ
以上のとおり、本件補正は、全体として、特許法第17条の2第4項第4号に掲げられた明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当するので、適法になされた補正と認められる。

3.原査定の拒絶の理由の概要
平成15年7月17日付の拒絶理由通知及び平成15年12月2日付の拒絶査定の内容からみて、原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
(1)理由1(特許法第29条第1項柱書)
「募集する」等が「人の行う処理」であると認められ、「人の行う処理」は人間の精神活動により実行されるものであるから、この発明は全体として自然法則を利用しているとは言えず、特許法上の「発明」に該当しないものと認められる。
なお、仮に「募集する」等がコンピュータの処理で有ったとしても、果たすべき機能を単に「ステップ」「手段」等として表現したものであって、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的な手段として構成されているものとは認められないから、請求項1-4に係る「発明」は、自然法則を利用した技術的思想の創作とは認められない。
したがって、請求項1-4に係る発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。

(2)理由2(同第36条第6項第2号)
請求項1-3に記載された「処理方法」の各処理が不明確である。
「算出する」「受け付ける」「抽選する」「与信照会する」「決済を・・行う」「指示」等の処理は、具体的に如何なる構成による如何なる処理であるのか不明確である。
補正後の請求項4においても、機能により物を特定しようとする記載であるが該記載では、各々の機能を有する具体的な物を容易に想定できないので、請求項4の発明は明確ではない。
したがって、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(3)理由3(同第36条第4項)
発明の詳細な説明の記載には、システムが有する各々の機能が概略的に記載されているものの、該機能を実現するために、ソフトウエア及びハードウエアがどのように構成されているのかが記載されておらず、不明確である。
したがって、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

(4)理由4(同第29条第2項)
この出願の請求項1-4に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧

1.小出裕明,Webショップ開店マニュアル2000,
株式会社工学社,2000年 8月20日,初版,p.70-76
2.特開平09-319970号公報
3.特開平09-251558号公報

4.上記拒絶の理由1について
請求項1に係る発明における各ステップを「販売者コンピュータ」というコンピュータが実行しているので、請求項1に係る発明は、その発明の実施にソフトウエアを必要とするところの、コンピュータ・ソフトウエア関連発明である。
そして、こうしたソフトウエアを利用するソフトウエア関連発明が、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるためには、発明はそもそもが一定の技術的課題の解決手段になっていなければならないことから、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって、所定の技術的課題を解決できるような特有の構成が具体的に提示されている必要があるというべきである。
そこで、請求項1に記載された事項を便宜上以下のとおり分けて、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって所定の技術的課題を解決できるような特有の構成が具体的に提示されているかどうか順次検討する。なお、「申込み者コンピュータ」は「申込者コンピュータ」の誤記であることは明らかであるので、「申込み者コンピュータ」を「申込者コンピュータ」とした。
(a)「商品の販売に際し所定の割引率を適用する商品販売者側に設置される販売者コンピュータと、該販売者コンピュータと通信回線を介して接続され、上記商品の購入申込み者側に設置される複数の申込者コンピュータとにより行う電子商取引の方法において、」
(b)「上記販売者コンピュータが、上記商品の割引率で100を除し、その計算値が整数でないときは整数化することによって、単位商品群として扱う上記商品の個数を算出するステップと、」
(c)「上記販売者コンピュータが、上記単位商品群1つ当たり商品1個が無料で他の商品は割引前の値段で販売するという条件を上記通信回線を介して上記申込者コンピュータに送信するステップと、」
(d)「上記販売者コンピュータが上記通信回線を介して上記申込者コンピュータから上記商品の購入申込みを受け付けるステップと、」
(e)「受け付けた申込み数を上記販売者コンピュータがカウントするステップと、」
(f)「上記申込みの数が単位商品群を構成する商品の数に達したときに上記販売者コンピュータが申込み者の中から購入代金が無料となる者を抽選するステップと、」
(g)「上記販売者コンピュータが上記通信回線を介して、抽選に当たった者の申込者コンピュータに抽選に当たったことを通知し、抽選に外れた者の申込者コンピュータに抽選に外れたことを通知するステップとを備えたことを特徴とする電子商取引の方法。」

