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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1152808
審判番号 不服2004-23155  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-11 
確定日 2007-02-22 
事件の表示 平成10年特許願第289896号「眼鏡装用シミュレーション方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月28日出願公開、特開2000-123053〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、平成10年10月12日の出願であって、平成16年9月16日付で拒絶査定がされ、これに対して同年11月11日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年12月13日に手続き補正がなされたものである。

2. 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成16年12月13日付の手続き補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「コンピュータ制御による表示画面上で、肖像画像に眼鏡画像を結合させて眼鏡装用状態をシミュレーションする眼鏡装用シミュレーション方法において、
前記コンピュータにより、眼鏡装用者の肖像画像を取り込む工程と、
眼鏡を構成するパーツが選定された眼鏡画像を決定するフレームデザイン選択工程と、
前記眼鏡装用者の肖像画像と前記眼鏡画像とを重ねることによって眼鏡を装用した眼鏡装用画像を表示し、この眼鏡装用画像における眼鏡装用者の肖像画像をあらかじめ格納されている別人の肖像画像の中から選択した肖像画像と取り替えて表示する機能を有する肖像画像変更ツールを駆使して、前記表示にかかる眼鏡装用画像を、前記眼鏡装用者の肖像画像に替えて前記選択した肖像画像を用いた眼鏡装用画像に取り替えて表示して眼鏡装用状態をシミュレーションするトライヤル工程と、
を実行することを特徴とする眼鏡シミュレーション方法。」

3. 引用例
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭64-076362号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「(問題点を解決するための手段)
本発明は、CPU、AD変換器、画像記憶メモリー、DA変換器、第1の合成倍率で取込まれた眼鏡フレームデータメモリー、プログラムメモリー、および操作手段を有するコンピューターと撮像装置と表示装置と測距手段と、により構成され、前記コンピューターによって、前記第1の合成倍率で取込まれた眼鏡フレームの撮像データと前記撮像装置からの人物像の撮像データとの合成画像を作成し、前記表示装置に人物が眼鏡を装着した状態を表示する眼鏡装用シミュレーション装置における合成画像を作成方法であって、前記撮像装置によって前記コンピューターに取り込まれた眼鏡を装用していない人物の表示画面における静止画像から検出した左右両眼の角膜頂点位置座標と前記測距手段により測定された人物と撮像装置との間の距離情報とより、前記表示画面における表示画像の実際の人物に対する第2の合成倍率を計算し、前記第2の合成倍率に基づき前記表示画面における眼鏡フレーム合成位置、ならびに人物像および眼鏡フレーム像の第3の合成倍率を計算し、人物と眼鏡フレームとの合成画像を前記表示装置に表示させること特徴とする眼鏡装用シミュレーション装置における合成画像作成方法を提供するものである。」(3頁左上欄3行?右上欄7行)

イ 「第1図は、眼鏡装用シミュレーション装置の構成を説明する図であり、第2図は、人物像を表示した表示画面を示す図であり、第3図は、基本的な眼鏡装用シミュレーションの方法を示すフローチャートである。」(3頁右下欄20行?4頁左上欄4行)

ウ 「以下、その具体的方法を第3図のフローチャートに基づき詳細に説明する。
(ステップ1?3)
人物2をビデオカメラ3で撮像し、静止画像として表示画面に表示する。」(6頁左上欄17行?右上欄1行)

エ 「(ステップ9?13)
フレームの選択は、カタログ等の描画してあるフレーム、あるいは実物等によって選択でき、これらは、あらかじめコンピューターにフレームデータとして登録してあるので、その型式等の数値をキーボード等の入力操作によりデータを読み出すことができ、さらに人物とフレームとの合成画像の作成処理が行われ、表示画像に送り出され合成画像が表示される。
そこで、好みのフレームが決定するまで、フレ-ムデータの入力操作が継続される好みのフレームの選択が行われる。
以上が基本的なフローであるが、例えば人物像の顔色を変化させ、日照の状態をシミュレーションさせたり、レンズの色を変えたりして、シミュレーションを行うことも、周知の画像合成技術を用いることにより可能である。」(6頁右下欄13行?7頁10行)

