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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1152835
審判番号 不服2006-1368  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-19 
確定日 2007-02-22 
事件の表示 特願2000- 7845「撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月19日出願公開、特開2001-197358〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.経緯
1.手続
本願は、平成12年1月17日の出願である。
本件は、本願についてされた拒絶査定(平成17年12月9日付け)を不服とする平成18年1月19日の審判の請求であり、請求後、手続補正書(平成18年2月16日付け、明細書及び図面について請求の日から30日以内にする補正)が提出された。

2.査定
原査定の理由は、概略、下記のとおりである。
記(査定の理由)
請求項1に係る発明は、下記刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開平9-18773号公報
刊行物2:特開平7-143497号公報
刊行物3:特開平3-201878号公報
刊行物4:特開平6-38096号公報
刊行物5:特開平6-331881号公報
刊行物6:特開平6-189187号公報

第二.補正の却下の決定
平成18年2月16日付けの補正について次のとおり決定する。
《結論》
平成18年2月16日付けの補正を却下する。
《理由》
1.補正の内容
本件補正は下記の補正事項を含むものである。各補正事項につき、補正の前後における記載の対応は以下のとおりである。
(a)補正事項1
請求項1について、
(補正前)
「上記撮像素子の画素が配列された平面内に複数の領域を設定し、上記撮像素子がどの領域の画素の画像データを出力しているかを示す領域情報を生成する検波域生成手段と、」
(補正後)
「上記撮像素子の画素が配列された平面内に複数の領域を設定し、上記撮像素子がどの領域の画素の画像データを出力しているかを示す領域情報を生成する検波域生成手段と、
上記検波域生成手段は、上記複数の評価値生成手段に対して共通の領域を設定し、」

(b)補正事項2
請求項1について、
(補正前)
「上記制御手段は、各領域毎に得られた撮像条件の評価値を同時に参照可能な一時記憶領域に収納する」
(補正後)
「上記制御手段は、各領域毎に得られた撮像条件のRGB毎の評価値をそれぞれ同時に参照可能な一時記憶領域に収納する」

2.補正の適合性
(1)補正の範囲
補正事項1については願書に最初に添付した明細書の段落0021及び図1にその記載があり、補正事項2については同明細書の段落0051から段落0055まで及び図7にその記載がある。本件補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

(2)補正の目的
上記補正事項は、いずれも、特許請求の範囲についてする補正である。
補正事項1は、補正前の請求項1に記載した「検波域生成手段」につき評価値生成手段との関係を限定するものであり、補正事項2は、同じく記載した「一時記憶手段」につきその記憶データの構造とアクセスの仕方を限定するものである。さらに、補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3)独立特許要件
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、独立特許要件についてさらに検討する。

(3-1)補正後発明
本件補正後の請求項1に係る発明(補正後発明という)は、下記のとおりである。
記(補正後発明)
光学系を有し複数の撮像条件を決定して撮像を行なう撮像装置であって、
平面上に配列された複数の画素を有し被写体を撮像して生成した画像データを画素単位で出力する撮像素子と、
上記撮像素子の画素が配列された平面内に複数の領域を設定し、上記撮像素子がどの領域の画素の画像データを出力しているかを示す領域情報を生成する検波域生成手段と、
撮像条件を決定する際に参照される該撮像条件の評価値を生成する評価値生成手段であってそれぞれが異なる撮像条件の評価値を上記画像データから生成する、上記画像データが並列に入力されるように構成された複数の評価値生成手段と、
上記検波域生成手段は、上記複数の評価値生成手段に対して共通の領域を設定し、
上記複数の評価値生成手段は、上記検波域生成手段が生成する領域情報と上記撮像素子が出力する画像データとから領域毎に各撮像条件の評価値を生成し、
上記複数の評価値生成手段が生成した、上記領域毎に生成された各撮像条件の評価値を参照して各撮像条件を決定する制御手段とを有し、
上記制御手段は、各領域毎に得られた撮像条件のRGB毎の評価値をそれぞれ同時に参照可能な一時記憶領域に収納することを特徴とする撮像装置。