上記(a)の記載について検討すると、ハードウエア資源として、「販売者コンピュータ」、「複数の申込者コンピュータ」及び「通信回線」が記載されているものの、それらのハードウエア資源の動作について記載されていないので、上記(a)の記載は、販売者コンピュータと申込者コンピュータとの接続関係を特定しているにすぎず、上記(a)の記載では、販売者コンピュータが実行する電子商取引の方法の処理にハードウエア資源がどのように用いられたか具体的に提示されていないと認められる。

上記(b)の記載について検討すると、ハードウエア資源については記載されておらず、上記(b)の記載は、販売者コンピュータの機能を単に「上記商品の割引率で100を除し、その計算値が整数でないときは整数化することによって、単位商品群として扱う上記商品の個数を算出する」に特定しているにすぎないので、上記(b)の記載では、上記商品の割引率で100を除し、その計算値が整数でないときは整数化することによって、単位商品群として扱う上記商品の個数の算出する処理にハードウエア資源がどのように用いられたか具体的に提示されていないと認められる。

上記(c)の記載について検討すると、ハードウエア資源として「通信回線」及び「申込者コンピュータ」が記載されているが、条件を送信する伝送路を「通信回線」に特定し、商品の購入申込み元を特定しているにすぎず、上記(c)の記載は、販売者コンピュータの機能を単に「上記単位商品群1つ当たり商品1個が無料で他の商品は割引前の値段で販売するという条件を上記通信回線を介して上記申込者コンピュータに送信する」に特定しているにすぎないので、上記(c)の記載では、上記単位商品群1つ当たり商品1個が無料で他の商品は割引前の値段で販売するという条件を申込者コンピュータに送信する処理にハードウエア資源がどのように用いられたか具体的に提示されていないと認められる。

上記(d)の記載を検討すると、ハードウエア資源として「通信回線」が記載されているが、商品の購入申込みの伝送路を「通信回線」に限定しているにすぎず、上記(d)の記載は、販売者コンピュータの機能を単に「上記通信回線を介して上記申込者コンピュータから上記商品の購入申込みを受け付ける」に特定しているにすぎないので、上記(d)の記載では、上記通信回線を介して上記申込者コンピュータから上記商品の購入申込みを受け付ける処理にハードウエア資源がどのように用いられたか具体的に提示されていないと認められる。

上記(e)の記載について検討すると、ハードウエア資源として何ら記載されておらず、上記(e)の記載は、販売者コンピュータの機能を単に「受け付けた申込み数をカウントする」に特定しているにすぎないので、上記(e)の記載では、受け付けた申込み数をカウントする処理にハードウエア資源がどのように用いられたか具体的に提示されていないと認められる。

上記(f)の記載について検討すると、ハードウエア資源として何ら記載されておらず、上記(f)の記載は、販売者コンピュータの機能を単に「上記申込みの数が単位商品群を構成する商品の数に達したときに申込み者の中から購入代金が無料となる者を抽選する」に特定しているにすぎないので、上記(f)の記載では、上記申込みの数が単位商品群を構成する商品の数に達したときに申込み者の中から購入代金が無料となる者を抽選する処理にハードウエア資源がどのように用いられたか具体的に提示されていないと認められる。

上記(g)の記載を検討すると、ハードウエア資源として「通信回線」及び「申込者コンピュータ」が記載されているが、「抽選に当たったこと」や「抽選に外れたこと」を通知するための伝送路を「通信回路」に特定し、それらの通知先を「申込者コンピュータ」に限定しているにすぎず、上記(g)の記載は、販売者コンピュータの機能を単に「上記通信回線を介して、抽選に当たった者の申込者コンピュータに抽選に当たったことを通知し、抽選に外れた者の申込者コンピュータに抽選に外れたことを通知する」に特定しているにすぎないので、上記(g)の記載では、上記通信回線を介して、抽選に当たった者の申込者コンピュータに抽選に当たったことを通知し、抽選に外れた者の申込者コンピュータに抽選に外れたことを通知する処理にハードウエア資源がどのように用いられたか具体的に提示されていないと認められる。

以上の検討によれば、上記の(b)?(g)の記載の各ステップは形式的には「販売者コンピュータに実行させる」処理をすることになっているものの、それぞれのステップの処理が、ソフトウエアによる情報処理として、「販売者コンピュータ」のハードウエア資源を利用して、どのように実現されるのか、という点に関しては、何ら具体的に記載されておらず、かつ、それぞれのステップの処理の具体的内容が、請求項1の記載から当業者にとって自明であると認められるものではないので、本願発明が、全体としてソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段により実現される方法として構成されているとは認められない。
そして、本願発明は、その技術的課題を解決できるような特有の構成を具体的に提示するものではなく、一定の技術的課題の解決手段であるとはいえないから、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。
したがって、本願発明は、特許法第2条で定義されている特許法上の「発明」には該当しないから、特許法第29条柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。

