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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09J
管理番号 1152875
審判番号 不服2005-5233  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-25 
確定日 2007-02-23 
事件の表示 平成11年特許願第153244号「ポリオレフィン系難燃性粘着テープ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月 5日出願公開、特開2000-336329〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年6月1日の出願であって、平成17年2月16日付けで拒絶査定がなされ、同年3月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月15日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年4月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年4月15日付けの手続補正を却下する。
[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、補正前に、
「【請求項1】 天然ゴムラテックスとスチレンブタジエンゴムラテックスの混合物100重量部に、タッキファイヤエマルジョンを100重量部、軟化剤を30重量部、酸化防止剤エマルジョンを3重量部配合してなる粘着剤を、金属水酸化物を含有するオレフィン系樹脂によって構成されるフィルム基材に塗布してなるポリオレフィン系難燃性粘着テープ。」
であったものが、次のように補正された。
「【請求項1】 混合比が75:25?25:75の天然ゴムラテック/スチレンブタジエンゴムラテックスの混合物100重量部に、タッキファイヤエマルジョンを100重量部、軟化剤を30重量部、酸化防止剤エマルジョンを3重量部、増粘剤エマルジョンを2重量部配合してなる粘着剤を、金属水酸化物を含有するオレフィン系樹脂によって構成するフィルム基材に塗布してなるポリオレフィン系難燃性粘着テープ。」

上記補正により、天然ゴムラテックスとスチレンブタジエンゴムラテックスの混合比が特定され、かつ、粘着剤の組成をさらに限定したのであるから、これは特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明(以下、「補正後の発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(i)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平5-47249号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある。
[摘記a]:「機械的強度、電気的特性、可撓性、成形加工性などに優れ、且つ燃焼時にハロゲンガスなどの有毒ガスが発生しないハロゲンフリーの無公害型の高度の難燃性を有するポリオレフィン系難燃性粘着テープを提供すること。」(【要約】の【目的】)
[摘記b]:「下記(A)および(B)を含むポリオレフィン系樹脂組成物からなる基材表面に粘着物質層を設けた難燃性粘着テープ。
ポリオレフィン系樹脂組成物:
(A)ポリオレフィン系樹脂(A1)あるいは・・・から選ばれた少なくとも1種の反応性化合物を含むポリオレフィン系樹脂(A2)またはその樹脂組成物100重量部と、
(B)無機難燃剤 30?200重量部」(特許請求の範囲の請求項1)
[摘記c]:「本発明の(A)成分であるポリオレフィン系樹脂(A1)としては、・・・、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのエチレン-ビニルエステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体などのエチレン-α,β-カルボン酸またはその誘導体との共重合体などのエチレン系(共)重合体、・・・等が挙げられる。」(段落0005)、「(A)成分のポリオレフィン系樹脂・・・A1-2: エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)・・・A1-3 エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)」(段落0044)
[摘記d]:「本発明の(B)成分の無機難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、・・・等が挙げられる。」(段落0028)、「(B)成分の無機難燃剤:B-1 水酸化マグネシウム」(段落0045)
[摘記e]:「基材を製造した後、粘着物質を塗布したり、あるいは基材を製造する際に同時に粘着物質の塗布、スプレー、ラミネートなどの方法により粘着物質層を設けてもよい。」(段落0036)
[摘記f]:「本発明で用いる粘着物質は粘着用ポリマー、粘着付与物質、溶剤などからなるものであり、絶縁の効果を損ねない限りゴム性のものや、エマルジョン型のもの等現存する粘着物質すべてが使用でき、特に限定されない。」(段落0040)
[摘記g]:「本発明で用いる粘着用ポリマーとしては天然ゴム、再生ゴム、・・・スチレンブタジエンゴム、・・・などを挙げることができる。本発明で用いる粘着付与物質としてはポリテルペン、ロジン並びにその誘導体、・・・などを挙げることができる。」(段落0041)、「本発明で用いる粘着物質には用途や樹脂に合わせて軟化剤、充填剤、老化防止剤、乳化安定剤、増粘剤、消泡剤を添加することができる。また、これらの粘着物質に粘着性を損ねない限り金属の酸化防止剤等を添加して商品価値を上げることができる。」(段落0042)
同じく引用された刊行物である「日本粘着テープ工業会、粘着ハンドブック編集委員会編、『粘着ハンドブック(第2版)』、日本粘着テープ工業会、1995年10月12日発行、78頁」(以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。
[摘記h]:「(1)天然ゴム系粘着剤・・・ポリマー中に不飽和結合が存在するため、光や熱に対して劣化しやすい欠点を有している。これを改善するため、・・・・、合成ゴムとのブレンドなどが行われている。」(「(1)天然ゴム系粘着剤」の項)、「天然ゴム 60部、SBR 1502 40部、・・・ポリテルペン樹脂(SP115℃) 80部、レゾール型アルキルフェノール 5部」の例(「表5.配合例」の項)、「SBRは通常単独では使用されず天然ゴムと併用して使用される。・・・一般的に天然ゴムに相溶性の良い粘着付与剤は、SBRを配合することにより、少ない樹脂量で前者と同一の粘着力を得ることができる。」(「(2)スチレン・ブタジエンゴム(SBR)系粘着剤」の項)
同じく引用された「伊保内 賢、外2名編、『粘着剤活用ノート』、初版第2刷、株式会社工業調査会、1991年6月20日、42-45頁」(以下、「引用例3」という。)には、次の記載がある。
[摘記i]:「有機過酸化物前加硫天然ゴムラテックス(55%) 182部、水添ロジンエステル(40%) 250部、老化防止剤分散液 4部、増粘剤 少量」の例(43頁、「天然ゴムラテックス系」の「5)配合例」の項)
[摘記j]:「1)製造・種類・・・(3)・・・合成ゴムラテックスの主流を占める。・・・2)特徴 (1)水系ゴム系粘着剤には不可欠であり」(44頁、「スチレン-ブタジエンラテックス系」の項)