(3-2)刊行物の記載
(a)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2(特開平7-143497号公報)には、以下の記載がある。
〈産業上の利用分野〉
(ア)「本発明はビデオカメラのホワイトバランス制御方法及び露出制御方法に関し、良好なホワイトバランス制御や露出制御が行なえるように工夫したものである。また本発明を適用したビデオカメラは、フィルム画像取込装置として有用である。」(段落0001)
〈ビデオカメラの撮像系〉
(イ)「図1は実施例に係るビデオカメラの撮像系を示す。同図に示すようにレンズ31により形成された光学像がCCD32の受光面に結像され、CCD32からアナログ撮像信号が出力される。アナログ撮像信号は、アナログ処理回路33によりサンプルホールド処理されまた必要に応じてゲイン調整されてから、A/D変換器34によりデジタル撮像信号に変換される。デジタル信号処理回路35はデジタル撮像信号を処理してビデオ信号を作り、ビデオ信号をD/A変換器47でD/A変換してビデオカメラの電子ビューファインダ36や記録部や外部のテレビ受像機(図示省略)に送る。積算回路37はビデオ信号を積分演算して、AF(自動焦点)、AE(自動露出)及びAWB(自動ホワイトバランス)の制御をするのに用いるデータを得る。」(段落0029)
(ウ)「カメラマイコン38からは、アイリスメータ39、フォーカスドライバ40、ズームドライバ41にそれぞれアイリス操作信号、フォーカス操作信号、ズーム操作信号を送る。またレンズ部分のアイリス開度センサ(ホール素子)、フォーカスレンズ位置センサ、ズームレンズ位置センサからは、カメラマイコン38に向けて、アイリス開度信号、フォーカスレンズ位置信号、ズームレンズ位置信号を送る。またカメラマイコン38からタイミング回路42に電子シャッタ制御値を送ると、ドライバ43によりCCD32の電子シャッタの動作制御が行なわれる。更にカメラマイコン38の指令によりデジタル信号処理回路35にてAWB制御が行なわれる。44は同期信号発生回路である。」(段落0030)
〈ホワイトバランス制御(第1例)〉
(エ)「ここでこのビデオカメラで用いるオートホワイトバランス制御の第1例を説明する。積算回路37は、図2に示すように、撮像画面を64エリア(8×8)に分け各エリアA1?A64ごとに、赤信号R、緑信号G、青信号B、輝度信号Yを積分して赤積分値IR1?IR64、緑積分値IG1?IG64、青積分値IB1?IB64、輝度積分値IY1?IY64を求めて出力する。カメラマイコン38は、図3に示す動作(詳細は次に述べる)をして、ホワイトバランス制御信号Rcont、Bcontを求めて出力する。デジタル信号処理回路35は、赤緑青信号R、G、Bのレベルが等しくなるように、ホワイトバランス制御信号Rcontのデータに応じて赤信号Rのゲイン調整をし、ホワイトバランス制御信号Bcontのデータに応じて青信号Bのゲイン調整をして、ホワイトバランスをとる。」(段落0032)
〈露出制御(第4例)〉
(オ)「次に露出制御の第4例を説明する。積算回路37は図2に示すように、撮像画面を64エリア(8×8)に分け各エリアA1?A64の輝度信号Yを積分して輝度積分値iY1?iY64を求めると共に、全画面に入る輝度信号Yを積分して全画面輝度積分値iYを求める。」(段落0057)
(カ)「カメラマイコン38は、輝度積分値iY1?iY64のうち最大の最大輝度積分値iYmax と最小の最小輝度積分値iYmin を抽出すると共に、全画面輝度積分値iYから全画面平均測光値Sa を求める。そしてこの測光値Sa を基に露出補正をする(図15参照)。」(段落0058)
(キ)「カメラマイコン38は・・・最大輝度積分値iYmaxが白飛び防止設定値XHよりも大きいときには露出制御の目標値を1ステップ下げる。目標値が小さくなると、偏差及びアイリス制御値が大きくなりアイリスがその分だけ閉じる。・・・このように・・・目標値を小さくしていき、アイリスを閉めて白飛びの発生を防止できる。
カメラマイコン38は・・・最小輝度積分値iYmin が黒潰れ防止設定値よりも小さいときには露出制御の目標値を1ステップ上げる。目標値が大きくなると、偏差及びアイリス制御値が小さくなりアイリスがその分だけ開く。・・・このように・・・目標値を大きくしていき、アイリスを開けて黒潰れの発生を防止できる。
このように目標値を増減させることによって、白飛びや黒潰れの発生を防止しつつ、露出制御をすることができる。」(段落0059?段落0061)