5.上記拒絶の理由2について
(1)各処理の記載内容の検討
請求項1の記載に関して原査定で指摘した事項について順次検討する。
(ア)「算出する」に関する処理について
「上記販売者コンピュータが、上記商品の割引率で100を除し、その計算値が整数でないときは整数化することによって、単位商品群として扱う上記商品の個数を算出するステップ」の記載では、割引率のデータをどのようにして入手し、また、計算値が整数でないときに整数化するためにどのようなデータをどのように情報処理するのか不明りょうである。
したがって、「算出する」に関するソフトウエアによる処理が不明確である。

(イ)「受け付ける」に関する処理について
「上記販売者コンピュータが上記通信回線を介して上記申込者コンピュータから上記商品の購入申込みを受け付ける」の記載では、購入申込を受け付けるために販売者コンピュータが申込者コンピュータからのどのようなデータをどのように処理するのか不明りょうである。
したがって、「受け付ける」に関するソフトウエアによる処理が不明確である。

(ウ)「抽選する」に関する処理について
「上記申込みの数が単位商品群を構成する商品の数に達したときに上記販売者コンピュータが申込み者の中から購入代金が無料となる者を抽選する」の記載では、購入代金が無料となる者を抽選するために販売者コンピュータがどのようなデータをどのように情報処理するのか不明りょうである。
したがって、「抽選する」に関するソフトウエアによる処理が不明確である。

(2)まとめ
以上のとおり、請求項1の記載では、「算出する」等の処理が不明確であるので、システムが有する各々の機能が概略的に記載されているものの、該機能を実現するためのソフトウエアによる処理が明りょうに記載されておらず、そのため、ハードウエアがどのように用いられているのかが明りょうに記載されていない。
すなわち、請求項1の記載では、全体として、ソフトウエア及びハードウエアがどのように構成されているのかが明確に把握できない。
したがって、請求項1に係る発明が明確でないので、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定された要件を満たしていない。

6.上記拒絶の理由3について
発明の詳細な説明の記載について以下に検討する。
(1)段落【0006】の記載について
発明の詳細な説明の段落【0006】には、以下の事項が記載されている。
「【0006】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る電子商取引の方法及び電子商取引システムの実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態ではインターネットを通してのみの電子商取引の場合であり、商品販売者の管理用パソコン1は、サーバー2を介してインターネット3でカード決済会社のホストコンピュータ4とつながっており、また、一般消費者のパソコン5や、iモード対応携帯電話又はPDA等の携帯端末6もインターネットに接続している。このため、商品販売者の管理用パソコン1は、インターネット3を通じてカード決済会社のホストコンピュータ4と与信照会および与信承認のやりとりを実行することができ、一般消費者のパソコン5に対し募集内容等の情報の提供や電子メールで連絡を行うことができる。また、一般消費者のパソコン5からインターネット3を通じて注文を受けることができる。なお、商品販売者の管理用パソコン1と接続した情報端末を街中や店頭に設置し、この情報端末を通じて募集内容等の情報を提供したり注文を受けたりすることも可能である。」
この記載では、商品販売者の管理用パソコンの実現可能な機能が単に記載されているにすぎず、それらの機能を実現するために「管理用パソコン(1)」などのコンピュータがどのような情報処理を行っているのか不明りょうである。