(ii)対比・判断
引用例1には難燃性粘着テープが記載されるところ、これは「(A)ポリオレフィン系樹脂」を用いるものであり([摘記b]、[摘記c])、「(B)無機難燃剤」には「水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム」等の、金属水酸化物が包含され([摘記d])、粘着物質層を基材に設ける手段の一つとして粘着剤の塗布がある([摘記e])から、引用例1には、「粘着剤を、金属水酸化物を含有するオレフィン系樹脂によって構成するフィルム基材に塗布してなるポリオレフィン系難燃性粘着テープ」の発明が記載されている。
そこで、補正後の発明と引用例1に記載された発明を対比すると、両者は、「粘着剤を、金属水酸化物を含有するオレフィン系樹脂によって構成するフィルム基材に塗布してなるポリオレフィン系難燃性粘着テープ」という点で一致するが、下記の相違点1で相違する。
[相違点1]
粘着剤が、引用例1の発明においては特に限定されていないのに対して、補正後の発明においては、「混合比が75:25?25:75の天然ゴムラテック/スチレンブタジエンゴムラテックスの混合物100重量部に、タッキファイヤエマルジョンを100重量部、軟化剤を30重量部、酸化防止剤エマルジョンを3重量部、増粘剤エマルジョンを2重量部配合してなる粘着剤」である点。
この相違点1について検討する。
(あ)引用例1には、粘着剤について、「粘着物質は粘着用ポリマー、粘着付与物質、溶剤などからなるものであり、絶縁の効果を損ねない限りゴム性のものや、エマルジョン型のもの等現存する粘着物質すべてが使用できる」とあり([摘記f])、より具体的には、「粘着用ポリマー」として「天然ゴム」や「スチレンブタジエンゴム」が挙げられ、さらに、「軟化剤、老化防止剤、増粘剤、酸化防止剤など」の第三成分を用途や樹脂に合わせて添加できることが記載されている([摘記g])。
(い)そこで、ここに具体的に記載された天然ゴムやスチレンブタジエンゴムについて、一般文献の記載をみるに、引用例3に、天然ゴムを用いた粘着剤として、「有機過酸化物前加硫天然ゴムラテックス(55%)182部、タッキファイヤエマルジョンである水添ロジンエステル(40%)250部に、老化防止剤分散液4部、増粘剤少量を配合した例」が記載されている([摘記i])ところ(本願明細書の段落0003によれば、「ロジンエステル系樹脂」は「タッキファイヤー」の一種である)、この文献(引用例3)のタイトルが「粘着剤活用ノート」という広く当業者一般向けのものであることからすると、この組成は、粘着テープなどに使用する水系ゴム系粘着剤の配合例として極めて普通のものと認められ、一方、スチレンブタジエンゴムを用いた粘着剤として、これが合成ゴムラテックスの主流を占めることや水系ゴム系粘着剤に不可欠であること([摘記j])が公知であり、さらに、天然ゴム系粘着剤には合成ゴムとのブレンドなどが行われ、スチレンブタジエンゴムは粘着剤においては天然ゴムと併用して使用されることや、そうすることで少ない樹脂量で天然ゴムと同一の粘着力を得ることも、公知である([摘記h])。
(う)そうしてみると、極めて普通の例である、上記「有機過酸化物前加硫天然ゴムラテックス(55%)182部、タッキファイヤエマルジョンである水添ロジンエステル(40%)250部に、老化防止剤分散液4部、増粘剤少量を配合した例」に、適量のスチレンブタジエンゴムを加え、あるいはさらに周知の成分を加えた粘着剤も、同様に普通のものと認められる。
(え)翻って、相違点1である、「混合比が75:25?25:75の天然ゴムラテック/スチレンブタジエンゴムラテックスの混合物100重量部に、タッキファイヤエマルジョンを100重量部、軟化剤を30重量部、酸化防止剤エマルジョンを3重量部、増粘剤エマルジョンを2重量部配合してなる粘着剤」という組成をみるに、[摘記i]で示した極めて普通の例に、適量のスチレンブタジエンゴムと、周知の成分である適量の軟化剤(必要なら、[摘記g]参照。)を加えたものであるから、上記(う)に示したとおり、普通の粘着剤と認められる。
(お)なお、天然ゴムラテックス/スチレンブタジエンゴムラテックスの混合比75:25?25:75に関しては、粘着テープ用接着剤の配合として極めて普通のものである(必要ならば、特公昭46-21112号公報、実施例4、参照。)うえに、それぞれの成分の組成割合である、「ゴムラテックスの混合物100重量部に、タッキファイヤエマルジョンを100重量部、軟化剤を30重量部、酸化防止剤エマルジョンを3重量部、増粘剤エマルジョンを2重量部」配合する点ついて、ラテックスやエマルジョンの濃度の記載がないので、粘着剤のラテックスや各エマルジョンの配合量を特定してみても各剤の配合量を特定したことにはならず(例えば、固形分50%のゴムラテックス100重量部ならゴムの配合量は50重量部となり、固形分60%のゴムラテックス100重量部なら配合量は60重量部となる)、このような配合量の記載は、[摘記i]や[摘記g]に示されている技術事項と比べて格別の差があるものとは認められない。
(か)以上のとおり、相違点1は、引用例1に「粘着物質は粘着用ポリマー、粘着付与物質、溶剤などからなるものであり、絶縁の効果を損ねない限りゴム性のものや、エマルジョン型のもの等現存する粘着物質すべてが使用できる」([摘記f])とされているものの範囲であるか、あるいは、それから当業者が普通に導くことのできるものである。したがって、この点に格別の創意を要したものとすることはできない。

