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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1152846 |
審判番号 | 不服2001-22209 |
総通号数 | 88 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-12-12 |
確定日 | 2007-02-21 |
事件の表示 | 平成4年特許願第335105号「パチンコ機の入賞装置」拒絶査定不服審判事件〔平成6年6月3日出願公開、特開平6-154396〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成4年11月19日の出願であって、平成13年2月15日付けの拒絶理由通知に対し平成13年4月27日付けで手続補正がなされ、平成13年11月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年12月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年1月11日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成14年1月11日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。 「取付基板の中央部の上部位置に前面側へ突出するガイド部材を設けると共に、前記ガイド部材の左右の側部にそれぞれ打球が1個通過できる程度の間隔を離して突設された側片により球通路を形成し、 前記球通路には回転体をそれぞれ配設すると共に、両回転体の間に位置した取付基板の下部位置に前面側へ突出する球受口を設け、 前記両回転体は、モータにより互いに反対方向に正逆回転し、かつその周面に前記球通路に導かれた打球を取り込む凹部からなる複数の球保持部を設けてなり、 通常時は前記回転体を外向き回転させて前記球通路に導かれた打球をすべて取付基板の前面下方へと落下させ、入賞時には前記回転体を内向き回転させて前記球通路に導かれた打球をすべて入賞球として球受口へと落下するようにしたことを特徴とするパチンコ機の入賞装置。」 3.引用例に記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である昭和62年8月6日に頒布された「特開昭62-179484号公報」(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。 「第1図は本発明の一実施例の入賞装置を装着したパチンコ機の正面図を示す。…この入賞装置5は縦に長くした取付基板6を有する。取付基板6の上部には入賞孔7,7が穿設され、その前面には打玉を入賞孔7,7へ受け入れるためのカバー部材8が形成される。カバー部材8には表示部45が設けられる。また、取付基板6の略中央部には前面開口の凹室9が形成され、この凹室9の左右両側に玉受部材としての一例の羽根車10a,10bが対をなして回転自在に配置される。凹室9の下部に位置した取付基板6には前記羽根車10a,10bが受け入れた打玉だけを入賞させる一般入賞口11a?11cを画成したカバー部材12が前面へ突出して設けられる。」(第2頁左上欄第11行-同頁右上欄第10行) 「前記羽根車10a,10bは外周に打玉を受け入れ可能な間隔で複数の羽根10を有する。この羽根車10a,10bは外回り回転のとき打玉を受け入れ難い第1の状態として羽根10間に打玉を受け入れることなくそのまゝ側方から遊技盤の下方へ導き、内回り回転のとき打玉を受け入れ易い第2の状態として羽根10間に打玉を保持し一般入賞口11a?11c或いは特賞入賞口14へ入賞させるものである。…前記支持板28′には羽根車10a,10bを回転させるための正逆回転モータ28が装着される。」(第2頁左下欄第15行-同頁右下欄第10行) 「前記正逆回転モータ28の駆動による駆動歯車30の回転は小径歯車27aを介して羽根車10aに回転を与え、また遊動歯車31、小径歯車27bを介して羽根車10b羽根車10aと同一速度でかつ反対方向の回転を与える。すなわち、羽根車10a,10bは互いに第1の状態の外回り回転したり第2の状態の内回り回転を行う。この実施例では通常羽根車10a,10bが外回り回転を続けるように正逆回転モータ28の回転方向が設定される。