(2)段落【0007】-【0009】について
発明の詳細な説明の段落【0007】-【0009】には、以下の事項が記載されている。
「【0007】
次に、本実施形態の電子商取引を行う場合のフローチャートについて図2を用いて説明する。
まず、商品の割引率に基づいて単位商品群として扱う商品の個数N及び受付期間を設定する(201)。この個数Nは、割引率Rとすると、以下の式で得た数値を整数化したものである。
N≒100/R
例えば割引率Rが10パーセントであれば、個数Nは10となり、商品10個で単位商品群を構成する。また、割引率Rが15パーセントであれば、上記計算式によれば6.67の概算値を得るが、この数値の小数第1位を切上げ、切下げ又は四捨五入することにより整数化し、個数Nを6もしくは7のいずれかとする。そして、個数N個分の購入申込みがあった時点で抽選を行い、抽選に当たった購入申込み者に商品1個を購入代金無料で引渡し、残りの商品については割引前の値段で抽選にはずれた購入申込み者に販売する。このように、割引率の部分を合計すると略100パーセントになる個数を一単位と扱い、そのうちの一つを無料または支払代金を返金し、他は定価販売する。なお、この割引率Rは、通常店頭で販売している場合のものと同様なものを用いることができる。
【0008】
販売する商品の名称等の商品に関する情報と、個数N個分の申込みがあったときに抽選を行い、抽選に当たった人は1個分が無料となり、抽選に外れた人は割引前の値段で商品を購入するという内容と、受付期間とをインターネットで公表して商品の購入希望者を募集する(202)。
インターネットを通じて申込みがあったときは、その申込みが受付期間内であるかどうかを確認し(203)、受付期間内であれば申込みを受け付け(204)、期間外であれば終了する。申込みの受付けに際し申込み者が入力した氏名などの顧客情報とカード番号などに基づいてカード決済会社にインターネットで与信照会を行う(205)。カード決済会社から照会結果を受け(206)、与信が承認されたときは申込みを受理し(207)、承認されたなかったときは終了する。与信が承認された申込み者(特定申込み者)が商取引の対象者となる。
特定申込み者が申込んだ商品の数Aをカウントしており、申込み数Aが個数Nに達したかどうかを確認し(208)、達していなければ次の申込みを待ち、達していれば商取引が成立し、特定申込み者全員に電子メールで、抽選結果の表示日時を通知する(209)。その後、通知した表示日時までに抽選を行い、特定申込み者の中の一人を選出する(210)。その抽選結果を特定申込み者全員に電子メールで通知する(211)。この抽選結果をインターネットで公表しても良い。この場合は、ルーレットのようなゲーム性、娯楽性を意識した表示にすることができる。
商品の発送に先立ち、各特定申込み者について当選者かどうかを判断し(212)、当選者でなければカード決済会社に対して購入代金の決済を行い(213)、商品発送を指示する(214)。当選者であれば決済することなく商品の発送を指示する(214)。
【0009】
このように、本実施形態によると、インターネットを通じてこの電子商取引に申込みを行うことで、割引前の値段で購入することになるかもしれないが無料で入手できるかもしれないという商品購入にゲーム性や娯楽性をもたせることができる。また、与信システムを用いることで、申込みの受付から商品発送指示に至るまで迅速に行うことができる。」
この記載では、電子商取引のフローは記載されているが、フローの各段階での「管理用パソコン(1)」などのコンピュータの処理については記載されておらず、「管理用パソコン(1)」などのコンピュータがどのような情報処理を行っているのか不明りょうである。

(3)その他の段落の記載について
発明の詳細な説明の上記の段落以外の段落には、コンピュータがどのような情報処理を行っているのかが記載されてないことは明らかである。

(4)まとめ
以上のとおり、本件出願の明細書の発明の詳細な説明の記載では、請求項1に係る発明の「販売者コンピュータ」に相当する実施の形態に記載された「管理用コンピュータ」がどのような情報処理を行っているのか不明りょうであるので、本件出願の明細書の発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。
したがって、本件出願は、特許法第36条第4項に規定された要件を満たしていない。

