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審決分類 |
審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:13 H04N |
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管理番号 | 1152887 |
審判番号 | 補正2006-50013 |
総通号数 | 88 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-04-27 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 2006-07-14 |
確定日 | 2007-02-21 |
事件の表示 | 特願2005-289577「受信装置及び送信装置」において、平成17年11月1日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1].手続の経緯 本願は、平成17年10月 3日の出願であって、 平成2年7月20日に出願した特願平02-190655号(以下、「原出願」という)の一部を、 新たに特願平09-105649号(以下、「分割出願1」という)として出願し、さらに、その一部を、 新たに特願平11-316933号(以下、「分割出願2」という)として出願し、さらに、その一部を、 新たに特願2001-019385号(以下、「分割出願3」という)として出願し、さらに、その一部を、 新たに特願2001-375145号(以下、「分割出願4」という)として出願し、さらに、その一部を、 新たに特願2004-168762号(以下、「分割出願5」という)として出願し、さらに、その一部を、 新たに特願2005-015312号(以下、「分割出願6」という)として出願し、さらに、その一部を、新たな特許出願としたものである。 平成17年11月1日付けで手続補正(以下、「本件補正」という)がなされたが、この補正は、原審において平成18年6月13日付けで決定(以下、「原決定」という)をもって却下された。 [2].補正事項 本件補正は、願書に添付した特許請求の範囲を、 「【請求項1】 映像信号及び音声信号を含むディジタル信号をビット圧縮するビット圧縮部と、 該ビット圧縮部によりビット圧縮された該ディジタル信号を時間圧縮する時間圧縮部と、 該時間圧縮部により圧縮された該ディジタル信号を出力する出力部とを備え、 該時間圧縮部により圧縮されたデータの伝送レートが該ビット圧縮部により圧縮されたデータの伝送レートより高いことを特徴とする送信装置。 【請求項2】 請求項1記載の送信装置において、 前記ディジタル信号の伝送中の誤りを訂正するための誤り訂正信号を付加する誤り訂正部と、 該誤り訂正部により誤り訂正された該ディジタル信号を変調する変調部と、 該変調部により変調された該ディジタル信号を前記出力部により出力することを特徴とする送信装置。 【請求項3】 ビット圧縮及び時間圧縮された映像信号及び音声信号を含むディジタル信号を受信する受信部と、 該受信部により受信された該ディジタル信号を復調する復調部と、 該復調部により復調された該ディジタル信号を時間伸長及びビット伸長する伸長部とを備えることを特徴とする受信装置。 【請求項4】 請求項3記載の受信装置において、 前記復調部により復調された前記ディジタル信号を記録する記録部を備えることを特徴 とする受信装置。 【請求項5】 請求項3又は4記載の受信装置において、 前記伸長部は、前記受信部により受信された前記ディジタル信号を時間伸長した後にビット伸長することを特徴とする受信装置。 【請求項6】 請求項3ないし5のいずれか1項に記載の受信装置において、 前記受信部により受信される前記ディジタル信号には前記ディジタル信号の伝送中の誤りを訂正するための誤り訂正信号が付加されており、該誤り訂正信号を用いて該ディジタル信号の誤りを訂正する誤り訂正部と、 該誤り訂正部により誤り訂正された該ディジタル信号を出力する出力部とを備えることを特徴とする受信装置。 