そして、打玉が特賞入賞口14へ入ると正逆回転モータ28の回転が逆転する。」(第3頁左上欄第18行-同頁右上欄第8行) 「次にこの実施例の動作を説明する。羽根車10a,10bが互いに外回り回転をしている第1状態のとき、羽根車10a,10bに落下する打玉はそのまゝ下方へ案内されるに止まり打玉が入り難い。…そして、羽根車10a,10bで付けられた打玉が一般入賞口11a?11cへ入つた場合は単なる入賞玉して排出処理されるに止まる。一方、打玉が特別入賞口14の入賞孔15へ入ると、これを玉検出センサ18が検出し、その信号によつて正逆回転モータ28の回転を逆転して内回り回転とし、これによつて羽根車10a,10bは打玉が入り易い第2の状態の内回り回転となり、さらに予め設定した所定時間間隔ごとにソレノイド33を励磁して羽根車10a,10bを外側方へ移動させる動作を所定の時間(例えば30秒間)継続する特賞遊技状態となる。」(第3頁左下欄第3行-第4頁左上欄第5行) また、第1図及び第5図から、以下の点を把握することができる。 カバー部材8は、中央部の前面側に突出して取付基板6に設けられており、左右の側部が曲面形状に形成されている点。 カバー部材8の左右の側部下方には、羽根車10a,10bが、それぞれ配設されており、羽根10間には、凹部が形成されている点。 前記摘示の記載及び図面によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「取付基板6の中央部の上部位置に前面側へ突出するカバー部材8を設けると共に、 前記カバー部材8の左右の側部下方には羽根車10a,10bをそれぞれ配設すると共に、両羽根車10a,10bの間に位置した取付基板6の下部位置に前面側へ突出する一般入賞口11a?11cを画成したカバー部材12を設け、 前記両羽根車10a,10bは、モータ28により互いに反対方向に正逆回転し、かつその周面に打球を保持する凹部からなる複数の羽根10間を設けてなり、 通常は前記羽根車10a,10bを外回り回転させて前記羽根車10間に打球を受け入れることなくそのまま側方から遊技盤の下方に導き、特賞遊技状態には前記羽根車10a,10bを内回り回転させて前記羽根10間に保持された打球を入賞球として一般入賞口11a?11cを画成したカバー部材12或いは特賞入賞口14へと落下するようにしたパチンコ機の入賞装置。」 4.対比 本願発明と引用発明を対比するに際して、本願発明の「通常時は前記回転体を外向き回転させて前記球通路に導かれた打球をすべて取付基板の前面下方へと落下させ、入賞時には前記回転体を内向き回転させて前記球通路に導かれた打球をすべて入賞球として球受口へと落下するようにした」との記載について検討すると、「入賞時には」における「入賞」と、「入賞球として」の「入賞」とが、同じ事項を意味するならば、入賞球として球受口へと落下して入賞時になると解することができ、一方、「通常時は前記回転体を外向き回転させて前記球通路に導かれた打球をすべて取付基板の前面下方へと落下させ」るのであるから、通常時に入賞球として球受口へと落下する可能性がない以上、入賞時になり得ないものとなり、上記記載は明瞭ではないので、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、「そして、その停止時の表示があらかじめ設定された表示(例えば「0,0,0」,「9,9,9」等のぞろ目)に揃うと「大当り」となり、2個の回転体14a,14bを図8(ロ)に示すうに図8(イ)の矢印方向と反対方向(内向き方向)に回転させる。このため、球通路13aまたは13bに導かれる打球はそれぞれの球保持部17に取り込まれて下方へ運ばれ、中央位置から球受口15に落下してすべて入賞球として箱枠18へ流下案内される。」(段落0017)と記載されており、上記「入賞時には」における「入賞」とは「大当り」のことを意味するものと認められる。 そこで、本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「羽根車10a,10b」は本願発明の「回転体」に相当し、以下同様に、「一般入賞口11a?11cを画成したカバー部材12」は「球受口」に、「打球を保持する凹部」は「打球を取り込む凹部」に、「羽根10間」は「球保持部」に、「通常」は「通常時」に、「外回り回転」は「外向き回転」に、「前記羽根車10間に打球を受け入れることなくそのまま側方から遊技盤の下方に導き」は「打球をすべて取付基板の前面下方へと落下させ」に、「特賞遊技状態」は「入賞時」に、「内回り回転」は「内向き回転」に相当する。 