7.上記拒絶の理由4について
(1)本願発明
本件補正は、以上のとおり適法になされたものであるので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年1月30日付の手続補正書により補正された以下のとおりのものである。なお、「申込み者コンピュータ」は「申込者コンピュータ」の誤記であることは明らかであるので、「申込み者コンピュータ」を「申込者コンピュータ」とした。
「商品の販売に際し所定の割引率を適用する商品販売者側に設置される販売者コンピュータと、該販売者コンピュータと通信回線を介して接続され、上記商品の購入申込み者側に設置される複数の申込者コンピュータとにより行う電子商取引の方法において、
上記販売者コンピュータが、上記商品の割引率で100を除し、その計算値が整数でないときは整数化することによって、単位商品群として扱う上記商品の個数を算出するステップと、
上記販売者コンピュータが、上記単位商品群1つ当たり商品1個が無料で他の商品は割引前の値段で販売するという条件を上記通信回線を介して上記申込者コンピュータに送信するステップと、
上記販売者コンピュータが上記通信回線を介して上記申込者コンピュータから上記商品の購入申込みを受け付けるステップと、
受け付けた申込み数を上記販売者コンピュータがカウントするステップと、
上記申込みの数が単位商品群を構成する商品の数に達したときに上記販売者コンピュータが申込み者の中から購入代金が無料となる者を抽選するステップと、
上記販売者コンピュータが上記通信回線を介して、抽選に当たった者の申込者コンピュータに抽選に当たったことを通知し、抽選に外れた者の申込者コンピュータに抽選に外れたことを通知するステップと
を備えたことを特徴とする電子商取引の方法。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由4で引用された特開平9-319970号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(a)「【0010】第1に、例えば図1,2に示すように、通信回線(20)を介して結ばれたユーザー(10)側のユーザ端末(11)及び商品取引業者(30)側のホストコンピュータ(31)とを備える。上記通信回線(20)としては、例えば通常の電話回線や、ISDN回線等を利用できる。
【0011】前記ユーザー端末(11)は、主としてマイクロコンピュータから構成され、この他、ハードディスク等の記憶装置、ディスプレー等の表示装置、プリンター等の印刷装置、ターミナルアタプターやモデム等の通信装置等を含んでいても良い。商品取引業者(30)は、単独であっても良いし、例えば図1に例示するように、商品提供業者(40)、接続サービス業者(50)、サービス代行業者(60)等のように複数の業者から構成しても良い。また、同様に、商品取引業者(30)側のホストコンピュータ(31)も、単独であっても良いし、例えば図1に例示するように、商品提供業者(40)のホストコンピュータ(41)、接続サービス業者(50)のホストコンピュータ(51)、サービス代行業者(60)のホストコンピュータ(61)等のように複数のホストコンピュータから構成しても良い。
【0012】第2に、ユーザー(10)と商品取引業者(30)との間で、通信回線(20)を介して商品取引が成立した際に、当該商品取引の内容に応じて、商品取引業者(30)からユーザー(10)に対してサービスポイントを付与し、その後、商品取引業者(30)は、サービスポイントを有するユーザー(10)に対して、当該サービスポイントに応じたサービスを還元する電子商品取引のサービス提供方法である。」(第3頁左欄第34行-同頁右欄第10行)

(b)「(取引形態)まず、商品の取引形態について説明すると、ユーザー10は、電話回線等の通信回線20を介して商品取引業者30の提供する商品を購入する。
【0030】そして、商品購入等の商品取引が成立した際に、当該商品取引の内容、例えば金額に応じて、商品取引業者30からユーザー10に対してサービスポイントが付与される。その後、ユーザー10は、商品取引業者30から付与されたサービスポイントの蓄積ポイント数に応じて、商品取引業者30が提供する商品リストからサービス商品を選択し、選択したサービス商品を商品取引業者30に申請することで、蓄積ポイント数と引き換えに選択したサービス商品を貰えるシステムとなっている。
【0031】上記ユーザー10が購入する商品や、商品取引業者30から還元されるサービス商品は、有形の商品に限らず、無形の商品やサービスでも良い。また、前記通信回線20は、例えば通常の電話回線や、ISDN回線等を利用できる。
(ユーザー)上記各ユーザー10は、図1に示すように、ユーザー端末11をそれぞれ保有し、そして、各ユーザー端末11は、通信回線20に各々接続されている。
【0032】上記ユーザー端末11は、例えばマイクロコンピュータ、ハードディスク等の記憶装置、ディスプレー等の表示装置、プリンター等の印刷装置、ターミナルアタプターやモデム等の通信装置等から構成されている。なお、ユーザー端末11側のマイクロコンピュータは、1台だけに限らず、LAN等の環境で複数台接続されていても良い。
(商品取引業者)上記商品取引業者30は、図1に示すように、大別すると、商品提供業者40、接続サービス業者50、サービス代行業者60から構成されている。」(第4頁右欄第24行-第5頁左欄第3行)