(b)刊行物6
同じく引用された刊行物6(特開平6-189187号公報)には、以下の記載がある。
(ク)「クロック信号発生回路(以下、CGという)1は、クロック信号CK、CCD6の水平転送路を駆動するための水平転送パルス、不要電荷掃出しのための基板抜きパルス、Aフィールド垂直転送パルスおよびBフィールド垂直転送パルスを発生し、CCD6に与える。クロック信号CKは、同期信号発生回路(以下、SSGという)2に与えられ、SSG2はこのクロック信号CKに基づいて水平同期信号HDおよび垂直同期信号VDを発生し、CG1に与える。水平期信号HDおよび垂直同期信号VDはCG1からゲート・アレイ20に与えられる。またCG1において画素の読出し時間に対応したクロック信号ADCKが生成されゲート・アレイ20に与えられる。」(段落0027?段落0030、図1)
(ケ)「ゲート・アレイ20において、入力する高周波信号成分についてのディジタル・データおよび輝度データがそれぞれ撮影領域内において設定されたブロックごとに加算され、ブロックごとにCPU15に与えられる。・・・図4は16×16の複数のブロックに分割した撮影領域と主被写体との関係を示しており、」(段落0041、段落0042、図3)
(コ)「以下ゲート・アレイの動作を詳述する。CG1から出力される垂直同期信号VD、水平同期信号HDおよびクロック信号ADCKはゲート・アレイ20のタイミング・ジェネレータ29に与えられる。・・・タイミング・ジェネレータ29に入力する信号から・・・ブロックごとの水平方向の加算タイミングを定める水平転送クロックHCK、ブロックごとの垂直方向の加算タイミングを定めるロード・クロックLDCKおよびデータ出力のタイミングを定めるデータ・セレクタ信号が生成される。」(段落0048?段落0050)

(c)刊行物1
同じく引用された刊行物1(特開平9-18773号公報)には、以下の記載がある。
(サ)「ビデオ信号処理部107において生成されたビデオ信号は、D/A変換部108に出力されるのと同時に、第1のエリア設定部113、第2のエリア設定部114及び第3のエリア設定部115に与えられる。」(段落0046)
(シ)図1を参照すると、「第2のエリア設定部114とホワイトバランス処理部116からなる信号処理系統」と「第3のエリア設定部115とAE処理部118からなる信号処理系統」にビデオ信号処理部107からビデオ信号が「並列に与えられる」構成がみてとれる。