【請求項7】 ビット圧縮及び時間圧縮された映像信号及び音声信号と、伝送中の誤りを訂正するための誤り訂正信号とを含むディジタル信号を受信する受信部と、 該受信部により受信された該ディジタル信号を復調する復調部と、 該誤り訂正信号を用いて該復調部により復調された該ディジタル信号を誤り訂正する誤り訂正部と、 該誤り訂正部により誤り訂正された該ディジタル信号を記録する記録部とを備えることを特徴とする記録装置。 【請求項8】 ビット圧縮及び時間圧縮された情報信号を含むディジタル信号を受信する受信部と、 該受信部により受信された該ディジタル信号を時間伸長及びビット伸長する伸長部とを備えることを特徴とする受信装置。」 と補正する補正事項を含むものである。 [3].原決定の理由 原決定の理由は、概略、下記のとおりのものである。 記 本願明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載は、下記の各出願の明細書又は図面に記載されているから、本願は分割適法であり、補正の適否は、原出願の出願日である平成2年7月20日で判断される。 当該補正がなされた明細書又は図面における請求項1に記載されている、 「該時間圧縮部により圧縮されたデータの伝送レートが該ビット圧縮部により圧縮されたデータの伝送レートより高いこと」 及び請求項3に記載されている、 「該復調部により復調された該ディジタル信号を時間伸長及びビット伸長する伸長部」 は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でされたのではなく、自明でもない。 したがって、この補正は、明細書の要旨を変更するものと認められ、特許法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。 [4].当審の判断 そこで、原決定の適否について検討する。 [4.1]適用法について 上記各分割出願1?6および本願のいずれをみても、その願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下、「出願当初の明細書等」ともいう。)に記載された事項は、原出願(特願平02-190655号)およびその出願以前のすべての分割出願の範囲内のものであるから、本願は適法な分割出願である。 したがって、本願は、原出願の出願日(平成2年7月20日)に出願されたものとみなされ、 平成5年法律第26号による改正前の特許法第53条第1項であって、平成14年法律第24号第2条(附則第3条により、施行日(平成15年7月1日)以降の分割出願にも適用するとされた)により、「明細書」の下に「、特許請求の範囲」が加えられた規定が適用される。 したがって、原決定に、適用法上の誤りはない。 [4.2]本件補正の適否 [4.2.1]本件補正後の請求項1の「該時間圧縮部により圧縮されたデータの伝送レートが該ビット圧縮部により圧縮されたデータの伝送レートより高いこと」なる記載事項について (1)出願当初の明細書の記載 上記記載事項は、「該時間圧縮部」および「該ビット圧縮部」を含んでおり、これらは、それぞれ、本件補正後の請求項1の「該ビット圧縮部によりビット圧縮された該ディジタル信号を時間圧縮する時間圧縮部」および「映像信号及び音声信号を含むディジタル信号をビット圧縮するビット圧縮部」を指すものであるから、これらを含め上記記載事項に関する「出願当初の明細書の記載等」を検討するに、その段落0010?0017には、以下の記載(以下、「当初記載a」という)がある。 《当初記載a》 「【0010】 発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。 【0011】 図1は実施例の本発明のディジタル情報受信装置を含むディジタル情報受信及び記録再生装置の構成図である。図2は図1に向けて送信信号を送信するディジタル情報送信装置の実施例の構成図である。 【0012】 まず、図2のディジタル情報送信装置について説明する。図2において、1は磁気テープ、2,3は磁気ヘッド、4はシリンダ、5はキャプスタン、10はサーボ制御回路、20は復調回路、21は誤り訂正回路、22,23は圧縮回路、130は制御信号発生回路、24はパリティ付加回路、25は変調回路、26は送信回路、27は伝送路である。 