(c)「(ホストコンピュータ)本実施の形態の説明では、商品提供業者40側のホストコンピュータ41、接続サービス業者50側のホストコンピュータ51、サービス代行業者60のホストコンピュータ61を、一括して商品取引業者30側のホストコンピュータ31として以下に説明する。
【0036】商品取引業者30側のホストコンピュータ31は、図2に示すように、次の7つの手段を含んでいる。第1は、送受信制御手段32であり、この送受信制御手段32は、通信回線20を介して接続される各ユーザー10のユーザー端末11との間のデータの送受信を制御している。
【0037】第2は、商品取引手段33であり、この商品取引手段33は、ユーザー10と商品提供業者40との間の商品取引を管理している。第3は、ポイント提供手段34であり、このポイント提供手段34は、上記商品取引手段33により商品取引が成立した際に、当該商品取引の内容、例えば商品の金額に応じて、ユーザーに対してサービスポイントを付与している。」(第5頁左欄第29行-同頁同欄第45行)

(d)「【0041】第7は、抽選手段38であり、この抽選手段38は、ユーザー10の蓄積ポイント数や商品取引回数が、予め予め設定された所定のポイント数や回数に達したことを条件に、抽選を行い、抽選の結果、当選した場合には、当該ユーザーに有利なサービス、例えばボーナスポイントやボーナス商品等を提供するものである。具体的には、抽選した結果、付与される抽選コードと、予め設定された当選コード群とを比較し、前記抽選コードが当選コード群に含まれるか否かにより、当選又は不当選の別の判定を行っている。
【0042】なお、抽選は、無作為に行っても良いし、或いは商品、期間、地域を限定して行っても良い。また、段階的に複数回の抽選を行うようにしても良い。例えば、抽選手段38による抽選結果が当選の場合に、更に、抽選手段38により抽選を行わせても良い。
【0043】さらに、ユーザー10との商品取引の成立を条件に、抽選を行っても良い。上記抽選は、無作為に行っても良いし、或いは商品、期間、地域を限定して行っても良い。また、上記種々の抽選の手法を組み合わせても良い。一方、抽選手段38により、ゲームを行わせ、その結果により例えばボーナスポイントやボーナス商品等を提供しても良い。」(第5頁右欄第24行-同頁同欄第45行)

また、引用例1に記載されたものにおいて、商取引を成立させるために、商品の販売に際し、「ユーザ(10)」が「ユーザ端末(11)」により「通信回線(20)」を介して商品の購入の申込みを行い、「商品取引業者(30)」が「ホストコンピュータ(31)」によりその購入の申込みを確認して受け付けていることは明らかである。
してみれば、引用例1には、
『商品の販売に際し所定のポイントを提供する「商品取引業者(30)」側に設置される「ホストコンピュータ(31)」と、該「ホストコンピュータ(31)」と「通信回線(20)」を介して接続され、上記商品を購入する「ユーザ(10)」側に設置される「ユーザ端末(11)」とにより行う電子商取引の方法において、「ホストコンピュータ(31)」が、「通信回線(20)」を介して「ユーザ(10)」の「ユーザ端末(11)」から商品の購入申込みを受け付けるステップと、「ホストコンピュータ(31)」が、「ユーザ(10)」の蓄積ポイント数や商品取引回数が予め設定されたポイント数や回数に達したことを条件に、サービス商品やサービスポイントが提供される「ユーザ(10)」を抽選するステップとを備えた電子商取引の方法』
との発明(以下「引用例発明」という。)が開示されている。

(3)対比
引用例発明の「商品取引業者(30)」、「ホストコンピュータ(31)」、「通信回線(20)」、「ユーザ(10)」、「ユーザ端末(11)」は、本願発明の「商品販売者」、「販売者コンピュータ」、「通信回線」、「購入申込み者」、「申込者コンピュータ」に相当し、引用例発明の「所定のポイントを提供する」と本願発明の「所定の割引率を適用する」とは、所定の特典を適用するという点で共通しているので、両者は、
「商品の販売に際し、所定の特典を適用する商品販売者側に設置される販売者コンピュータと、該販売者コンピュータと通信回線を介して接続され、上記商品の購入申込み者側に設置される複数の申込者コンピュータとにより行う電子商取引の方法において、
商品の購入申込みを受け付けるステップと、
販売者コンピュータは、所定の条件で抽選するステップと
を備えた電子商取引の方法」
という点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明では、商品販売者が、特典として、商品の販売に際し所定の割引率を適用するのに対し、引用例発明では、商品販売者が、特典として、商品の販売に際し所定のポイントを提供する点。
(相違点2)
本願発明では、単位商品群1つ当たり商品1個が無料で他の商品は割引前の値段で販売するという条件を設定し、商品の割引率で100を除し、その計算値が整数でないときは整数化することによって、単位商品群として扱う上記商品の個数を算出し、受け付けた申込み数をカウントし、上記申込みの数が単位商品群を構成する商品の数に達したときに上記販売者コンピュータが申込み者の中から購入代金が無料となる者を抽選するのに対し、引用例発明では、そのような抽選を行っていない点。
(相違点3)
本願発明では、販売者コンピュータが抽選に関する条件を通信回線を介して申込者コンピュータに送信するのに対し、引用例発明では、販売者コンピュータが抽選に関する条件を通信回線を介して申込者コンピュータに送信することを行っていない点。
(相違点4)
本願発明では、上記通信回線を介して、抽選に当たった者の申込者コンピュータに抽選に当たったことを通知し、抽選に外れた者の申込者コンピュータに抽選に外れたことを通知するのに対し、引用例発明では、そのような通知を行うことは明記されていない点。