(3-3)対比(対応関係)
補正後発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると以下の対応が認められる。
(a)撮像装置
刊行物2のビデオカメラは、レンズ31を備え、自動焦点、AE自動露出及び自動ホワイトバランスを制御する。ここで、自動焦点、自動露出及び自動ホワイトバランスは、補正後発明にいう「複数の撮像条件」に相当する。
刊行物2のビデオカメラは、補正後発明にいう「光学系を有し複数の撮像条件を決定して撮像を行なう撮像装置」に相当する。
(b)撮像素子
刊行物2のCCD32は、補正後発明にいう「平面上に配列された複数の画素を有し被写体を撮像して生成した画像データを画素単位で出力する撮像素子」に相当する。
(c)検波域生成手段
刊行物2では、ホワイトバランス制御において、積算回路37が撮像画面を64エリアに分け、各エリアごとに赤信号R、緑信号G、青信号B、輝度信号Yを積分し、赤積分値(IR1?IR64)、緑積分値(IG1?IG64)、青積分値(IB1 ?IB64)、輝度積分値(IY1?IY64)を求めて出力する(以下、赤積分値、緑積分値、青積分値を総称して「各色積分値」という)。
また、露出制御においても同様に、積算回路37は撮像画面を64エリアに分け、各エリアごとに輝度積分値(iY1?iY64)を求めて出力する。
(c1)前段記載
積算回路37は、撮像画面を64エリアに分けており、この動作に照らせば、その内部に、補正後発明にいう「撮像素子の画素が配列された平面内に複数の領域を設定(する)・・・検波域生成手段」に相当する回路手段を備えていると言うことができる。
もっとも、補正後発明の「検波域生成手段」は、「撮像素子がどの領域の画素の画像データを出力しているかを示す領域情報を生成する」ところ、刊行物2では、撮像画面を複数のエリアに分ける以上、何れかにおいて「(撮像素子が)どの領域の画素の画像データを出力しているかを示す領域情報を生成する」ことは認められるものの、かかる領域情報の生成につき具体的な記載はない。相違が認められる。
(c2)後段記載
刊行物2では、撮像画面の分け方は、ホワイトバランス制御と露出制御とも同じ64エリア(図2)であり共通している。補正後発明にいう「上記検波域生成手段は、上記複数の評価値生成手段に対して共通の領域を設定し、」に相当する構成の開示が認められる。
(d)評価値生成手段
刊行物2の積算回路37は、自動焦点、自動露出及び自動ホワイトバランスの制御をするのに用いるデータを求めるものである。
具体的には、ホワイトバランス制御においては、積算回路37が各エリアごとに各色積分値を求め、カメラマイコン38が、求めた各色積分値を参照してホワイトバランス制御信号を求める。
また、露出制御においては、積算回路37が各エリアごとに輝度積分値iYを求め、カメラマイコン38は、求めた輝度積分値iYを参照して、露出制御の目標値(アイリス制御値)を求める。
(d1)前段記載
(d11)撮像条件の決定、評価値の生成
刊行物2のカメラマイコン38が「ホワイトバランス制御信号」と「露出制御の目標値」を求める際に参照する各エリアごとの「各色積分値」と「輝度積分値iY」は、補正後発明にいう「撮像条件を決定する際に参照される該撮像条件の評価値」に相当する。
積算回路37は、これら「各色積分値」と「輝度積分値iY」を求めており、「撮像条件を決定する際に参照される該撮像条件の評価値を生成する評価値生成手段」に相当する回路手段を備えていると言うことができる。
(d12)複数の異なる評価値
刊行物2が、ホワイトバランス制御のために「各色積分値」を、露出制御のために「輝度積分値iY」を、それぞれ、ビデオ信号から求める構成であることは、前記のとおりである。
この構成は、補正後発明にいう「それぞれが異なる撮像条件の評価値を画像データから生成する」ものであり、したがって、上記した「評価値生成手段」に相当する回路手段を複数(2種)備えていると言うことができる。
(d13)まとめ
以上によれば、刊行物2の積算回路37は、その内部に、補正後発明にいう「撮像条件を決定する際に参照される該撮像条件の評価値を生成する評価値生成手段であってそれぞれが異なる撮像条件の評価値を上記画像データから生成する、(上記画像データが並列に入力されるように構成された)複数の評価値生成手段」に相当する回路手段を備えていると言うことができる。
(d14)画像データの並列入力(相違点)
もっとも、刊行物2では、「各色積分値」を求める際に入力されるビデオ信号と、「輝度積分値iY」を求める際に入力されるビデオ信号との関係については格別記載がない。これを「画像データが並列に入力されるように構成された」とする補正後発明とは相違が認められる。
(d2)後段記載
刊行物2の「各色積分値」と「輝度積分値iY」が各エリアごとに求める構成は、補正後発明にいう「上記複数の評価値生成手段は、上記検波域生成手段が生成する領域情報と上記撮像素子が出力する画像データとから領域毎に各撮像条件の評価値を生成し、」に相当する。
(e)制御手段
刊行物2のカメラマイコン38は、補正後発明にいう「上記複数の評価値生成手段が生成した、上記領域毎に生成された各撮像条件の評価値を参照して各撮像条件を決定する制御手段」に相当する。
(f)一時記憶装置
刊行物2の「各色積算値」は補正後発明にいう「RGB毎の評価値」に相当する。
また、カメラマイコン38は、積算回路37から「各色積分値」を受け取りこれを基に演算処理を行なうので、その内部に「各色積分値」を少なくとも一時的に記憶する手段を備えることは明らかである。補正後発明にいう「上記制御手段は、各領域毎に得られた撮像条件のRGB毎の評価値を一時記憶領域に収納する」に相当する回路構成の存在が認められる。
もっとも、補正後発明の「一時記憶領域」は、各領域毎に得られた撮像条件のRGB毎の評価値を「それぞれ同時に参照可能」な構成であるところ、このような構成について刊行物2には記載がない。相違が認められる。