【0013】 磁気テープ1に記録されたディジタル映像信号と音声信号は、シリンダ4に搭載された磁気ヘッド2,3で再生され、復調回路20に入力される。磁気テープ1はキャプスタン5により走行する。磁気テープ1の走行速度及びシリンダ4の回転周波数は、通常の例えば10倍とする。従って、復調回路20に入力される信号は10倍に時間圧縮されていることになる。例えば、磁気テープに120分信号が記録されてあれば12分で再生できることになる。 【0014】 一般に、磁気記録媒体にディジタル信号を記録する場合には、スクランブルドNRZ,M2符号などに変調された後記録される。復調回路20では、このように変調された信号を元のディジタルデータに戻すための信号処理、すなわち復調が行われる。復調回路20で復調された信号は、誤り訂正回路21に入力され、磁気記録再生過程で誤ったデータを検出し、訂正する。 【0015】 また、映像信号と音声信号が分離されて、それぞれ圧縮回路22,23に入力される。映像信号は、離散余弦変換(DCT)により、ビット圧縮される。音声信号は、非直線量子化、差分PCMなどにより、ビット圧縮される。その結果、映像信号と音声信号合計の伝送レートは例えば20分の1に低減される。 【0016】 圧縮回路22,23の出力信号は、パリティ付加回路24に入力される。また、このパリティ付加回路24には、制御信号発生回路130からの制御信号も入力される。ここで制御信号とは後述のように少なくとも記録装置の動作を制御する制御信号を含む。このパリティ付加回路24で、伝送中で発生する誤りを訂正するための誤り訂正用のパリティ信号が付加され、伝送フォーマットに従って、映像信号と音声信号をシリアルに出力する等の信号処理が行なわれる。パリティ付加回路24の出力信号は、変調回路25に入力される。変調回路25では、伝送路27の特性や周波数帯域に応じて、シリアル信号を変調する。この場合、伝送路27は空間であり、例えば電波で伝送する場合には、変調回路25では4相位相変調(QPSK)で変調する。変調された信号は、送信回路26に入力され、伝送路27に送信信号として出力される。このように、通常の10倍の速度で信号を伝送することができる。 【0017】 上記の実施例では、VTRから信号が再生される場合について示したが、信号源として、VTRに限るものではなく、磁気ディスク装置、光ディスク装置等いずれでも良い。」 (2)まず、「該ビット圧縮部によりビット圧縮された該ディジタル信号を時間圧縮する時間圧縮部」なる記載(以下、「記載A」という)について検討する。 上記「当初記載a」の段落0013の記載(特に、「復調回路20に入力される信号は10倍に時間圧縮されている」との記載)、段落0017の記載からみて、 ディジタル情報送信装置の実施例(図2)において、磁気テープや磁気ディスクや光ディスク等の動的記録媒体に一旦記録固定されているディジタル映像信号と音声信号を、通常の記録再生速度(走行速度、回転周波数)より速い速度で再生することによりその再生信号は10倍に圧縮された「映像信号及び音声信号を含むディジタル信号」となっている。 そして、「圧縮回路22,23」は、この10倍に圧縮された「映像信号及び音声信号を含むディジタル信号」が、復調回路20,誤り訂正回路21を介して入力されビット圧縮する。 これによれば、「当初記載a」には、『時間圧縮されたディジタル信号をビット圧縮すること』は記載されているといえるが、 『ビット圧縮されたディジタル信号を時間圧縮すること』については、記載されておらず、また、このことは、上記「当初記載a」から自明であるともいえない。 むしろ、ビット圧縮されたディジタル信号はパリティ付加回路等を経て送信されることが記載されており、これにも整合しない。 すなわち、「該ビット圧縮部によりビット圧縮された該ディジタル信号を時間圧縮する時間圧縮部」は、上記「当初記載a」に記載されておらず、上記「当初記載a」から自明であるともいえない。 そして、上記「当初記載a」以外の「出願当初の明細書等」のその他の箇所にも、上記「記載A」は記載されておらず、これが自明であるとするよりどころとなる記載もない。 以上のことから、上記「記載A」は、「出願当初の明細書等」に記載した事項の範囲内の事項であるとすることはできない。 (3)「該時間圧縮部により圧縮されたデータの伝送レートが該ビット圧縮部により圧縮されたデータの伝送レートより高いこと」(以下、「記載B」という。)について 上記「当初記載a」記載の、ディジタル情報送信装置の実施例(図2)において、 VTRの再生出力は、通常の10倍に時間圧縮されているからその伝送レートは通常の10倍程度といえるのに対し、 「ビット圧縮部」の出力信号の伝送レートは、VTRの再生出力の伝送レート程度のものが1/20に低減されるのであるから、通常の0.5倍程度ということになる。 したがって、上記「当初記載a」には、上記「記載B」から「該時間圧縮部」の「該」を除いた記載である「時間圧縮部により圧縮されたデータの伝送レートが該ビット圧縮部により圧縮されたデータの伝送レートより高いこと」は記載されているといえる。 しかしながら、上記「記載B」の記載は「時間圧縮部」ではなく「該時間圧縮部」であり、この「該時間圧縮部」とは、「該」がその直前の記載を指すことは明らかであるから、上記「該ビット圧縮部によりビット圧縮された該ディジタル信号を時間圧縮する時間圧縮部」を意味するものであるところ、これが「出願当初の明細書等」に記載されていないことは上記(2)で既に認定判断したとおりであり、したがって、上記「記載B」も、「出願当初の明細書等」に記載した事項の範囲内の事項であるとすることはできない。 (4)まとめ(記載B) 以上によれば、原決定が、「請求項1に記載されている、「該時間圧縮部により圧縮されたデータの伝送レートが該ビット圧縮部により圧縮されたデータの伝送レートより高いこと」は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でされたのではなく、自明でもない。」とした判断に誤りはない。 [4.2.2]本件補正後の請求項3の、「復調部により復調された該ディジタル信号を時間伸長及びビット伸長する伸長部とを備える」こと(以下、「記載C」という。)について (1)出願当初の明細書の記載(受信動作) 上記「記載C」に関して、「出願当初の明細書等」には、受信時の動作に関して、以下の記載(以下、「当初記載c1」という)がある。 《当初記載c1》 「【0018】 次に、図1の本発明の実施例のディジタル情報受信装置を含むディジタル情報受信及び記録再生装置について説明する。図1において、27は伝送路、30は受信回路、31は復調回路、32は誤り訂正回路、82はメモリ回路、80は切換スイッチ、62は伸長回路、64はD/A変換回路、70は映像信号の出力端子、131は制御回路である。 【0019】 図2のディジタル情報送信装置からの伝送路27に伝送された送信信号は、受信回路30で受信される。受信された信号は、復調回路31に入力される。復調回路31は、図2の変調回路25に対応するものであり、元の信号に復調する。復調された信号は、誤り訂正回路32に入力され、図2のパリティ付加回路24で付加した誤り訂正用パリティ信号に基づき、伝送路27で生じた誤りの検出、訂正を行う。この時、伝送系のS/Nが不十 分で、誤りを訂正しきれない場合には、信号の相関性を用いて信号の置換などにより、修正を行う。 【0020】 誤り訂正回路32より出力される誤り訂正された映像信号は、メモリ回路82を介して切換スイッチ80の記録時に選択される端子R側に入力される。メモリ回路82のメモリ容量は、少なくとも1フィールド分有し、高速で受信した映像信号はコマおとしでメモリに記憶され、メモリから正規の速度で読みだされ、伸長回路62に入力される。 【0021】 伸長回路62は、図2の圧縮回路22に対応するものであり、離散余弦変換(DCT)に対応して、圧縮された映像信号はビット伸長されて、元の映像信号に復元される。その出力信号は、D/A変換回路64に入力され、ディジタルからアナログの映像信号に変換されて出力端子70より出力される。 【0022】 また誤り訂正回路32より出力される誤り訂正された制御信号が、制御回路131で検出され、したがって記録装置の動作例えば記録開始を制御することが可能となる。 