補正後の発明の効果について
本願明細書の段落0026には、発明の効果として、「請求項1に記載の発明によれば、有機溶剤を用いないため、フィルム基材の粘着剤としてハロゲン化物を含まないオレフィン系樹脂をベースに残留溶剤を無くして、難燃性を向上させることができる。」と記載されている。しかしながら、基材や粘着剤にハロゲン化物を含ませないようにした、ハロゲンフリーの無公害型の粘着テープは引用例1に記載されるところであり([摘記a])、補正後の発明の効果も、これから当業者が予測しうる範囲内のものである。

したがって、補正後の発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(iii)請求人の主張
請求人は、「本願請求項1に係る発明は、上記発明の構成によって、本願の実施例に示されているようにフィルム基材の粘着剤に残留する溶剤を無くして、難燃性を向上させることができる効果を得ている(「表1},段落番号「0021」参照)。この格別な効果は、引用文献1には、何ら記載されていない。」と主張する(平成17年4月15日付け手続補正書(審判請求書の)、4頁32-35行)。しかしながら、公害問題・環境問題・健康問題等から、多くの分野において脱溶剤の方向への流れがあり、接着剤や粘着剤の分野においても同様の脱溶剤の方向への流れがある中で、引用例に、溶剤型、エマルジョン型どちらも可能であると記載されていれば、溶剤が存在しないエマルジョン型を選択することは時代の要請や技術の流れからみて必然であり、可燃性の有機溶剤を使用しなければ難燃性になることは予測できることであるから、その課題や効果が特別のものであるとはいえない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(iv)結論
以上のとおり、補正後の発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によって、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、その余のことを検討するまでもなく、本件補正は特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成17年4月15日付の手続補正が上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成17年1月28日付の手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、下記のとおりである。
「【請求項1】 天然ゴムラテックスとスチレンブタジエンゴムラテックスの混合物100重量部に、タッキファイヤエマルジョンを100重量部、軟化剤を30重量部、酸化防止剤エマルジョンを3重量部配合してなる粘着剤を、金属水酸化物を含有するオレフィン系樹脂によって構成されるフィルム基材に塗布してなるポリオレフィン系難燃性粘着テープ。」

4.刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用例1?3(2.(i)の引用例1?3と同じ。)及びその記載事項は、上記2.(i)に示したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、上記したとおりであって、上記2.に示した補正後の発明を包含するものであるところ、補正後の発明が、本願出願前に国内で頒布された刊行物である引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであることは、上記2.(iv)で示したとおりであるから、これを包含する本願発明も、同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.結論
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
他の請求項に係る発明ついては言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-14 
結審通知日 2006-12-20 
審決日 2007-01-10 
出願番号 特願平11-153244
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C09J)
P 1 8・ 121- Z (C09J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 泰之  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 井上 彌一
鈴木 紀子
発明の名称 ポリオレフィン系難燃性粘着テープ  
代理人 大塚 明博  
代理人 小林 保  

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