(3-4)一致点・相違点
以上によれば、補正後発明と刊行物2記載の発明との一致点および相違点は、下記とおりである。
記(一致点)
光学系を有し複数の撮像条件を決定して撮像を行なう撮像装置であって、
平面上に配列された複数の画素を有し被写体を撮像して生成した画像データを画素単位で出力する撮像素子と、
上記撮像素子の画素が配列された平面内に複数の領域を設定する検波域生成手段と、
撮像条件を決定する際に参照される該撮像条件の評価値を生成する評価値生成手段であってそれぞれが異なる撮像条件の評価値を上記画像データから生成する複数の評価値生成手段と、
上記検波域生成手段は、上記複数の評価値生成手段に対して共通の領域を設定し、
上記複数の評価値生成手段は、上記検波域生成手段が生成する領域情報と上記撮像素子が出力する画像データとから領域毎に各撮像条件の評価値を生成し、
上記複数の評価値生成手段が生成した、上記領域毎に生成された各撮像条件の評価値を参照して各撮像条件を決定する制御手段とを有し、
上記制御手段は、各領域毎に得られた撮像条件のRGB毎の評価値を一時記憶装置に収納する撮像装置。
記(相違点)
〈相違点1〉
複数の領域を設定するのに際して、
補正後発明では「撮像素子がどの領域の画素の画像データを出力しているかを示す領域情報を生成する」のに対して、刊行物2ではそのような記載がない点。
〈相違点2〉
複数の評価値生成手段に対して、
補正後発明では「画像データが並列に入力されるように構成された」のに対して、刊行物2にはそのような記載がない点。
〈相違点3〉
一時記憶領域が、
補正後発明は、「RGB毎の評価値をそれぞれ同時に参照可能」であるのに対して、刊行物2にはそのような記載がない点。