【0023】 また、図1において、33はパリティ付加回路、34は変調回路、40は磁気テープ、41,42は磁気ヘッド、43はシリンダ、44はキャプスタン、50はサーボ制御回路、60は復調回路、61は誤り訂正回路、63は伸長回路、65はD/A変換回路、71は音声信号の出力端子である。 【0024】 誤り訂正回路32の出力信号は、パリティ付加回路33に入力される。パリティ付加回路33では、記録、再生の過程で生じる誤りを検出、訂正するためのパリティ信号を付加する。パリティの付加された信号は、変調回路34に入力される。変調回路34では、磁気記録に適した符号に変調する。例えば、前記した、スクランブルドNRZ,M2符号等である。変調された信号は、シリンダ43に搭載された磁気ヘッド41,42で磁気テープ40に記録される。 【0025】 この時信号は、通常の10倍に時間軸圧縮されているので、シリンダ43の回転周波数及び、磁気テープ40の走行速度は、通常の10倍となるように、サーボ制御回路50でシリンダ43の回転制御及びキャプスタン44の制御を行う。また、磁気テープ40の所定の位置に、所定の信号を記録するために、受信した信号から同期情報を検出し、その同期情報に基づきシリンダ41の回転位相制御を行う。」(段落0018?0025)、 「【0032】 図4は本発明の他の実施例のディジタル情報受信装置を含むディジタル情報受信及び記録再生装置の構成図である。図1と共通部分には同一符号が付されている。」(段落0032)、 「【0045】 図4に示す実施例の装置の場合には、伝送中に生じた誤りを訂正する必要から、復調回路31の出力信号を誤り訂正回路61に入力し、誤り訂正された制御信号を制御回路131に入力する。なお、切換回路132は、記録時には復調回路31の出力信号を選択する端子R側に接続され、再生時には復調回路60の出力信号を選択するP側が選択される。 【0046】 また、図1に示す実施例で説明したように、切換回路132とメモリ回路を用いることにより、コマおとしの録画モニタを行うことができる。」(段落0045,0046) (2)請求人の主張 上記「記載C」につき、請求人は、出願当初の明細書等の段落0020,0021の記載に基づくもので、例えば、図1におけるメモリ回路82と伸張回路62,63が相当するとしている。 (i)まず、上記「記載C」に含まれる「復調部により復調された該ディジタル信号を時間伸長すること」(以下、「記載C’」という)について検討する。 段落0020によれば、メモリ回路82は、「メモリ回路82のメモリ容量は、少なくとも1フィールド分有し、高速で受信した映像信号はコマおとしでメモリに記憶され、メモリから正規の速度で読みだされ、伸長回路62に入力される。」ように動作する。 したがって、メモリ回路82により、コマおとしされない映像信号の部分についてだけみれば、高速で受信した映像信号がその後メモリから正規の速度で読みだされるのであるから、確かに、メモリ回路82から読みだされる出力信号の時間軸はメモリに記憶される入力映像信号よりも時間軸伸張されているといえる。 しかしながら、入力映像信号につき、何らの限定も付さずに単に「時間伸張する」とだけいう場合、通常、その入力映像信号全体を時間軸伸張する態様を意味し、入力映像信号をコマおとししながら、コマおとししない映像信号の部分についてだけ時間軸伸張するような態様で動作するものを意味するものではない。 したがって、上記「記載C’」が上記「当初記載c1」に記載されていたとすることはできない。 さらに、仮に、「時間伸張」が、上記のような態様(入力映像信号をコマおとししながら、コマおとししない映像信号の部分についてだけ時間軸伸張するような態様)で動作するものをも含む意味に解釈できるとしても、 上記「記載C’」には、そのような態様ではない、「該ディジタル映像信号全体を時間軸伸張すること」も当然含まれるところ、メモリ回路82がそのような「該ディジタル映像信号全体を時間軸伸張する」動作をするものではないことは明らか{同メモリ回路82が録画モニタ用である(段落0046)ことからみても明らか}であり、かつ、メモリ回路82がそのような動作をするものとすることが自明であるともいえないので、 上記「復調部により復調された該ディジタル信号を時間伸長すること」が、上記「当初記載c1」に記載されているとすることはできない。 