また、引用発明の「カバー部材8」は、左右の側部が曲面形状に形成されており、その具体的な形状と羽根車10との配置関係を考慮すれば、この曲面を落下する打球は羽根車10に誘導されること、すなわち、「カバー部材8」は打玉をガイドする機能を有することは明らかであるから、引用発明の「カバー部材8」は、本願発明の「ガイド部材」ということができる。 そうすると両者は、「取付基板の中央部の上部位置に前面側へ突出するガイド部材を設けると共に、 回転体をそれぞれ配設すると共に、両回転体の間に位置した取付基板の下部位置に前面側へ突出する球受口を設け、 前記両回転体は、モータにより互いに反対方向に正逆回転し、かつその周面に前記球通路に導かれた打球を取り込む凹部からなる複数の球保持部を設けてなり、 通常時は前記回転体を外向き回転させて打球をすべて取付基板の前面下方へと落下させ、入賞時には前記回転体を内向き回転させて打球を入賞球として落下するようにしたパチンコ機の入賞装置。」で一致し、以下の点で相違する。 相違点1;本願発明は、「前記ガイド部材の左右の側部にそれぞれ打球が1個通過できる程度の間隔を離して突設された側片により球通路を形成し」、回転体を「球通路」に配設し、取付基板の前面下方又は球受口へと落下させる打球が「球通路に導かれた」打球であるのに対して、引用発明は、「球通路」が形成されておらず、そのため、回転体を「球通路」に配設しておらず、取付基板の前面下方又は球受口へと落下させる打球が「球通路に導かれた」打球ではない点。 相違点2;本願発明は、入賞時には球通路に導かれた打球を「すべて入賞球として球受口へと落下する」ようにしたのに対して、引用発明は、入賞時には球保持部に保持された打球を球受口或いは特賞入賞口14へと落下するようにした点。 5.当審の判断 相違点1について 打玉が遊技盤面を落下する様を遊技内容とするパチンコ機にとって、各所に用いられる振分部材は、遊技機を設計する上で重要な構成要素であり、そのような振分部材に遊技盤面を落下する打玉ができるだけ関与できるように、打玉を振分部材に誘導する部材を配設することは、パチンコ機における周知技術(下記周知例1乃至3参照)であるから、引用発明の振分部材である回転体にも、そのように誘導部材を配設することは、当業者にとって格別創意工夫を要することではない。 さらに、誘導部材の構成として、ガイド部材の左右の側部にそれぞれ打球が1個通過できる程度の間隔を離して突設された側片により球通路を形成することも、パチンコ機における周知技術(下記周知例4又は5参照)であるから、引用発明において、回転体に打玉を誘導する誘導部材を配設し、その際に、ガイド部材の左右の側部にそれぞれ打球が1個通過できる程度の間隔を離して突設された側片により球通路を形成することは、当業者が容易に想到できることであり、そうすれば、球通路には回転体をそれぞれ配設されることになること、さらには、取付基板の前面下方又は球受口へと落下させる打球が「球通路に導かれた」打球となることは当然のことである。 相違点2について 一般入賞口と特賞入賞口とを隣接して設けることは、所謂第2種パチンコ機等における周知技術(下記周知例6参照)であり、打玉を振分部材に誘導する部材を配設するに際して、誘導した打玉をすべて誘導部材に導くことも、周知技術(下記周知例1乃至3参照)であるから、引用発明においても、一般入賞口11a?11cと特賞入賞口14を隣接させてカバー部材12に画成し、玉通路に導かれた打玉をすべて回転体に取り込み、入賞時には打球を「すべて入賞球として球受口へと落下する」ように構成することは当業者が容易に想到できることである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる域を超えるものではない。 <周知例に開示される技術> 周知例1.実願平1-100798号(実開平3-41481号)のマイクロフィルム 「弾球遊技機1の発射装置により遊技盤2面に発射された遊技球Aは、植設された遊技釘B・・・により風車の回転体3に誘導落下するよう形成され、この際、回転体3の制御状況により作用状態が複数あり図面を参照してそれぞれの作用を詳述すれば、回転体3が停止している状態では第3図に示すように遊技釘Bによって誘導落下した遊技球Aは保留部5に保留され、第4図に示すように前記回転体3が矢印方向に回動すれば遊技球Aは同回転体3の回転方向に沿って放出されて落下する。