(3-5)相違点の判断
(a)相違点1について
(a1)刊行物6には、以下のことが記載されている。すなわち、
ゲート・アレイ20は、撮影領域内に複数のブロック(図4、16×16)を設定し、ブロックごとに高周波信号成分データおよび輝度データを加算するところ、クロック信号発生回路1からの水平同期信号HD、垂直同期信号VDおよび画素の読出し時間に対応したクロック信号ADCKの入力を受け、タイミング・ジェネレータ29において、ブロックごとの水平方向の加算タイミングを定める水平転送クロックHCK、ブロックごとの垂直方向の加算タイミングを定めるロード・クロックLDCKを生成する。(以上)
刊行物6のこの構成は、補正後発明にいう「撮像素子がどの領域の画素の画像データを出力しているかを示す領域情報を生成する」に相当する。
(a2)他方、刊行物2では、撮像画面を複数のエリアに分ける構成が記載されており、そうである以上、何れかにおいて「(撮像素子が)どの領域の画素の画像データを出力しているかを示す領域情報を生成する」ことが認められることは前記のとおりである。また、CCD32のタイミング回路42からの信号により動作する同期信号発生回路44の存在も認められる。
(a3)相違点1に係る構成は、刊行物2に記載された同期信号発生回路44と積算回路37に、上記刊行物6の構成(ゲート・アレイのタイミング・ジェネレータ)を採用することにより、当業者が容易になし得ることである。
(b)相違点2について
(b1)刊行物1には、図1を参照すると、「第2のエリア設定部114とホワイトバランス処理部116からなる信号処理系統」と「第3のエリア設定部115とAE処理部118からなる信号処理系統」とに対して、ビデオ信号をビデオ信号処理部107から「並列に入力する」ことが見てとれる。
刊行物1のこの「並列に入力する」構成は、補正後発明にいう「画像データが並列に入力される(ように構成された複数の評価値生成手段)」構成に相当する。
(b2)刊行物2では、ホワイトバランス制御においては各色積算値を求める傍ら「輝度積算値IY」も求めている。他方、露出制御において、これと同じ「輝度積算値iY」を求めることは前記のとおりである。各制御において同じ評価値(各エリアごとの輝度積算値IY、iY)を求めていることから、各制御を並列して行なうこと(画像データを並列に入力すること)の示唆があると言うべきである。
(b3)相違点2に係る構成は、刊行物2に記載されたホワイトバランス制御と露出制御において積算回路37にビデオ信号を入力する仕方に、上記刊行物1の構成を採用することにより、当業者が容易になし得ることである。
(c)相違点3について
(c1)情報処理において関連する複数のデータを同時に参照すること(アクセスすること)は周知の事項である。これには、例えば、特開平5-328384号公報、特開平10-191238号公報などが参照される。
すなわち、特開平5-328384号公報には、「RGB画像メモリは、メモリコントローラからのアドレス指定と出力イネーブル信号*OEを受けて画素単位にR、G、の3成分の画像データを3成分同時に出力する。」(段落0016)、特開平10-191238号公報には、「各信号成分から同じアドレスの画像データを一つずつアクセスする。図5はα、R、G、B信号の場合であり、」(段落0013)などと記載されている。
(c2)相違点3に係る構成は、刊行物2において、各エリアごとの各色積算値(赤、緑、青)及び輝度積算値IY(以上、ホワイトバランス制御)と輝度積分値iY(露出制御)をカメラマイコン38が参照する際に、上記周知の事項を参照することにより、当業者が容易になし得ることである。
(d)効果等について
以上、上記相違点1から相違点3までに係る構成はいずれも当業者が容易になし得ることであるところ、これらを総合しても格別の作用をなすとは認められない。また、補正後発明の効果も、刊行物2、刊行物6及び刊行物1の記載ならびに上記周知の事項から予測することができる程度のものにすぎない。

(3-6)小括(独立特許要件)
以上によれば、補正後発明は、刊行物2、刊行物6及び刊行物1に記載された発明ならびに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)まとめ(補正の適合性)
以上、請求項1についてする上記補正事項1及び補正事項2は、特許法第17条の2第5項(同項において準用する同法第126条第5項の規定)に適合しない。
したがって、上記補正事項1及び補正事項2を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項(同項において準用する同法第126条第5項の規定)に違反する。