以上、上記「記載C’」が上記「当初記載c1」に記載されていたとすることはできないのであるから、上記「記載C」が、上記「当初記載c1」に記載されているとすることはできない。 (ii)次に、上記「記載C」に含まれる「時間伸長及びビット伸長する伸長部」(以下、「記載C”」という)について検討する。 上記「記載C”」の、「時間伸長及びビット伸長する伸長部」なる記載は、「伸長部」が「時間伸長」と「ビット伸長」を共に行う部分であることを特定する記載であるが、「時間伸長及びビット伸長する伸長部」なる文言どおりの記載は、出願当初の明細書等には記載されていない。 そして、「時間伸長及びビット伸長する伸長部」は、「時間伸長後にビット伸長するもの」のほか、「ビット伸長後に時間伸長するもの」も含むと理解するのが相当であるところ、 {本件補正後の請求項5に、「請求項3又は4記載の受信装置において、前記伸長部は、前記受信部により受信された前記ディジタル信号を時間伸長した後にビット伸長することを特徴とする受信装置。」と記載されていることからみても、本件補正後の請求項3は、本件補正後の請求項5記載の「時間伸長」と「ビット伸長」の前後関係を逆にしたものを含むと理解するのが相当である。} 上記「当初記載c1」には、メモリ回路82の後段にビット伸長する伸長回路62が配されていて、仮に、メモリ回路82(入力映像信号をコマおとししながら、コマおとししない映像信号の部分についてだけ時間軸伸張する)が「時間伸長」する部分であるとしても、上記「当初記載c1」には、「時間伸長後にビット伸長するもの」が記載されているにとどまり、「ビット伸長後に時間伸長するもの」については記載されていない。 そして、「当初記載c1」に接した当業者のだれもが、図1記載の実施例において、メモリ回路82(入力映像信号をコマおとししながら、コマおとししない映像信号の部分についてだけ時間軸伸張する)と、ビット伸長する伸長回路62を入れ替えたものについて、それが「当初記載c1」に記載されているのと同然であると理解するとはいえず、 また、上記「当初記載c1」に接した当業者のだれもが「ビット伸長後に時間伸長すること」がそこに記載されているのと同然であると理解するともいえず、 したがって、「ビット伸長後に時間伸長するもの」ものが、上記「当初記載c1」から自明であるともいえない。 以上のことから、上記「記載C”」が、上記「当初記載c1」に記載されているとすることはできず、上記「記載C」が、上記「当初記載c1」に記載されているとすることはできない。 (iii)小括 以上(i),(ii)のいずれの点からみても、上記「記載C」が、上記「当初記載c1」に記載されているとすることはできない。 (3)上記「当初記載c1」以外の、出願当初の明細書等の記載について 「出願当初の明細書等」の段落0026には、「再生時には、磁気テープ40の走行速度及び、シリンダ43の回転周波数を通常再生どおりとする。」と記載されており、これが、上記「記載C」が「出願当初の明細書等」に記載されていたとする根拠となり得るかについて、以下に検討する。 (i)出願当初の明細書の記載(再生動作) 「出願当初の明細書等」には、再生時の動作に関して、以下の記載(以下、「当初記載c2」という)がある。 《当初記載c2》 「【0026】 次に、このようにして記録された信号を再生する動作について説明する。再生時には、磁気テープ40の走行速度及び、シリンダ43の回転周波数を通常再生どおりとする。再生された信号は、復調回路60に入力される。復調回路60は、変調回路34に対応するものであり、変調されていた信号を復調して出力する。復調された信号は、誤り訂正回路61に入力され、磁気記録再生系で生じた誤りをパリティ付加回路33で付加したパリティ信号に基づいて、誤りを検出、訂正する。さらに、訂正できない誤りがある場合には、適宜信号の相関性を用いて修正する。また、映像信号と音声信号に分離して出力する。 【0027】 映像信号は、伸長回路62に入力される。伸長回路62は、図2の圧縮回路22に対応するものであり、圧縮された映像信号は伸長回路62でもとの映像信号に復元される。その出力信号は、D/A変換回路64に入力され、ディジタルからアナログの映像信号に変換されて端子70より出力される。 