また第5図に示すように同回転体3の回転方向が第4図と反対方向の回転ならば遊技球Aを第4図とは反対の方向に放出し落下する。」(第3頁第14行-第4頁第6行)と記載され、打玉を回転体3に誘導するように遊技釘Bを配設し、誘導した打玉をすべて回転体3に導く技術が開示されている。 周知例2.特開昭63-203173号公報 「第7図?第8図に示すように、特定入賞装置10の基板81には、内周が円形の枠体82が設けられ、該枠体82内に回転可能に回転体83が配置されている。枠体82の上方には、特定入賞口8としての球1個分の開口82Aが形成され…尚、この実施例の場合にも、第9図に示すように、枠体82に左右2つの開口82B、82Cを設け、各開口82B、82Cに、基板13に設けた左右2つの特定入賞口8、9からの入賞球を誘導樋87、88を介して導くことにより、第2図と同様の作用を行なわせることができる。」(第5頁左下欄第11行-第6頁左上欄第19行)と記載され、打玉を回転体83に誘導するように誘導樋87、88を配設し、誘導した打玉をすべて回転体83に導く技術が開示されている。 周知例3.実公昭51-10857号公報 「14はチヤツカー13の下方部の左右両側から転換片2の上方と側部とにかかけて設けた突出板であって、これとチヤツカー13とにより、チヤツカー13の両側に受口15を有しその受口から転換片2の上方に打玉を導く限定された対称状の傾斜誘導路16を構成し、その合流点を転換片2の中心上部で一個の玉を通ずる間隙17として開放する。」(第1頁第2欄第15-22行)と記載され、打玉を転換片2に誘導するように傾斜誘導路16を配設し、誘導した打玉をすべて転換片2に導く技術が開示されている。 周知例4.実公平3-52544号公報 「図において1は遊技盤aの表面に取付ける取付板である。この取付板1の前面上部位置には、中央部に環状の表示枠2が形成され、かつその両外側に打玉が通ることができる程度の間隔を離してガイド枠3,3を突設し、この表示枠2とガイド枠3,3とによつて上部に導入口4を下部に排出口5を有する左右の玉貯溜部6,6が形成される。」(第1頁第2欄第4-11行)と記載され、また、第3図から、玉貯溜部6,6は、打球が1個通過できる程度であることをを把握することができることから、表示枠2の左右の側部にそれぞれ打球が1個通過できる程度の間隔を離して突設されたガイド枠3,3により球通路を形成する技術が開示されている。 周知例5.特公平3-59718号公報 「尚、基盤1の表面側の上部には上方鎧部5が、そして両側には側方鎧部6,7がそれぞれ設けられており、これらは上記揺動杆3及び保護壁4を囲んでいる。第1図及び第2図において、上方鎧部5と左右側の側方鎧部6,7とのそれぞれの間には、打球が流下可能な球通路8,9として形成されている。」(第2頁第3欄第34-41行)と記載され、また、第2図から、球通路8,9は、打球が1個通過できる程度であることをを把握することができることから、上方鎧部5の左右の側部にそれぞれ打球が1個通過できる程度の間隔を離して突設された側方鎧部6,7により球通路を形成する技術が開示されている。 周知例6.特公平3-2556号公報 「変動入賞装置120は内部への入賞に対して所定数(例えば15個)の賞品球の払い戻しをする入賞領域を兼ねたものであるが、本実施例では特徴点として変動入賞装置120内部の下部中央に特別球入賞領域300(特別球入賞領域に関しては後に詳述する。)が形成されるとともに、特別球入賞領域300の両側には通常の入賞孔103f,103gが形成されている。」(第4頁第7欄第7-14行)と記載され、通常の入賞孔103f,103gと特別球入賞領域300とを隣接して設ける技術が開示されている。 6.むすび したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-27 |
結審通知日 | 2006-12-05 |
審決日 | 2006-12-21 |
出願番号 | 特願平4-335105 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 澤田 真治 |
特許庁審判長 |
二宮 千久 |
特許庁審判官 |
土屋 保光 林 晴男 |
発明の名称 | パチンコ機の入賞装置 |
代理人 | 伊藤 浩二 |