(2)したがって、上記アないしエの記載及び図面から、引用例には、「眼鏡装用シミュレーションの方法であって、人物2をビデオカメラ3で撮像し、静止画像として表示画面に表示し、あらかじめコンピューターにフレームデータとして登録してあるフレームを選択し、人物とフレームとの合成画像の作成処理を行い、該合成画像を表示し、好みのフレームが決定するまでフレームの選択を行う眼鏡装用シミュレーションの方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4. 対比
(1)引用発明の「人物像の撮像データ」は、眼鏡装用シミュレーションを行う人物の画像であるから、本願発明の「眼鏡装用者の肖像画像」に相当する。
引用発明の「フレームデータ」は、眼鏡を構成するパーツであるフレームやレンズからなる画像であるから、本願発明の「眼鏡画像」に相当する。
引用発明の「人物とフレームとの合成画像の作成処理」は、本願発明の「肖像画像に眼鏡画像を結合させること」、及び「眼鏡装用者の肖像画像と眼鏡画像とを重ねること」とに相当する。
そして、引用発明の「フレームの選択を行うこと」は、本願発明の「眼鏡を構成するパーツが選定された眼鏡画像を決定するフレームデザイン選択工程」に相当する。
コンピュータを用いた画像処理において、画像の入力処理、画像処理、表示処理等の画像処理に関する一連の処理をコンピュータ制御で行うことは普通に行われていることである。そうすると、コンピュータを用いて人物画像に対して画像処理を行う引用発明においても、人物像の撮像データの入力処理、眼鏡フレームと撮像データとの合成処理、合成画像の表示処理の一連の処理がコンピュータ制御によって行われているといえる。
引用発明の「フレームを選択し、人物とフレームとの合成画像の作成処理を行い、合成画像を表示し、好みのフレームが決定するまでフレームの選択を行うこと」は、本願発明の「眼鏡装用状態をシミュレーションするトライヤル工程」に相当する。

(2)したがって、本願発明と引用発明とは、「コンピュータ制御による表示画面上で、肖像画像に眼鏡画像を結合させて眼鏡装用状態をシミュレーションする眼鏡装用シミュレーション方法において、
前記コンピュータにより、眼鏡装用者の肖像画像を取り込む工程と、
眼鏡を構成するパーツが選定された眼鏡画像を決定するフレームデザイン選択工程と、
前記眼鏡装用者の肖像画像と前記眼鏡画像とを重ねることによって眼鏡を装用した眼鏡装用画像を表示し、眼鏡装用状態をシミュレーションするトライヤル工程と、
を実行することを特徴とする眼鏡シミュレーション方法」で一致し、次の点で相違する。

(3)相違点
本願発明は「眼鏡装用画像における眼鏡装用者の肖像画像をあらかじめ格納されている別人の肖像画像の中から選択した肖像画像と取り替えて表示する機能を有する肖像画像変更ツール」を有しており、トライヤル工程において「肖像画像変更ツールを駆使して、表示にかかる眼鏡装用画像を、眼鏡装用者の肖像画像に替えて選択した肖像画像を用いた眼鏡装用画像に取り替えて表示して眼鏡装用状態をシミュレーションする」のに対して、引用発明は「肖像画像変更ツール」を有しておらず、トライヤル工程においても前記肖像画像変更ツールを駆使した処理を行っていない点。

5. 当審の判断
(1)相違点について
実写の人物像を別の人物像に変換することは、本願出願前である平成10年9月11日に公開された特開平10-240908号公報にあるように、実写の人物画像を用いた試着や装用のシミュレーションにおいて周知の技術である。