3.むすび(決定)
以上、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、残る補正事項について特に検討するまでもなく、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第三.本願発明
平成18年2月16日付けの手続補正は上記のとおり却下する。
本願の請求項1に係る発明は、本願明細書及び図面(平成17年10月13日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載した事項により特定される下記のとおりのものである(以下、本願発明ともいう)。
記(本願発明)
【請求項1】
光学系を有し複数の撮像条件を決定して撮像を行なう撮像装置であって、
平面上に配列された複数の画素を有し被写体を撮像して生成した画像データを画素単位で出力する撮像素子と、
上記撮像素子の画素が配列された平面内に複数の領域を設定し、上記撮像素子がどの領域の画素の画像データを出力しているかを示す領域情報を生成する検波域生成手段と、
撮像条件を決定する際に参照される該撮像条件の評価値を生成する評価値生成手段であってそれぞれが異なる撮像条件の評価値を上記画像データから生成する、上記画像データが並列に入力されるように構成された複数の評価値生成手段と、
上記複数の評価値生成手段は、上記検波域生成手段が生成する領域情報と上記撮像素子が出力する画像データとから領域毎に各撮像条件の評価値を生成し、
上記複数の評価値生成手段が生成した、上記領域毎に生成された各撮像条件の評価値を参照して各撮像条件を決定する制御手段とを有し、
上記制御手段は、各領域毎に得られた撮像条件の評価値を同時に参照可能な一時記憶領域に収納することを特徴とする撮像装置。

第四.査定の検討
(1)引用刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2には、前記のとおりの記載がある。

(2)対比(対応関係、一致点・相違点)
本願発明と刊行物2記載の発明とを対比する。
補正後発明と刊行物2記載の発明との対比(対応関係)については前記のとおりであるところ、これを援用する。

(3)一致点・相違点
本願発明と刊行物2記載の発明との一致点および相違点は、下記のとおりである。
記(一致点)
光学系を有し複数の撮像条件を決定して撮像を行なう撮像装置であって、
平面上に配列された複数の画素を有し被写体を撮像して生成した画像データを画素単位で出力する撮像素子と、
上記撮像素子の画素が配列された平面内に複数の領域を設定する検波域生成手段と、
撮像条件を決定する際に参照される該撮像条件の評価値を生成する評価値生成手段であってそれぞれが異なる撮像条件の評価値を上記画像データから生成する複数の評価値生成手段と、
上記複数の評価値生成手段は、上記検波域生成手段が生成する領域情報と上記撮像素子が出力する画像データとから領域毎に各撮像条件の評価値を生成し、
上記複数の評価値生成手段が生成した、上記領域毎に生成された各撮像条件の評価値を参照して各撮像条件を決定する制御手段とを有し、
上記制御手段は、各領域毎に得られた撮像条件の評価値を一時記憶領域に収納する撮像装置。
記(相違点)
〈相違点1〉(補正後発明に係る相違点1と同じ)
複数の領域を設定するのに際して、
本願発明では「撮像素子がどの領域の画素の画像データを出力しているかを示す領域情報を生成する」のに対して、刊行物2ではそのような記載がない点。
〈相違点2〉(補正後発明に係る相違点2と同じ)
複数の評価値生成手段に対して、
本願発明では「画像データが並列に入力されるように構成された」のに対して、刊行物2にはそのような記載がない点。
〈相違点3〉
一時記憶領域が、
補願発明は、「評価値を同時に参照可能」であるのに対して、刊行物2にはそのような記載がない点。

(4)相違点の判断
(a)相違点について
上記相違点1から相違点3までについての判断は、それぞれ、上記補正後発明に係る相違点1から相違点3までについてした判断と同じである。
(b)効果等について
上記相違点1から相違点3までを総合しても格別の作用をなすとは認められない。また、本願発明の効果も、刊行物2、刊行物6及び刊行物1の記載ならびに上記周知の事項から予測することができる程度のものにすぎない。

(5)まとめ(査定の検討)
以上、本願発明は、刊行物2、刊行物6及び刊行物1に記載された発明ならびに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第五.むすび
以上、本願の請求項1に係る発明は、刊行物2、刊行物6及び刊行物1に記載された発明ならびに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-14 
結審通知日 2006-12-19 
審決日 2007-01-05 
出願番号 特願2000-7845(P2000-7845)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 益戸 宏  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 北岡 浩
松永 隆志
発明の名称 撮像装置  
代理人 田澤 博昭  
代理人 田澤 英昭  
代理人 濱田 初音  
代理人 加藤 公延  

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