(4)当審の判断
(相違点1について)
商品の販売に際して特典として所定の割引率を適用することは一般的に行われている周知事項であるので、引用例発明において、商品の販売に際して所定のポイントを提供する代わりに所定の割引率を適用することは当業者が容易に考えられる事項である。
したがって、相違点1に係る構成は、引用例発明及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に考えられる事項である。

(相違点2について)
抽選の条件や、抽選を行うタイミングをどのように設定するかは当業者が適宜設定する設計的事項であり、抽選に当たった者に対して、購入代金を無料とすることは一般的に行われている周知事項であるので、引用例発明において、商品の割引率で100を除し、その計算値が整数でないときは整数化することによって、単位商品群として扱う上記商品の個数を算出し、受け付けた商品の購入申込み数をカウントし、申込みの数が単位商品群を構成する商品の数に達したときに申込み者の中から購入代金が無料となる者を抽選することは、当業者が適宜に考えられる事項である。
したがって、相違点2に係る構成は、引用例発明に基づいて当業者が容易に考えられる事項である。

(相違点3について)
抽選を行う際に、抽選の内容を会員や顧客などに通知することは一般的に行われている周知事項であり、電子メールなどにより通信回線を介して送付先のパソコンなどのコンピュータに通知を行うことも周知事項であるので、引用例発明において、抽選に関する条件を通信回線を介して申込者コンピュータに送信することは当業者が容易に考えられる事項である。
したがって、相違点3に係る構成は、引用例発明及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に考えられる事項である。

(相違点4について)
抽選を行った後、当たった者に当たったことを、外れた者に外れたことを通知することは一般的に行われている周知な事項であり、電子メールなどにより通信回線を介して送付先のパソコンなどのコンピュータに通知を行うことも周知事項であるので、引用例発明において、上記通信回線を介して、抽選に当たった者の申込者コンピュータに抽選に当たったことを通知し、抽選に外れた者の申込者コンピュータに抽選に外れたことを通知することは当業者が容易に考えられる事項である。
したがって、相違点4に係る構成は、引用例発明及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に考えられる事項である。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例1及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

8.むすび
「4.上記拒絶の理由1について」で述べたとおり、請求項1に係る発明は、特許法第2条で定義されている特許法上の「発明」には該当しないから、特許法第29条柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
また、仮に、本願発明が特許法上の「発明」に該当するとしても、「5.上記拒絶の理由2について」及び「6.上記拒絶の理由3について」で述べたとおり、請求項1に係る発明が明確であるとは認められず、また、本件出願の明細書の発明の詳細な説明には、請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められないので、本件出願は、特許法第36条第6項第2号及び同第4項に規定された要件を満たしていない。
さらに、仮に、請求項1に係る発明が明確であり、本件出願の明細書の発明の詳細な説明には、請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとしても、「7.上記拒絶の理由4について」で述べたとおり、請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-21 
結審通知日 2006-12-22 
審決日 2007-01-09 
出願番号 特願2001-78240(P2001-78240)
審決分類 P 1 8・ 1- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 537- Z (G06Q)
P 1 8・ 536- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 坂庭 剛史
森次 顕
発明の名称 電子商取引の方法及び電子商取引システム  
代理人 松島 鉄男  
代理人 有原 幸一  
代理人 伊與田 幸穂  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 伊與田 幸穂  
代理人 松島 鉄男  

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