【0028】 音声信号は、伸長回路63に入力される。伸長回路63は、図2の圧縮回路23に対応するものであり、圧縮された音声信号は伸長回路63でもとの音声信号に復元される。その出力信号は、D/A変換回路65に入力され、ディジタルからアナログの音声信号に変換されて端子71より出力される。」 (ii)上記「当初記載c2」及び図1によれば、図1のVTRからの通常再生された信号は復調回路60で復調され、復調後、誤り訂正回路61で誤りを検出、訂正され、その後、伸長回路62,63で伸張される。 ここで、仮に、図1のVTRの「通常再生」を「時間伸張」とみると、「当初記載c2」に記載された上記構成は「時間伸長した後にビット伸長するもの」に相当する。 しかし、「時間伸長した後にビット伸長するもの」をもっては「記載C」が記載されていたとすることができないことは前記のとおりである。(上記「(2)請求人の主張(ii)」での判断参照)から、同様に、上記「記載C」が「当初記載c2」に記載されているとすることはできない。 (iii)さらに、上記「記載C”」は、『時間伸長動作とビット伸長動作の2つの動作を一の構成要素(伸張部)で行うもの』であることを特定するところ、この点、上記「当初記載c2」には、VTR、復調回路60,誤り訂正回路61、訂正された信号を「ビット伸長」するものとしての伸張回路62,63が、それぞれ別々の部分として記載されており、『時間伸長動作とビット伸長動作の2つの動作を一の構成要素で行うもの』については記載されていない。 また、図1記載の実施例において、復調回路60及び誤り訂正回路61を除き、VTRと伸張回路62,63のみを抽出して、『VTRと伸張回路62,63を一の構成要素としたもの』が、「当初記載c2」に記載されているのと同然であると、上記「当初記載c2」に接した当業者のだれもが理解するとはいえないし、 また、上記「当初記載c2」に接した当業者のだれもが『時間伸長動作とビット伸長動作の2つの動作を一の構成要素で行うもの』がそこに記載されているのと同然であると理解するともいえない。 したがって、「記載C”」は、『時間伸長動作とビット伸長動作の2つの動作を一の構成要素で行うもの』であることを特定するとの観点からみても、上記「記載C」が、上記「当初記載c2」に記載されているとすることはできない。 (iv)以上(ii),(iii)のいずれの点からみても、上記「記載C」が、上記「当初記載c2」に記載されているとすることはできない。 (v)小括 そして、上記「当初記載c1」または「当初記載c2」以外の「出願当初の明細書等」にも、上記「記載C」は記載されておらず、これが自明であるとするよりどころとなる記載もない。 したがって、上記「記載C」は、「出願当初の明細書等」に記載した事項の範囲内の事項とすることはできない。 (4)まとめ(「記載C」) 以上によれば、原決定が、「請求項3に記載されている、「該復調部により復調された該ディジタル信号を時間伸長及びビット伸長する伸長部」は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でされたのではなく、自明でもない。」とした判断に誤りはない。 [5].むすび 以上のとおりであるから、上記平成17年11月1日付けでした手続補正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の要旨を変更するものである。 したがって、同手続補正は特許法第53条第1項の規定により却下すべきものとした原決定は妥当である。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-04 |
結審通知日 | 2006-12-12 |
審決日 | 2006-12-25 |
出願番号 | 特願2005-289577(P2005-289577) |
審決分類 |
P
1
7・
13-
Z
(H04N)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 竹中 辰利 |
特許庁審判長 |
乾 雅浩 |
特許庁審判官 |
北岡 浩 新宮 佳典 |
発明の名称 | 受信装置及び送信装置 |
代理人 | ポレール特許業務法人 |