(2)特開平10-240908号公報の開示
「【0015】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の映像合成方法の第1の形態では、人物(以下モデル人物と呼ぶ)を含む映像(入力映像)を撮影し、この人物像を別の人物(以下ターゲット人物と呼ぶ)の映像に変換する映像合成方法において、映像を撮影したときのカメラパラメータを指定する手段と、モデル人物の特徴を指定する手段と、ターゲット人物の特徴を指定する手段と、モデル人物の映像をターゲット人物に適合するような変形手段を備え、モデル人物を撮影して入力映像を得、該撮影時におけるカメラパラメータを指定し、モデル人物の特徴を指定し、入力映像をモデル人物映像と背景映像に分離し、モデルの特徴とターゲットの特徴を用いてモデル人物映像を変形してターゲット人物画像を生成し、得られたターゲット人物画像と背景映像を合成する。」、及び「【0062】次にターゲット顔画像2250とターゲット人体画像2240、背景画像2060を合成することで、人物像を変換した合成画像400を生成する。合成は背景画像2060の上にターゲット人体画像2240を合成し、その上にターゲット顔画像2250を合成する。このとき、実写をワーピングして生成した人体画像2240にターゲット顔画像2250を滑らかに合成する必要がある。このため、境界部分をぼかす処理を行う。
【0063】以上の処理により実写映像のモデル人物画像をターゲット人物画像に変換する。変換後の人物画像2200を図18に示す。」
「【0073】【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、実写の人物映像を別の人物映像に変換することが可能である。
【0074】また、CGで人物像を表現でき、洋服の試着のシミュレーションやヘアースタイルの事前検討等、様々な用途に応用が可能であるし、映像の中の人物をユーザに変換できれば新しい種類の娯楽が生まれる。」

(3)そして、当該周知の技術においては、変換する「別の人物像」を指定する必要があることは明らかであって、そのために、あらかじめ格納されている人物像の中から選択した「別の人物像」を用いることは、当業者が必要に応じて採用し得る設計事項である。
さらに、前記周知の技術において、実写の人物像を別の人物像に変換してシミュレーションを行う際に、装用者から別人の人物像に変換し、別人の人物像を用いてシミュレーションを行うのか、あるいは、別人から装用者の人物像に変換し、装用者の人物像を用いてシミュレーションを行うのかは、シミュレーションを行う各装用者個々人が、その嗜好や性格、感性に応じて適宜決定しうる事項にすぎない。

(4)したがって、眼鏡の装用シミュレーションを行うものである引用発明において、当該周知の技術手段を採用することは、当業者が普通に考える事項であり、「眼鏡装用画像における眼鏡装用者の肖像画像をあらかじめ格納されている別人の肖像画像の中から選択した肖像画像と取り替えて表示する機能を有する肖像画像変更ツール」を設け、「肖像画像変更ツールを駆使して、表示にかかる眼鏡装用画像を、眼鏡装用者の肖像画像に替えて選択した肖像画像を用いた眼鏡装用画像に取り替えて表示して眼鏡装用状態をシミュレーションする」ことは、当業者が容易に想到できたものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明から、当業者が予測できる範囲のものである。

6.審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、本願発明は、本人とは違う肖像画像に眼鏡画像を重ねた眼鏡装用画像を表示させるために、装用者に違和感や不快感を感じさせるおそれなく、適切なシミュレーションを行うことを可能にするものであるが、従来の眼鏡装用シミュレーション法では、肖像画像は本人を忠実に表したものを用いるのが常識であり、従来の眼鏡シミュレーションである引用例から、本人の肖像画像に替えて別人の肖像画像を用いるなどという発想をなすことは論理的に考えられない、との旨を主張している。
検討するに、請求人が主張する事項は、シミュレーションを行う各装用者個々人の、嗜好や性格、あるいは、感性に依存するものであって、なんら技術的な手段ないし構成を主張するものではないから、特許法29条2項進歩性の判断に影響を及ぼすものではない。
したがって、前記審判請求人の主張は採用できない。

7. むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-20 
結審通知日 2006-12-21 
審決日 2007-01-09 
出願番号 特願平10-289896
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加舎 理紅子  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 田中 幸雄
脇岡 剛
発明の名称 眼鏡装用シミュレーション方法  
代理人 阿仁屋 節雄  
代理人 油井 透  
代理人 清野 仁  

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